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零の使淫魔・未改訂分

零の使淫魔・未改訂分(改訂分の続きから)
   ★★★
「ふぁああああああああ」
 ルイズは目を覚ますと大きな欠伸をし、寝ぼけた目で、ベッド脇に腰掛けている俺を見た。
「あら。起きたての。あんた」
「当たり前だ。お前こそ何時まで寝てるつもりなんだよ」
「んー、今、何時?」
「もうそろそろ昼だ」
「そうなの? 何かまだ寝足りない感じ。――あれ、何だか身体がベトついて、変な臭いがする。口の中も生臭くって苦い」
「昨日も言ったろ、寝汗だよ。変な臭いはお前の体臭と口臭だ。自分の臭いぐらい覚えとけ」
「こんな生臭いのが私の体臭なの? やだやだ、お風呂に入んなくちゃ」
 ルイズは俺の言葉を真に受けて、かなりショックだったようだ。いそいそと立ち上がると、ネグリジェ姿のまま部屋を出ようとする。
「別に嫌な匂いじゃねえよ。なんてったって俺のご主人様の匂いだからな。もう少し自信持て」
 ルイズの足が止まる。次いで、フンフンと自分の身体の臭いを嗅ぎ始める。その小動物のような姿に、俺は必死に笑いを噛み殺した。
「そ、そうよね。私の、誉れ高きヴァリエール家の三女の匂いだもんね。あんた、なかなか判ってるじゃない。うん、いい匂い」
 ルイズは勝ち誇った調子で言うと、ネグリジェの裾を引っ張って自分の顔に当て、深く匂いを吸い込み始めた。
   ★★★
 俺がトリステイン魔法学院でルイズの使い魔として生活を始めてから、一週間が経った。使い魔としての一日の始まりを紹介すると、こんな感じだ。
 まず、朝起きる。寝床は相変わらずの床だ。ただ、シエスタに頼んで馬のエサである藁をもらい、それを敷き詰めた上でルイズから与えられた毛布にくるまり、俺は寝ていた。固い床の上で寝るより、幾分かはマシだ。
 そして起きると、ルイズに精液をぶっ掛ける。先日以来、ギーシュから貰った睡眠薬を使う機会はなかったが、ルイズは匂いについて何も言わなくなった。それどころか、たまに自分から服や下着、腕なんかの匂いを嗅いでいたりする。扱い易いことこの上ない。
 その上でルイズを起こし、着替え。ルイズは下着だけは自分でつけるが、制服を着させるのは俺の役目だ。当然、ルイズに渡す下着には毎回精液を塗り込んでいる。
 次に黒いマントと白のブラウス、グレーのプリーツスカートの制服に身を包んだルイズは、顔を洗って歯を磨く。水道なんて気が利いたものは部屋まで引かれていない。俺は下の水汲み場まで行って、ルイズが使う水を瓶に汲んでこなければならない。そしてルイズはもちろん、自分で顔を洗ったりしない。俺に洗わせるのである。タオルで拭く振りをして、顔に精液を擦り込むのはもちろん、陰茎を浸した水でうがいをさせても気付くことはない。
 朝食が済むと。ルイズを授業に送り出し、その後は部屋の掃除をする。床を箒で掃き、机や窓を雑巾で磨くのだ。そして洗濯。下の水汲み場までルイズの洗濯物を運び、そこで洗濯板を使ってごしごしと洗う。無論、洗う前に染みや匂いなどは念入りに確認している。
 もちろん、俺は常に従順なわけではない。一度、朝からルイズと喧嘩して頭にきた時には、パンツのゴムにこっそり切れ目を入れてやった。ルイズは気づかずにそれを身につけ、歩いている途中でゴムが切れた。パンツは足首までずり落ちて両足に絡みつき、ルイズは派手に転倒し、むき出しの下半身をさらけ出した。幸い辺りに人影はなく、昼の光に照らされた無毛の恥丘はいい眺めだったが、俺はその日一日食事を抜かれた。
 しかし、たとえ一日三食抜かれても俺は平気だった。食堂の裏にある厨房に赴き、そこで働く愛らしいシエスタに頼めば、シチューや骨付きの肉なんかを寄越してくれる。抜かれなくても、食事の量が足りなくて腹が減れば厨房に通う。
 厨房の中で特に俺をを歓迎してくれるのは、シエスタとコック長のマルトー親父だ。マルトー親父は平民なのだが、魔法学院のコック長ともなれば、収入は身分の低い貴族以上で羽振りがいい。そして貴族のギーシュを倒した俺を、王さまでも扱うようにもてなしてくれる。
 シエスタは、俺が専用の椅子に座るとすぐに寄ってきて笑いかけ、温かいシチューの入った皿と、ふかふかの白パン、そして、ぶどう酒の棚からヴィンテージを取り出してきて、うっとりとした面持ちでグラスに並々と注いでくれる。こんなことが毎回繰り返される。
ルイズにはもちろん、厨房での施しは秘密にしていた。何かというと罰として食事を抜くというルイズに、厨房での好待遇がバレたら大変だ。使い魔の教育方針に煩いルイズは禁止するに決まっている。
   ★★★
 ある晩、俺とルイズはちょっとしたことで口論になり、ルイズは俺の寝床である藁束を廊下に放り出した。
「何すんだよ」
「私の言うことが聞けないのなら、今夜は廊下で寝なさい」
 ルイズは形のいい眉を吊り上げて言い放ち、俺に毛布を投げつけると、部屋の中からがちゃりと鍵をかけた。
 俺は仕方なく、毛布にくるまり藁束の上に寝転んだ。廊下の床は石なので、冷たさが体にしみこんでくる。暖炉もなく、廊下の壁の窓の隙間からは風がぴゅうと吹き込んでくる。寒い。
 俺は復讐の方法を考え始めた。もう犯しちまうか。それも睡眠薬を使ってでなく、意識のある状態でベッドに身体を縛りつけ、両手足の自由を奪った上で。騒ぐようなら口の中にあいつのパンツでも突っ込んで、処女を奪った上で尻穴も犯してやる。逆らう気力がなくなるほど何度も何度も犯して、身体の内側も外側もドロドロにしてやるか。
 そんなことを毛布の中で凍えていると、キュルケの部屋の扉がカタンと音を立てて開き、その奥から声がした。
「良かったら、あたしの部屋にいらっしゃいよ」 
  ★★★
 中に入ると、キュルケの部屋の中は真っ暗だった。
「扉を閉めて」
 言われて俺は扉を閉めた。
「ようこそ。こちらに来て」
「真っ暗で判んねえよ」
 すると、指を弾く音が聞こえ、部屋の中に立てられた蝋燭に一つずつ火が灯っていく。ぼんやりと、淡い幻想的な光の中に、ベッドに腰掛けたキュルケの悩ましい姿があった。ベビードールというのだろうか、そういう、誘惑するための下着をつけている。というかそれしかつけていない。
「ここに来て横に座って」
 キュルケは色っぽい声で言った。
 言われた通りに近づいてベッドの隣に腰掛けると、キュルケは赤い髪を優雅にかきあげ、すっと俺の手を握ってきた。
「あなたは、あたしをはしたない女だと思うでしょうね」
 キュルケは大きくため息をついた。そして、悩ましげに首を振った。
「恋してるのよ。あたし。あなたがギーシュを倒したときの姿、かっこよかったわ。伝説のイーヴァルディの勇者みたいだったわ。あたしね、痺れたのよ、あなたに……。愛してる」
 キュルケは俺の顔を両手で挟むと、真っ直ぐに唇を押し付けてきた。ルイズの甘い匂いとは明らかに違う、蟲惑的で濃厚な香りが鼻腔をくすぐる。俺はキスされながらもキュルケの裸に近い肉感的な身体を眺め、さてどうしたもんかと考えた。
 その時、部屋のドアが物凄い勢いで開けられた。視線を向けると、ネグリジェ姿のルイズが立っていた。
 キュルケはちらりと横目でルイズを見たが、俺の唇から自分のそれを離そうとはしない。
「だだだ、誰の使い魔に手を出してんのよ!」
 ルイズの鳶色の瞳は燗々と輝き、火のような怒りを表している。キュルケもその怒りを感じたのか、やっと気づいた、と言わんばかりの態度で唇を離すと、ルイズの方へと向き直った。
「仕方ないじゃない。好きになっちゃったんだもの」
 キュルケは両手をすくめてみせた。ルイズの手が、わなわなと震えた。
「ききき、来なさい!」 
ルイズは有無を言わさぬ口調で言い放つと、俺の手を握り、さっさと歩き出した。
 後ろ髪を引かれないわけではなかったが、キュルケとは後からでも楽しめそうだ。俺はそう考えて、取り敢えずはルイズの好きにさせることにした。
  ★★★
 部屋に戻ったルイズは、慎重に内鍵をかけると、俺に向き直った。
「まるでサカリのついた野良犬じゃないの~~~~~ッ!」
声が震えている。ルイズは怒ると口より先に手が動き、手より先に足が動く。もっと怒ると声が震えるらしい。 
「そこに這いつくばりなさい。私、間違ってたわ。ののの、野良犬なら、野良犬らしく扱わなくちゃね。いいい、今まで甘かったわ」
 言いながらルイズは机の引き出しから何かを取り出した。――鞭である。
「なんで鞭なんか持ってんだよ?」
 俺はわざと、とぼけた声をあげた。
「乗馬用の鞭だから、あんたにゃ上等ね。ああ、あんたは、野良犬だもんねッ! 何よ! あんな女のどこがいいのよッ!」
 俺は叫ぶルイズの目を覗き込んだ。鳶色の瞳が、その目を睨み返す。間近で見ると、やはり素晴らしく可愛い。キュルケも美人だが、俺としてはルイズの方が好みだ。だがここは、精神的に煽った方が面白そうだ。
「誰と付き合おうが俺の勝手だ」
「たたた、確かに、あんたが誰と付き合おうが、あんたの勝手。でも、キュルケは駄目」
「理由を言え」
「だって、平民がキュルケの恋人になった、なんて噂が立ったら、あんた無事じゃすまないもの。今までキュルケに言い寄ってた生徒が、みんなあんたの敵になるわ」
「そんなの、誰と付き合ったって敵ができたりするのは一緒だろうが」
「そうよ。だからあんたは誰とも交際禁止」
「要するに嫉妬か」
「だだだ、誰が嫉妬なんか! ととと、とにかく、あんたは私の使い魔でしょ! 私の言うことには従いなさいッ!」
 ヒステリックに叫ぶルイズ。これ以上のプレッシャーは逆効果かもしれない。
「まぁ、俺には可愛いご主人様がいるからな。今のところは交際禁止でもいいや」
俺の言葉にルイズば目を丸くした。
「――ほんと?」
「何が?」
「あの、その、か、可愛いご主人様って。私、その、可愛い?」
「ああ、可愛いぞ。顔も身体つきも髪も声も、全部可愛い」
「そそそ、そうよね。可愛いよね。うん、うん」
 ルイズは満足そうな笑みを浮かべ、何度も頷く。但し、ここで釘を刺しておかなければなるまい。
「言っておくが、交際禁止は、あくまでも今のところ、だからな。もっとも、こんな可愛いご主人様がいつも優しくしてくれるなら、他に目が移ったりすることもないだろうけどな」
「――判った、優しくするように努力する」
 一瞬不安そうな顔を見せた後、ルイズは力強く宣言した。
   ★★★
 俺は自分の藁束の中でぱちりと目を開いた。窓の外からの月明かりが、室内を煌々と照らしている。ベッドからは、微かにルイズの寝息が聞こえてくる。
俺は起き上がると、忍び足でルイズのベッドに近づいた。
 あどけないルイズの寝顔を見ながら、まずはその甘い匂いを嗅いでみた。続いていつものように陰茎を取り出し、ルイズの鼻先に近づける。空いた手で毛布を剥ぎ、ネグリジェをたくし上げ、わずかに膨らんでいる胸の先端、手前の乳首に指を這わせながら、もう一方の乳首を舌先で舐め上げる。今夜は例の薬を飲ませてあるので、途中で起きる心配はない。
「んっ……あ……んんっ……あぁ……」
小さく喘ぐ華奢な身体が月明かりに照らされ、何とも色っぽい。寝る時には下着をつけないというルイズに習慣に感謝しながら、乳首を弄んでいた手を股間へと移す。
 ルイズのそこは既にしっとりと濡れていた。毎日毎日触っているうちに、どんどん感度が上がっているようだ。俺はルイズの上に覆い被さるようにしてシックスナインの体制を取り、扱いている陰茎をルイズの顔に押し付けながら、足を開かせて股間の匂いを嗅いだ。少女特有の甘い匂いがそこだけ濃密で、鼻から深く息を吸い込む度にクラクラとする。その心地良さに痺れながら、ルイズの内腿から秘裂へとゆっくり舌を這わせる。
「あっ……うんっ……はぁ……あふっ……ん……あぁん……」
ルイズの身体がビクビクと震え、陰茎にかかる息が荒くなる。俺は身体を起こしてルイズの小さな口を開かせ一物を差し込み、元の体制に戻ると、両足を左右に抱え、初めてルイズの秘裂に口をつけた。
「もがっ……む……むうっ……ぐぶっ……ううっ……んっんっ……」
 口の中に異物を差し込まれたルイズが苦しそうに喘ぐ。だがそれ以上に気持ちいいのか、腰が跳ね、両足が引きつり、爪先が踊るような動きを繰り返す。秘裂の中に舌を潜り込ませる都度、トロッとした愛液が奥から滲んでくる。
「むぐううっ……んんっ……むぁっ……うぶぅ……んんんんんっ……」
 どんどん呼吸が荒くなるルイズだが、咥えたものを放そうとはしない。それどころか、無意識に舌で舐め始めた。たどたどしい舌の動きだが、それがかえって興奮を誘う。
「むちゅっ……んぷ……れろっ……むふぅん……はふん……はぷっ……」
 俺は再度身体を起こすと、指先でルイズのクリトリスを弄びながら、陰茎にしゃぶりつく表情を眺めた。顔を真っ赤にして眉間に皺を寄せ、規則的に鼻息を漏らしながら咥えた陰茎を舐めるルイズは、とても愛らしく卑猥だ。それを見ているうちに俺は堪らなくなり、ルイズの股間を弄る指の動きを早めながら、一物の根元を自ら扱き始めた。
「むううっ……くぷっ……ぷあっ……くぅぅん……ううっ……んっんっんっ……」
俺の指先の動きに合わせて、ルイズの舌の動きも早くなる。
「上手いぞルイズ。もっと舌を這わせろ。チンポとチンポ汁の味をしっかり覚えろ」
「んむっ……んんっ……むむっ……ぷふぁ……うむん……んぁっ……うぅん……」
「出すぞ、お前の口の中に。十三歳の貴族の少女の口の中に。お前も同時にいけ」 
「ぶぶっ……こっ……ごぶっ……むうっん……むっむうっ……ぐぶうう……」
「出すぞ、飲めっ!」
「むぐううううううううっ!」
限界を迎えて俺がルイズの口に中に射精すると同時に、ルイズは腰を高く跳ね上がらせて絶頂した。後から気付いたのだが、驚いたことにルイズは身体を小刻みに痙攣させながらも、俺の指示通りに口の中の精液を殆ど飲み干していた。
  ★★★
 行為の後片付けを終え、ベッドに横たえたネグリジェ姿のルイズを抱きしめた瞬間、その目が前触れもなく開いた。薬の効果切れにはまだ間があるはずで、予想外の出来事にオレは一瞬固まったが、すぐに思い直してルイズをきつく抱きしめた。
「な、何よ! あんた! ちょっと! な、なに抱きついてんのよ! ねえ! 離しなさいよッ!」
 ルイズはすぐに置かれた状況に気づいたらしい。オレの手から逃れようと、じたばたと暴れ始めた。
「仕方ないだろ。こんなに可愛いんだから。ギュっとしたくもなるって」
俺は言って、頬を擦り寄せた。
「だからって、ちょっと、ダメ。あんたは使い魔なんだから、ご主人様にこんなこと許されないのよッ!」
 それでもルイズを離さない。
「別に変なことをしようとしたんじゃなくて。ただ抱き締めたかっただけだよ。愛しいご主人様への忠誠心のようなもんだろ?」
 俺の言葉にルイズはたじろいだようだ。腕の中で暴れるのを止めると、上目遣いに俺を見つめてくる。
「ほんとに変なことしない? 忠誠心で抱き締めるだけ?」
「そうだよ。お前だって使い魔だったら、愛しいご主人様を見て抱きしめたくなるだろ?」
 ルイズの頬がさっと染まった。こいつは褒め言葉に極端に弱い。魔法に関する劣等感がそうさせているのだろうが、何にしてもこうなれば、もうこっちのものだ。
「ま、まぁ、忠誠心じゃ仕方ないわよね。か、可愛いご主人様を見てそうなるのも仕方ないわ。今回は許すけど、本来なら使い魔が主人のベッドに忍び込むなんて許されないんだからね」
「次からは気をつけます。はい」
 そう言って俺はルイズから手を離した。
「――次なんか、ないんだから」
 呟いたルイズの残念そうな表情を見て、俺は内心ほくそ笑んだ。
  ★★★
 その日の夜。
 ノックの音にドアを開くと、真っ黒な頭巾を被った少女が立っていた。
「誰?」
 ルイズが尋ねると、少女は部屋に入って後ろ手に扉を閉め、頭巾を取った。
 俺はうっと息をのんだ。ルイズも稀に見るほどに可愛いが、少女はそれに加え、神々しいばかりの高貴さを放っている。
「姫殿下!」
 ルイズが慌てて膝をつく。
 俺はどうしていいのかわからずに、ぽけっと突っ立っていた。何が何やら判らない。
「お久し振りね。ルイズ・フランソワーズ。あなたがどうしているかと思って」
 姫殿下と呼ばれた少女は涼しげな、心地よい声で言った。
「姫殿下、いけません。こんな下賤な場所へ、お越しになられるなんて……」
 ルイズはかしこまった声で言った。
「そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい。あなたとわたくしはおともだちじゃないの」
「どんな知り合いなんだ?」
 横から俺が尋ねると、ルイズは俺を軽く睨み付け、言い聞かせるような口調で答えた。
「頭が高いわ、平伏しなさい。我がトリステイン王国のアンリエッタ姫殿下よ。あんたみたいな平民がお目通りできるような方じゃないの。判ったらさっさと部屋を出て行きなさい」
 それからルイズはアンリエッタに向き直った。
「姫さま、使い魔の教育がなってなくて申し訳ありません」
「使い魔?」
 アンリエッタはきょとんとした面持ちで俺を見つめ、続いて首を振った。
「いえ、魔法使いであるメイジにとって使い魔は一心同体。席を外す理由がありません」
 アンリエッタは再び俺の方を見つめ、にっこりと笑ってみせた。正直、俺はドキっとした。ルイズも愛らしく清楚であったが、アンリエッタも王女なだけあって、息が止まりそうになるほど美しい。眉の上で切りそろえられた粟色の髪が、優しく泳いでいる。ブルーの瞳は、まるで南の海のように鮮やかに光っている。そして白く、透明感漂う肌、高く形のいい彫刻のような鼻……。
「使い魔さん、わたくしの大事なおともだちを、これからもよろしくお願いしますね」
 そう言うとアンリエッタはすっと左手を差し出した。手の甲を上に向けている。
「いけません! 姫さま! そんな、使い魔にお手を許すなんて!」
ルイズが驚いた声で言った。
「いいのですよ。この方はあなたのために働いてくださっているのでしょう? つまりはこの国のため。忠誠には、報いるところがなければなりません」
「はあ……」
「お手を許すって、お手? 犬がするヤツか?」
「違うわよ。もう、平民は何にも知らないんだから。お手を許すってことは、キスしていいってことよ。砕けた言い方をするならね」
「判った」
 俺はアンリエッタの手を取ると、そのままぐっと自分に引き寄せた。
「え?」
 アンリエッタの口が驚きでぽかんと開く。俺は間髪いれずに、アンリエッタの唇に自分のそれを押しつけた。
「むぐ……」
 柔らかく、小さな唇だった。アンリエッタは目をまん丸に見開いたままだ。その隙をみて舌を深く差し込み、アンリエッタの舌に強引に絡ませながら高貴な口の中を荒々しく味わう。ついでに乳房を揉みしだき、尻を強めに掴んでやると、アンリエッタは身体を震わせ、続いて脱力して俺の手をすり抜け、そのまま床に崩れ落ちた。
「あれ? 気絶か?」
「姫殿下に何してんのよッ! お手を許すってのは、手の甲にすんのよッ! 手の甲にキスすんのッ! 思いっ切り唇にキスしてどーすんのよッ! おまけに胸やお尻まで触ってえッ!」
「そんなこと言われてもなぁ。お前らのルールなんか知らねえもん」
「こここ、この、この犬ってば……」
 ルイズの声が激しく震え出した。危険な兆候である。
 やがてアンリエッタが頭を振りながら起き上がった。心なしか息が荒い。
「も、申し訳ありません! 使い魔の不始末は、わたしの不始末です! っていうかあんたもほら! 謝りなさいよ!」
 あのプライドの高いルイズが人に謝っている。おまけに、わなわなと震えている。言うことをきかないと、後で激しいお仕置きを食らいそうだ。
 仕方ないので、俺は頭をかきながら、アンリエッタに謝った。
「すいません。でも、キスしていいって言うから」
「唇にするやつがどこにいんのよッ!」
「い、いいのです。忠誠には報いるところがなければなりませんから」
 努めて平静を装いながら、アンリエッタが頷いた。
その様子を見ながら、俺は薄く微笑んだ。この姫様にも、色々と付け入る隙がありそうだ。
   ★★★
 アンリエッタとキスをした翌朝から、ルイズの態度が変わり始めた。高飛車な態度が幾分和らぎ、時には俺に甘え、時には恥ずかしがるようになったのである。
 朝起きた俺はいつもの日課をこなすと、ルイズのために下着をクローゼットから取り出し、粘液を染み込ませてからベッドの側に置いた。普段、ルイズは下着だけは自分で身につけるからだ。
 だがルイズはベッドから起き出すと、さっとシーツを身体に巻きつけた。
「服もそこに置いといて」
 顔の下半分をシーツで隠してルイズは言った。
「置いといて? 着せなくていいのかよ」
 俺がそう言うと、ルイズはシーツから顔を出した。
「自分でやるから、いいの」
 それからルイズは再びシーツに顔の下半分をうずめ俺を睨み、う~~~~、と唸った。
 俺は言われたままに服をルイズの側に置いた。
「あっち向いてて」
「え?」
「あっち向いてって言ってるの」
 俺は言われた通り、ルイズに背を向けた。どうやら着替えるところを見られるのが嫌なようだ。それは年頃の少女なら至極当然な感情だが、今までは見られても平気な顔をしていたルイズである。俺に対しての羞恥心が芽生えてきたに違いなかった。ルイズの目の前でアンリエッタにキスをしたことで、ルイズは強く俺を意識し始めたに違いない。いい傾向だ。
「こっち向いてもいいわよ」
振り返ると、着替えの終わったルイズが、俺をじっと見つめている。
「ほら、襟が曲がってる。着た後でちゃんと鏡で確認しろよ」
言いながら服のあちこちを直してやると、ルイズは頬を染めながら「ありがと」と呟いた。
  ★★★
 食堂では驚くべきことが起こった。
「ほら、座って。早く」
 促されるままに椅子に腰掛けると、ルイズは当たり前のように俺の膝の上に乗ってきた。小さな尻の感触が心地いい。そこにギーシュの友人であるマリコルヌという少年が現れて、抗議の声をあげた。
「おい、ルイズ。食堂で使い魔とイチャイチャすんな。食事が不味くなる」
「な、なにヘンな目で見てるのよ。別にイチャイチャなんてしてないわよ」 
ルイズはギロッとマリコルヌを睨んだ。
「その状態がイチャイチャしてるってんだよ。別々の椅子に腰掛けろ」
俺はルイズを膝の上から降ろして立ち上がり、マリコルヌの胸倉をつかんだ。
「おい、ぽっちゃり、俺の主人に何か言ったか?」
 すぐにびびったマリコルヌは虚勢を捨て、首をぶんぶんと左右に振った。
「言った、けどいい。何でもない」
「だったら椅子を取ってこい。一緒に仲良く飯を食おうぜ」
 マリコルヌは自分の椅子を取りにいくために、走っていった。
 俺が元の椅子に座ると、ルイズは顔を赤らめながらも、再び俺の膝に乗った。
 そして朝食が始まると、ルイズは小さな声で恥ずかしそうに「食べさせて」と呟いた。俺は好奇に満ちた周囲の視線を無視し、ルイズの腰に片手を回して、フォークやスプーンで食事を口に運んでやった。 
  ★★★
 教室に入っていくと、ギーシュの恋人だというモンモランシーという女生徒が、俺とルイズの目の前に立ち塞がった。
「ねえルイズ、あなた、まさかと思うけど自分の使い魔とデキてんの?」
 腕を組んで、そう尋ねてくる。
「あんたには関係ないわよ」
「ふうん。私てっきり魔法のできないゼロのルイズが、みんなに馬鹿にされて寂しくなって、自分の使い魔である平民に手を出したんだと思ったんだけど」
 見事な巻き毛を揺らして、モンモランシーが嫌味ったらしく言った。
 ルイズは悔しそうに唇をきゅっと噛み締めたが、何も言わなかった。そんなルイズを見て俺は苛立ち、モンモランシーの制服の胸に手を伸ばすと、力任せに握り締めた。
「痛い! 痛いってば! この平民が、何すんのよ! 離しなさいよ、離して!」
 モンモランシーが叫ぶ。
「おいモンモン」
「モンモンですって? わたしはモンモランシーよ!」
「黙れよ、巻き毛。よくもまあ、俺のご主人様を侮辱してくれたな。今すぐここで謝れ。そうしねえと、この薄い贅肉の塊を握り潰した後で、一生どこにも嫁にいけねえ身体にしてやるぞ」
 モンモランシーは真っ青になり、すぐに謝罪の言葉を口にした。
「ごめんなさい、許してください。もう二度と生意気な口を利きませんから。だから離して」
 俺は手を離し、ついでに痛みにふら付くモンモランシーの足を払って床に転ばせた。
「きゃあ!」
 床に真正面から転んだモンモランシーは、鼻を真っ赤にして怒り狂った。
「何をするのよ! ちゃんと謝ったじゃない。なのに、平民のくせに貴族を転ばせるなんてどういうこと!」
「あんたが悪いんでしょ」
 ルイズが横から口を出す。モンモランシーは更に文句を言いたそうだったが、俺が睨み付けると、そそくさとその場を立ち去った。
「――もう駄目だからね」
モンモランシーが去った後で、ルイズが頬を膨らませ、拗ねた口調で言った。
「何が?」
「えっと、何ていうか、他の女の子の胸とか触ったするの」 
「他のって? じゃあ、お前の胸ならいいのかよ?」
「えっ? だ、だって、私の、小さいもん。き、きっと触っても面白くないもん」
ルイズは顔を赤らめて横を向いた。その薄い胸を俺はじっと見る。
「な、なに見てるのよ」
「いや、小さい胸ってのも可愛くて魅力的だぞ」
 ルイズの表情に笑みが差す。全く、こいつはコンプレックスの塊だな。
「ほんとに?」
「誓ってもいいぞ、その胸も含めてお前は可愛い。だからいいんだよな、好きな時にお前の胸を触っても」
「えっと、そ、それは――かかか、考えとく。でも、あ、ありがと」
ルイズは身体をもじもじとさせながら、困ったように俯いた。まあいいさ、お前が知らないだけで、俺はお前の裸は何度も見てるし、好きなように弄んでいるんだからな。例えお前が拒もうと、その気になればいくらでも嬲れる。そんな思いを隠して、俺は優しくルイズの髪を撫でてやった。
  ★★★
 その夜。そろそろ寝る時間となり、俺がいつもの癖でルイズの着替えを取ろうとクローゼットに向かうと、ルイズは手にシーツを握って立ち上がり、それを天井から吊り下げはじめた。そんな即席のカーテンでベッドの上を遮ると、ルイズはベッドから下りてクローゼットに向かい、眺める俺を尻目に、着替えを取り出して再びベッドの上に戻り、カーテンの中に入り込んだ。ごそごそと音がするところをみると、自分で着替えているようだ。
