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改訂二万枚る

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注文の多い料理店+エヴァ

注文の多い料理店+エヴァ
   ★★★
 二人の少女が、プラグスーツを着て、ぴかぴかする鉄砲を担いで、白熊のような犬を二匹連れて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさした所を、こんなことを言いながら、歩いておりました。
「なによ、この山。鳥も獣も一匹もいないじゃない。この銃、早く撃ってみたいのに。碇指令ってば、何でこんなとこで狩りの訓練なんかさせようと思ったのかしら」
「撃ってどうするの?」
「はあ? あんた馬鹿ぁ? 食べるに決まってんじゃない。心配しなくても、アンタにも分けてあげるわよ」
「肉、嫌いだもの」
 それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
 それに、あんまり山が物凄いので、その白熊のような犬が、二匹一緒に目眩を起こして、しばらく吠って、それから泡を吐いて気絶してしまいました。
「……可哀想」と一人の少女が、その犬の目蓋を、ちょっと返してみて言いました。
「な、なによっ? あたしのせいじゃないからねっ?」と、もう一人が、悔しそうに、頭を曲げて言いました。
 初めの少女は、少し顔色を悪くして、じっと、もう一人の少女の、顔付きを見ながら言いました。
「もう帰らない?」
「そ、そうね。あたしもそう思ってたとこよ」
 ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、一向に見当がつかなくなっていました。
 風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
「はぁ、お腹空いちゃったわ。アンタ、何か食べ物持ってないの?」
「……私には何もないもの」
 二人の少女は、ざわざわ鳴るススキの中で、こんなことを言いました。
 その時ふと後ろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。
 そして玄関には『西洋料理店・山猫軒』という札が出ていました。
「ちょっ、なんでこんなとこにレストランがあんのよ?」
「これがあなたの望んだ世界。そのものよ」
「……まあ、いいわ。入ってみましょ。もう歩き回るのにも疲れちゃったし」
 二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで、実に立派なもんです。
 そして硝子の開き戸が建って、そこに金文字でこう書いてありました。
『どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はいりません』
 二人はそこで、ひどく喜んで言いました。
「この様子だと人がいるみたいね。ほんとに食事が出来るのかも」
「誰かいるの?」
 二人は戸を押して、中へ入りました。そこはすぐ廊下になっていました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。
『ことに太ったお方や若いお方は、大歓迎いたします』
 二人は大歓迎というので、もう大喜びです。
「太ってはいないけど、充分若いし、それなりに歓待してくれそうね。メニューとかあんのかしら? アンタは何食べたいのよ?」
「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き」
 ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水色のペンキ塗りの扉がありました。
「どうも変な店ね? なんでこんなにたくさん扉があんのよ?」
「誰も救われない世界」
 そして二人はその扉を開けようとしますと、上に黄色な字でこう書いてありました。
『当軒は注文の多い料理店ですから、どうかそこはご承知ください』
「ちょっとぉ、なんであたしの質問に答えてんのよ? どこかでマヤとかが監視してるんじゃないでしょうね?」
「絆だから……」
 二人は言いながら、その扉を開けました。するとその裏側に、
『注文はずいぶん多いでしょうが、どうか一々こらえて下さい』
「……もう怒る気にもなれないわ」一人の少女は顔をしかめました。
「真実は、痛み」
 ところがどうも煩いことは、また扉が一つありました。そしてその脇に鏡が掛かって、その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。
 扉には赤い字で、
『お客様方、ここで髪をきちんとして、それから履き物の泥を落として下さい』
と書いてありました。
「まあ、それくらいは礼儀よね」
「赤い色。赤い色は嫌い」
 そこで二人は、綺麗に髪を整えて、靴の泥を落しました。
 そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや否や、そいつがぼうっと霞んで無くなって、風がどうっと部屋の中に入ってきました。