 やがてカーテンが外されると、ネグリジェ姿のルイズはベッドに横たわり、杖を振って机の上に置かれた魔法のランプの明かりを消した。なんてことない魔法だが、これでも高価なものらしい。窓から差し込む月明かりだけが部屋を照らすと、途端に幻想的な雰囲気になった。
 俺も寝ようと思い、藁の上に横たわろうとすると、もぞもぞとルイズがベッドの上から身を起こし、声をかけてくる。
「ねえ。きょ、今日からベッドで寝てもいいわ」
「急にどうした?」
 そう言うと、しばしの間があった。それから、言いにくそうにルイズが言った。
「べ、別に。い、いつまでも床っていうのも、か、可哀想だからよ。で、でも、勘違いしないでよね。ヘヘ、ヘンなことしたら殴るんだから」
 俺はルイズの好意を素直に受けることにした。ルイズは恥ずかしそうに背を向け、ベッドの端の方で毛布を被っている。俺は毛布の中に潜り込むと、そんなルイズの背中を抱き寄せた。
「ち、ちょっと。そういうのは駄目だって言ったじゃないの!」
途端にルイズが腕の中で暴れだした。慌てるルイズの声を無視して、俺はルイズの両胸に手を伸ばし、そっと触れる。同時に髪からのぞく柔らかな耳たぶを優しく甘噛みしてやった。
「昼間、いいって言ったじゃねえか。お前の胸を触りながら眠りたいんだ。それだけだから」
「そんな……許してないでしょ……あっ……か、考えておくって言っただけで……やん……」
「可愛いよ、ルイズ」
 その一言でルイズの身体から抵抗する力が抜けた。俺のなすがままになったルイズは、身体を震わせながらも、小さく荒い息を断続的に漏らし続ける。俺は首筋に舌を這わせ、ネグリジェの布越しに乳首を探り当てると、指の腹で何度も擦った。
「あっ、あっ……そんな……そんなことまでっ……ゆ、許してなんか……あんっ……」
 言いながらルイズはきゅっと毛布の端を握り締めた。日課となっている睡眠中のルイズへの悪戯で、性感帯は把握済だ。片方の乳首をくすぐるように触り、もう片方をちょっと強めに摘んでやると、ルイズはのけぞるようにして俺に身体を預けてきた。俺は耳の中へと舌を差し入れ、ねっとりと中を舐め上げてやる。
「あっ、やっ……ダメ……んんっ……こんな……あっ……ねぇ……ダメだってばぁ……」
 更に膝を曲げて脚を割り、太腿をルイズの股間に押し付けて前後に動かす。ネグリジェの背中を捲くり上げ、後ろから回した手で両の乳首へ直接愛撫を続けながら、背筋に沿って舌を這わせる。と、ルイズの喘ぎが一層大きくなった。
「こんな、こんなぁ……私ぃ……貴族なのにぃ……ああっ……こんなこと……はあっ……許されないのにいっ……やぁん……んあっ……ねぇ……あっ……ああっ……ダメぇ……」、
 すすり泣くように声を上げながらも、ルイズが抵抗することはない。俺の行為を受け入れているというより、快楽で力が入らないのだろう。平常心に戻った時のことを考えると不安になるが、このまま絶頂に導いてやれば、恥かしくて何も言えなくなるに違いない。そう考えた俺は一層激しく小さな身体を貪り続けた。
「嘘つきぃ……やんっ……嘘つきぃ……うぅん……こんなぁ……やぁん……ダメぇ……結婚っ……あふっ……できなくなっちゃうぅ……あぁ……ああっ……ダメなのぉ……」
可憐な乳首の勃起と太腿に触れた部分の湿り具合とを確かめながら、頃合を見て、俺はルイズの耳元で囁いた。
「俺がお前のことを貰ってやる。可愛いよ、ルイズ」
その言葉がルイズの、おそらく意識がある状態での初めての絶頂の引き金となった。
  ★★★
 ルイズの乱れた服と髪を整えてやった後で、俺たちはベッドに並んで横になった。ルイズは恥ずかしそうに毛布の中で身体を丸めながらも、俺の手を握って放さない。その感触を確かめるように、絶え間なく指先を動かしている。
「ごめんな。何か勢いついちゃって」
「――ばか」
 予想通り、ルイズがそれ以上俺の行為を責めることはなかった。予想以上の扱い易さだ。貴族が皆こうならば、アンリエッタやキュルケ、あの巻き毛のモンモランシーも容易く思い通りに出来そうだ。
「もうしないから」
「え? あああ、当たり前じゃないの」
 ルイズの声に失望が混じっているのを俺は見逃さない。
「訂正。しないように努力はするから」
俺が言うと、ルイズは真っ赤になりながら言葉を紡ぐ。
「そ、そうよ。努力して」
それからルイズは俺をじっと見つめ、決心したように口を開いた。
「私、あんたに謝らなきゃ。――ごめんね、勝手に召喚したりして」
「いいよ。魔法使いが使い魔を得るのは当たり前のことなんだろ?」
「――小さい頃から、私、駄目だって言われてた。お父さまも、お母さまも、私には何にも期待してない。クラスメイトにもバカにされて。ゼロゼロって言われて……。私、ほんとに才能ないんだわ。魔法唱えても失敗ばかりだし、ぎこちないの。自分で判ってるの。やっとのことで召喚を成功させても、あんたに迷惑かけちゃってるし」
 ルイズの声が次第に小さくなる。言いながら落ち込んでいるようだ。俺は黙ったまま手を伸ばし、桃色がかったブロンドの髪を優しく撫で付けてやる。
「――ほんとに、約束してくれる?」
「何を?」
「さっき言ってくれたこと。あの、わ、私のこと、その、貰ってくれるって」
「約束するよ」
「じじじ、じゃあ、時々なら。あの、さっきみたいなこと、してもいいよ。でも時々。いつもじゃなくって、ほんとに時々だからね」
 言ってルイズは身体を伸ばし、俺の唇に出会った時のようなキスをした。
  ★★★
 うっすらと開いた小さな桃色の唇の隙間から、寝息が漏れている。俺はそんなルイズを見ながらベッドを抜け出し、部屋の隅に置かれたチェストから小瓶を取り出した。中身は例の睡眠薬とは別の、催淫薬とでも言うべき強力な薬だ。
 先日、薬の効果時間に疑問を感じた俺はギーシュを呼び出し、改めて薬の用法についての説明を受けていた。前回のようにルイズが途中で目を覚ますのを恐れたからだ。連日使用を続けると効果が弱まること、また、ルイズが俺の指示通りに精液を飲んだように、若干の催眠効果があることなどを聞き出した俺は、ギーシュにもっと強力な催眠効果があり、連日使っても耐性に影響が出ることのない薬を用意できないか尋ねてみた。強く脅したせいか、ギーシュは翌日には俺の希望通りの薬を用意してくれた。ありがたいことに性感が高まる効果も付与されている即効性の薬だという。聞けば、本来違法であるそれらの薬は全て恋人であるモンモランシーが趣味で調合しているとのことだった。朗報だ、と俺はギーシュを褒めてやった。これで今後、ギーシュを通してある程度希望通りの薬を得ることが出来る。場合によっては違法の薬を作っているということでモンモランシーを脅し、犯した上で直接言うことを聞かせてもいい。ギーシュの話ではモンモランシーはまだ処女だった。
 取り敢えず今夜はその新薬の効果をルイズで試すつもりだった。就寝前、ルイズが自分からキスをしてきた時、その流れに乗ってルイズを犯すことは多分可能だったが、そうしなかったのはこのためだ。それに、散々嬲った後での合意の上の初体験というのも趣があっていい。
 俺は小瓶の蓋のコルクを外し、これもギーシュに用意させたガラス製のスポイトを使って、中の液体を数滴、ルイズの口の中に注意深く落とした。
 ルイズの喉がコクンと小さく鳴ったのを確かめ、ゆっくりと指を折って数を数え始める。六百まで数えたところで毛布を剥いでルイズの足を開き、そこに顔を埋めていきなり秘所を舌で舐ると、すぐにルイズの口からかすれた声が漏れ出した。
「あっ……あぁっ……うっ……あぁん……ん、んん……」
 適当なところで俺は行為を中断し、今度はクリトリスを指先で擦り上げながら、ルイズの耳元に口を寄せて囁く。
「ルイズ、起きろ。目を開けろ」
「ふあっ……あふっ……んぁっ……あん……あぁん……んっんっ……あはぁぁ……」
次第に激しく喘ぎながらも、ルイズは俺の言葉通りに目を開けた。薄明かりの中、その瞳を確かめると焦点が合っていない。ギーシュの話ではこれが催眠時特有の状態だという。俺は陰核を擦る速度を上げながら、再び耳元で囁く。
「ルイズ、言ってみろ。オマンコ気持ちいいって。ほら、オマンコ気持ちいいって言ってみろ」
「あああっ……んあっ……お、オマン……あっ……んんっ……オマ、ンコ……あうっ……」
「オマンコ気持ちいい、だ。繰り返して言ってみろ、ほら」
「オマン、コ……あん……オマンコ……ふぁっああ……オマンコ、気持ちいい……」
 俺は満足してルイズに口付けた。口中に薬が残っている可能性を考え、舌を入れるのは我慢する。これで即効性と催眠効果が確認できた。性感については俺の指先が次第に汁塗れになっていることからして間違いない。普段のルイズはこの程度の愛撫ではここまで濡れないし、何より自分から腰を持ち上げて俺の指に股間を擦り付けてくることもない。クリトリスもいつも以上に勃起している。手を伸ばして確かめると、それまで触れていなかった乳首もピンとそそり立っていた。
 俺は身体を起こしてルイズのネグリジェを手早く脱がせると、自分も全裸になってルイズの顔を跨ぎ、鼻先に陰茎を近づけた。そうしながら片手は薄い乳房へ、もう片方の手は再びクリトリスへ伸ばす。
「ああん、オマンコ……オマンコ気持ちいい……オマンコ気持ちいいっ……気持ちいい、んんっ、オマンコぉ……んああん、オマンコ気持ちいい……」
「よし、ルイズ。今度は鼻先のチンポの匂いを深く嗅ぎながら、それを舐めろ」 
 途端にルイズは犬のようにフンフンと鼻を引きつかせながら、子猫が皿のミルクを飲むように、小さな舌を出してチロチロと陰茎を舐め始める。
「舐めながら繰り返せ。臭いチンポ美味しいって。言ってみろ、言え」
「ん、くひゃいヒンポおいひい……あふっ……くしゃいシンポほぉいしいっ……ふんあっ……」
 乳房と陰部を愛撫されながら、ルイズは陰茎の臭いを嗅ぎ、舐める。その苦しそうな表情に俺はどんどん昂ぶってゆく。
「おいしひ……あああっ……く、臭い……臭いチンポ……うんっ……臭いチンプぉぉ……」
「出すぞ、口を開けろ!」
 言葉通りにルイズは口を開く。その状態でも自ら頭を起こして鼻を陰茎に擦り付け、貪欲に臭いを嗅いでいるのには少々驚いた。催眠効果の強力さの証明だろう。でなければ淫乱の素質があるのか。何にせよ、この薬だけでも色々と使い道がありそうだ。
 開いた口に陰茎を差し入れると、既に前回しゃぶらせていた効果か、命令もしていないのにルイズは舌で舐め上げてくる。稚拙な舌使いを楽しみながら俺はそのまま射精し、精液を飲み干させた後、精液にまみれた一物の後始末を口でするよう、ルイズに指示を出した。
  ★★★
 数日後の夕方、俺は風呂の用意をしていた。
 トリステイン魔法学院に風呂はふたつある。大理石でできた貴族用のものと、学院内で働く平民用の粗末なものだ。当然ルイズは貴族用で、俺は平民用だ。そのこと事体に不満はなかったが、好きな時間に入れるわけではなく、当たり前だが混浴も許されない。好きな時に適当な女に例の薬を飲ませて身体を洗わせるためには、自分専用の風呂を用意するしかない。
そこで俺はマルトー親父に頼み込み、古い大釜を一つ貰い、それを学院の外れにある使われていない物置に設置して、五右衛門風呂として使えるようにした。床には艶やかな板を敷き、木製の凹型風呂用椅子も作った。照明器具はないが、夜でも月明かりが程よく差し込んでくる。というのも、この魔法世界には月がふたつあるからだ。
 もちろん、この場所に人があまり来ないことは事前に調査済である。女生徒数人に薬を飲ませ、ハーレムプレイをして嬌声をあげても気付かれることはないだろう。
 とは言っても今日この場所にいるのは俺一人だ。まずはちゃんと風呂として使えるか確認しなければならない。
湯が沸いたのを確認すると俺は服を脱ぎ捨てて全裸になり、大釜の底板へと足を伸ばした。と、そこで入り口の扉が僅かに開き、誰かが中を伺っていることに気付いた。
「誰だ!」 
 全裸のまま仁王立ちになって誰何すると、扉の向こうからメイドのシエスタが姿を見せた。仕事が終わったばかりなのか、いつものメイド服だったが、頭のカチューシャを外していた。顔を両手で覆ってはいるものの、指の間から俺を見ていることはすぐに判った。
「覗いてたのか?」
「いえ、その、そういうわけじゃ! あ! あのっ! その! あれです! コック長から貰った大釜を何に使うのかなって、あの、気になって!」
 しどろもどろの答えが返ってくる。俺は苦笑しながらも、この状況を楽しむことにした。
「いいけどさ、別に見ても。ほら、その手を下ろして」
 言って少しだけ腰を前に突き出し、股間を見せ付けるようにすると、シエスタは素直に両手を下ろし、呆けたような表情で俺のそこを見つめ始めた。
「もちろん――」
 言いかけると、我に返ったのか、シエスタは身体をビクっと震わせた。怯えた表情で数歩後ずさり、視線を俺の顔へと向けてくる。
「――シエスタも見せてくれるんだよね?」
問いかけにシエスタは目を丸くし、次いで恥ずかしそうにもじもじしていたが、やがて唇を軽く噛んだ後、決心したように口を開いた。
「判りました。私なんかの裸でよければ、好きなだけ見てください。――じゃあ、脱ぎます」
 大人しそうに見えるが、一旦決めると大胆になるタイプらしい。ぽんぽんブラウスのボタンやスカートのホックをはずしていく。気持ちのいい脱ぎっぷりだ。コルセットを外し、ドロワーズを脱ぐと、身体を隠すこともなく俺の正面に立った。
 全裸になったシエスタは肉感的でありながら可愛らしかった。全体的な身体つきはふっくらとしているものの、太っているという印象ではなく、細身の身体でありながら胸と腰のボリュームを増しただけという感じだ。着痩せするらしく、乳房は思いのほか大きく左右対称で綺麗な形をしている。薄桃色の乳首は控えめな大きさであり、既に少し勃起しているようだ。尻は少し大きく感じられるものの、胸と同じく形が綺麗で張りがあり、股間は細く艶やかな陰毛に薄く覆われている。何より髪も含めて毛が黒いという事実が親近感を与えてくれる。ルイズとは違う、野に咲く可憐な花の魅力がある。
 そんなシエスタの身体を眺めて陰茎が硬くなるのは自然現象だろう。そんな部分を、服を脱いでからのシエスタは恥じることもなく好奇心に満ちた目で見つめている。息を荒くしながら太腿を擦り合わせているのは、俺の裸を見て興奮しているせいか、それとも自分の裸を見られて興奮しているせいか。どちらにしても被虐的な嗜好があるのは間違いない。快楽を教え込んでやれば、いいマゾ奴隷になりそうだ。俺は頭の中でシエスタを恋愛対象から奴隷対象へと切り替えた。
 沸いた湯から立ち上る湯気のおかげで、物置の中は暖かく、かといって白く立ち込めて視界を遮るというほどでもない。この状況ならば風呂に入って暖を取らなくても、まだ暫くは全裸のままで大丈夫だろう。俺はそう判断し、シエスタに声をかけた。
「触ってみる?」
「あ、はい。――って、ええっ?」
 驚いたことで再び素に戻ったのか、シエスタは手で胸と股間を隠し、身をよじらせてその場に座り込んだ。瞳を震わせながら真意を探るかのように俺を見上げてくる。
「このままだと俺、苦しいんだよね。シエスタが手伝ってくれたら助かるんだけど」
 苦しいというのはもちろん嘘だ。普段からルイズを使って性欲処理をしているおかげで、それほど切羽詰った状況にはなっていない。だがシエスタの性格ならば、こんな嘆願には弱い筈だ。そう考えての台詞である。
「苦しいって、そんな。あの、お手伝いって、何を?」
予想通りの返事に、自然に口の端が引きつりそうになる。いかんいかん、ここは真顔だ。
「シエスタがこれを手で擦ってくれたら嬉しいな」
「ええっ? わ、私が、それを……て、手で?」
「頼むよ」
 苦しげな表情を装いながら言うと、シエスタは陰茎をじっと見つめながらゴクンと生唾を飲んで立ち上がり、俺の正面に来ると、恐る恐るそこに触れた。指先の感触が心地いい。
「こう、ですか?」
「そうじゃなくて、ちょっとここに座って」
 俺はシエスタの腰に触れてその場に正座させてから、凹型風呂用椅子を正面へと置いてそこに座り、足を開いてシエスタの眼前に陰茎を突き出した。
「この状態で擦って欲しいんだ。握って上下に」
「わ、判りました」
 シエスタは明らかに目の前に出された一物を恐れていたが、健気に再度手を伸ばしてそれに触れ、俺の言ったように扱き始めた。俺はこの先の展開を考え、念のために尋ねてみた。
「シエスタは男性との経験があるのかな?」
「そんな! ありません、私。キスだって、まだ……」
「じゃあ、こんなこと頼んで悪かったかな?」
「い、いえ。その、覗いていたのは私ですし。それに、こ、こういうことに全く興味がないという、その、わけでもなくて」
「ありがとう、シエスタ。他の誰でもなく、シエスタに手伝って貰えて嬉しいよ」
「そ、そんな、私なんか。でも、そんなふうに言って貰えて嬉しいです。だから、あの、こういうこと初めてなので、その、至らない点とかあったら教えてくださいね」
 申し出通り、そのまま奉仕させながら、握る強さ、力の入れ方などを教えていると、シエスタの息が荒くなってきた。先刻までと同じように太腿を擦り合わせ、目も虚ろになってきている。これだけ興奮していれば大丈夫だろう。
「もう少し協力してもらってもいいかな?」
 俺の言葉にシエスタは動きを止め、困惑の表情を浮かべて俺を見上げた。多分、セックスさせろと言われるとでも思ったのだろう。俺は安心させるために偽りの笑みを作ると、椅子から降りてシエスタを抱き締めた。シエスタは身体を硬直させながらも、深く息を吐き、俺の背中に手を回してくる。
「大丈夫、シエスタの初めてを奪ったりしないから」
「えっと、じゃあ、私は、何を?」
「この先は俺が自分でやるから、可愛いシエスタの身体をもっとよく見せて欲しいんだ」
言って顎を持ち上げ唇を奪うと、腕の中のシエスタの身体から力が抜けていく。
「――どうすればいいのか、仰って下さい」
唇を離した後、シエスタは虚ろな瞳で、そう言った。
  ★★★
「こんな……こんなぁ……恥ずかしいです……許してください……ああ……許してぇ……」
 懇願するシエスタの切なげな声が心地いい。シエスタを四つん這いにさせ、陰茎を扱きながら、亀頭で身体のあちこちをなぞり始めて数十分。既にシエスタの顔も乳首も尻も腋の下も、俺の先走り汁が充分に塗りつけられている。
 予想通りシエスタにはマゾの気質があるらしく、当初、わざと大きな音を立てて陰部の臭いを嗅いでやると、触れてもいないのに濡れ始め、そのことを指摘すると更に濡れ、今では白い粘着質の愛液に塗れている。何より許しを請いながらも、決して自ら姿勢を変えようとはしない。足を大きく開き、湿った陰毛も薄く色素を帯びた尻穴も、そして殆ど剥き出しになったぷっくらとした陰核も全てさらけ出したまま、従順に俺の行為を受け入れている。正直、薬も使わずにここまでのことが出来るとは思わなかった。間違いなく真性だろう。
「もう少しだから我慢して。今度はここに当てるよ、丸見えのお尻の穴に」
 尻穴に亀頭を擦り付ける度に、シエスタは悩ましげに腰を左右に揺らす。
「そんなぁ……あふっ……丸見えなんてぇ……ああっ……い、言わないでくださぁい……」
「全部見えてるよ。お尻だけじゃなく、シエスタの恥ずかしい毛も、濡れているオマンコも」
「嫌っ……そんな言葉ぁ……あああっ……言わないでぇ……そんな……恥ずかしいですぅ……私……私そんなぁ……ううっ……ああああっ……」
「もっと素直になって。ほら、ここはどう? 気持ちいい?」
 今度は亀頭を秘所に押し当て、誤って挿入しないよう注意しながら、愛液をすくい上げるようにワレメに沿って上下に動かしてやる。妊娠させてしまう可能性もあったが、その時にはモンモランシーに中絶薬でも作らせればいいだけの話だ。
「そこはぁ……ああああっ……そこは駄目ですぅ……しないって……あっあっ……しないって言ったのにぃ……見るだけだってぇ……ふああっ……駄目ぇ……お願いですぅ……」
 言葉とは裏腹に、シエスタのそこからはどんどん愛液が溢れてくる。ぬめりの心地良さに俺の息も荒くなる。そろそろ限界だ。
「このまま入れたりしないから大丈夫。だから言ってごらん、自分が今、何をされてるのか」
「あふうっ……そんなぁ……無理ですぅ……ふああっ……言えませんっ……」
「言ってくれなきゃ、この状態がずっと続くよ? それともその方がいいのかな?」
 挿入一歩手間とといったところまで亀頭を押し付けて陰茎を扱き、更にクリトリスを指先で強めに何度も弾く。
「あうあああっ……それ駄目っ……嫌っ……入っちゃう……んんんあっ……嫌ぁ……はううん……あううっ……言いますっ……あっあっあっ……言いますからあっ……」
「じゃあ言って。自分が今、何をされてるのか。はっきりと」
「ああん……私はぁ……ふううん……あそこをっ……ああ、ああっ……あそこでぇ……」
「それじゃ駄目。仕方ないな、俺の言う通り言ってごらん。シエスタはオマンコを、ほら」
「あふっ、ああ……シ、シエスタはぁ……んっんっ……オマンコをっ……ふああん……」
「チンポで擦られて感じてます、ほら」
「チンポ、あふっ……チンポでぇ……ああっ、ふあっ……こ、擦られてぇ……うふんっ……感じてますぅ……あぁ、あああっ……」
「続けて言って。シエスタはオマンコをチンポで擦られて感じてます、ほら」
「んああっ……シエスタはぁ、オマンコをぉ……あう、あふっ……チンポでこす、擦られてぇ……はああん……感じてますう……感じてるのぉ……チンポでぇ……オマンコがぁ」
 その言葉に限界を向かえた俺が立ち上がってシエスタの背中と尻に精液をぶちまけた瞬間、シエスタは身体を大きく震わせて意味不明の言葉を叫びながら失禁し、そのまま崩れ落ちて失神した。
   ★★★
「うう、恥ずかしいです」
 俺の前にちょこんと座ってお湯に浸かっているシエスタが、腕で身体を隠して呟く。意識を取り戻した直後は朦朧としていて心配したのだが、身体を洗ってやっているうちに正気に戻ったらしく、一緒に大釜の風呂に入っている今では当初の羞恥心をも取り戻したようだ。
「意地悪です、あんな」
 そう言って頬を膨らませたシエスタはとても可愛らしく、俺は手を伸ばして自分の方へと恥らう身体を引き寄せた。シエスタも拒むことなくもたれかかり、手をそっと俺の胸へと当ててくる。素朴な仕草だが、それがまた愛らしい
「全部見られちゃったんですよね、私。その上あんなことまで」
「あんなことってエッチな言葉? それともオシッコ?」
「――ほんとに、意地悪です」
言いながらも思い出して興奮したのか、シエスタが身体を摺り寄せてくる。
「残念だな。シエスタとなら、もっと人に言えないようなことしたいと思ってたのに」
 その言葉に何を想像したのか、シエスタの口から喘ぎ声にも似た吐息が漏れる。
「ああっ、私は、別に、嫌だなんて」
「いいの? もっと恥ずかしいこととされちゃうんだよ?」
「どんな、んあっ、どんなことぉ、はぁん、どんなことをされちゃうんですかぁ?」
 シエスタの息が荒くなり、言葉の端々にどんどん官能的な呻きが混じる。互いに裸でいるために興奮し易いのかもしれない。俺は抱き寄せたシエスタの尻を撫でながら、耳元で囁いた。
「もっとエッチな言葉を強要されたり、汚れたチンポを舐めさせられたり」
「あんっ、そんなぁ、そんなことさせられたら、私ぃ、んあっ」
「下着つけるのを禁止されたり、尻の穴を舐めさせられたり、縛られて尻を叩かれたり」
「はあああんっ、そんなぁ、酷いですぅ、そんなぁ、んああっ、そんなぁ」
「もちろん、オマンコやお尻の穴にチンポを入れられちゃうんだよ。シエスタが嫌がっても強引に犯されて何度も何度も精液を注がれるんだ。他にも、街中でチンポ舐めさせられたり、オマンコの中でオシッコされたり。もう人間扱いしてもらえないんだ。奴隷のように、っていうか、もうトイレだね。シエスタは精液専用のトイレにされちゃうんだ」
「酷いぃ……酷いですぅ……トイレ、ああっ……私、トイレにぃ……専用のおトイレにぃ……そんなぁ……されちゃうぅ……犯されてぇ……されちゃうのぉ……させられちゃうのぉ……」
 正に真性マゾ。どうやらこんな言葉だけでも達してしまうらしい。止めとばかりに俺はシエスタの両乳首に手を伸ばして捻り上げ、同時に耳元で吐き捨てるように言ってやった。
「この、変態」
「あっ、ああっ、ああああああああっ!」
 それがその日二度目のシエスタの絶頂となった。
   ★★★
 風呂から部屋に戻ると、既にルイズはベッドの上で寝息を立てていた。その寝顔を見ながら考えた末、今日はそのまま寝かせておくことにした。予定外のシエスタとの濃厚な行為で疲れていたせいだ。明日、ギーシュに精力剤の入手を命じておくべきかもしれない。今後のことを考えるとローションと避妊具、縄やその他の道具も必要だろう。
 藁の上に寝転んでそんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえた。起き上がって扉を開けると、メガネをかけた幼い少女が立っている。聞くと、タバサというその少女はキュルケの友人で、キュルケが部屋で呼んでいるので来て欲しい、とのことだった。
 言われて俺は、目の前の少女に見覚えのあることを思い出した。確かにキュルケと一緒にいるのを何度か見た記憶がある。しかしキュルケの部屋はすぐそこなのに、何で代理人を寄こすのだろう? 俺はルイズを起こさないよう小声で、そのことをタバサに尋ねてみた。
「嫌いだから」
 簡素な答えに俺は首を捻ったが、続けて何度かタバサに質問して漸く意味が理解できた。つまり、キュルケとルイズは互いのことを嫌っているので、ここに来辛いキュルケがタバサに俺を呼ぶよう頼んだらしい。成る程、言われてみれば納得できる話だ。ちなみに、話ついでに聞いたところでは、タバサは十二歳、キュルケは十五歳とのことだった。同じ授業を受けながらも年齢や能力がバラバラなのは、本人の実力だけでなく家柄や学院への寄付額などを加味した上で、入学時に学年が決められるかららしい。