 二人はびっくりして、互に寄り添って、扉をがたんと開けて、次の部屋へ入って行きました。早く何か温かいものでも食べて、元気を付けて置かないと、もう途方もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
 扉の内側に、また変なことが書いてありました。
『鉄砲と弾丸をここへ置いてください』
 見るとすぐ横に黒い台がありました。
「仕方ないわね。何かあったら素手でもどうにかなんでしょ。アンタは平気?」
「私が死んでも代わりはいるもの」
 二人は鉄砲を外し、帯皮を解いて、それを台の上に置きました。
 また黒い扉がありました。
『どうか帽子と外套と靴をおとり下さい』
「当てはまるのって、頭に付けたこれぐらいかしら? アンタもさっさと取りなさいよ」
「私はあなたの人形じゃない」
 二人はインタフェース・ヘッドセットを外し、扉の中に入りました。
 扉の裏側には、
『ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、ことに尖ったものは、みんなここに置いてください』
と書いてありました。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵まで添えてあったのです。
「尖ったもの? 別に何もないわよね?」
「…どいてくれる?」
「なによ、偉そうに。って、ちょっ、なんでアンタっ、裸になってんのよっ?」
「大きなお世話よ、バァさん」
「なんですってええっ? それってあたしの肌が衰えてるって意味じゃないでしょうねっ? いいわっ、あたしも全部脱ぐわよっ!」
 二人はプラグスーツを脱いで、金庫の中に入れて、ぱちんと錠を掛けました。
 少し行きますとまた扉があって、その前に硝子の壺が一つありました。扉にはこう書いてありました。
『壺の中のクリームを顔や手足にすっかり塗ってください』
 見ると確かに壺の中の物はクリームでした。
「クリームを塗れって、どうしてそんなことを、このあたしがっ」
「それはとてもとても気持ちのいいことなのよ」
 二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから全身に塗りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人とも銘々こっそり顔へ塗る振りをしながら食べました。
 それから大急ぎで扉を開けますと、その裏側には、
『クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか』
と書いてあって、小さなクリームの壺がここにも置いてありました。
「何か変なプレイとかじゃないでしょうね?」
「見失った自分は自分の力で取り戻すのよ」
 するとすぐその前に次の戸がありました。
『料理はもうすぐできます。十五分とお待たせはいたしません。すぐ食べられます。早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振り掛けて下さい』
 そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。
 二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振り掛けました。
 ところがその香水は、どうも酢のような臭いがするのでした。
「だああああっ! やってらんないってのっ!」
「……碇君の匂いがする」
「ちょっ、あんた、変態じゃないの?」
 二人は扉を開けて中に入りました。
 扉の裏側には、大きな字でこう書いてありました。
『色々注文が多くて煩かったでしょう。お気の毒でした。もうこれだけです。どうか身体中に、壺の中の塩をたくさんよく揉み込んで下さい』
 なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが、今度という今度は二人ともぎょっとしてお互いにクリームをたくさん塗った顔を見合せました。
「今更言うのもなんだけど、何か変じゃない?」
「自らの心で自分自身をイメージできれば、誰もが人の形に戻れるわ」
「意味の判んないことばっか言ってんじゃないわよっ。アンタはおかしいと思わないのっ? さっきからずっと、誰かがあたしたちに注文してるだけじゃないっ。レストランならお客に食事を取らせなさいってのっ! アンタもちゃんと会話しなさいよっ!」
「だから、西洋料理店というのは、私の考えるところでは、西洋料理を、来た人に食べさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる店とこういうことなのよ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、わ、わ、私たちが……」がたがたがたがた、震えだしてもうものが言えませんでした。
「あ、あたしたちが、食べられちゃうっての? そんな……」がたがたがたがた震えだして、もうものが言えませんでした。
「逃げ……」がたがたしながら一人の少女は後ろの戸を押そうとしましたが、どうです、戸はもう一分も動きませんでした。
 奥の方にはまだ一枚扉があって、大きな鍵穴が二つ付き、銀色のフォークとナイフの形が切り出してあって、
『いや、わざわざご苦労です。大変結構に出来ました。さあさあおなかにお入り下さい』
と書いてありました。おまけに鍵穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉がこっちを覗いています。
「なっ、なによっ、なんなのよっ」がたがたがたがた。
「ごめんなさい。こういう時どんな顔をすればいいか判らないの」がたがたがたがた。
 二人は泣き出しました。
 すると戸の中では、こそこそこんなことを言っています。
「父さん、駄目だよ。もう気付かれちゃったよ。アスカも綾波も、塩を揉み込まないよ」
「当たり前だ。お前の書きようが拙いんだ。あそこへ、色々注文が多くて煩かったでしょう、お気の毒でしたなんて、間抜けたことを書くからだ。変装用にこんな色付きのコンタクトまで入れたというのに」
「父さんだって、無理矢理4Pに持ち込む為だけに、ホログラムの部屋だとか、実験段階の転送装置だとか持ち出してきて。これで上手くいかなかったら間抜けじゃないか。大体、クリームとか香水とか塩とか何で必要なのさ?」
「どれも媚薬だ。発情させておけば、少しは抵抗も弱まるだろう? それに一度、野外レイプから始まる乱交というものがしてみたかったんだ」
「でも、もう二人とも指示に従わないじゃないか。どうすんのさ?」
「取り敢えずこちらへ呼ぼう。暴れるようなら拘束すればいい。おい、お客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。お皿も洗ってありますし、菜っ葉ももうよく塩で揉んで置きました。早くいらっしゃい」
「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。とにかく早くいらっしゃい」
 二人の少女はあんまり心を痛めた為に、顔がまるでくしゃくしゃの紙屑のようになり、お互にその顔を見合せ、ぶるぶる震え、声もなく泣きました。
 中ではふっふっと笑ってまた叫んでいます。
「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いては、折角のクリームが流れるじゃありませんか。さあ、早くいらっしゃい」
「早くいらっしゃい」
 二人の少女は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
 その時、後ろからいきなり、
「わん、わん、ぐゎあ」という声がして、あの白熊のような犬が二匹、扉を突き破って部屋の中に飛び込んできました。鍵穴の眼玉はたちまちなくなり、犬どもはううと唸ってしばらく部屋の中をくるくる廻っていましたが、また一声「わん」と高く吠えて、いきなり次の扉に飛びつきました。戸はがたりと開き、犬どもは吸い込まれるように飛んで行きました。
 その扉の向こうの真っ暗闇の中で、
「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ」「帰れ」という声がして、それからがさがさ鳴りました。
 建物は煙のように消え、二人は寒さにぶるぶる震えて、草の中に立っていました。
 見ると、鉄砲やプラグスーツは、あっちの枝にぶらさがったり、こっちの根元に散らばったりしています。風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
 犬がふうと唸って戻ってきました。
 そして後ろからは、
「お客様、お客様」と叫ぶ者があります。
 二人はにわかに元気がついて
「あの声は、案内してくれてた鉄砲打ちのおじさんね。こっちよ、早く来て」
「……その前に服、着た方がいいんじゃないの?」
「んなこと判ってるわよっ。おじさんこっちこっち、だけど、ちょっと待っててっ」と叫びました。
 簔帽子を被った専門の猟師が、草をざわざわ分けてやって来ました。
 そこで二人はやっと安心しました。
 そして猟師の持ってきた団子を食べ、第三新東京市に帰りました。
 しかし、さっき一遍紙屑のようになった二人の顔だけは、第三新東京市に帰っても、お湯に入っても、もう元の通りに直りませんでした。    
(終わり) 

【あとがき】
 事前のイメージではもう少し面白くなるかと思ってたんですが、結果、この様です。えらいすんませんでした。尚、気が向いたら更に改訂するかもしれません。
[2010年10月14日] カテゴリ:著作権切れ小説パロ化 | TB(-) | CM(-)
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桃汁

Author:桃汁

【ランス推しキャラ第1位】



【当所開設日】
・2013/09/29
・DTIブログ終了により移設
・旧開設日2010/09/22

【当所内容】
・BBSPINKエロパロ板投下済
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