 廊下に出ると、タバサはキュルケの部屋とは別の方向へ歩き出した。てっきり一緒に来るものだと思っていた俺は思わず問いかけた。
「どこ行くんだ?」
「自分の部屋」
 振り向いてタバサが答える。
「何でだよ? 一緒に来ないのか?」
「寝る」
 淡々とした言葉に俺は苦笑しながら、タバサの前に屈み込んで、その青みがかった短い髪をそっと撫でた。
「確かにもう遅い時間だもんな。わざわざ呼びに来てくれてありがとな、タバサちゃん」
 タバサはされるがまま、青い瞳で不思議そうに俺を見ている。
「ちゃんはいらない」
「え?」
「タバサでいい」
 そう言うとタバサは俺に背中を向けて歩き出した。
   ★★★
 キュルケの部屋は前回と同じように暗かったが、既に蝋燭に火が灯されていた。濃密な香りが立ち込め、怪しげな空気に満ちている。どうやら香のようなものを焚いているらしい。
躊躇しながらも中に一歩踏み込んだ瞬間、俺は横合いから抱きすくめられた。見ると、全裸のキュルケだった。大振りな乳房で俺の二の腕を挟みこんでいる。
「ああん、ダーリン、待ってたのよぉ」
 言いながらキュルケは片腕を解いて扉を閉め、素早く鍵をかけた。
 もしかしたらタバサはこういう展開を知ってて部屋に戻ったんじゃないかと思いつつ、俺はキュルケに尋ねる。
「何で裸なんだよ?」
 するとキュルケは懸命に身体を押し付け、足元のふらついた俺をベッドの上に押し倒すと、その上に覆い被さりながら言った。
「あたし、知ってるんだから。さっきまで平民の娘といっしょにお風呂に入ってたこと。モンモラシーの胸を触ったことも、姫様にキスしたことも。あたしを無視するなんて許せない」
 言いながらキュルケは俺の服の内側へ手を潜り込ませて弄り始める。
「それにあの娘、ルイズにも何かしてるんでしょ? 最近のあの娘、男の人のアレの臭いがするもの。もう奪っちゃったの? ううん、それでもいいわ。あたしのことも奪って欲しいの。これでもまだ、誰にも最後まで許したことないんだからぁ」
 てっきりキュルケは非処女だと思っていた俺は少なからず驚いた。途中まで経験済というのは納得だが。――最後までって、尻穴のことじゃないよな? フィストファックとか。
「何であたしには何もしてくれないの? 好きにしてくれていいから、あたしとしましょ?」
 ありがたい申し出だが、前回部屋に呼ばれた時とは事情が異なっている。俺の性欲にも限界があのだ、定期的に相手をしなければならないレギュラーの席はそれほど多くない。現時点で確定なのはルイズとシエスタとして、可能ならアンリエッタをそこに加えたいし、薬のことを考えればモンモランシーも候補の一人だ。何より例の薬があれば好きな時に好きな相手と出来るのだ。今ここでキュルケを抱くのは簡単だが、後々のことを考えると手を出すべきか、出さざるべきか。
 その刹那、轟音を立てて部屋の入り口が爆発した。
   ★★★
「もうちょっとマシな方法なかったのかよ?」
「扉の鍵を魔法で開けようとしただけだもん。わざとじゃないもん」
 ルイズは拗ねた口調で言うと、頬を膨らませて俺を睨んだ。
 予想通りというべきか、キュルケの部屋の扉を爆破したのはルイズだった。ネグリジェ姿で部屋に入ってきた煤塗れのルイズは、同じように煤だらけの俺とキュルケの姿を見ながらも一言も発せず、俺の上に乗っていたキュルケをベッドの下に蹴り落とすと、力強く俺の腕を取ってそのまま自分の部屋へと引き立てた。
 ――そして現在、俺は湿らせた布でルイズの顔や腕についた煤を拭っている。
「でもよく判ったな、俺があの部屋にいたこと」 
「おトイレに行こうとして廊下に出たら、変な臭いがしたから何だろうと思っただけよ」
ルイズの言う変な臭いとは香のことだろう。演出に凝るのも考えもんだ。しかしこいつは疑問を感じただけで結果的にドアを爆散させるのか。勘の良さも恐ろしい。今後は更に対応に気をつけよう。
「それより、夕方からあんたの姿を見かけなかったけど、ずっとあの女の部屋にいたの?」
 俺は慌てて、昼過ぎからずっと風呂を作っていたこと、キュルケの部屋には数刻前にタバサを介して呼び出され、強引に迫られたことなどを説明し、もし時間について疑うならタバサに確認して欲しいと話した。当然、シエスタとのことは伏せてある。 
「まぁ、信じるわ。どう見てもあんた、襲われてる状態っぽかったし。でも二度と呼び出されても行っちゃ駄目よ? 判った?」
「はい」
 俺は神妙に頷いた。俺としてもキュルケを先々どうするか決めるまでは、近づくつもりはなかった。あの積極性だ、対処を間違えば薮蛇になりかねない。
俺の返事が気に入ったのか、ルイズの顔から険しさが消えた。素肌に当てられた布に、くすぐったそうな笑みを浮かべる。
「まだ結構汚れてんな。俺の作った風呂、一緒に入るか?」
学院の風呂は既に使用可能時刻を過ぎていたが、自前の風呂なら時間は自由だ。
「そそっ、そんなこと、出来るわけないでしょ。ままま、全く、馬鹿なんだから」
「でも、そのうち一緒に入ろうな」
「ななな、何を言ってんのよッ! そんな、ゆ、許されないわ、許されないんだからッ!」 
尚も頬を染めて文句を言うルイズを見て俺は笑った。演技でなく、自然に笑ってしまった。
   ★★★
 数日後の午後。
 俺は部屋の掃除をしていた。箒で床を掃き、机を雑巾で磨く。最近、優しくなったルイズが洗濯や身の回りの世話を自分でやるようになったので、俺の仕事といえば掃除ぐらいだ。
もともとルイズの部屋にはあまり物がない。クローゼットの隣には引き出しのついた小机。水差しの載った丸い小さな木のテーブルに椅子が二脚、今では俺専用になったチェスト、そしてベッドと本棚ぐらいなものである。
 掃除はあっという間に終わってしまった。さて、ルイズのいる教室へ行って一緒に授業でも受けるか、と考えたところで扉がノックされた。
「開いてるよ」
言うと、扉ががちゃりと開いて、シエスタがひょっこり顔を見せた。
「き、来ちゃいました」
 いつものメイド服姿で、もじもじしながら部屋に入ってくる。真っ赤な頬を見ると、既に発情しているのかもしれない。予定外の訪問に、参ったな、と俺は思った。まさかこの時間にこの部屋でシエスタと行為に耽るわけにもいくまい。将来的にはアリだが、現時点では危険度が高過ぎる。勘のいいルイズが戻ってきたりしたら修羅場と化すのは目に見えている。
「どうしたの、何かあった?」
 俺は努めて平静に、且つ親しみを込めて尋ねた。突然の訪問を強くなじったりしたら、この真性は更に興奮する可能性があったからだ。
「あのですね、このところ、厨房にいらっしゃらないじゃないですか。だから心配で……」
 俺は頷いた。ここ何日かはルイズと喧嘩ひとつすることもなく、食事を抜かれることもなかったので、厨房への足が遠退いていたのだ。
「待遇が改善されたんで行く機会がなかっただけだよ。食事はともかく、また顔を出すよ」
「ほんとですか?」
 シエスタの顔が輝いた。胸の前で両手を合わせ、身を乗り出してくる。その仕草がなんだかとても可愛らしくて、俺は胸が熱くなった。
「うん、約束するよ。俺だってシエスタの顔、毎日見たいしね」
「そんな、私のこと、見たいだなんて――」
 シエスタがブルっと身体を震わせ、うっとりした目で見つめてくる。どうやら俺はモード変更のスイッチを押してしまったらしい。
「――家を出る時、母さまに言われました。これと決めた男の方以外に、肌を見せてはいけませんよって」
 シエスタはそっと手を伸ばして、俺の手を握り締めた。
「ですから私、お風呂場で、覚悟を決めてお見せしたんです。誰の前でも大胆になるわけじゃありません。だから――」
 徐々に息を弾ませながら、シエスタがにじり寄って来る。
「――見たいって仰ってくだされば、いつでも」
「ちょっ、ちょっと待って」
「安心してください。責任取れなんて言いませんから」
 言ってシエスタはスカートの裾を両手で摘むと、ゆっくりとそれを捲り上げた。驚いたことに下着はつけておらず、むき出しの下半身が露になる。この部屋に来た時点で発情していた原因は、どうやらこれらしい。見ている間にもどんどん息が荒くなり、スカートの中からの柔らかな体臭の密度が増してくる。なんでこんな性格の子が未だに処女なんだろう。厨房の男共は揃って不能なんだろうか? いや、そんなことよりこの状況をどうにかしなければ。
 俺は腹を括った。こうなってしまったシエスタを素に戻すのは難しい。ならばルイズが戻ってくる前にシエスタを絶頂させ、満足させて追い返す。前回のように失神したら廊下に放り出してから看病の真似事でもする。これしか道はなさそうだ。
 俺は部屋の扉が閉まっていることを確認し、念のために鍵をかけ、シエスタの下半身の前に胡坐をかいて座ると、鼻先を陰部に近づけ、意地悪く尋ねた。
「何で下着つけてないのかな? 学院中の男に見せて歩いてたの?」
「ち、違いますぅ、あっ、ぜ、全部ぅ、んっ、間違って全部ぅ、洗濯しちゃってぇ、私ぃ、見せて歩くなんてぇ、んぁ、そんな女じゃあ、あぁ、ないですぅ」
「本当のことを言わないと、俺、外に出かけちゃうよ?」
「はぁん、ごめんなさいぃ、ああっ、本当はぁ、んあっ、ここに来る前にぃ、あふっ、脱いできましたぁ、はぁん、いつでも、いつでもお見せできるようにぃ」
「そうじゃないだろ? 俺が見たいとか関係なく、シエスタが俺に見せたいんだろ?」
「あああっ、そ、そうですぅ、あふうっ、私がぁ、んんんっ、本当は私がぁ、あふんっ、見せたい、見せたかったんですぅ、んああっ、私がぁ、くうんっ、見せたかったのぉ」
「そうだよな。シエスタはオマンコを見せて、俺に臭いを嗅いで欲しかったんだよな?」
 言ってシエスタの股間に顔を埋め、深く臭いを吸い込むと、シエスタは足を大きく開き、俺の鼻に陰部を押し付けて腰を振るわせた。更に俺の頭を両手で掴み、自分の恥ずかしい場所へと強く押し当てる。
「あふんっ……嗅がれてるぅ……ああんっ……私のぉ……ひああっ……自分からぁ……あっあっあっ……見せてぇ……嗅がれてますぅ……ふああっ……臭いがぁ……私の臭いがぁ……」
 この分なら程なく達しそうだな、と俺が考えた時、かちゃりという金属音と共にルイズがドアを開けて入ってきた。
「あんたなんで鍵なんか――――って、こここ、この、いいい、犬――――――ッ!」
「あふああああああぁんっ!」
ルイズの叫びに合わせたようにシエスタは絶頂した。正に絶妙のタイミングだった。
   ★★★
「何してたの、あんた?」
 ルイズが床に引き倒した俺の顔を靴底で踏み付けながら聞いてくる。シエスタの姿は既にない。ルイズを見ると、快楽の余韻に足元をふらつかせながらも、そそくさと部屋を出て行ってしまったからだ。よって今は俺とルイズの二人きり。せめて靴を脱いでくれたらルイズの足の匂いを楽しむことができるのだが、流石にそれを言い出すだけの余裕は俺になかった。
「話しぇば長ふなっへ。しょの、スハーホのほちゅれをだにゃ」
 顔を踏まれているせいで、明瞭な言葉が出てこない。
「いいわけはいいのよ。な・に・し・て・た・の・か、って聞いてんよッ!」
 グリグリと踏み躙られ、頬が歪む。非常に痛い。現場を見られた以上、誤魔化すのは難しそうで、何より早くこの痛みから逃れたいと思った俺は、正直に答えることにした。
「いんひゅうふれい」
 ルイズは怪訝そうに眉を寄せ、俺の顔から足を下ろした。
「聞き取れなかったわ。もう一度言いなさい」
「淫臭プレイ。あ、露出プレイも込みか」
「聞いたことない言葉ね。説明して」
 言われた通り、俺は細やかに説明を始めた。ルイズは顔を赤らめ、次いで眉を吊り上げ、最後に身体を震わせながら俺を思い切り蹴り上げた。
「ひひひ、人の部屋を! ききき、貴族の部屋をなんだと思ってるのよ! この変態!」
 ルイズは蔑みの言葉をあげながら何度も何度も俺を蹴り付けた。十三歳の美少女に変態と罵られるのは心地良いが、身体は悲鳴を上げている。俺は痛みに耐えながら、謝罪の言葉を繰り返した。
「ごめん、もうしないから、本当にごめん。お前だけだから、もうしないから」
 しばらく謝り続けていると、ルイズの蹴りが急に止んだ。安堵して見上げると、ルイズの瞳からは涙が溢れ落ちていた。
「もういい。出てって」
 ルイズは涙目で、キッと俺を睨みつけてくる。
「だから、もうしないって……」
「出てって! あんたなんかクビよ!」
   ★★★
 僅かな荷物と共に部屋を追い出された俺は、厨房へと向かった。取り敢えず今夜は自前の風呂場で眠るつもりで、その前に腹ごしらえをしておこうと思ったからだ。別に風呂場で寝なくても、キュルケやギーシュに頼めば部屋に泊めてはくれるだろうが、今の状況下でそんな気分にはなれない。何より、キュルケと同衾などしたらルイズとの仲は益々拗れるばかりだろう。
 厨房に入るとすぐにシエスタが駆け寄ってきた。逃げたことに罪悪感があるのか、幾分うなだれている。俺が事の顛末を説明すると、その顔が途端に青くなった。
「あ、あのっ! ご、ごめんなさいっ!」
「大丈夫だよ。ほとぼりが冷めた頃にまた謝って許してもらうさ」
 シエスタは顔をあげると、まっすぐに俺を見つめた。
「あの、私、明日から三日間のお休みが取れるんで、帰省する予定なんですけど、良かったら一緒に行きませんか? タルブという村で、とっても美味しい名物のシチュー料理があるんです。ヨシェナヴェっていうんですけど、是非、食べて欲しいんです」
 面白そうだな、と俺は思った。考えてみれば、この世界に召喚されてから学院の外には一度も出たことがない。ルイズもすぐには許してくれなさそうだし、この機会に見聞を広げておくのもいいかもしれない。
「あ、でも、いきなり男の人なんか連れて帰ったら、家族のみんなが驚いてしまうかも。どうしよう。――そうだ。だ、旦那様って、言えばいいんだわ。結婚するからって言えば、父さまも、母さまも、妹や弟たちも、みんな、きっと喜ぶわ」
「はい?」
「ご、ごめんなさい! そ、そんなの迷惑ですよね! っていうか! 遊びに来るって決まったわけじゃないのに! あは!」
「いや、行くよ」
 俺の返事を聞くと、シエスタは満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。俺の背に強く手を回し、胸に顔を何度も擦り付ける。どうやら俺が結婚を了承したのだと勘違いしているようだ。嫌な予感がして周囲を見回すと、厨房の皆、コックや他のメイドたちが全員揃ってこっちを見ている。その中に腕を組んで幅広の涙を流しながら何度も頷いているマルトー親父の姿を見つけ、俺は慌ててシエスタを引き剥がした。
「ちょっと待って。シエスタの村に遊びに行く、これはいい。でも俺はルイズの使い魔だし、その、結婚は無理。嫌だとか言うんじゃなくて、境遇というか、身の上的に無理」
 周囲にも届くよう、大きな声で説明する。シエスタには可哀想な気もしたが、はっきり言っておかないと、この先の俺の立場が危うい。
「……そうですよね、あんなに可愛らしい、ミス・ヴァリエールが……、貴族の女の子がいるんですもの。私みたいな村娘なんか。でも――」
シエスタは寂しそうな微笑を浮かべ、再び俺に抱きついてくる。
「――私、一番じゃなくてもいいんです。二番目でも三番目でも、もっと後でも。だから、側にいさせてください」
 シエスタの言葉に感動したのか、厨房のあちこちから拍手が起こり、やがて大きな喝采となった。この場所に来たのは失敗だったかもしれない。歓声の中、俺はこっそり溜息をついた。
   ★★★
 厨房限定の公認カップルとなってしまった俺とシエスタは、数枚の毛布とシーツ、ワイン十数本と保存食、他にもクッションや古着などを厨房で働く皆から祝いの品として贈られ、風呂場である物置へと運び入れた。まるで新居に引っ越す新婚夫婦だ。
 とはいえ、今の俺にはそんな品々がありがたいことも事実で、特に魔法用でなく油を使うランプは、照明器具のない物置には必需品といえた。遅い時間なので今日は無理だが、明かり取りに使っていた窓に板を打ちつければ、真夜中であろうが外に光が漏れる心配はないだろう。ギーシュから先日聞いた話では、学院から建物の権利を買えば住み込んでも改装しても構わないとのことでもあるし、そのうち居住性を高めるべく改造するのもいいかもしれない。
 他にも、マルトー親父がこっそりと渡してくれた大量の錠剤タイプの経口避妊薬は、なんと飲んで数分で効果が出るという優れものだ。茶や酒で飲んでも効果があり、尚且つ副作用も中毒性も全くないという。異世界万歳。
 そして今、俺は渇いた板の上に古着を敷き詰めシーツを被せた簡易マットの上で半身を起こし、月明かりを浴びながら全裸で白ワインをラッパ飲みしている。更に言えば、自らの職場で二番目でも三番目でもいいと宣言した十四歳の少女は、俺の横で全裸のまま蹲り、昨日から洗っていない俺の陰茎の匂いを犬のように鼻を荒々しく鳴らして嗅いでいる。
 荷物の運び入れが終わった時点で使用人用の女子寮へと帰すつもりだったのだが、本人がどうしても泊まると言い出したので、そうさせたらいつの間にかこういうことになった。当然、催淫剤などは使っていない。というか、シエスタには使う必要がない。
「ふんふんっ……、うふんっ……、あぁ……、んふんっ……、はぁっ……、ふああっ……」
 太腿を擦り合わせたり自らの身体を触ったりすることを予め禁じておいたため、シエスタは切なげに鼻息と喘ぎ声を撒き散らしている。この状態でしばらく経つが、一向に匂いに飽きるということがないようだ。とはいえ、このままでは俺も達しようがない。そろそろ次の指示でも与えるか。
「シエスタ」
「んふっ……はいぃ……あはぁ……旦那様ぁ……」
「旦那様? 言ったろ、結婚とか無理だって」
「ああんっ……でもぉ……ふんんっ……でもぉ……それでも旦那様ですぅ……はぁん……私のぉ……旦那様ですぅ……それでぇ……今夜はぁ……んあっ……初夜なんですぅ……」
 どうやら妄想に酔っているわけではなく、たとえ結婚しなくても俺を旦那様と呼びたいらしい。見上げた心意気である。初夜などと口にしているのは、契る決意の表れか。俺は荷物の中からマルトー親父に貰った避妊薬の袋を引っ張り出し、一錠取り出してシーツの上に放ると、飲みかけのワインの壜をシエスタに差し出して、言った。
「初夜の記念にちゃんと犯されたかったらその避妊薬を呑め。そうでなければこのままだ」
 言った途端にシエスタは薬を拾い上げて口に含み、俺の手から壜を受け取って躊躇うことなくワインで流し込んだ。
「はふぅ……、呑みましたぁ」
「じゃあ薬が効き始めるまでの間、そこに寝転んで自分で弄って濡らしとけ」
「そんなぁ……、酷いですう……、初めてなのにぃ……、酷いぃ……」
 言いながらもシエスタは仰向けに寝転がり、片手でゆっくり乳房を下から揉み上げ、もう片方の手を股間に当てて指先でクリトリスを転がし始めた。それを見て俺も自分のものを扱き始める。一度射精しようが、再度勃起させる自信は充分にあった。
「こんなぁ……酷いですぅ……あくっ……旦那様ぁ……酷いですぅ……はぁん……」
「どうせいつも自分でしてんだろ? 毎日してんだろ? 正直に言わないとお預けだぞ?」
「うふあっ……はいぃ……してますぅ……んんんっ……毎日ぃ……してますぅ……でもぉ……でもぉ……ふああっ……旦那様にされたぁ……ふああっ……この前からですぅ……」
「嘘をつくな。以前からやってたんだろ?」
「ほおおっ……ほんとですぅ……だってぇ……いああっ……いけないことだからぁ……」
 言われてみればシエスタの乳首も局部も、綺麗な薄桃色で色素の付着がほとんどない。しかし、たった数日でこんなに淫乱になるものなのか。真性恐るべし。
「本当だな? この前からだって誓えるな?」
「んああっ……ほんとですぅ……んんっ……誓いますぅ……むああっ……誓うのぉ…………」
「判った、信じてやる。で、いつもは何を考えてんだ? どんなこと想像してんだ?」
「あうあっ……私がぁ……はあぁん……旦那様にぃ……くううん……されちゃうのぉ……あふうっ……入れられたりぃ……つああっ……叩かれたりぃ……んああっ……酷いことぉ……」
 シエスタは蕩けた表情を浮かべ、動きをどんどん加速させていく。足はいつの間にかM字に開かれ、その中心部分は蜜でテラテラと光っている。つま先が痙攣しているかのような動きを繰り返しているところを見ると、絶頂が近いのだろう。この後の行為のためにも、俺はこのまま一度イかせてやることにした。
「そろそろ限界だろ? 初体験の前に、一人でイクところを見せてみろ。見てくださいって言ってみろ。但し、イク前にはちゃんと俺の許可を得てだぞ? 勝手にイクな、判ったな?」
「はいいぃ……見てぇ……うふぅ……くださいぃ……ひああっ……イクところぉ……見てぇ……あっんあっ……イきそうですぅ……うふうっ……イきそうなのぉ……ひああっ……いいですかぁ……あううっ……旦那様ぁ……んんっんんっ……イってもいいですかぁ……」
「もう少し耐えてみろ。その方が気持ちいいから」
「そんなあぁ……イきたいぃ……イきたいですぅ……うああっ……イかせてぇ……旦那様ぁ……私の旦那様ぁ……辛いですぅ……くあううっ……イかせてぇ……イかせてくださいぃ……」
 シエスタの必死の形相を見て、俺の方も限界寸前だ。
「仕方ないな、いいぞ。その代わり、イク時にはちゃんとオマンコイクって言うんだぞ?」
「うふあぁ……わ、判りましたぁ……んんんんっ……イきそうぅ……あひゃあっ……オマンコイきそうですぅ……くおああっ……見てぇ……あひいっ……イきそうなオマンコ見てぇ……」
 もはや叫びに近いシエスタの声を聞きながら、先に限界を迎えた俺は、苦しげなシエスタの顔に精液をぶちまけた。瞬間、シエスタは仰け反り、約束した言葉を口にした。
「んあああっ、オマンコ、オマンコイっ――――――――クうううううう!」
   ★★★
「じゃあそろそろ。本当にいいんだな?」
 しばしの休憩の後、再び陰茎に力を取り戻した俺がそう言うと、シエスタは精液塗れの顔でうっとりと微笑み、それまで閉じていた足をゆっくりと開いた。
「はい。私の初めて、貰ってください」
 両腕を伸ばして俺を迎え入れようとするシエスタ。だが俺はその横に寝そべると、怪訝な表情を浮かべているシエスタにわざと冷たく言い放った。
「早くしろ」
「え?」
「お前がやるんだよ。お前が俺のチンポを握って、自分のオマンコに差し込んで腰を振るんだよ。早くしろ」
「ええっ?」
 おそらくロマンティックな初体験というものでも想像していたのだろう。そうしてやってもいいのだが、何事も最初が肝心だ。既にマゾ奴隷として開花しつつあるシエスタを更なる高みへ導くためには当然の行為である。それにこの体位なら挿入の深度を女性が調整できるため破瓜の痛みに耐え易い、と以前にどこかで聞いたことがある。ことの真偽はさておき、ありていに言えば単に俺の趣味なのだが。
「嫌なら別にいいけど?」
 その言葉を聞き、しなければ捨てられるとでも思ったのか、シエスタは怯えたように身体を竦めた。真意を探るように俺を見つめ、次いでそそり立った陰茎に目をやると、ゆっくりと口を開く。
「――判りました。やります」 
シエスタは起き上がり、一物に手を伸ばして掴むと、そこに陰部をあてがうようにして俺を跨いだ。そのまま挿入しようとするのを、俺は腰を引いて押し留める。
「え? あの……」
「処女を捧げますって挨拶してからだ」
「は、はい。あの、何て言えば……」
「自分で考えろ。なるべくいやらしい言葉で」
「わ、判りました」
 コクン、とシエスタの喉が鳴る。頭の中で猥褻な単語を思い浮かべて興奮してきたのか、だんだんと顔に赤みが差し、呼吸が深くなっていく。すぐに呼吸は吐息へと変わり、呆けたような表情に薄っすら笑みを浮かべると、手にした陰茎を自分の秘裂に押し付け始めた。
「私、シエスタはぁ、今から旦那様のオチンポにぃ、オマンコの、ふふっ、オマンコの初めてをぉ、オマンコの処女をぉ、捧げますぅ、うふっ、旦那様のものになりますぅ。自分でオチンポ入れてぇ、自分で腰を振ってぇ、オマンコでオチンポ擦るのぉ、擦らせてもらうのぉ。いいですかぁ? 旦那様ぁ、入れてもいいですかぁ?」
「上出来だ。いいぞ、入れ――」
「んああああああっ!」
 俺が言い終わらないうちに、シエスタは一気に腰を落として俺の物を根元まで呑み込んだ。それを命じた俺でさえ呆気に取られたほどの無謀な行為だ。入れられた俺の方も痛かったが、入れたシエスタの痛みは想像もつかない。俺は狼狽しながらも急いで上半身を起こし、シエスタを抱き寄せてその顔を覗きこんだ。案の定、苦痛に顔を歪め、掠れた呼吸は不規則になっている。抱き締めた身体もガクガクと小刻みに揺れ、太腿の内側は血で真っ赤だ。
「シエスタ、大丈夫か? すぐ抜くからな」
 言ってシエスタの腰に手を当てると、シエスタは首を振りながらその腕を掴んだ。
「抜かないでください、このまま」
「無理言うな。また今度にしよう、な?」
「大丈夫ですから、少しだけ待っていただければ、できますから」
「できるわけねえだろ。まったく無茶な入れ方して」
「だって、初夜なのに、途中で怖くなったりしたら、嫌だから。確かに痛いですけど、これでやっと旦那様のものになれたから、嬉しいんです。だから、最後までさせてください」
 シエスタは涙を流しながら懸命に微笑み、苦痛の源であるはずの局部を更に俺に押し付けてくる。俺は行為の後処理用に傍らに用意しておいた洗面器を引き寄せ、中の水に浸しておいたタオルを絞ると、シエスタの顔の涙と精液を拭ってやった。
「ふふっ、くすぐったいです。でも嬉しい。優しい旦那様も、意地悪な旦那様も、大好きです」
 拭いても拭いても涙を流すシエスタを見つめ、俺は唇にキスをした。強く抱き締めながら舌を入れ、歯を一本ずつ舐め上げ、歯茎をなぞり、シエスタの舌に何度も絡ませる。プチュッと音を立てて唇を離した時には、抱き締めたシエスタの身体から不自然な揺れは消えていた。
「じゃあ痛みが引くまで、シエスタの敏感な場所を触って待ってるよ」
「はい、いっぱい触ってください」
 そう言ってシエスタは、恥ずかしそうに笑った。
   ★★★
「じゃあ、動きます」
 宣言し、シエスタは腰をゆっくりと上下に動かし始めた。俺が動くとも言ったのだが、どうしても自分にさせて欲しいと聞かず、既にシエスタの頑固さを痛感していた俺は、好きにさせることにしたのだ。たっぷりと事前に身体中を愛撫し、それだけで二度ほど絶頂を迎えたシエスタだったが、未だ痛みは残っているらしく、時折その表情を歪ませていた。
「大丈夫か? 痛くないか?」
「んっ……はい……くっ…………大丈夫です…………それより……んんっ……どうですか……あっ…………気持ちいいですか?」
「凄く気持ちいいよ、最高だ」
 お世辞でなく、シエスタの膣は強く俺の陰茎を締め上げながらも、程よく愛液を溢れさせ、奥では内壁が亀頭に吸い付くように蠢き、えもいわれぬ快楽を与えてくれている。正直、今の拙いシエスタの動きだけで射精してしまいそうなほどだ。
「嬉しいです……くうっ……ご要望が……はあっ……あったら……うあっ……仰って……あっ……ください……んあっ……何でも……うんっ……しますから……」
「じゃあ、チンポの根元に、シエスタのクリトリスを擦り付けるようにして、腰を前後に動かしてみて。あとはそうだな、自分で何をしているのか、なるべくいやらしく口にして」
「はいっ……こう……ですか……はあああっ……何これぇ……ふああっ……これっ……ひあっ……こんなのっ……うふあっ……知らないっ……あふあっ……こんなのってぇ……」
 先刻の自慰を見た時から判ってはいたが、やはり陰核は現時点でのシエスタの一番の性感帯らしい。挿入しながらそこを擦るという新たな刺激に、シエスタはどんどん腰の動きを加速させている。そのだらしなく緩んだ顔には、もはや苦痛の面影はない。
「言葉を忘れてるぞ。罰としてそのまま自分の胸を触りながら続けろ」
「はいいいっ……ごめんなさいいっ……あふんっ……振ってますぅ……んああっ……私自分で振ってますぅ……はあぁん……腰をぉ……うはぁん……自分からぁ……」
 シエスタは両手を乳房の下に当て、指先で乳首を擦り上げながら、これが初体験とは思えないほど淫靡に腰を振り回し始めた。途端に俺の陰茎は臨界点を超え、膣内に精を放つ。
「ごめん、シエスタ。もう出ちゃった」
「ふあああっ……温かいぃ……んふああっ……出されてぇ……くううん……出してもらってぇ……はああっ……染みるぅ……んふうっ……駄目ぇ……イクぅ……イクううううううっ!」
 仰け反った状態で身体を硬直させたシエスタは、数秒後に全身を弛緩させながら俺の胸へと倒れ込んできた。跨ったままの下半身が何度もビクンと跳ねている。
「凄いですぅ、セックスってぇ、凄いですぅ」
気の抜けた口調で呟くシエスタに苦笑し、その髪を撫でながら俺は呟いた。
「今、シエスタのオマンコには俺のドロドロのザーメンが入ってるんだな」
答えるかのようにシエスタは悩ましげに息を吐き、一際高く腰を跳ね上げた。
   ★★★
「ふおおおっ……気持ちいいっ……オチンポぉ……旦那様のオチンポぉ……凄いぃ……くあああんっ……いいですかぁ……イきそうですぅ……オマンコイってもいいですかぁ……」
 結合部から漏れ出た精液と愛液を周囲に撒き散らし、まるで獣のように叫びながら腰を打ち付けるシエスタに、俺は内心、笑いが止まらなかった。適度な休憩を挟んではいたものの、俺は既に六回、シエスタの膣に精を放っている。シエスタの絶頂回数は優にその倍を超えており、
その間に俺の教えた腰の動きや言葉を貪欲に身につけた今では、どこに出しても恥ずかしくないほどの淫乱振りだ。ちなみに体位は女性上位のみであり、一度も陰茎を抜いてはいない。つまりシエスタは延々と、俺の一度も振られることのない腰を跨ぎっ放しというわけだ。途中で互いに精力剤を飲んだとはいえ、凄まじいほどの絶倫振りである。とても数時間前まで処女だったとは思えない。
「駄目だ。もう少し我慢しろ」
「そんなああああっ……切ないですぅ……キュンキュンしてるのぉ……オマンコの奥がぁ……ザーメン塗れのぉ……ひゃああああっ……オマンコの奥がぁ……マゾマンコがぁ……」
「そういえば今日はお前の村に行くんだろ? もうすぐ朝だし、少し寝ておくか」
「いやあああっ……止めないでぇ……いいですからぁ……実家なんかいいですからぁ……続けてぇ……続けさせてぇ……お願いですからぁ……犯し続けてぇ……イかせてくださいぃ……」
「しょうがねえな。じゃあイってもいいが、腰を休ませるなよ?」
「はいいっ……イきますぅ……イかせていただきますぅ……オマンコ、イっクぅぅぅぅぅ! ……はひゃああああっ……気持ちいいいっ……イってるオマンコぉ……奴隷マンコぉ……」
「そろそろ俺もまた出すぞ。ちゃんと休まず続けてろよ?」
「くひゃあっ……はひぃ……出してくだひゃいぃ……専用トイレにひぃ……ひやああっ……ごめんなさひぃ……今ぁ……軽くイきまひたぁ……出ひてもらえるってぇ……思っただけでへぇ……あへあああっ……またイきまひたぁ……止まらないでふぅ……くふああああっ……」
「くっ、受け取れっ!」
「かはあああっ……来たあああっ……温かひいいっ……ひもちいひいっ……くうううんっ……イクううううううう! ……あひああっ……焼けるふうっ……イクうううううう! ……ひゃあああっ……またイクううううう! ……くあああっ……イクイクイクううううう!」
結局、俺とシエスタは明日の午前中に改めてタルブの村へ向かうことにした。
   ★★★
 その日の夕刻。
 店の中はランプの灯りが点っているというのに薄暗く、壁や棚には所狭しと紙箱に入った淫具や下着類が並べられ、片隅には職業別の衣類などが吊り下げられていた。五十がらみの親父が相好を崩して近寄り、俺の横のマリコルヌに恭しく頭を下げてくる。
「これはこれはグランドプレ家の坊ちゃん、今日は何をお探しで?」
「お勧めの品があるかい?」
「これなんかどうですか? ここの四つの部分が魔力で動く新製品なんですが。宮廷の貴族の方々の間では、このスクウェア・ローターってやつが流行っておりましてね」
「ど、どう使うのかな?」
俺はワゴンの中に乱雑に詰まれていた剥き出しのディルドーを手に取ると、鼻息を荒くして親父の手元を見つめるマリコルヌの後頭部を思い切り殴った。
「――痛いじゃないか」
「黙ってろ、小太り。許可もなく勝手に喋ってんじゃねぇ」
 ――行為の後で眠り、目を覚ますと既に昼を過ぎていた。風呂で汗を流し、昨晩渡された保存食で簡単な食事を取った後で、俺とシエスタは別行動となった。俺が街に買い物に出かけると言い出したためだ。自分も付いていくとシエスタは言ったが、睡眠を取った後でも明らかに判るほど衰弱しており、いつでも相手が出来るように身体を休ませておけと俺が言うと、驚くほど素直に従った。今頃は寮の自室で横になっているはずだ。
 買い物の目的は二つあった。一つはシエスタの実家への手土産である。昨夜の時点では道中で用意しようと思っていたのだが、時間があるのなら一応しっかりと選んでおきたい。そしてこの買い物は既に済んでいる。選んだのは高価な菓子折りで、俺はこれをシエスタの血の付いたシーツで包んで差し出すつもりだった。シエスタの父親がどんな顔をするか楽しみだ。
 もう一つの目的は行為に使うための様々な淫具だった。薬の類はどうにでもなるが、道具となるとそうはいかない。凹型椅子のように自分で作るのにも限界がある。以前にギーシュからマリコルヌがその手の店に出入りしていることを聞いていた俺は、学院内で目的のデブを捕らえ、ここまで案内させてきたというわけだ。
「親父、俺が客だ。こいつは俺の財布」
「こりゃ失礼しました。てっきり貴族様のお供の方かと」
「確かに俺は平民だが、何か文句が?」
「いえいえ、旦那、文句なんぞありませんです。坊主は聖具を振る、兵隊は剣を振る、貴族は杖を振る、陛下はバルコニーからお手をお振りになる、そして男はみんな腰を振る、と相場は決まっておりますんで」
 主人は、商売っ気たっぷりにお愛想を言った。
「あの、喋ってもいいかな?」
 親父の言葉を鼻で笑っていた俺の服の袖を、マリコルヌが引っ張って尋ねてくる。
「何だ?」
「ぼく、そんなに持ち合わせがあるわけじゃなくて……」
「心配すんな、足んなきゃお前の実家へのツケだ。貴族様は信用があるらしいからな」
「そんなぁ……」
 俺がこの世界の金を持っていないわけではない。それどころか、たんまりと持っている。というのも、ギーシュに言えば毎回そこそこの金額を用意してくれるからだ。初めの頃こそ貴族は本当は貧乏だの何だのと文句を言っていたが、モンモランシーが薬を調合できることを聞いた後で、気分を高揚させる中毒性の薬を作って男子生徒に安い値で売り捌き、薬を手放せなくなった頃に値を吊り上げるよう指示を出すと、その後は何も言わなくなった。それどころか、今では俺の次の指示を待っていたりする。言えば金も薬も木材も工具も忽ち用意してくれる、もはや下僕と言っていい。多少は薬の売上金を自分の懐に入れているのだろうが、その程度は許容範囲だ。いざという時のことを考えて以前から俺が溜め込んでいる金額は、ギーシュによれば家の一軒ぐらいは買えるほどになっている。それでも俺に無駄金を使うつもりはない。菓子折りの代金は流石に自分で払ったが、この店の払いは横の肥満体だ。持ち合わせがあろうがなかろうが、一切考慮してやるつもりはない。
「これなんかいかがです? ちょいと珍しい品なんですが」
 項垂れるマリコルヌを見かねてか、店の親父が声をかけてくる。見ると、その手の中には細身の真っ黒なディルドーがあった。
「ただの張形だろ? 魔力で動いたりすんのか? 言っておくが俺は魔法を使えないからな」
「いえいえ。旦那に魔力がなくとも動く、インテリジェンス・バイブレーターでさ。とは言っても、定期的に魔力を充填してやんなきゃなんないんですが。その際には坊ちゃんにお願いしてみてはいかがです?」
「――なるほど、充填式なら俺でも使えるな」
 太っちょ貴族に頼まなくても、ギーシュに言えば二つ返事で充填してくれそうだ。
「そうですとも。それよりこいつは意思を持ってましてね、なんと喋るんですよ。やたらと口が悪いのが難なんですが、相手を言葉でいたぶる際には便利かと。この場所にスイッチがありまして、――やいデル公! 旦那に挨拶しろ!」
 親父が根元のスイッチを押した途端、張形がうねうねと動き出した。
「お前さん、俺を買うのか?」
 うねるバイブが何処からともなく年配の男の声で聞いてくる。正直、気持ち悪い。
「お前、デル公っていうのか?」
「違わ! デルフリンガー様だ!」
「名前だけは一人前でさ。で、黙らせたい時にはこっちのスイッチを」
 親父が隣のスイッチを押すと、動きはそのままにバイブが押し黙る。
「面白そうだな、貰おう。それと、そこにある服と、そっちの下着と、あそこの縄と――」
 青ざめたマリコルヌを尻目に、俺は矢継ぎ早に注文を始めた。
   ★★★
「ここにいたんですか。お食事の用意ができましたよ。父が、早くご一緒にって」
夕方、庭先で子供たちと遊んでいると、シエスタが駆け寄って来て言った。子供たちというのはシエスタの弟や妹たちのことだ。村へ来てから知ったのだが、シエスタは八人兄弟の長女だった。
 俺は頷き、子供たちに家の中に戻って手を洗うように言った。全員が素直に返事をし、家の中へと消えてゆく。子供たちの姿が消えた途端、シエスタが静かに身を寄せてきた。
「父が言ってました。いつの日か、この村に住んでくれないかなって。そしたら私も……、その、ご奉公をやめて、一緒に帰ってくればいいって」
 俺はシエスタに見えないよう、その頭を抱き寄せて口元を歪めた。どうやら予想以上にシエスタの父親に気に入られたらしい。
――ことの発端はシエスタの生家に到着してすぐ、テーブルの上に例の菓子折りを差し出した時だった。血の付いたシーツの意味を図りかねた様子の勘の悪いシエスタの父母は、俺が続けて言った言葉に表情を一変させた。
「娘さんを頂きました」
 その時の父親の剣幕は凄まじかった。俺を睨みつけながら頬を引きつらせ、耐えるように歯を食いしばる表情は、カメラが手元にあったら撮っておきたいほど滑稽で、思い出しても笑えるくらいだ。母親の方はといえば、困った顔でただオロオロしているばかりだった。
「殺してやる」
 父親は椅子から立つと、両こぶしを握り締めて言った。俺は座ったまま、悪びれもせずに言ってやった。
「じゃあお父さんは、こうして顔を出して挨拶もせず、黙っていた方が良かったんですか?」
 その言葉に父親は徐々に目を見開き、気落ちしたように元の椅子へと座り直した。
「結婚する気があるんだな?」
「無理ですね」
 再び父親が目を剥いたので、俺は誠実な人間を装いながら自分の境遇を丁寧に説明した。
「お前はどうなんだ?」
 俺の話を一通り聞いた後で、父親は俺の横の椅子に座っていたシエスタへと聞いた。シーツを出した時から顔を赤らめ俯いていたシエスタは、そこで初めて顔を上げた。考えようによっては立派な羞恥プレイの一環なのだが、流石に興奮してはいないようだった。
「私は、結婚してもしなくても。旦那様の側にいられれば……」
押し黙る父親、更に困惑する母親、再度俯くシエスタ。俺は出されていた茶を飲みながら、そんな三者三様を眺めていた。
「――判った」
しばらく沈黙した後、父親は言って立ち上がり、俺に頭を下げた。
「娘を宜しくお願いします。泣かせないでやってください」
 もう充分に自分から俺に跨って腰振って鳴いてますよ、と言いたいのを我慢して、俺も立ち上がって頭を下げて答えた。
「出来るだけのことはするつもりです」
その言葉が気に入ったのか、父親は穏やかな表情で母親に食事の用意をするように言い、秘蔵だという古酒の壜を取り出して俺に勧めてきた。俺は食事の際に頂きますと言って遠慮し、部屋の中を覗き込んでいた子供たちを誘って外で遊ぶことにした。
――そして現在に至るわけだ。
「嬉しかったです。私たちのこと、父さまにちゃんと話して頂いて。あのシーツ、父さまたちを説得するために必要だったんですね。それなのに私ったら」
 俺は単に父親の表情を楽しむだけのつもりだったのだが、直前までシーツを風呂敷代わりに使うことに反対していたシエスタは、俺の行為を勘違いしているようだ。それはそれで都合がいいので、もちろんその言葉を否定したりはしない。
「大事なことだから話して納得して貰わないとな。でも、どんな噂が立つか判らないから、学院じゃ内緒にしておこうな。厨房の皆にも言うなよ?」
「判りました、誰にも言いません。今まで通りに振る舞えばいいんですよね?」
「いい子だな、シエスタは。それだけいい子なら、さっき言ったこと、忘れてないよな?」
 子供たちと外に出る前、俺はこっそりとシエスタにあることを言いつけていた。
「はい。――ちゃんと全部付けました」
「ちょっと、こっちへ来て」 
俺は顔を真っ赤にして俯くシエスタの手を取り、家の裏へと回り込んだ。子供たちと外で遊んでいたのは、この家の周りの何処でなら人目に触れないか確認しておくためだ。俺がシエスタを連れ込んだ場所は正に望み通りの場所だった。
「じゃあ、食事の前に確認させてもらおうか」
「こ、ここでですか?」 
「見るだけだ、早くしろ。挨拶も忘れんな」
 命令口調で俺が言うと、シエスタは慌てて草色のシャツの前ボタンを外し、ブラウンのスカートを高く捲り上げた。もちろん普段着である。
「どうぞ、はぁ、ご覧になってください、あぁ、旦那様」
 自宅の庭ということで発情は抑えられているようだが、それでも幾分荒い息をして、シエスタが言った。俺はシエスタに近づき、ブラウスのはだけた部分から露出しているキャミソールの胸元を指で摘み上げ、その中を観察した。次いでしゃがみ込み、捲り上げたスカートの中を確認する。指示通りのものが、そこにはあった。
 俺が命令したのは、俺のバッグの中から丸型の絆創膏状のシートとパンツ型の下着を取り出して身に着けておくように、というものだった。シートは乳首に貼るタイプのもので、付け方は事前に教え込んであった。共にマリコルヌに買わせた物の一部だ。昨日の買い物の後、俺は様々な淫具や薬、着替えやその他の品々を常時バッグに入れて持ち歩くことにしていた。
「なんだか臭うな。もう濡れてんのか? 正直に言え」
 パンツに顔を近づけて言うと、シエスタが吐息を漏らす。
「少しだけぇ、濡れてますぅ、はああっ、でも旦那様ぁ、この場所じゃ、ふうっ、困りますぅ」
「判った、服を直していいぞ。食事に行こう」
 言って俺が立ち上がると、シエスタは切なげに息を吐いた。
   ★★★
 その夜、俺はシエスタの生家に泊まることになった。場合によっては村外れの宿屋に泊まっても良かったのだが、父親が気を利かせて離れに寝床を用意してくれたからだ。用意された部屋に行ってみると、ベッドの上には枕が二つ並べられ、寝酒の用意もされていた。
「これからも娘のことを宜しくお願いします」
 そう言って頭を下げるシエスタの両親を見て、多少は俺も心苦しくなったが、言われた以上は仕方があるまい、シエスタを何処に出しても恥ずかしくない一人前の精処理メイドに育てることを改めて決意し、黙って頭を下げた。
 眠る前に是非、と母親に案内された風呂場に裸のシエスタが待っていたのには俺も驚いた。正直、どこの性風俗だよ? と突っ込みを入れたくもなる。あるいはシエスタの両親に金を出してやって、街でその手の店でもやらせれば大成功を収めるかもしれない。 
 シエスタは既に出来上がっていた。母親が姿を消すと、媚びるような目で俺を見ながら、自分の身体を見せ付けるように悩ましく洗い始める。まあ、仕方があるまい。直前までずっとお預け状態だったのだ。
 というのも、食事の前にシエスタが身に着けたシートとパンツは遠隔操作できる淫具だったからだ。魔力の充填式で、揉む、擦る、抓るなどの動きが別個の操作器のスイッチひとつで切り替えられ、場所も乳輪、乳首、秘裂、クリトリス、尻穴、蟻の門渡りと何でもござれの高級品である。ローターが埋め込まれているわけではない。シートと布が動くのだ。
 食事の場での談笑の合間に、俺はポケットの中でそのスイッチを操作していた。何の説明も受けていなかったシエスタは驚いた様子だったが、顔を上気させながらも懸命に平静を装っていた。それがまた面白くて、俺はスイッチを何度も切り替え、乱れていくシエスタの反応を充分に楽しんだ。シエスタの両親は、そんな娘の様子を酒に酔ったせいだと思ったらしい。が、シエスタはこの間一度も酒を飲んでいない。そう思い込むように、シエスタの前に置かれたグラスの中身は、隙を見ては俺が全部飲み干していた。
 予想外のこともあった。俺はその場でシエスタを絶頂させるつもりはなかった。イきそうになるとスイッチを切り、落ち着いたらまたスイッチを入れる、それを何度も繰り返していた。シエスタにとっては堪ったものではないだろうが、せっかく家族の前で調教できる機会に、安易な快楽を与えてやるつもりはなかった。だが、妹の一人が席を立ち、甘えてシエスタの膝に乗った瞬間、シエスタは奇声を上げて一度だけ絶頂を迎えた。以前に怪我した場所に妹が乗ったから痛かったのだとシエスタは説明したが、両親はそれ以降シエスタに酒を飲むことを禁じた。そしてシエスタが両親に説明している間も、それ以降も、俺はスイッチを操っていた。
「旦那様ぁ、入らないんですかぁ、うふふっ、私がお脱がせしましょうかぁ?」
「いや、自分で脱ぐ」
 言って俺は手早く全裸になると、椅子に座ったシエスタの前に仁王立ちになった。シエスタは陰茎をうっとりと見つめ、顔を近づけてフンフンと臭いを嗅ぎ始める。
「触るなよ? この場ではお預けだ。お前の妹たちが入る時に精液臭いと悪いからな」
「大丈夫ですぅ、家族が多いのでぇ、あぁ、お風呂場が別にありますからぁ、くふぅ、みんなそっちにぃ、あはぁっ、ここはぁ、父さまとぉ、母さま専用でぇ、んんっ、母さまがぁ、使っていいって言ったからぁ、はあっ、臭ってもぉ、平気ですぅ」
 流石は真性の両親、懐が深い。考えてみれば八人も子供を作っているのだ、好き者でない筈がない。ならば食事の時の俺の行為にも気付いていたのだろうか? 全て承知の上で、両親もそんな娘を楽しんでいたとか。まさか、ここを覗いていたり、離れでの俺たちの行為を見聞きしながら九人目を仕込むつもりじゃないだろうな? 一抹の不安を感じて風呂場の入り口と窓とをみるが、そこに人の気配はない。壁にも覗き穴らしきものは見つからず、どうやら俺の取り越し苦労のようだ。まあ、見られていても別に俺は構わないのだが。
「それでお前はどうしたいんだ?」
「はいいっ、ふぁっ、旦那様のぉ、オチンポをぉ、はああっ、洗わせて頂きたいですぅ」
「そこだけか? 腕とか背中とか、他の場所はどうでもいいのか?」
「違いますう、はぁん、全部ぅ、旦那様の全部ぅ、んんっ、お流ししたいですぅ」
「じゃあ洗わせてやる。但し、タオルも手も使うな」
「ええっ? はああっ、どうすればいいんですかぁ?」
「全身お前が舌で舐めろ、足の裏も尻穴も。まずはキスの後に顔から、チンポは最後だ」
「はあああんっ、判りましたぁ、あはああっ、舌で洗わせて頂きますぅ」
 シエスタは立ち上がると、俺にキスをした。自分から舌を入れ、俺の口の中の隅々にまで這わせてくる。そして唇を舐め、頬を舐め、耳を舐め、同時に乳房を俺の胸に押し付けてきた。
 首、腋、腕、と来て、舌が胸に移ると、シエスタは俺の乳首を、そこだけ特に愛おしそうに何度も何度も舐め上げた。そうしながら自分の腹と下腹部を何度も手で撫で上げている。乳房と陰部に手を伸ばしたいのだが、勝手に触ると怒られるとでも思っているのだろう。
「ぷちゅっ、旦那様のぉ、れろっ、乳首ぃ、はぷっ、乳首ぃ、んぷっ」
「そこばっかり舐めてんじゃねえ。そうだな、胸、腹、足、尻を舐め終わって、残るは足の裏と尻穴、チンポだけになった時点で、自分の身体を触ってもいいぞ?」
 言うと、シエスタは急いで各部を舐め始めた。とはいえ、舐め残しがないほどの丁寧さである。忙しい舌の動きだが、その押し付け具合と唾液の絡め具合とが絶妙で、特に舌が尻たぶに来た時点で俺はすぐに爆発寸前となり、自分の陰茎に手を伸ばした。
「一回出すぞ。マンコにかけてやるから、そこに寝て足を開いて、自分でマンコを拡げろ」
「はいいいっ、おかけくださいぃ」
 言われた通りのポーズをシエスタが取ると、俺は陰核に押し当てて射精した。全部出し終わると、亀頭で襞の隅々にまで塗り込んでいく。妊娠の危険はない。マルトー親父から貰った避妊薬を半分近くシエスタに与え、たとえ俺と会う機会がなくても毎日飲むように言ってあるからだ。
「はうううううっ、塗られてるぅ、オマンコにぃ、臭いをつけられてるぅ、旦那様ぁ、ふあふああっ、イき、くううううん、イきそ、うふあああっ、イきそうですぅ」
 俺は慌てて塗り付けるのを止め、再び仁王立ちになった。
「まだ駄目だ、我慢しろ。その代わり、足裏を舐めながら自分の身体を触っていいぞ。但し、胸だけだ。尻穴になったら今のザーメンを自分でマンコに塗り込め。最後はこのドロドロの精液が付いたチンポだ。そこまで我慢して、もう一度俺が出す時に一緒にイけ。判ったな?」
「はううううっ、わ、判りましたぁ、ふああっ、我慢しますぅ、んああっ、頑張りますぅ」
 言って、シエスタは自分の乳房へと両手を伸ばした。
   ★★★
 翌日の朝。
 心地良さに目を覚ますと、前夜に命じておいた通り、シエスタが全裸で俺の陰茎を懸命に舐め上げていた。昨晩風呂場で教えた技術を既に自分のものとし、まだ教えていない更に高度な技をも駆使している。なんという応用力の高さだろう。
「ぷおっ、旦那さまぁ、ぐぷっ、お目覚めですかぁ、むぷっ、おはようございまぷうっ」
「おはよう。シエスタのおかげで、凄く気持ちいい目覚めだよ。ありがとう」
「ぐぷおっ、嬉しいですぅ、れるろっ、でしたらぁ、じゅろっ、ご褒美をぉ、んちゅっ、頂きたいですぅ、ぶちゅっ、旦那様ぁ、ぐぽっ、これでぇ、はぷっ、虐めて欲しいですぅ」
 あからさまに陰茎をねだってくるシエスタに俺は苦笑した。シエスタが自ら初夜と呼んだあの晩以降、その翌日も昨晩も交わってはいない。翌日は帰省の前だからと言って何もせず、昨晩は風呂場で全身舐めとフェラを教え込んで精浴には慣れさせたものの精飲はさせず、この部屋では俺は酒を飲んでとっとと寝てしまったのだ。その間にシエスタが達したのは食事の場での一回と風呂場での一回。俺に自慰を禁じられたシエスタが欲求不満になるのも無理はない。 だが俺は安易にシエスタを抱く気はなかった。キスや愛撫、その他の調教での絶頂はある程度与えてもいいが、セックスは特別なご褒美なのだとシエスタの心と身体に深く刻み込むつもりだからだ。もちろん、最初にたっぷりと楽しんだせいもある。
「それは駄目だ。その代わり、別の褒美をやろう」
「ぷはぷっ、別のご褒美って、はぷっ、何ですかぁ?」
「学院に帰ったら、昨日の下着と同じようなコルセットとドロワーズをくれてやる。今後、特に指示がなくても、仕事中はそれをつけるんだ。時々は仕事中のお前を俺が遠くから可愛がってやる。他の人間がいる前でな」
「仕事中に、旦那様が私を、みんなの前で――はあああああんっ」
 その時のことを想像したのだろう、シエスタは陰茎から口を離すと、感極まったようにブルブルと身体を震わせた。
   ★★★
「どこ行ってたのよ?」
 学院に戻った後、厨房へ土産物を置きに行くというシエスタと別れて物置へ向かうと、ルイズが建物の前で待ち構えていた。髪はところどころ解れ、瞼は腫れぼったく、目の下には隈が出来ている。睡眠不足に違いなかった。
「シエスタの実家」
「何しに?」
「結婚の挨拶」
 俺が意地悪く言うと、ルイズは下を向いた。それから、泣きそうな声で言った。
「あんた、私と結婚するんじゃなかったの?」
「クビにしたのはお前だろ?」
「あのメイドと、したの?」
「何を?」
「そ、その、ヘ、ヘンなことよ。したの?」
 俺は返答に詰まった。ルイズは俯きながら時々鼻を啜り、身体を小さく震わせている。泣き出すのは時間の問題だった。折を見てルイズとの縒りを戻し、シエスタとも関係を重ね、更に他の女生徒を物色するというのが、この場所でルイズと会うまでの俺の計画だった。嘘をついてこの場を切り抜けるのは簡単だが、果たして本当にそれでいいのか。
しばし考えてから、俺はルイズに近づくと身体を屈ませ、震える小さな肩に手を置き、潤んだ瞳を見ながら、小さな子供をあやすようにして、言った。
「――俺はお前に嘘をつきたくないから、正直に言うぞ。俺はシエスタを抱いた。それは、シエスタが一番じゃなくてもいいと言ってくれたからだ。もちろん俺がシエスタのことを好きだって言うのもある。でも結婚の約束はしてない。俺が一番好きなのはお前だ」
 ルイズの目から、真珠の粒のような、大粒の涙がぽろっと流れた。それがきっかけで、ルイズはボロボロと泣き始めた。
「そんなのただの言い訳じゃない。もう、ばか、嫌い」
「言い訳なのは判ってる。でもな、もう一度だけ言うぞ、俺はシエスタのことが好きだけど、それ以上にお前のことが好きなんだ。そんなお前に嘘はつきたくない」
「あんたなんか嫌い、大嫌い」
ずるっ、えぐっ、ひっぐ、とルイズが目頭を手の甲でごしごし拭いながら呟く。泣き止む気配は全くない。自業自得とはいえ、ルイズとの関係が修復不能となった以上、俺がこの学院内にこの先も留まるのは酷だろう。金銭については今後もギーシュに薬を売らせるとして、しばらくは街の宿屋で暮らしながら、住む所を探すしかない。
「お前が俺のことを許せないのは判る。この先もずっと、お前は俺を見る度に嫌な気分になるだろう。だから俺はこの学院を出て行くよ。寂しいけど、何とかこの世界でやっていくよ。どこかで会っても無視してくれて構わない。お前を傷つけたことは心から謝る。本当に、ごめん」
 言って俺が立ち上がると、ルイズはハッとしたように顔を上げ、う~~~~、と唸りながら涙目で俺を睨んだ。
「――もう、しない?」
「何を?」
「あのメイドと、ヘンなこと」
 俺は再び言葉に詰まった。酷い態度を取っているとはいえ、シエスタのことが好きだというのも偽らざる本心だからだ。そんな彼女を身勝手に捨てることは出来ない。
「――お前がもしシエスタの立場だったらどうする? 他の女の子のことを想ってる男を好きになって、身体の関係になって、そのまま放って置かれても、お前は平気か?」
 俺の言葉にルイズは唸りながら再び下を向き、手の甲を何度も顔に押し付けて丁寧に涙を拭うと、やがて毅然とした表情で俺を見上げた。
「たたた、たまによ。たまになら、そそそ、その、してもいいわ、メイドと」
「へ?」
 まさかそんな答えが返ってくるとは思わずにいた俺は、間抜けな声を上げてしまった。
「ででで、でもね、ほほほ、ほんとたまによ。だだ、だから、ここにいなさい」
「ここって、この学院にいてもいいってことか?」
「そ、そそ、そう言ってるじゃない! 部屋に戻ってきなさいよッ!」
 叫んでルイズはまた泣き出した。子供のようにきつく目を閉じて空を仰ぎ、口を開けて大声をあげ、今度は涙を拭おうともしない。俺はバッグの中から水筒とタオルを取り出し、タオルを濡らして絞ると、ルイズの顔を拭いてやった。ルイズはされるがままだ。
「――ばか、――バカ犬、――大嫌い」
「はいはい」
「あんたは使い魔なんだから。――私の使い魔なんだから」
「ああ、俺はお前の使い魔だ」
「ご主人様を置いて、どっかに行ったりしちゃダメなんだからね」
「お前が望んでくれるなら側にいるよ。ほら、上向いて」
「ん。――ばか、くすぐったいわよ」
 未だ溢れる涙を拭う俺の手に、困ったように首を竦め、ルイズは小さく笑った。
   ★★★
 自前の風呂から上がって寮のルイズの部屋に戻ると、ルイズはベッドの上に正座して窓の外をじっと眺めていた。部屋の中は薄暗く、もう夜だというのに灯りも点けていない。俺は何か嫌な空気を感じ、背筋を震わせた。
「おいルイズ、部屋が暗いじゃねえか。どうかしたのか?」
 そう言ってもルイズは返事をしない。背中を向けたままだ。どうやらご機嫌斜めらしい。シエスタとのことは一件落着した筈で、俺には立腹の理由が判らなかった。
「――遅かったわね。ねえ、何であの物置、あんな風にしたの?」
 短い沈黙の後、正座をしたまま、ルイズが尋ねてきた。調子は冷たいものの、声は震えておらず、怒っているわけではないようだ。
 あんな風にとは改装のことだろう。シエスタの村へ行く直前、俺はギーシュに物置の権利の買取と工事の手配を命じ、仲直りの後にルイズを連れて中を確認すると、それは予想以上の出来栄えとなっていた。風呂、寝室、キッチン、リビング、トイレと間仕切りがされ、ちょっとしたホテルの部屋のようで、ルイズは目を丸くしたものだ。俺も心底、学院を去ることにならずに良かったと思うほど、室内の作りも調度品も豪華だった。だが、ルイズは物置への宿泊を禁じた。使用するのは構わないが、就寝時は自分の部屋に来いと言う。無論、俺は了承した。
 再びルイズの隣で眠れるのなら、その程度の禁止など何でもない。
その後ルイズは風呂に入ると言って寮に戻り、俺は風呂に入ってから部屋に行くと告げて、部屋の細部を確認してから風呂に入り、懐かしい部屋へと戻ってきたというわけだ。
「お前に部屋を追い出されたからさ、場合によってはあそこに住もうかと思って。ギーシュが無償で工事すると言ってくれたんで、任せたんだよ」
 ルイズに嘘をつきたくないというのは本心だが、金銭や催淫剤のことはこの先も内緒だ。金銭のことが判ったら出所を探られて薬の密売が発覚する恐れがあるし、催淫剤のことが判ったら用途を聞かれてルイズへの淫行が明るみになる可能性がある。ルイズに惚れてはいるが、薬を使っての催眠調教を止めるつもりは今のところない。
「そう。最近あんたたち、妙に仲がいいわよね。ところで話があるから……、ちょっと床に座りなさい」
「あ? 床?」
「座りなさい、犬」
 俺はそっと部屋から抜け出そうとした。何を怒っているのかは知らないが、触らぬ神に祟りなし、である。俺がドアを開けようとすると、ルイズはベッドの上に立って杖を振った。慌てて逃げ出そうと俺はノブを捻ったが、不思議なことに回らない。
「不思議ね……。簡単なコモン・マジックはきちんと成功するようになったわ」
「ル、ルイズ?」
 震える声で俺は尋ねた。再び背筋に悪寒が走り、走ってもいないのに膝が笑い出す。ルイズの口調が普通なのが凄く怖い。
「未だ、四大系統は失敗するけど……、やはり私は日々成長しているのかしら? ねえ、犬」
 俺は必死になってノブを捻った。だが、やはり回らない。
「無駄よ。『ロック』がかかってるもの。ところで犬、ご主人様はね、不安なの。いつかバカ犬がメイドと、ううん、それ以外の女の子かもしれないけど、あそこで暮らし始めるんじゃないかなって。そしたら私どうなっちゃうのかなあ? それにね、あそこの前での話だけど、よく考えてみると、何か誤魔化されたような気がするのよね。メイドとヘンなことをして追い出された犬が、メイドともっとヘンなことをして、この先もメイドとヘンなことをするなんて」
 ルイズの淡々とした声を聞きながら、俺は何度もノブを捻った。しかしどんなに力を込めてもノブは回らない。『ロック』の魔法はどうやら強力にかかっているようだ。
「だから無駄だって言ってるじゃない。ねえ、犬。あんたに足りないのは、どうやら節操みたいね。発情期のバカ犬はそんなに種まきしたいのかしら? 本来ならこれは死罪ものよ。私が優しくて、あんたは幸せね」
 ルイズはベッドから降りてスリッパを履くと、目を吊り上げ、唇を噛み締めながら俺に近づいてくる。シエスタの父親より怖い顔だ。俺はノブから手を離し、扉に背を預けて、その形相に恐怖した。
「私の使い魔のくせに、女の子とヘンなことするなんて百年早いのよッ!」
 言ってルイズは俺の股間を蹴り上げ、俺は床へと崩れ落ちた。
   ★★★
 早朝に目を覚ました俺は、藁の上で身体を起こし、例のごとく寝ているルイズに近づいた。
 昨晩のルイズの怒りは、納得できないことを約束させられた不満と、溜め込んでいた諸々の感情とが爆発した結果だったようだ。俺の股間を蹴り上げて溜飲が下がったのか、その後は以前と変わらぬ態度だったが、ベッドに共に寝ることは禁止されてしまった。ならば物置で寝ると言う俺の意見は却下され、再び藁束の上が俺の寝所となった。だがこれも、何日か甘えさせてやれば改善するだろう。この貴族様は扱い易いのだ。
 俺は例の薬とスポイトを手に、ルイズの寝顔を覗き込んだ。と、その愛らしい口から、不意に小さな声がした。
「――――ばか。――――バカ犬」
 どうやら俺は夢の中でも罵倒されているらしい。さて、どうしてくれようと思いつつ、俺はスポイトに薬を取った。その瞬間、再び声がした。
「――――行かないで」
 それは思わずスポイトを落としそうになるほどの、切ない口調での嘆願だった。ルイズは目を閉じながらも悲しそうに眉を寄せ、同じ言葉を繰り返す。
「――――行かないで」
 スポイトの薬を壜の中へと戻し、それらをバッグの奥深くに仕舞い込むと、俺はルイズの元へと戻り、顔にかかった横髪をそっと払ってやった。
   ★★★
 数日後の晩。
 俺はラグドリアンという湖の畔を一人で歩いていた。別に家出をしたとか、また追い出されたとかではない。トリステイン王国の太后マリアンヌの誕生日を祝う園遊会が開かれるとのことで、それに出席するルイズのお供をして来たのだ。
 湖面には魔法の花火がうちあがり、会場には世界中の美味珍味が並べられ、星空と大きな天幕の下で夜通し舞踏会が催され、更には高級ワインが飲み放題とのことだったが、会場に入れるのは貴族のみ。俺はお留守番である。
 使い魔用の仮設宿舎が用意されてはいたのだが、そこにいたのはキュルケの使い魔のフレイムやタバサの使い魔である竜のシルフィード、ギーシュのモグラやマリコルヌのフクロウなど。他にも猛獣や珍獣が選り取り見取りの中、人間は俺一人だった。当然、出される食事もネズミやミミズなど、俺の喰えるものは殆どなかった。まるで人外としての烙印を押されたようで不愉快になった俺は、宿舎を飛び出すと適当な場所で自分のバッグから保存食を出して食事をし、行く宛てもなく散歩を始めた。
 会場へと行き、ルイズを呼び出してもらって不満を訴えるということも考えた。以前の俺なら間違いなくそうしていただろう。だが、俺はルイズに迷惑をかけたくなかった。調子が狂っているのは自分でも判っている。俺は明らかに先日の寝言の一件以来、ルイズに対して気後れしているのだ。その後はルイズに催淫剤を使うこともシエスタに性的行為を働くこともなく、穏やかに使い魔としての生活を営んでしまっている。それは安らかな日々ではあったが、同時に物足りなくもあった。
 俺は以前のように振る舞うためのきっかけが欲しかった。ルイズもシエスタも他の女も奴隷として考えられるような、身勝手な残忍さを取り戻したかった。それにはもっと高貴な――。
「誰?」
 背後の木々の間で女性の声がした。その聞き覚えのある声に、俺は静かに微笑んだ。
   ★★★
「そうでしたの。今度、係の者に言っておきますわ。人間の使い魔さんもいらっしゃるので、食事など考慮するように、と」
 俺が事情を話すと、アンリエッタは心底同情したように言い、穏やかな笑みを浮かべて手にしたコップの中のワインを飲んだ。
 先刻の問いかけは予想通りアンリエッタのものだった。お祭騒ぎに嫌気が差した彼女はドレス姿のまま自分の天幕をこっそりと抜け出し、供や護衛の者も連れずに一人で湖畔を散歩していたらしい。俺は丁重に挨拶をすると、背にしたバッグの中からワインの壜を取り出し、一緒に飲まないかと誘ってみた。アンリエッタは散歩にも飽き始めていたらしく、俺の申し出を笑顔で了承した。俺は続けて、使い魔と酒を酌み交わしているところを誰かに見られたら姫様の名に傷が付く、と言ってアンリエッタを湖畔の森の中に連れ込み、少し開けた場所に厚めの布を敷いて座るように勧め、木製のコップにワインを注いで恭しく差し出した。無論、布もコップも俺がバッグの中から出した物である。
「それにしても、使い魔さんは何でも持っていらっしゃいますのね。準備がよろしいわ」
 言って微笑むアンリエッタの瞳は既に焦点が合っていない。ワインの中に入れた催淫剤のせいだ。アンリエッタが最初にワインに口をつけてから約十分、頃合だった。
「今日は蒸しますね。姫様、暑くないですか?」
 薬が本当に効いているのかを確かめるために、俺は当たり障りのない言葉で尋ねてみた。
「本当、蒸しますわね。暑いですわ」
 言ってアンリエッタは汗で身体に纏わり付く布地を払うかのように、真っ白なドレスのあちこちを指で摘んで持ち上げ始めた。実際の森の中は寒くはないが暑いというほどではなく、ましてや蒸してなどいない。薬が効いているらしいが、温度には個人差がある。アンリエッタは酒も飲んでいる。相手は一国の王女だ、念のため、もう一段階の確認が必要かもしれない。
「立ち上がってドレスの裾を持ち上げてみたらどうです?」
「そうですわね、それがいいかもしれませんわね」
 冗談めかして言った俺の言葉通りに、アンリエッタはドレスの裾を掴んで持ち上げた。スカート部を膨らませるためのパニエは抜け出る時に脱いできたらしく、純白レース地のガーターソックスが目に眩しい。もう間違いない、薬は効いている。
「パンツだけ脱いで尻を捲くってこっちに差し出せ。指示があるまで返事はしなくていい」
 命令口調で言うと、アンリエッタは黙って指示に従った。ドレスを捲くって高価そうなフリル付きのパンツを脱ぐと、シエスタと大差ないボリュームの真っ白な尻を俺の方へと向けてくる。いい眺めだが尻穴は見えない。
「腰を折って、もっと尻を突き出すようにしろ」
 アンリエッタは言われた通りの姿勢になって、薄く色づいた尻穴を俺の眼前に晒した。秘所は栗色の陰毛に薄っすらと覆われている。俺はバッグの中からローションの入った小瓶を取り出し、中身をたっぷりと手に取った。市販のアナル専用の粘度の高いタイプのものだ。それを剥き出しの尻穴に塗りつけると、王女の口から喘ぎが漏れ始めた。
「ああっ、ふああっ、んんっ、はああっ、ふううっ」
 塗り残したローションを尻たぶに擦り付け、俺はズボンを下ろして既に勃起している陰茎を取り出し、自分で扱きながら亀頭でアンリエッタの秘裂を何度もなぞってやる。
「ふああんっ、んあああっ、くふうううっ、あっあっあああっ、はあああんっ」
 どんどんとアンリエッタの喘ぎが大きくなる。周囲に人気はないものの、このままでは誰に気付かれるか判らない。俺は慌てて指示を出した。
「口を閉じろ。鼻で息をして声を立てるな」
「むんんんんっ、んんんっ、ふんんんっ、んっんっんんっ、んむむんっ」
 薬が効き易いのか、苦しそうに口を閉じながら、尻出し王女は自ら腰を上下に振り始めた。秘所はもう大量の愛液で濡れ輝いている。高貴な秘裂の滑りと柔らかさに俺の限界も近い。俺は自分の手の動きを早めながら、アンシエッタの尻穴に陰茎の先端を当て、空いた手で勃起した陰核を摘み上げた。
「今からお前の尻穴に直接精液を出してやるからな」
「んむんんんんんっ、むんふふふんんっ、ふんふふんんんんっ、んふんんんんっ」
「ほらよ」
 亀頭部分だけを強引に尻穴に差し込んで精液を放ち、同時に陰核を指先で押し潰すと、アンリエッタは腰を何度も跳ねさせ、結果的に自ら俺の陰茎を半分近くまで尻穴に呑み込んで絶頂した。
「むうんんんんんんんんんんんっ!」
 それは一国の王女には似つかわしくない、獣のような唸り声だった。
   ★★★
「なぁ、いい加減これ、外してくんねえかな?」
「ダメよ。そしたらあんた勝手に、またどっか行っちゃうもの」
 済ました顔で、俺の横のルイズが答える。これ、というのは俺の首につけられた首輪のことだ。火竜の皮をなめした後に染め上げたというその首輪は鮮やかな桃色で、ルイズはこれを園遊会の帰りに買い求め、有無を言わさず俺につけたのだ。どうやら俺が会の最中に勝手に宿舎を抜け出したことを知っているらしく、そのことを直接問い詰めてくることはなかったが、言葉の端々に不審の色が濃い。アンリエッタとのことまで知っているとは思えないが、勘のいいルイズのことだ、いつ気付くか判らない。下手に逆らう気にはなれなかった。
 ――高貴な姫であるアンリエッタの尻穴を犯したことで、多少は本来の加虐性を取り戻した俺だったが、相も変わらずルイズには弱い。結局、ここ最近の俺の性行為といえばアンリエッタとの一件だけで、それも前述したような中途半端なアナル・セックス一回のみ。ルイズにもシエスタにも他の女にも手を出さず、溜め込んだ精液の放つ先を見失っていた。
「どこにも行かねえから、頼むよ。外してくれよ」
「ダメって言ってるじゃない。犬に鎖をつけるのは飼い主の義務なんだから」
 首輪に繋がれた鎖を引き、歩きながらルイズが言う。園遊会の翌日からこの数日、学院内でもずっとこんな調子だ。これは自分の所有物であると告げるかのように鎖を振ってカチャカチャと鳴らし、周囲の好奇の視線に怯むこともなく、洋々といたる所を歩き回るのだ。ルイズは使い魔の散歩と言うが、俺にとっては引き回しの刑である。幸い今のところシエスタと顔を合わせることはなかったが、知られるのは時間の問題だろう。もしかしたら既に知っていて、故に俺の前に姿を現さないのかも知れない。
「学院内はともかく、何でこんな人の多いとこ歩くんだよ」
 現在地は王宮前、ブルドンネ街の大通りだ。路上は多くの人で溢れている。当たり前の話だが、辺りの通行人が何事? といった目でじろじろと俺とルイズを見つめてくる。サドとマゾとは表裏一体だが、こんなプレイは嗜好に反する。
「ただの散歩よ。ご主人様に散歩に連れ出してもらえて、あんただって嬉しいでしょ?」
 俺が尚も文句を言おうとした時、人ごみの中から声がした。
「ダーリン、見つけたぁ!」
 足を止めて振り返ると、キュルケだった。周囲の人々を掻き分けて小走りに正面に来ると、艶かしい手つきで俺の顎の下を撫で始める。
「学院の中だけかと思ったら、外でもこんな扱いなのね。でも可愛いわ。ねえ、今晩こそ、あたしのベッドに忍んでいらっしゃいな。ね? いっぱい、ワンちゃんに好きなところ舐めさせて、あ・げ・る」
「ぐえっ」
 ルイズに無言で鎖を引っ張られた俺に、返答のできるはずがなかろう。
「ああ、あんた、わわ、判ってんでしょうね? キュルケに、ツェルプストー家の女に、ししし、尻尾を振ったらどうなるか」
 ルイズは可愛い顔を今まさにブレスを吐かんとする火竜のように歪めた。目が吊り上り、鳶色の瞳が怒りで燃え上がっている。その剣幕に恐れをなしたのだろう、キュルケは現れた時以上の速さで人波へと逃げ込んで姿を消した。
「――前に言っただろ、呼ばれても行かねえって」
「ふん、どうだか」
ルイズはぷいっと顔をそらすと、鎖を引いて歩き始めた。と、道端に座り込んで酒を飲んでいた一人の男にぶつかった。
「いてぇな!」
 相手は汚れた制服を着た中年の大男で、この国の兵士らしい。路上で飲酒していたということは休日なのだろうが、腰には剣を帯びている。淀んだ目を見ると、相当に酔っ払っているようだ。
「なんでぇ、貴族のお嬢さんかい。ほんじゃ、ぶつかった侘びに、俺に一杯ついでくれ」
 男はそう言って立ち上がり、ルイズの前にワインの壜を突き出した。
「離れなさい! 無礼者!」
 ルイズが叫ぶ。途端に男の顔が凶悪に歪んだ。
「何でぇ、つげねえってか。貴族様はこの国を守ってる兵隊にゃあ、つげねえってのかい!」
 俺は仕方なく手加減なしに男の股間を足で蹴り上げ、無言でルイズの手を取ると全力で駆け出した。
   ★★★
「お前なぁ、相手は酔っ払いだぞ。ぶつかったのはこっちなんだし、言い方ってもんがあるだろうが」
 人ごみを抜けて倉庫らしき建物の裏まで来ると、俺はルイズにそう言った。言いながらも周囲に目を配り、ゆっくりと呼吸を整える。男が追ってくるかとも思ったが、幸い辺りに人影はないようだ。
「何よ、平民の分際で近寄るのが悪いんじゃないの。あんた、私が悪いって言うの?」
 噛み付くようにルイズが答える。まだ息が荒い。俺は背後に回って小さな背中を何度か擦ってやった。
「当たり前だ、俺は呆れたよ。お前、あのままだったら絶対、あの男の股間を蹴ってたろ?」
「あんただって蹴ったじゃない。それに、絶対に蹴らなかったもん」
「俺は仕方なくだなぁ、あんだけ酔っ払ってんのを怒らせちまったら、他に方法もねえだろうが。つーか、絶対って何だ? 何で断言できんだよ? 股蹴りはお前の得意技だろうが」
「だって、触れるのやだもん」
「何だそれ? いつも俺の切ない部分を蹴ってんじゃねえか」
「あ、あんたのは、い、いいんだもん。つつ、使い魔だし」
 俺は苦笑した。俺のには触れてもいいが、他の男のは嫌だ、というのは嬉しいことではあるが、この場合の触れるとは蹴るということだ。言い換えれば、他の男のは蹴れないが、俺のは蹴れる、ということで、喜んでいいのか判断に迷うところである。
 俺はルイズの正面に回りこんでしゃがみ込み、その小さな顔を覗きこんでみた。途端にルイズは顔を赤らめて背ける。拗ねた横顔のツンと突き出した唇がなんとも愛らしい。このところ発散していなかったせいで、俺は堪らなくなった。
「ルイズ」
「あによ」
「キスしてもいいか?」
「な、何言ってんのよ。ダ、ダメに決まってるじゃない!」
「お前の可愛い顔見てたら、どうしてもしたくなっちゃったんだけど。駄目か?」
「あ、あんた、メイドと、ヘヘ、ヘンなことしたじゃない! そ、それなのに、ご主人様と、キキ、キスなんて――、むぐっ……」
 真っ赤になって身体をもじもじとさせるルイズの肩をつかみ、俺は身体を伸ばして強引に唇を奪った。触れ合わせるだけのソフトキスだ。すぐに離すと、例の如く、う~~~~、と唸りながらルイズが睨みつけてくる。心なしかいつもより表情が穏やかではある。
「悪い、どうしても我慢できなくて」
 ルイズはフンッとそっぽを向いたが、やがて俺の方へ顔を向け、口を開いた。
「ここ、今回だけよ。い、一応、たた、助けてもらったし。つつ、次はないんだから」
 言いながらルイズは、手を伸ばして首輪を外してくれた。
   ★★★
「しっかし、凄い騒ぎだな」
 俺とルイズは街を歩いていた。地区の祭りでもやっているのか、楽しそうな見世物小屋や、屋台や露店が通りを埋めている華やかな一角だ。先刻の大通りからは離れた場所で、例の酔っ払いと遭遇する可能性はないだろう。仮に見つかっても俺は相手を殴り飛ばすつもりでいた。ルイズにキスをした今では気力が満ちている。それだけで兵隊相手に勝てるとも思えないが、例えこの場で負けたとしても、相手が俺や貴族であるルイズを殺すことはないだろう。ならば金を使って男の素性を調べ、念入りに準備をした上で、俺たちに関わったことを悔やむほど残忍な報復を与えてやる。最後に勝つのは俺だ。
「ほんとね」
 言いながらルイズは俺と繋いだ手の指を動かしている。外した首輪の替わりに手を繋ぐよう言い出し、俺がそれを受け入れてから延々と繰り返されている動作だ。常に指先の感触を確かめるかのように、にぎにぎ、にぎにぎ、と動かしながら、時々きゅっと強く握ってくる。そんなルイズの足取りは軽く、浮かれていると言っていい。
 と、急にルイズは立ち止まった。見ると、通りの先にある露天に目を止めたらしい。宝石商らしく、立てられたラシャの布に指輪やネックレスなどが並べられている。
「見たいのか?」
 俺が尋ねると、ルイズは頬を染めて頷いた。俺はルイズの小さな手を引いて、店の前へと連れて行った。近づくと、頭にターバンを巻いた商人が揉み手をして近寄ってくる。
「いらっしゃい! 珍しい品を取り揃えましたんで、見て行ってくださいよ」
 ルイズは一頻り首を動かして商品を眺めていたが、やがてその動きを止めた。視線の先には貝殻を彫って作られた真っ白なペンダントがあった。周りに大きな水晶がたくさん嵌め込まれているが、よくよく見ると稚拙なつくりだ。だがルイズは繋いだ手の指を動かすことも忘れ、そのペンダントをじっと見ている。どうやら気に入ってしまったようだ。
「欲しいのか?」
 問いかけると、ルイズは困ったように首を振った。
「今は、持ち合わせがないもの」
「それでしたらお安くしますよ。五エキューにしときます」
 商人はにっこりと微笑んだが、その値段でも手元の金額では足らないのだろう、商人の意図に反して、ルイズは黙り込み俯いてしまった。俺はルイズに断ってから繋いだ手を離し、背にしたバッグを肩から下ろすと、内部の下底の下から小袋を取り出した。いざという時のために持ち歩いている、財布代わりの袋だ。中には当然、持っていても不自然にならない程度の硬貨が入れてある。
「五エキューって言うと、これでいいんだよな」 
 この世界の貨幣価値は既に頭に入れてある。商人に金貨を渡す俺を見て、ルイズが目を丸くした。
「な、何であんた、お金持ってんのよ?」
 失態だ、と俺は思った。ルイズから給金を渡されているわけでもない俺が、金貨を持っているのは不自然極まりない。
「――以前から俺、時々厨房に行ってただろ? たまに皿洗いを手伝ったりすると、マルトーの親父さんは賃金払ってくれるんだよ。その金だ」
 マルトー親父は高給取りだし、学院内では平民仲間に羽振りがいいことで知られている。咄嗟に口にした言い訳だったが、辻褄は合っていた。但し、後で口裏合わせの必要がある。
「良かったですね、お嬢さん。きっといいデートの記念になりますよ」
「でで、デートじゃないわ。ささ、散歩よ」
 商人のお愛想を否定すると、ルイズは真っ赤な顔で俺を見上げた。
「ここ、今度からお金貰ったら、ちゃ、ちゃんと言いなさいよね。コック長に会った時、お、お礼が言えないじゃないの」
「悪かった。今度からちゃんと言うよ」
 俺がそう言うと、ルイズは唇を突き出して唸り始めた。しかし表情は微笑みに近く、はにかんでいるようにも見える。商人から直接ペンダントを手渡されると、それは確かな笑顔へと変わった。
   ★★★
 その日の夕方。
 俺は、以前にギーシュと決闘をしたヴェストリの広場のベンチに腰掛けていた。右隣にはルイズ、左隣にはシエスタという、両手に花と言えば聞こえがいいが、俺としては過酷な状態である。
 街から学院に戻ってすぐ、ルイズは通りがかった学園付きのメイドに命じてシエスタをこの場所に呼び出した。シエスタは仕事中だったが、俺も一緒らしいと言ってその旨を告げると、マルトー親父は二つ返事で臨時の休憩時間をくれたという。そのことを淡々とした口調で説明すると、シエスタは躊躇することなく俺の隣に座り、以後は無言を貫いている。そしてルイズは、シエスタを待っている時からずっと押し黙ったままだ。これから何が起こるのか、俺には想像もつかない。はっきり言って胃が痛い、捻り上げられているように痛い。
 不意に膝の上に乗せていた手が握られた。握ったのはシエスタだ。左を向くと、嬉しそうに微笑んでいる。流石にこの状況を調教の一種だと勘違いしてはいないらしく、態度は平静だ。
 と、今度は右の手が握られた。握ったのはもちろんルイズだ。右を向くと、ルイズは顔を背けている。そうしながらも、例の如く、握った指先を動かし始めた。
 それを見てか、シエスタが身体を俺に摺り寄せてきた。布越しとはいえ、腕に当たる乳房の感触が気持ちいい。二人きりの場であれば、露出させて荒々しく揉みしだきたいところだ。
 やはりと言うか何というか、ルイズは自分からそこまでは出来ないらしく、シエスタを睨んで、う~~~~、と唸り始めた。その視線をものともせず、シエスタは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。堪えきれなくなったのか、ルイズは口を開いた。
「き、今日、わわ、私、キ、キキ、キスされたわ」
 何で今更キスのことなんか、と俺は思ったが、そこで初めて気付いた。意識がある状態でのルイズとのキスは、俺が召喚された時と、胸を触った時、そして本日の三回。しかし前の二回はルイズからであり、俺からキスしたのは今日が初めてだ。ルイズの言葉はそのことを言っていて、その事実を伝えるためにシエスタをここに呼び出したに違いない。
 だがシエスタは動じることなく、むしろルイズに同情するかのように言葉を紡いだ。
「今日はして頂いてませんけど、私は今までに四十三回、旦那様からキスされましたわ」
 数えてたのかよ? と突っ込みを入れられる状況ではなく、俺は黙ってルイズを見た。案の定、怒りに身体を震わせている。シエスタから俺へとその目が動く。
「だだだ、旦那様ってなに? よよよ、四十三回ってどういうこと?」
「いや、それはだな――」
「初めてを捧げたお相手ですもの。旦那様と呼ぶのは当たり前ですわ」
 シエスタが横から火に油を注ぐ。
「わわわ、私だって、むむむ、胸、胸を触られたわ」
 ルイズが言うと、シエスタはルイズの胸をじっと見つめ、真顔で言った。
「……可哀想に」
 もはや注いでいるのは油ではなく、高燃焼性で発熱量の大きいジェット燃料と言っていい。考えてみればタルブ村から学院に戻って以来、シエスタと学院内で会話することはあっても、性行為は一度もしていない。更に自慰さえ禁じられ、俺とルイズが縒りを戻したこともあり、不満が溜まっているに違いない。早急にどうにかしてやりたいが、それをルイズに言い出せる筈もなく――。
「かかか、可哀想ってなによッ! こここ、これから成長すんのよッ!」
 空しく響くルイズの叫びに応えるかように、俺の胃がギリリッと痛んだ。
   ★★★
 実際には、ルイズがシエスタを呼び出した理由は俺の予想外のものだった。延々と三つ巴の噛み合わない口論を続けた後、ルイズはベンチから立ち上がり、俺とシエスタを前にして腕を組むと、悔しそうに言ったのだ。
「や、約束だから、しし、してもいいわよ、ヘヘ、ヘンなこと。た、但し三日、そう、三日前に届け出なさい。そそ、それと、た、たまにだからね。いいい、いつもはダメ」
 これには俺も驚いた。ルイズが同様の台詞を物置の前で言ったことは既にシエスタに告げてあったが、まさかシエスタ本人の前で許可を出すなんて。限定的ではあるものの、まるで認知宣言だ。シエスタは俺以上に衝撃を受けたようで、唖然としたままルイズを見つめていた。先刻までの口論でルイズに常勝していた時の、余裕の笑みの影すらなかった。
 ルイズは黙り込む俺とシエスタに、必ず避妊をすること、ルイズの部屋を使わないこと、行為の後は必ず風呂に入ることなどを要求し、俺とシエスタが無言で頷くと、再度必ず三日前に許可を得るよう念を押し、返事も待たずにそのまま背を向けた。
「……ミス・ヴァリエール」
 シエスタがその小さな背中に声をかけた。感謝と同情が入り混じったような、温かく切ない複雑な声色だった。
「ふん。ここ、こんな犬としたいなんて、あああ、あんたも物好きね。そ、それが言いたかっただけよ。よよ、呼び出して、わわわ、悪かったわね」
 シエスタは立ち上がり、そっとルイズの背中に抱きつくと、静かに泣き始めた。ルイズは一瞬だけ身体を強張らせたが、そんなシエスタを振り払いもせず、困ったように肩を竦め、無言で空を仰いでいた。
 俺はかけるべき言葉も持たず、そんな二人を見つめ続けた。
   ★★★
「なぁ、お前、何であんなこと言ったんだ?」
 一頻り泣いたシエスタが頭を下げて厨房に戻って行き、二人きりになった後で、俺はルイズにそう尋ねた。
「あんなことって?」
 元の場所、ベンチの俺の右隣に座ったルイズが僻んだように言う。
「シエスタに直接、俺と、その、してもいいとか……」
「あによ、言わない方がよかったの?」
「そうじゃねえけどさ」
「口にした以上、約束は守るわよ。それに、あんたが言ったんじゃない、私があのメイドの立場だったらって。色々と考えてみたら、このまま放っておくのも、ちょ、ちょっとだけ可哀想に思えただけよ」
 尚も色々と聞くと、どうやらルイズは俺にキスされたことで自分に自信を持ち、更にペンダントを買ってもらったことで、シエスタに引け目を感じたらしい。単純と言ってしまえばそれまでだが、それは大きな心境の変化に違いない。あれだけ平民を見下していたルイズが、シエスタに呼び出したことを謝り、更に抱き付かれても文句すら言わなかったのだ。
「でも、ダメだかんね」
 問答が終わって僅かな沈黙が流れた後、ルイズはそう言って俺の手を握った。指先は動かさず、ただしっかりと握り締めてくる。
「判ってる、ちゃんと三日前に、お前に言うよ。約束は守る」
 俺は可能な限り優しい口調で言った。ルイズはシエスタに譲歩したことで少なからずプライドを傷付けている。あるいは泣きたいのはルイズの方だったかも知れない。正直、先のことは判らないが、今の時点ではそんなルイズとの約束を破るつもりはない。
「……違うもん」
 ルイズは俺の言葉を否定し、唇を尖らせる。
「何が違うんだ?」
 俺が問いかけると、ルイズは黙って俯き、やがて小さな声で呟いた。
「……メイドが一番じゃダメだかんね」
 俺は思わず吹き出した。ルイズには先刻の約束よりも、その問題の方が重要らしい。その問題とはつまり、シエスタよりも自分のことを好きでいろということだ。捻くれた物言いがそれを裏付けている。言葉の背景にあるのは独占欲や嫉妬などだろうが、それでもルイズは自分が一番でなければダメ、とは言わなかった。傲慢で我侭なご主人様のなんと可憐しいことか。
「あ、あんた、なな、なに笑ってんのよ! わわ、判ってんの?」
 笑い続ける俺に目を剥き、ルイズが横から身を乗り出してくる。
「判ってるよ。お前が一番だ」
頭を撫でてやりながら俺がそう言うと、ルイズの喉がコクンと小さく鳴った。一旦俯いてから顔を上げ、瞳を揺らすことなく俺の目を見つめてくる。その真剣な眼差しに俺が微笑みで応えると、ルイズは俺の耳に口付けるかのように身体を寄せ、静かな口調で呟いた。
「――裏切ったら、お仕置きじゃすまないかんね」
 恐怖政治の開幕を告げられ、自然と俺は笑いを止めた。
   ★★★
 その日の夜。
「そ、それを、ささ、触れば、い、いいのよね?」
 ベッドの上で下半身を露出させた俺の一物を、離れた場所から震える指先で示し、ネグリジェ姿のルイズが聞いてくる。俺は無言で頷いて、その指近くへと腰をよせた。
「ひいっ!」
 途端にルイズは後ろへ跳び下がる。その怯え方が可愛くて、俺は更に陰茎を近付けた。
――物置の風呂からルイズの部屋へと戻った後、俺は恐る恐るルイズにシエスタとの行為の許可を願い出た。ヴェストリの広場での認知宣言当日ということで少々心苦しかったが、シエスタの欲求不満は放置できなかったし、何より俺の身体が性行為を求めていた。物置で自慰してもいいのだが、今となってはそれも虚しい。
 拗ねた口調ではあったが、ルイズは俺の申し出を許してくれた。俺は丁重に礼を言い、溜め込み過ぎていて辛かったことを告白した。すると、ルイズは驚くべきことを口にした。
「なら、わ、私が、そそ、その、し、しし、してあげるわよ」
「――それって、お前を抱いていいってことか?」
 顔だけでなく、腕や足まで真っ赤にしたルイズに、俺は発言の意図を尋ねた。
「そそ、そんなのダメに決まってるじゃない! そ、そそ、それ以外でよ」
 どこまで許してもらえるのかを確認するのは難儀なことだった。素股、フェラチオ、イラマチオ、クンニリングスなど、聞いてもルイズは言葉を知らず、意味を説明すると、その度に罵りながら蹴ってくる。幸い股間は蹴られずに済んだが、俺の身体は別の意味で辛かった。
 結局、ルイズの身体には触れないことを条件に、一物を手で擦ってくれるということになったのだが――。
「ちょちょ、ちょっと、近づけないでよ! 近づけないでッ!」
「近づけなかったら触れないだろうが」
「やだっ! やめっ! 判ったからッ! ささ、触るから離れてッ!」
 矛盾した叫び声を上げながら、下半身裸の俺から逃れようと、ルイズはベッドの上を転がり回る。まるでレイプ直前のような状況に、俺は嬉々としてその後を追い続け、自ら陰茎を擦り始めた。
「あああ、あんたっ! ななな、なにしてんのよっ!」
 壁際に追い詰めたところで、ルイズが俺の行為に気付き、怯えた声で叫ぶ。
「こうやって擦って欲しいんだけど」
「むむむ、無理っ! やっぱダメっ! できないっ!」
 と、身体全体で嫌々をするルイズのネグリジェの裾が捲れ、幼い秘裂が露になった。思わず覗き込もうとした俺の視線に気付き、ルイズは慌てて裾を押さえた。
「な! 見た! 見た見た! 見た────ッ!」
「うん、見た。でも、お前がパンツ穿かないのが悪いんだろうが」
「寝る時は穿かないんだもん! 決まってるんだもん!」
「まあ、いいけどな、それで。それよりこれ、こうやってだな」
「イヤ――――――――――――――ッ!」
   ★★★
 陰茎に何かが触れる感触に、俺は目を覚ました。頭を起こすと、ベッドの上に座ったルイズが、片手で自らの顔を覆い、もう一方の腕をいっぱいに伸ばして、握った杖の先で恐々と俺の項垂れた一物を何度も突いている。
「――何してんだ、お前?」
「起きたの? わわ、悪かったわね。そ、その、蹴っちゃって」
 恥ずかしそうに謝るルイズの言葉に、俺は自分の置かれている状況を理解した。一物に手で触れることを嫌がるルイズに股間を何度も蹴り上げられ、どうやら気を失っていたらしい。窓の外が暗いことを考えると、意識を失っていたのは短時間のようだ。
「まあ、いいけどさ。で、お前は何してんだ?」
「だ、だって、つ、辛いんでしょ? だだ、だからよ」
つまり、精液を溜め込み過ぎて辛い俺のことを思って、杖で射精に導こうとしてくれているらしい。生憎、無機物でツンツン突かれて限界を迎えるほど俺の息子は繊細じゃない。あれだけ蹴っておきながら、この仕打ちはないだろう。
「見せてくんねえかな、お前の裸。触んなくていいから、俺が自分でやるから」
「なな、なに言ってんのよ! みみみ、見せるわけないでしょ!」
 突然の俺の言葉に動揺したのか、顔を覆った手を外してルイズは叫んだ。が、視線を一瞬だけ陰茎に向けると、突いていた杖を放り投げ、慌てて両手で再び顔を覆う。
「前は着替える時とかに、平気で見せてたじゃねえか」
「あ、あれは、し、仕方ないじゃない。あああ、あの時は気になんなかったんだもん」
「じゃあ今は気になんのか? 自分の使い魔に裸を見られるのが恥ずかしいのか?」
 そう言うと、ルイズは身体を小さく震わせた。俺の言葉に貴族としてのプライドが刺激されたのだろう、ベッドから立ち上がると、覆った手を外して真っ赤になりながら口を開いた。
「恥ずかしくないもん! 使い魔に見られたって平気だもん!」
 俺は、ご主人様のそのお言葉に甘えることにした
   ★★★
「そ、そんなにジロジロ見ないでよね。あ、あんまりジロジロ見たら、おお、お仕置きだかんね。なな、なんて使い魔なの、あ、あんたってば」
染み一つない白い肌を全身赤く染めながら、顔を背けたルイズが言った。見るなと言っても無理な話だ。
 全体的に骨張った細い身体、、上向きに尖った薄い胸、その先端には薄桃色の小さく愛らしい乳首と乳輪、細く綺麗な脚、肉付きの少ない小さな尻、そして柔らかそうな幼い無毛の局部。久し振りに見たルイズの裸を前に、俺は陰茎を擦る手の動きをどんどん加速させていく。ベッドの脇に共に全裸で向き合って立ってから既に十数分、そろそろ限界が近い。
 少しだけ近付いてルイズの身体の匂いを嗅いでみる。ほのかに甘い少女の体臭が、陶然とした意識を更に酔わせてくれる。
「ちょ、ちょっとやめ、やめなさいよ。な、なな、なに嗅いでんのよ!」
「前にも言ったろ、別に嫌な匂いじゃねえ。それどころか凄くいい匂いだ」
「ばば、ばっかみたい! あ、あんたってば、ほほ、ほんとに犬ね!」
 ルイズは身動ぎながら文句を言うが、決して俺の方を見ようとはしない。恥ずかしそうな全裸の少女に罵られながら、自らも全裸で自慰をしているという背徳感。堪らなくなった俺はルイズの視線の先へと回りこみ、腰を突き出して自ら擦り続ける陰茎を晒した。
「ちょちょ、ちょっと、なな、なに見せてんのよッ!」
「お前に見てて欲しいんだ。大好きなお前に、俺が気持ちよくなるところ、見てて欲しいんだ」
 言うと、ルイズは怯えたように身体を竦ませ、忙しなく瞳をさ迷わせながらも、渋々と俺の一物を見始めた。俺の手の動きに合わせるかのように呼吸は少しずつ荒くなり、目線の動きがゆっくりと固定されていく。生唾を飲んでいるのか、何度も喉を鳴らし、時折小さな舌を出しては唇を湿らせている。そんなルイズを前に、俺は限界を迎えようとしていた。
「ルイズ、お前にかけたい」
「え? ええっ? ななな、なに言ってんの、あんた?」
「お前に精液をかけたい。そのまま動くな」
 こんな行為で間違って妊娠させるわけにもいかず、流石に陰部や尻は遠慮して、俺は屈みこんでルイズの足に精液をぶちまけた。事前の約束で肌に陰茎を擦り付けることは出来なかったが、それでも並んだ両足の脛から爪先を粘液で汚していくのは心地良かった。ルイズは身体を固まらせ、精液をかけられる度に短い悲鳴を上げ続けたが、願った通りにその場を動くことはなかった。
「ありがとうルイズ、おかげで楽になったし、気持ちよかったよ」
 全てを出し終わった後で俺が礼を言うと、自分の足元をじっと見つめていたルイズは、錆付いたロボットのような動きで首を上げた。そして呆けた表情のまま何度か深呼吸をし、徐々に正気を取り戻すと、再び自分の足元を見つめて小刻みに身体を震わせ始めた。
「ご、ごご、ご主人様に、にに、臭い付けするだなんて――」
「臭い付け? ああ、マーキングのことか」
 放出先として足を選んだのは咄嗟の判断だったのだが、言われてみれば犬の マーキング、つまり縄張り宣言と言えなくもない。プライドの高いルイズのことだ、そこまで許す気はなかったのだろう。催眠時には全身に何度もかけていたが、そのことを言えるわけもない。俺は取り敢えず謝っておくことにした。
「ごめんな、ルイズ。でもまあ、これで、お前は俺のものってことで」
「こっ、ここっ、この、バカ犬―――――――――――――ッ!」
 そして俺は、自分の精液の付いた全裸美少女の足で股間を蹴り上げられるという、貴重な体験をすることとなった。
   ★★★
 二日後の午前。俺はチクトンネ街という歓楽街の裏通りを一人で歩いていた。目的は一軒の賭博場だ。ギーシュの話では、夜間労働者を客とする早朝営業の店で、払い戻し率が高いことで有名らしい。 
――シエスタ認知宣言以降、ルイズは俺の自由行動を大幅に認めてくれていた。但し、シエスタとの会話は許可するが勝手に性的行為はしないこと、夜には寮の部屋へ必ず戻ってくること、など例によって幾つかの制約付きである。だが、約束を守るのならば、今後はルイズが命じた時以外、好きに過ごして構わないと言う。以前からある程度の自由を得てはいたが、それを黙認とするならば、今回は公認と言える。当然、俺は受け入れた。制限付きとはいえ、これで晴れて日中は自由の身だ。
 驚いたことに、必要な物はこれで買え、とルイズは小遣いをくれた。今後も定期的に給金として与えるという。たいした金額ではなかったが、俺はその心遣いに感謝した。同時に、これで金銭問題が解決したことにも安堵していた。仮に大金を持っていることが発覚しても、街の賭場で大勝したことにでもすれば、一応の言い訳が成り立つからだ――。 
そして現在、俺はその言い訳に使うための店を探しているというわけだ。中に入るつもりはないが、場所だけは確認しておきたい。
「使い魔さん?」
 不意に若い女性の声で呼びかけられ、俺は足を止めた。振り返ると、灰色のローブに身を包んだ女性が立っていた。フードを被っていて顔は見えないが、声と物言いには覚えがある。
「姫様? どうしたんで――」
しっ! と小声で言われ、手で口を塞がれた。アンリエッタは俺の後ろに身を隠し、息を潜めている。歓楽街に王女という組み合わせだけでも困惑している俺に、この状況が理解できるはずもない。
と、表通りの方から、息せき切った男たちの声が聞こえてきた。
「あっちを捜せ! なんとしても殿下をお捜しするのだ!」
「ブルドンネ街に向かわれたかもしれぬ!」
どうやらアンリエッタを捜しているようだ。やがて若い兵士が一人、焦燥した様子で裏通りに現れると、アンリエッタはフードを深く被り、俺の耳元で囁いた。 
「わたくしにじゃれ付いてくださいまし。恋人のように」
 え? と思う間もなく、アンリエッタは俺の手を素早く握り、ローブの隙間からその内側へと導くと、自身の豊かな胸へと押し当てた。中に着ているのは胸元の開いたドレスらしく、指先の一部に素肌が触れている。
「このまま」
 アンリエッタは俺に抱きつき、再び耳元で睦言のように囁いた。恋人の振りをして兵士をやり過ごそうというのだろうが、こんな機会を見逃す俺ではない。それでも念のため、尋ねてみる。
「恋人のようにしていいんですね?」
「ええ」
 近付いてくる兵士を気にしてか、俺と視線すら合わせずにアンリエッタが言う。当初の予想通り、湖でのことも含め、隙の多い少女らしい。
「じゃあ、失礼します」
「え? んむぐっ……」
 言質を得た俺はアンリエッタの頭を抱え込み、驚愕に開かれた口に自分の唇を押し付けた。舌を入れて強引に絡めながら、ドレスの胸元を引き摺り下ろし、ローブの中で剥き出しになった柔らかな乳房を強く揉みしだく。
「んぶっ、まっ、るれっ、待っへ、むぶっ、ふらはいまひ、んぶっ」
 当然、ここまでの行為は予想していなかったのだろう。アンリエッタは俺を押し退けようとするが、それを許すほど俺は甘くはない。逃げられないように体重をかけ、その身体を通りの壁に押し付けてから、指先で乳首を摘んで転がしてやる。併せて片足を曲げて膝頭でローブの上から下腹部を擦り、時折舌を戻しては溜めた唾液を無理矢理飲ませていると、徐々に抵抗が弱まっていく。
兵士の様子を窺うと、俺たちから目を逸らして背後を通り過ぎようとしていた。路上で半ば強姦されかかっている姫君の思惑通り、盛った恋人同士が路上で事を始めたのだと考えているに違いない。だが全く興味がないわけではないらしく、その足取りは鈍い。俺は唇を離し、アンリエッタに耳打ちした。
「後ろにいます。気付かれますよ、お静かに」
 言って再び唇を奪い、前の行為を繰り返しながら、頭を抱え込んでいた手を尻に回し、指先でローブ越しに尻穴を何度も撫で上げる。
「んぶうっ、しょっ、んむぐっ、しょんなっ、んむぶっ、ぶじょうら」
 多分、そんな不浄な、とでも言いたいのか。だらりと両腕を下げているところを見ると、俺の行為を受け入れることも拒絶することも出来ないのだろうが、その瞳は虚ろだ。鼻息荒く全身を震わせ、結局はされるがままになっている。このまま高みに導いてやるのも面白い。俺は尻穴を撫でていた指をその窪みへと突き入れた。布越しのために先端の一部しか入らないが、アンリエッタにとっては予想もしない事態だったに違いない。途端に下げていた手を俺の腕に伸ばし、その行為を止めさせようともがき始めた。だが、別の箇所をも愛撫されている十四歳の少女に、俺を振り解くほどの力はない。
「おぶっ、おらめにっ、んぐぶっ、お止めにらっへ、んぶぐっ、くばはいまひっ、むぶぐっ、お許ひっ、んもごっ、くりゃはいっ、んぐむっ、お許ひぃ、んぶむっ、ゆぶひふぇ」
 どんなに懇願されようとも、既に言質は取ったのだ。
 兵士が裏通りから姿を消した後も俺は王女の身体を弄び、その頃にはアンリエッタの腕は再び俺の背中へと回されていた。
   ★★★
「確かめたいことがあって城を抜け出てきたのですけれど、やはり騒ぎになってしまったようですわ」
 通りを入った飲食店の裏で、呼吸と衣服を整えた後、アンリエッタが小声で言った。王女としての厳かな顔つきに戻ってはいるものの、表情は暗く、未だ頬を赤く染めている。その理由は絶頂の余韻ではなく羞恥だろう。何しろ路上で強引に尻穴を愛撫され、途中からは俺にしがみ付き、自ら舌まで絡めてきたのだ。事の後で俺を責める言葉のひとつもない。自分を恥じているのは明白だった。
「確かめたいことって何ですか?」
 宥めるように優しく俺は尋ねてみた。このお姫様には会う度毎に、キスやアナルセックスなど、いい思いをさせて貰っている。可能なことなら力になってやってもいい。
「それは――」
 言いかけて、アンリエッタは俺を見つめた。瞳が泳いでいるところを見ると、何か迷っているようだ。安心させるために無言のまま一度ゆっくり頷いてやると、アンリエッタは薄く微笑み、やがて口を開いた。
「――使い魔さんに、お聞きしたいことがあったものですから」
俺は思わず後ずさった。まさか湖の一件を思い出したとかじゃないだろうな? 確かに俺は湖畔の森でアンリエッタに催淫剤を飲ませてアナルセックスもどきをした。だが、本音を言えばそこまでするつもりはなかった。尻穴に亀頭を差し込んで直接射精はしても、それ以上陰茎を挿入するのは後の楽しみにしておくつもりでいたのだ。だからこそ湖では一度の射精で我慢し、アンリエッタを天幕へと帰したのだが、そんな言い訳が通用するとも思えない。中途半端だったとはいえ、一国の王女を騙して菊座を犯したことが明るみになれば、極刑は免れまい。異世界にて尻穴強姦により死刑、なかなか嫌な死に方だ。
「……聞きたいことって何です?」
 一頻り逡巡した後、様々な覚悟を決めて、俺は問いかけた。
「実はわたくし、ラグドリアン湖で使い魔さんとお会いしたことは覚えているのですが、その後の記憶が曖昧で。ですから、あの場所で何かあったのであれば教えてくださいますか?」
 問い返されて俺は考え込んだ。自白させるための罠ということもある。真剣な表情を見れば発言が嘘だとも思えないが、だからといって、自分から尻振って俺の陰茎を呑み込んで絶頂してました、などと言える筈もない。
「何もなかったのならばそれでよいんですの。ですが――」
黙り込む俺を見かねたのか、困惑した面持ちでアンリエッタが再び言葉を紡ぎ、次いで軽く唇を噛んで口ごもった。その顔は先刻以上に赤く、片手を頬に当てている。
「ですが?」
 何となく話の矛先が変わってきたようで、俺は続きを促した。
「――その、なんといいますか、あの日から……」
「こちらにはいらっしゃらないようです!」
 突然、遠くで男の声がした。続けて別の男の声が聞こえたが、遠過ぎて何を言っているのかまでは判らない。とは言え、アンリエッタを探している兵士たちなのは間違いない。
「……付いて来てくださいまし」
 そう言うと、アンリエッタは俺を促し、忍び足で歩き出した。
   ★★★
 アンリエッタに案内されたのは街中にある一軒の邸宅だった。それなりに豪華なつくりで、調度品にも金がかけられている。聞けば、元はさる貴族の別宅で、没落時に王家が温情により権利を買い取った後、公式には放置されているらしい。ふとしたことから邸宅の存在を知ったアンリエッタは、口外しないよう言い含めた上で仲のいい侍女に屋敷の管理を任せ、以後は密行の際の拠点としているとのことだった。思い返してみれば、初対面の時も、湖での時も、そして今日もこの王女は一人で行動している。かなりのお転婆姫なのかもしれない。
「……取り敢えずは一安心ですわ」
 リビングのソファに腰掛けると、アンリエッタはそう言って大きく息をついた。侍女が屋敷を訪れるのは多くて月に三回程度とのことだったが、室内は清潔で、テーブルの上には花まで飾られている。ちなみに常駐している者はなく、現在は俺とアンリエッタの二人だけだ。
俺が立ったまま室内を観察していると、アンリエッタは自分の隣をポンポンと叩き、次いでその場所を手で示した。
「どうぞ、お座りになってくださいまし」
 俺は指示に従うことにした。寄り添うような真似はせず、少しだけ距離を取って座る。アンリエッタはそんな俺を微笑みながらじっと見ている。邸宅に着くまでの道中でも様子を見ていたのだが、湖でのことは本当に何も覚えていないようだ。ならば何故、兵士に追われるような思いをしてまで城を抜け出てきたのだろう? 俺は抑え切れずに問いかけてみた。
「で、話の続きなんですが、何です?」
「……いつもは身代わりを置いておりますの」
「身代わり?」
 言葉の意味を理解できずに俺が続けて問うと、アンリエッタは朴訥と話し出した。普段は城を抜け出す際、件の侍女に身代わりをさせていること、今日はその侍女が休みだったこと、止むを得ず何もせずに城を抜け出てきたこと、その為に衛兵たちが自分を探していること、どれも納得できる話だったが、先刻の話にどう繋がるのか俺には判らなかった。何か誤魔化しているようにも思える。言い辛いことなんだろうか?
 俺は催淫剤を使って自白させようかと考えた。このままでは要領を得ない。アンリエッタがこの邸宅を時々使用していることは侍女しか知らないらしいが、それでもここに兵士が来たら誘拐犯扱いされかねない。尻穴強姦で捕まるよりはいいかも知れないが、やはり末路は死刑だろう。まあ、姫様ご自身が取り成してはくれるだろうが。
 アンリエッタは困ったように身を竦ませながら話し続けている。しかし、その内容は既に支離滅裂だ。城を抜け出る際は街中に張り巡らされている秘密の地下通路を使っていること、母である太后に即位を促されていること、自分は女王になどなりたくないこと、スレトス発散のための告白にも思える。心療内科の医師でもない俺にどうしろというのか。
「姫様」
 俺は俯いて語り続けるアンリエッタの両肩に手をやり、強引に自分の方へと上半身を向けさせた。アンリエッタは犯されるとでも思ったのか、更に身体を萎縮させた。薄いブルーの瞳が怯えたように揺れている。
「言いにくいことでも、恥ずかしいことでも、ちゃんと聞きますから」
 心底誠実そうに俺が言うと、アンリエッタはゆっくりと頷き、身悶えしながら語り始めた。
「あの、湖畔で使い魔さんと会った翌日から、じ、実は、わたくし……」
   ★★★
「姫様、どうぞ」
 俺は目の前に水の入ったグラスを差し出したが、アンリエッタは見ようともせず、ソファに手を付いて肩を震わせている。全てを語ってしまったことへの後悔だろう。既にローブを脱いでドレス姿になっており、素肌の部分はどこも羞恥に赤く染まっている。まあ、無理もない。
 アンリエッタが語ったことを要約すると、こういう話だ。
――園遊会の翌日、王族用の臨時宿舎で目覚めたアンリエッタは、自分の両手が下着の中に入っていることに気付き、かなり慌てたらしい。その指先は微かに濡れていたそうだ。無意識に秘所を触っていたことは明白だろう。それまで自慰をしたことのなかったアンリエッタは、自分を恥じ、二度としないと自らに誓った。だが翌日も目覚めると下着に手が入っている。そんなことが続き、更に今朝、手は尻の方にも回されていて、目覚めた直後、何気なく尻穴の周囲を撫で、そのまま達してしまったとのこと。肉体は欲求不満だったのだろうが、アンリエッタには自分が変になってしまったとしか考えられず、その原因を考えた。思い当たることと言えば、湖畔で俺と会った後の記憶が曖昧ということしかなく、事情を尋ねるべく城を出た。だが、学院に行くと俺は不在で、チクトンネ街に向かったと男子生徒に聞き、後を追った――。
 この男子生徒というのはギーシュだろう。しかし、湖畔での行為の際、俺はアンリエッタに何の暗示も与えていない。加えて湖の一件以来、顔を会わせてもいないのに、アンリエッタの夢の中には頻繁に俺が出てくるという。考えられることとしたら、湖でのことがアンリエッタのトラウマとなった、ということぐらいだ。催眠下だったとはいえ、自慰経験もないほど初心な肉体には衝撃が強烈で、身体も心も、潜在的に俺の行為を受け入れる下地が出来ているのかも知れない。そうでなければ咄嗟に、自ら路上で平民の男の手を胸に押し当てたりはしないだろう。成り行きとはいえ、その後の行為を結果的に受け入れてもいるのだ。
 俺は手にしていたグラスをテーブルの上に置いて腕を組んだ。この状況は利用できる。何しろ相手は王女、それに先刻の話では、そう遠くない日に即位する可能性がある。以前にルイズから聞いた話では、このトリステインという国の王座は前王崩御の後、空位となっているらしい。絶対君主制のこの国でアンリエッタが女王になれば、その権限は諸侯や議会を凌ぐ。上手く立ち回れば国を一つ手に入れることが出来るかもしれない。
 俺はアンリエッタの側に屈み込み、その肩に優しく触れた。アンリエッタは怯えたように身体を竦ませたが、その手を払い除けようとはしない。
「――湖では特に何もありませんでした。一緒にワインを飲んで、姫様が酔われた御様子だったので、園遊会場の前まで俺がお送りしました」
「そう、ですか……」
 俺の嘘に答えるアンリエッタの声は沈んでいた。何の理由もなかったのに、淫らな行為に耽ってしまった自分を恥じているのだろう。さて、ここからが肝心だ。
「姫様、自分の身体に触れて気持ちいいのは、別に恥ずかしがることじゃありませんよ。姫様だけじゃありません、皆そうなんです。それは姫様が女性として正常な証拠です」
「……わたくしが、正常?」
 アンリエッタは顔を上げ、縋るような眼差しを俺に向けてくる。いや、寝起きに肛門を撫でて果てるのは俺からみたら異常です、とは当然、言わないでおく。
「そうです。通りで俺に触られた時、どうでした? 気持ちよくありませんでしたか?」
「あ、あの、それは……」
「俺は姫様に触れて気持ちよかったです。自分の身体に触れるのも、異性に触れるのも、触れられるのも、気持ちいいことなんです。だから皆、自分に触れ、恋人に触れ、子供を成していくんです。そうしたことが繰り返されて、今のこの国があるんです。違いますか?」
 そう言いながら、俺は自分の発言に笑いを堪えるのに必死だった。詭弁とはいえ、何で俺は尻穴オナニーから国の成り立ちに繋げているんだろう。だが、これは必要なことでもある。国という言葉を使ってアンリエッタの行為を肯定してやり、更には性的行為に対する興味を引き出してやらねばならない。
「……それは、そうですけれど」
「いつか異性と触れ合う時のために、予め身体が心地良さを教えてくれているだけなんです」
「いつか……、殿方と……」
 アンリエッタは俯いた。俺の手の感触でも思い出しているのか、徐々に息を弾ませている。
「俺だって自分で触ります。姫様が恋人だったら触って欲しいとも思います」
俺がそう言うと、アンリエッタは再び顔を上げ、微かに綻ばせた。少しだけ潤んだ目が妙に色っぽい。十四歳とは思えないほどだ。
「わたくしが……、使い魔さんに……、触れる……」
「はい。恋人のように直接、肌に触れて、触れさせて欲しいくらいです」
不敬罪で捕まりそうな発言だが、アンリエッタは柔らかな笑みを浮かべ、悩ましく息を吐いた。肩に置いた俺の手の上に自分の手を重ね、そこに頭を寄せてくる。
「……ならば、恋人のように扱ってくださいまし」
 どうやら予想通りのトラウマを抱えているらしい。堕ちたな、と俺は思った。
   ★★★
「ふあっ……本当にいっ……んあっ……こいびっ……あんっ……恋人はぁ……こんっ……んんっ……こんなぁ……ふあっ……こんなことぉ……ああっ……」
「してますよ、こんなこと。恋人だったら普通です」
 アンリエッタの尻穴を弄びながら俺は答えた。リビングから寝室へと移動して互いに全裸になり、ベッドの上に座って身体を触り合い始めたのは十数分前のことだ。アンリエッタの手は俺の胸と肩を撫で、俺は自分の陰茎を扱きながら、もう一方の手で執拗に王女の尻穴だけを愛撫している。但し指は挿入せず、擽るようにして擦っていた。アンリエッタは元から尻穴の感度が良いらしく、僅かな時間で息も絶え絶えになり、腰を浮かせて正面から俺に凭れ掛かっている。白く柔らかな身体は成すがままと言っていい。
「あんんっ……でもおっ……あううっ……許してぇ……はううっ……くださいましぃ……くああっ……せめてぇ……んああっ……別のところをぉ……あんんっ……せめてえっ……」
 切ない声で許しを請いながらも、アンリエッタは愛おしそうに俺の身体を撫で回している。揺れる乳房の先の可憐な乳首が、俺の肌に触れる度、どんどんと固く尖っていく。
「大丈夫です、姫様。安心して気持ち良くなってください」
 頃合を見計らってそう言うと、俺は尻穴へと指先を挿し入れた。既に愛撫で解されていた菊座は、ローションなしでもその行為を受け入れ、一本の指を少しずつ呑み込んでいく。
「そんなあっ……んふああっ……許ひてえっ……んぐくあっ……ゆるひへてぇ……」
 アンリエッタは悶えながらも目を見開き、嫌々をするように何度も首を振ったが、やがて尻穴が指を根元まで呑み込むと、俺にしがみ付いてきた。自らの喘ぎを封じるかのように蕩けた表情で俺の唇を奪い、熱い吐息と舌を強引に押し込んでくる。俺は舌を絡ませてやりながら、陰茎を擦る手の動きを速めた。閑雅かつ優艶な王女の香りと淫らな様に限界が近い。だが、やはり最初が肝心だ。ここはアンリエッタを先に絶頂させてやるべきだろう。亀頭をアンリエッタの下腹に擦り付けつつ、尻穴に挿入した指を曲げ、直腸壁を何度も擦り上げてやる。途端にアンリエッタは唇を離し、全身を反らせてガクガクと震わせ始めた。
「ふおあああっ……お止むええっ……くらはいまひいいっ……うあああはあっ……嫌あああっ……こんぬああっ……くぉんなことってへぇ……お願ひいいいっ……許ひふぇええっ……」
「姫様、気持ちいい時はちゃんとそう言ってください。俺は姫様の身体に触れて気持ちいいです。凄く気持ちいいです。だから姫様もちゃんと言ってください。恋人のように」
 そう言うと、アンリエッタは再び強くしがみ付き、自ら乳房を俺の胸に押し付けて上下に擦り上げながら、素直に指示に従った。
「あふあああっ……気持ちよひでふはぁ……うはあああっ……わたくひもぉ……」
「今の姫様、凄く可愛いです。変なことじゃないんです。これは普通のことなんですから」 
「はふああんっ……気持ちひょいでふあぁ……んふあううっ……ひ持ちよひいいいっ……」
 絶頂が近いのだろう、尻穴の入り口がヒクヒクと収縮と弛緩を繰り返しながら窄まり、挿入した指の付け根を強く締め付け始めた。俺は止めとばかりに陰茎を擦っていた手を離し、アンリエッタの乳房に沿えた。顔を近づけて口をつけ、軽く乳首を噛んでやる。
「はひゃふはあああふあああっ!」
その瞬間、アンリエッタは俺の太腿に何度も腰を打ち付けながら絶頂した。
   ★★★
「アンとお呼びくださいまし」
 唐突にアンリエッタが言った。尻穴絶頂の後、今は身体を休ませる為に、裸のまま並んでベッドに横になっている。乱れていた息も落ち着き、アンリエッタの態度は既に平素のものへと戻っているが、横顔に威厳はなく、ただ柔らかく清楚な笑みだけを浮かべている。多分、これが本来の素顔なのだろう。
「いや、姫様。そういうわけには」
 そう俺が答えると、アンリエッタはそれまでの安らかな顔つきを一変させ、拗ねた表情になった。どこか落ち着いてはいるが、雰囲気が少しだけルイズに似ている。
「アンとお呼びくださいと。そのように申し上げたはずですわ」
 言いながら、そっと手を伸ばして俺の裸の胸を軽く抓ってくる。
「二人の時だけでよいのです。恋人のように呼んでくださいまし」
 唇を尖らせ、駄々をこねるように尚も言う。こんな美少女に裸で三度も頼まれたら、断る理由など何もない。
「判りましたよ、アン」
了承すると、アンリエッタは頬を染めながら、甘えるように身体を摺り寄せてきた。
「……はしたない女だと、お思いにならないでくださいまし」
「思いませんよ。凄く可愛かったですし。俺の手で感じてくれて嬉しかったです」
「……あなただからですわ。わたくし、他の殿方に肌を任せる気はありませんもの。ただ――」
 アンリエッタは言葉を切って、僅かに顔を曇らせた。俺は黙って続きを待った。
「――ルイズには、このことを仰らないで頂きたいのですけれど……」
 言って、アンリエッタは辛そうに目を閉じた。ルイズに対する罪の意識があるのだろうが、俺にしてみれば願ったり叶ったりの申し出だ。ルイズを裏切ったことは申し訳なく思うが、国という餌をちらつかされた状況で、据え膳を喰わぬ俺ではない。現トリステイン王国は一夫一婦制だが、即位後のアンリエッタと結婚して俺が国王になれば、それが無理でも命じて一夫多妻制にさせれば、気に入った女を何人でも娶ることが可能となる。それまでに何とかアンリエッタとのことをルイズに話して納得させ、王族であるアンリエッタを第一婦人、プライドの高いルイズを第二婦人にしてやれば、権威と詭弁に弱いルイズのことだ、後は口先でどうにでもなるだろう。
「言いませんよ。約束します」
 俺は手を伸ばし、アンリエッタの頭を優しく撫でてやった。この程度の行為で罪悪感に押し潰されるようでは、計画が狂いかねない。
「……またお会いになっていただけますの?」
 俺の言葉と態度に安心したのか、アンリエッタが元の甘えた口調で尋ねてくる。俺は黙って髪を撫で続けた。ここは思案のしどころだ。日中は自由に行動できるとしても、誰にも知られず、普段は城に住むアンリエッタに会うことは可能だろうか。
「……この屋敷の鍵を差し上げます。恋人になれと申しているわけではありませんの。だから時々はお顔を見せてくださいまし。ご存知ないかもしれませんが、わたくしはほとんど城で独りきりなのです」
 アンリエッタは切々と訴えてくる。城に住むということは、陰謀や策謀の間近で暮らすということだ。おそらく、件の侍女の他に心を許せる者がいなくて寂しいのだろう。だが今の俺にとって、その発言はセックス・フレンド誓約以外の何ものでもない。
「判りました。頻繁には無理でしょうが、俺だってアンに会いたいですし」
 その言葉にアンリエッタは顔を上げて瞳を潤ませ、俺の上に圧し掛かるようにして抱きついてきた。余程嬉しいのか、そのまま何度も頬を摺り寄せてくる。
「何か合図を決めないといけませんわね。手紙がよいのかしら、それとも――」
 はしゃいだ声を上げてじゃれ付くアンリエッタを抱きかかえていると、不意に俺の胸の鼓動が速くなった。お預け状態の陰茎のせいかとも思ったが、何か違う。肉欲ではなく、精神が疼くような渇望に満ちている。
「――お聞きになっていらっしゃいますの?」
 そう言ってアンリエッタが目を覗き込んできた瞬間、俺は渇望の原因を理解した。どうも俺はルイズとシエスタだけでなく、目の前の姫君にも惚れてしまっているらしい。
   ★★★
「ふああっ……あなたぁ……んんあっ……あなたぁ……んふんっ……あなたぁ……」
 休憩を終えた後に再び愛撫を始めると、アンリエッタはすぐに四肢を引きつらせ始めた。後座位の体勢だが、陰茎を挿入してはいない。アンリエッタは俺に背を向けて腰を大股で跨ぎ、両手で掴んだ一物の先で何度も秘裂をなぞり続けている。要するに俺の陰茎を使った自慰だ。俺は上半身を起こしてそれを眺めながら、時々手を伸ばして軽く乳首に触れてやる。その度にこの姫君は切ない声で俺のことを『あなた』と呼び、自らの行為を加速させている。痴態を晒す十四歳の全裸王女に『あなた』と呼ばれるのは上々の気分だ。幼な妻と行為に耽っているような錯覚に陥りそうになる。
「可愛いですよ、アン。さあ、自分が何をしているか俺に説明してください。アンが握っているのはオチンポ、擦りつけている場所はオマンコ、ちゃんと下々の言葉で説明してください。恋人たちはそんな言葉で気分を高め合うんです」
 アンリエッタは恋愛を架空のものとでも考えていたのか、恋人という言葉に極端に弱い。王家に女として生まれた以上、政略結婚の可能性があるため、最初から諦めていたのかもしれない。可哀想な話だが、トラウマを呼び出すキーワードとしてこれ以上のものはなかった。現状のような半ば変態的な行為でさえ、恋人という言葉を使えば容易く受け入れてしまう。
「んふあっ……わたくしぃ……んんあっ……あなたのぉ……くはあっ……オチンポをぉ……うはあっ……自分でぇ……んああっ……おまっ……はんんっ……オマンコにぃ……んああっ……擦り付けてぇ……ふああっ……ますのぉ……はんあっ……オチンポをぉ……」
「勃起オチンポは気持ちいいですか?」
「はいいっ……んんあっ……気持ちよいっ……んくあっ……ですわぁ……んあんっ……勃起ぃ……はんうっ……オチンポぉ……んふあっ……あなたぁっ……んむあっ……素敵ぃ……」
 指示に素直に従いながら、アンリエッタはどんどん乱れていく。感度が良いのは尻穴だけではないようで、既に亀頭は先走り汁と愛液で濡れ、時に糸を引いている。念のため、行為の前に避妊薬を呑ませておいたので妊娠の心配はない。とはいえ、現時点で処女を奪うつもりもない。まずは快楽の虜にし、抱いて欲しかったら即位しろと条件を出すつもりだからだ。惚れたからといって野望を捨てるような俺ではない。当然、性行為の手を抜く気もない。むしろ愛しく感じられる分だけ、内容が濃厚になるのが道理だ。
「ふああっ……抱いてぇ……んふあっ……くださいましぃ……んあふっ……このままぁ……ふうあっ……わたくしをぉ……はあっ……あなたのぉ……はあうっ……ものにぃ……」
 アンリエッタは喘ぎながら擦り付ける速度を上げ、事前に挿入はしないと約束していたのにも関わらず、手にした陰茎を秘裂の内側へと押し当ててきた。亀頭の先端はもう膣の中だ。濡れた柔肉の感触が心地良く、そろそろ俺も限界が近いが、このまま処女を奪うわけにはいかない。何しろアンリエッタには勝手に挿入してしまった前科がある。俺は僅かに腰を引いた。
「いやあっ……そんなあっ……はふうっ……あなたあっ……ふあっ……止めないでぇ……」
 俺の腰の動きを行為の終了と勘違いしたらしく、アンリエッタは身動ぎし、嫌がるように首を何度も振り始めた。俺は処女膜を破らないよう慎重に腰を元に戻し、アンリエッタの勃起した両乳首を指の腹で軽く捻りながら、その耳元に囁いた。
「抱くのはまだ先だと最初に言ったでしょう? 勝手に入れたら怒りますよ?」
「うふああっ……でもぉ……はうああっ……でもおぉ……んふあふっ……わたくしぃ……」
 言いながらアンリエッタは再び淫らに腰を押し付けてくる。絶頂間近なのか、秘所全体がヒクヒクと震えている。
「折角なので精液をマンコの中にかけてあげますからね。ちゃんと恋人としておねだりしてください。アンだって処女膜にザーメンかけて欲しいですよね?」
「くはんああっ……くだはいまひぃ……ああふああっ……はなたのぉ……んむふああっ……ジャーメンっ……んああふあっ……わらくひのぉ……ひやふああっ……処女膜にひぃ……」
 俺は身を乗り出して片手をアンリエッタの頬に沿え、唇を奪って舌を絡めながら、乳房を乱暴に絞り上げ、溜まっていたものを膣内に吐き出した
「むぐおっむむんっぷぐあはあっ!」
 口腔と乳房を犯されながら処女膜に精液を浴び、アンリエッタも同時に果てた。
   ★★★
 今後のことを考えながら寝室の椅子に全裸のまま座り、一人でワインを飲んでいると、ほどほどに酔いが回ってきた。酔っているとはいえ陰茎は準備万全だ。そろそろ次の行動に移るべく、ベッドの上を確認してみる。そこには同じく裸でうつ伏せになり、尻を高く浮き上がらせたまま失神しているアンリエッタがいる。だらしなく脚を開き、腰だけを未だビクビクと上下に何度も引きつらせ、尻穴から透明な液を垂れ流している様は、とても王族とは思えないほど下品で淫らで、故に可愛い。
 ――処女膜に射精してから、俺たちは連れ立って風呂に入った。元が貴族の屋敷だけあって風呂場は広く、互いの身体を洗い合って浴槽に浸かった後、俺は洗い場でアンリエッタを四つん這いにさせた。その状態で丹念に尻穴を洗ってやり、指を挿し入れて解すと、それだけでアンリエッタは絶頂を迎えた。尚も愛撫を続けていると、やがて尻穴は二本の指を根元まで呑み込むほど柔らかくなり、内部で指を折り曲げる度にアンリエッタは四肢を突っ張らせて大きく喘いだ。そのまま続けて三回ほど高みに導くと、半ば失神してその場に崩れ落ちたが、俺は指を入れたまま抱きかかえて再び浴槽に入り、延々と腸壁だけを責め続けた。ベッドの上へと場所を移してからも挿入した指での愛撫を続け、昂ぶりに合わせて指を引き抜くと、アンリエッタは一際高い叫び声を上げ、前のめりに毛布の上に倒れた。見ると、開いた尻穴から風呂の湯と思われる液体を排出し、完全に失神していた。そして俺はそんな姿を眺めながらワインを飲み始めた――。
 どうもアンリエッタには俺の加虐性を昂ぶらせる何かがあるらしい。単に上淫を好んでいるということかも知れないが、自分がこの王女と会う度に残酷になっていくのが判る。あるいはルイズとシエスタに対する後ろめたさが、アンリエッタに対する加虐性を高めているのかも知れない。
 一頻り考え、俺はまずアンリエッタを失神から覚まさせることにした。このまま尻穴を犯してもいいのだが、やはり意識があった方が面白い。バッグから気つけ用の嗅ぎ薬を取り出し、ふと思い直す。こんな薬を使うまでもない。俺はアンリエッタの鼻穴に亀頭を強く押し当て、そのまま小便をした。
「……んぶがっ、ぼげぶはばぁ、ぶごぐんんっ」
 すぐにアンリエッタは苦しそうに目を覚まし、驚愕の表情を浮かべ、俺の行為から逃れようと暴れ出した。しかし、意識を取り戻したばかりの身体に力が入るはずもなく、俺はその頭を押さえ込み、もう一方の鼻の穴にも小便を注ぎ込んでやる。 
「止べでぐだざいぃ、んぬぶっ、許じでぇ、もがごぼっ!」
 俺は許しを請うアンリエッタの隙を見て陰茎をその口中へと押し込み、尿を放出しながら優しく囁いた。
「恋人のオシッコなら飲めますよね、アン?」
 アンリエッタは一物を口に咥えたまま首を横に振ったが、やがて諦めたのか、喉を大きく鳴らせ始めた。
   ★★★
「ふああっ、あなたぁ、んふうっ、入れてぇ、はんんっ、このままぁ、んあはっ、入れてえっ」
 ベッドの上で尿に塗れたまま四つん這いにさせられ、尻穴に亀頭部のみを差し込まれたアンリエッタは、更なる挿入を切望し、淫らに尻を振り続けている。物欲しそうに尻を寄せて陰茎を呑み込もうとするが、その度に俺に尻たぶを強く叩かれ、渋々と腰を戻しては、耐え切れなくなってまた寄せてくる。俺は一物の根元を自ら手で擦りながら、貪欲な王女を躾けているというわけだ。アンリエッタもまさか自分の尻穴に、ローションと一緒に規定の三倍量の催淫剤を塗り付けられたなどとは思ってもいないだろう。催淫剤には直接塗布しても性感を高める効果がある。当然、その場所に直接性器で触れている以上、俺にも効果が表れる。そろそろ限界だ。
「このまま出しますよ、アン」
「んくあっ、嫌あぁ、んあはぁ、入れてぇ、んんぁ、このままぁ、くあうっ、深くぅ」
「勝手に入れちゃ駄目ですからね? じゃあ、いきますよ、くっ!」
「んふあっ……熱ひぃ……あああっ……きひぃ……気持ちよいですわぁ……ひゃああっ……」
 アンリエッタは感極まったような吐息を漏らし、腰を跳ね上げながら押し付け、射精中の陰茎を少しでも尻穴に呑みこもうとする。もちろん、俺はその尻を打った。二度、三度と叩いて尻たぶに赤く手形が付いたのを確認し、その上で優しく囁いてやる。
「アン、そんなに深く入れて欲しいんですか? ザーメン出されたばかりのケツマンコに?」
「あふあっ、欲しっ、欲しいですわぁ、んくぁ、ケツオマンコにぃ、あふっ、くださいましぃ」
「じゃあ、ちゃんと挨拶してくださいね。アンは俺にお尻の処女を捧げてくれるんでしょう? 初めてなんですから、そのことを、ちゃんと述べてください」
 言いながら、俺は未だ勃起している陰茎を使って、アンリエッタの直腸壁を亀頭で擦り上げてやる。
「わはぁ、わたくしぃ、アンリエッタぁ、ひゃぅっ、ドぉ、んはあんっ、トリステインはぁ、くああっ、お尻のぉ、んあっ、処女をぉ、はあっ、捧げますぅ、入れてぇ、んんっ、くださいましい、ひあっ、オチンポぉ、んあはっ、ザーメン出されたぁ、うはあっ、ケツオマンコにぃ」
 俺は満足して陰茎を深く尻穴に押し込んだ。
「ふはあひゃああっ! ひもっ、ひもちよひでふあぁ! はひゃあふああああっ!」
 同時にアンリエッタが叫び声を上げた。全身を戦慄かせ、尻穴を痙攣させながら陰茎の根元へと押し付けてくる。どうやら挿入されただけで達したようだ。俺は手形の付いた尻を再び何度も叩きつけ、きつく叱った。
「アン、何で勝手にイってるんですか? 罰として自分で尻を振りなさい。俺は一切動きませんからね? それと――」
「ひはあはあふあっ……ケチュオマンクぉ……んはあひああんっ……わらくひのぉ……ふえふあっあぁ……ヘチュオムァンコぉ……くはあああうん……ひ持ちひいいれふあぁ」
 俺の言葉の終わりを待たず、アンリエッタは激しく腰を振り始めた。焦らされ続けたことで抑えが利かなくなっているのだろう。みっちりとした直腸の感触とローションの滑りが、予想以上の恍惚感を与えてくれる。さて、更なる調教の始まりだ。俺は尻を叩き続けながら、口調を変え、快楽の奴隷と化した王女に問いかけた。
「アン、お前のこのいやらしい身体は誰の物だ? ちゃんと答えないと終わりにするぞ?」
「へやああっ……ひゃめないでへぇ……んあふっ……くりゃはいまひぃ……くああんっ……じぇんぶぅ……あふああっ……はなたのものですわはぁ……はうああっ……だかりゃあ……はあううっ……ひゃめないでぇ……はんんあっ……続へてぇ……んはひゃあっ……ほ願ひぃ……」
「お前の全部は俺のものだな? 今後もお前は俺のものだな?」
「はひゃあっ……そうでふわはぁ……んんふあっ……じぇんぶぅ……くうんあっ……いちゅまでもほぉ……ふうああっ……あなたのほぉ……んんっあぁ……ものですわはぁ……」
 アンリエッタは答えながら、腰の動きを加速させていく。その艶かしい動きに合わせ、陰茎に纏わり付く腸壁も震えている。ほんの少し強い刺激を与えてやれば再び絶頂するだろう。甘美な腸内の感触と薬の効果で、俺もそろそろ二度目の射精が近い。
「それなら今後は俺の指示に従え。イきそうなんだろう? そういう時はちゃんと言え。尻でイく時は、ケツマンコイクって言うんだぞ? 俺も同時にもう一度、お前の中に出すからな」
 言いながら俺はアンリエッタの陰核に手を伸ばした。尻を叩く手はそのままだ。既に尻たぶは手形の跡も判らないほど赤く腫れあがっている。
「はうああっ……はひいぃ……んっはあっ……ひきそうですわぁ……くはああっ……出ひてぇ……あひゃああっ……くらさいましひぃ……うああはっ……イきそうでふわぁ……」
 俺は堪え切れずに、アンリエッタの動きに合わせて自分の腰を振り始めた。ついでとばかりに陰核を指先で擽ってやる。
「んほおおあっ……凄ひぃ……んはああっ……ひ持ちいいでふぁ……いいっ……ぎぼちいいでふう……いいいっ……イきほうでふう……んぐはあっ……イぎほうでふああっ……んぶほあやあああっ! ヘチュぅ! ヘチュオムァンコイくふううううううっ!」
 俺はアンリエッタの言葉に合わせて腰を片手で抱きかかえ、陰核を軽く抓りながら陰茎を根元まで挿入し、結腸に向けて精液を放った。アンリエッタは邸宅での本日九回目の雄叫びを上げ続け、周囲に小便を撒き散らした後、やがて白目を剥いて何も言わなくなった。
   ★★★
 街から学院に戻ると日が暮れていた。
 俺はルイズの部屋に戻る前に、物置小屋で風呂に入ることにした。アンリエッタの密会屋敷で帰り際に再度浴槽に浸かってはきたものの、念入りに身奇麗にしておいた方がいいと思ったからだ。何しろルイズは勘がいい。ちょっとした匂いや髪の毛一本でアンリエッタのことに気付きかねない。
 扉の鍵を開けて物置小屋に入り、風呂の準備の合間に各部屋の窓を開けて換気をしておく。明日はルイズ公認のシエスタとの性交解禁日だ。シエスタは丸一日休みを取り、朝からこの小屋へ遊びに来るらしい。つまり生徒たちが授業を受けている最中に、同じ敷地内で延々と性行為が可能なのだ。ならば室内もある程度は清掃しておくべきだろう。そう考えて部屋を見渡すと、驚いたことに既に綺麗に片付いていた。確認してみると保存用の食料なども補充されており、更には新鮮な野菜や果物までもが袋に入ってキッチンに置かれている。物置の扉の鍵は俺が二本、ルイズとシエスタが一本ずつ管理している。まさかルイズが食料をわざわざ置きに来るとは思えない。やはりシエスタの仕業だろう。甲斐甲斐しいことだ。たまには何か、淫具以外の贈り物でもしてやろうか。
 そんなことを考えていると、不意に扉がノックされた。
「開いてるよ」
 声をかけると扉がゆっくりと開き、モンモランシーが姿を現した。てっきりルイズかシエスタ、もしくはギーシュだろうと思っていた俺にとって、完全に予想外の相手だ。
「どうした?」
 俺が声をかけると、モンモランシーは手の中の小瓶を差し出した。
「頼まれてた新しいポーション、出来たから」
「ああ、ご苦労さん。まあ、入って座れよ」
 そう言うとモンモランシーはおずおずと室内に入り、リビングのソファに腰掛けた。俺もテーブルを挟んで向かいのソファに座る。
「ギーシュはどうした?」
 本来、俺の元へ薬を届けるのはギーシュの役目だ。中毒薬の値段や販路の打ち合わせや新薬の依頼など、三人で密会することはあっても、こうしてモンモランシーと二人きりで会うのは初めてだった。当然、ギーシュが下僕化しているように、今ではモンモランシーもある程度は俺の言いなりだ。俺がモンモランシーに依頼している薬の種類は常時十を越えている。
「知らないわよ、あんな浮気者」
 俺の質問にモンモランシーは唇を尖らせた。喧嘩でもしているらしい。
「まあ、いいけどな。で、薬はそれだけか?」
 問いかけると、モンモランシーは手にしていた小瓶をテーブルの上に置き、次いでスカートのポケットから同じ大きさの小瓶を三つ取り出した。
「これが効果を即解除する新しいポーション。これは催眠効果を強力にしたもの。もう暗示用って言ってもいいわね。時間は短いけど、強力な暗示が可能よ。目の焦点も合わなくなったりしないし。こっちは試作品で、意識はそのまま感覚だけ極度に敏感になるもの。あとこれが――」
「なあ、モンモン」
 俺は恍惚として話すモンモランシーの言葉を遮った。途端に目の前の金髪縦ロールは不愉快そうに眉をひそめる。
「その呼び方は止めてって言ったじゃない。で、何よ?」
「金、足りてるか?」
 違法な薬を調合するには、闇の魔法屋で売られている高価なレシピや秘薬が必要だという。ギーシュにはモンモランシーに充分な金を与えるよう常に言っているが、足りずに無心に来たんじゃないか? だからギーシュと喧嘩をした振りをして俺に直接訴えに来たんじゃないか? そう考えての質問だった。もしそうなら不足分以上の金貨を与えてやるつもりだ。それほど目の前の縦ロール娘はいい仕事をしてくれている。
「お金は、足りてるけど……」
「けど、何だ?」
「寮の部屋じゃ狭くって。別に、今のままでも出来ないことはないんだけど……」
 なるほど、直訴の目的はそれか。俺は無言で頷きながら、以前にギーシュから聞いていた話を思い返した。確か、この場所の近くに使われていない物置がもう一つあった筈だ。
「判った、お前専用の小屋を借りてやる。内装はお前に任せる、好きなようにしろ」
 そう言ってやると、モンモランシーは嬉しそうに笑った。
   ★★★
 調剤用の小屋を用意すると約束した後、俺とモンモランシーはワインで乾杯した。最初は他愛のない話題で盛り上がっていたのだが、モンモランシーは酒に弱いのか、次第に愚痴り始めた。ギーシュの浮気性やら実家の領地経営の不手際やら話題は飛びまくり、それでいてワインを飲むペースは衰えず、気が付けばまた同じ話題を口にしている。嫌な酔っ払いの典型的な例だ。まあ、滅多にない機会だからと思い直し、俺が以前から聞きたかったギーシュとの仲について尋ねてみると、突然目付きが険しくなった。どうも部屋が手狭な件についての直訴とは別に、ギーシュと喧嘩をしているのも本当らしい。
「あいつ、他の女の子ばっかり追い掛け回してんのよ。迫られた時に拒んで正解だったわ」 
 聞けば、ギーシュとは性交どころかキスさえしていないと言う。処女だというのはギーシュから聞いて知ってはいたが、キスさえしていないというのは初耳だった。
「だって、頼りないんだもの。そりゃあ見かけはいいけど、それだけなんだもの」
 その物言いは辛辣で、俺はギーシュに同情したが、まあ、これもチャンスに違いない。
「じゃあ、お前、俺の女になるか?」
 冗談めかして言ったところ、モンモランシーは真っ赤になって黙り込み、やがて恐る恐るといった口調で尋ねてきた。
「それって、私とその、そういうこと、するってこと?」
「お前のマンコにチンポ突っ込んで精液出すって話だ」
「そ、そんなのダメに決まってるじゃない! 何で平民なんかと。私、貴族なのよ?」
 心外だといった怒りの形相で、モンモランシーは俺を睨んだ。俺は怯みもせずに言い返してやった。
「貴族だから何だ? お前のマンコは貴族専用か?」
「そんなこと別に言ってないじゃない。べ、別に専用じゃないし。あと、変な言葉も使わないで。それに、あんたにはルイズがいるじゃない」
「今更なに言ってんだ。俺が薬を使って何をしているのか、お前だって少しは気付いてんだろ?」
「そ、それは、その、浮気とか……」
「そんな綺麗事言ってんじゃねえ。まったく知りませんとは言わせねえぞ? もう共犯なんだからな」
「そ、そんな……」
 モンモランシーは身を竦め、ソファから立ち上がろうとしたが、俺はその細い肩を掴んで無理矢理に元の位置に座らせた。頬に手を添えて強引に正面を向かせると、怖いのだろう、鮮やかな青い瞳が潤んでいる。
「俺はこの国を貰うことにした。お前の協力が必要だ、手伝え」
   ★★★
「こ、これはちょっと、恥ずかしいかも。ねえ、やっぱり止めない?」
 モンモランシーはそう言って、半立ち状態の陰茎を手に俺を横から見上げてきた。隣り合ってソファに座ってはいるものの、制服姿のモンモランシーと違い、俺は下半身を露出させている。恥ずかしいのは俺の方だが、ここまで来てお預けされたら堪らない。
「何だよ、お前がしてくれるって言ったんだろ? 貴族様は自分の言葉に責任持てねえのかよ?」
「わ、判ったわよ。やるわよ」
 非難するように俺が言うと、モンモランシーは諦めたらしく、手の中の陰茎をゆっくりと上下に擦り始めた。拙い動きだが意外に気持ちよく、俺の一物はどんどん固くなっていく。
――これまでにしてきたことの全てを俺が話して聞かせると、モンモランシーは俺に協力することを了承した。流石に行為の詳細を話したわけではなかったが、アンリエッタが既に俺に従属していることを聞き、驚くと同時に逃げられないとでも思ったのだろう。但し、ルイズ同様に幾つかの条件が付けられた。モンモランシーに対しては絶対に薬を使わないこと、無理矢理襲ったりしないこと、中でも傑作だったのが、二人きりの時にはちゃんと自分のことを愛してくれること、というものだ。どうも日頃から愛情に飢えていたらしい。条件を守るなら今後は俺に協力し、他の女性の説得や懐柔などにも手を貸してくれるという。そこまで考えていなかった俺としては、望外の申し出だった。もちろん、ルイズとシエスタのこと、ルイズがシエスタを認知していることなどは包み隠さず教えてある。
「でもお前、浮気は許さない主義なんじゃねえのかよ?」
 予想外の好条件に、思わず俺はそう問いかけた。
「私を軽視した浮気は許さないわよ。でも、あんたはそうじゃないんでしょ?」
 どうやら必要だと言われたことが嬉しかったらしい。何にしてもこれで、俺は国獲りの手駒を一つ手に入れたことになる。事のついでに俺はモンモランシーに再度尋ねてみた。
「で、今は二人っきりで、俺はお前を愛してやればいいんだよな?」
「そんな義務みたいに言わないで。言っておくけど、無理矢理襲ったりしたら協力はなしだからね?」
「義務だなんて思ってねえよ。無理矢理する気もねえ。けど、二人きりの時にはお前も俺のことを愛してくれるんだろ?」
「そ、そりゃ、そうだけど……」
 こうして俺は言葉巧みに誘導し、一物を手で扱いてもらうことなった――。
「何か、想像してたのと違う。ちょっとだけ可愛いかも。あ、また硬くなった」
 言いながら、教えてもいないのにモンモランシーは少しずつ手の動きを速めていく。細く柔らかな指先の感触と、ぎこちなくも優しい手の動き、そして今まで嗅いだことのない新たな少女の体臭に、陰茎は完全勃起状態に近い。
「やだ、先からなんか出てきてるわよ? なにこれ?」
 言ってモンモランシーは空いた手の指先で先走り汁をすくい取り、恐る恐るといった感じで自分の鼻先へと近づけた。匂いを確かめるのが薬を調合する際の癖なのかもしれない。少しだけ鼻息荒く指先の臭いを嗅ぎながら、僅かに顔をしかめている。そんな姿を見せられて興奮しない方がおかしい。俺の一物は更に固くなり、徐々に限界が近付いてくる。
「あはっ、息が荒くなってるわよ? 気持ちいいんだ? ねえ、そうなんでしょ?」
 恍惚に浸る俺を見て、モンモランシーは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、意地悪そうに尋ねてきた。十三歳の少女に手コキされ、加えて言葉責めを受けて、平素の振りができるわけがない。この縦ロール少女はシエスタとは真逆の真性かもしれないと思いつつ、俺は正直に答えることにした。
「ああ、凄く気持ちいい。できればもう少し強く握ってくれ」
「強くってこれぐらい? ふふっ、うっとりした顔しちゃって」
「なあ、モンモン」
「……まあ、いいわ。その呼び方でも。で、なあに?」
「お前の身体、触らしてくれ」
「それはダメ。それよりここ、どんどん出てきてるわよ? ここが気持ちいいの?」
 俺の嘆願を即答で切り捨て、モンモランシーは先刻の指先で尿道口を擦り始めた。陰茎を扱く手の動きと相まって、恐ろしいほどの快楽が襲ってくる。
「ちょっ、ちょっと待て、止め――」
「うわぁ、ビクビクしてる。ふぅん、ここが気持ちいいんだ。じゃあ、こうすると、どう?」
 言いながらモンモランシーは小指の先を尿道口に押し付け、捻り込むように動かし始めた。痛いことは痛いが、刺激も半端なものではなく、もう俺は限界だった。
「で、出る」
「え? ちょっと、やだ。もう充分でしょ。後はご自分でどうぞ」
 そう言ってモンモランシーは絶頂寸前の陰茎を放り出し、俺はその横で呼吸を整えながら、いつか徹底的に犯してやる、と心に誓った。
   ★★★
 案の定、部屋に戻ると、遅い時間だったにも関わらずルイズは起きて待っていた。が、いつもと様子が違う。俺は遅くなったことを叱られると思っていたのだが、ルイズは俺の姿を見ると、そそくさとベッドの上で横になったのだ。これは無言の叱責で、藁束の上に寝ろということだろうか、と俺が考えていると、ルイズは毛布の中から手招きし、急かすように言った。
「なにしてんの、早くこっちに来なさいよ」
俺は恐る恐るベッドへと近付き、ルイズから少しだけ距離を置いて横になった。
「なんでそんな遠くにいんのよ?」
「いや、別に」
 言いながら俺は考え込んだ。ルイズの思惑が判らない。口調から察するに怒ってはいないようだが、遅くなったことを咎めもしないのは、何か魂胆があってのことだろうか?
「……もっとこっちに来なさいよ」
「判った」
 肩が触れる程度に近付くと、ルイズは毛布の中で俺の手を握り締めてきた。
「あ、明日は、は、早く帰ってきなさいよ」
 例の如く手を何度も握り直しながら、ルイズが小声で囁く。なるほど、明日のことを気にしているが故に、今日遅くなったことを怒らないのか。そう考えるとこの態度も納得できる。俺は身体を起こしてルイズの上に覆い被さり、驚きに見開かれた鳶色の瞳を見つめて囁いた。
「今日は遅くなってごめんな。明日からはもっと早く帰ってくる。約束するから」
「べ、別に、判ればいいのよ」
 素っ気ない口調で言いながらも、ルイズは頬をほんのりと赤く染めている。その様子があまりにも可愛くて、俺は我慢し切れずにルイズの額に唇を押し付けた。
「ちょっ、……もう、ばか」
 そう言ってルイズは俺の背に手を回し、静かに抱きついてきた。
   ★★★
 翌日の朝。
 食堂での朝食を終えて物置小屋へ行くと、既にシエスタはキッチンで料理をしていた。朝食を済ませたことを俺が告げると、シエスタは首を横に振った。作っているのは本日の昼食と夕食の分だと言う。一日中、物置小屋に篭るつもりらしい。それならそれで構わない。俺は寝室のチェストの奥からシエスタ用に買っておいた服を取り出し、着替えるように命じた。胸の部分の布地が取り外せるミニスカートのメイド服だ。シエスタは素直に指示に従い、俺の目の前で服を脱ぎ捨てて全裸になると、渡された服に着替えた。もちろん乳房は露出させ、中に下着はつけさせない。 
「こんな恥ずかしい格好、嬉しいですぅ」
 服を着替えただけでスイッチの入ってしまったシエスタは、俺の前に屈み込み、ズボンの上から陰茎の臭いを嗅ぎ始めた。俺はその場で全裸になり、リビングのソファに座ると、正面に跪いて陰茎を手で扱くようシエスタに命じた。昨日のモンモランシーとの行為のリベンジだ。結局、俺はモンモランシーの前で自慰をすることはなく、夜にルイズと性的行為に耽ることもなかった。ルイズに手を出すことは可能だったろうが、隣で寝るだけでなんとなく満足してしまったからだ。まずは溜まっているものを一回出しておかないと、気持ち的に収まりが悪い。
「旦那様ぁ、どうですかぁ、私の手マンコぉ、気持ちいいですかぁ」
 シエスタは愛おしそうに俺の一物を擦り、時に陰茎に顔を近づけて臭いを嗅いだり、身を乗り出して俺の胸に舌を這わせたりと忙しい。
「ああ、気持ちいいぞ。それで、シエスタはどこに精液が欲しい?」
「それでしたらぁ、お口に頂きたいですぅ。旦那様の味、覚えたいですぅ」
 シエスタは蕩けた表情で願い出ながら、俺の膝に自分の乳首を強く押し当て続けている。予想以上に欲求不満が溜まっていたのだろう。試しに爪先で陰部を嬲ってやると、そこはもう滑りを帯びた蜜で溢れていた。
「ふはああっ、旦那様ぁ、それぇ、んふあはあっ、気持ちいいですぅ、んんあふっ、もっとぉ、はああんっ、虐めてくださいぃ、ひああふあっ、オマンコぉ、くふあぁん、虐めてぇ」
 シエスタは悶えながら俺の足に陰部を押し当ててくる。そんなシエスタの痴態を見ているうちに、俺は我慢が出来なくなってきた。
「シエスタ、もう出そうだ。口には後で飲ませてやるから、今はスカート持ち上げてマンコで咥え込め。お前の中に出してやる」
 シエスタは心底嬉しそうに笑い、俺の膝に乗って指示に従った。躊躇いもせず亀頭に膣口を押し付け、陰茎の根元まで膣内に呑み込んでいく。同時に俺は射精した。
「んくはあっ……気持ちいいですぅ……はふああぁ……オチンポ頂くの久し振りですぅ……んはああっ……射精気持ちいいぃ……くふうあっ……もうイっちゃいそうですぅ……」
「ほらっ、まだ出るぞ。出し終わったらマンコ締めて、中に溜めておけよ。」
「んふはああっ……まだ出てるぅ……あひゃはああっ……オマンコぉ……イクううううぅ!」
   ★★★
「ぬふあひゃああっ……もう無理でずうぅ……んぐひゃあああっ……死んぢゃいまずう……おごあふあうっ……じぬううぅ……ぎひいいいあっ……ぎもぢよぐっでじぬうう……」
 全身を痙攣させながらシエスタは許しを請うが、俺には止めるつもりなど全くない。わざと冷たい目で見下ろし、気が向けば乳房や尻を強めに叩いてやる。散々嬲るような性交を重ねてから、風呂の洗い場にシエスタを転がしたのは数時間前のことだ。それから今までの間、ずっとシエスタは悶え続けている。失神すれば気つけ薬を嗅がされ、意識が戻れば淫具に弄ばれ、薬を一切使っていないにも関わらず目の焦点は合ってはいない。無理もないとは思う。膣と尿道にそれぞれバイブを入れられ、クリトリスには専用のキャップ式バイブを吸い付けられ、両乳首にはクリップ式のローターが取り付けられている状態で、身動きできぬように手足を縛られているのだ。逃げることもできず、愛液と小便を垂れ流し、俺が数えているだけでもこの場で三十回は達している筈だ。本当なら尻穴にもバイブを入れたいところだが、陰茎で犯してもいない状態で、初めてをバイブにくれてやるのは勿体無い。それは今後のお楽しみといこう。
「おごあぶあっ……だじげでぐだざいぃ……んがぬああっ……無理でずぅ……んごぐはあっ……許じでぇ……ぶぎああはっ……じゃんなざまぁ……はぎゃああっ……まだイグううっ……」
 窓の外を見ると夕暮れが近い。そろそろ頃合だろう。俺は傍らの小瓶を取って中身をシエスタの全身に浴びせていく。意識は元のままに感覚だけ極度に敏感になるという、モンモランシーが作った例の試薬だ。
「ぐがあひゃあふああっ! んごぶげあびゃああっ! イグイグイグうぁ! げひゃぐはふああっ! んぎがぐけはああっ! あひゃぶげうはあっ! ぎぼぢいびいいいっ!」
しばらくの間、快楽にもがき続けるシエスタを見て楽しんだ後、俺はバイブのスイッチを切って抜き取り、ローターを外し、拘束を解いてやった。次いで薬液を洗い流そうと全身に冷水を浴びせた瞬間、シエスタは一際高く歓喜の声を上げ、そのまま意識を失った。俺は口から泡の混じった涎を垂れ流すシエスタを起こし、丁寧に身体を拭いてやる。さあ、ここからが本番だ。
   ★★★
「ええっ? 何で私、裸に? きゃっ、嫌っ、近寄らないで!」
 ベッドの上で意識を取り戻したシエスタは、自分が裸であることに気付くと腕で身体を覆い隠し、眼前に立っている全裸の俺を見て身体を竦ませた。なかなか新鮮な反応だ。俺は自分の陰茎を擦りながら、シエスタに一歩ずつ近付いていく。
「嫌っ、誰かっ、助けてっ!」
 叫びながらシエスタは逃れようとするが、俺はその腕を掴んでベッドの上に引き摺り倒し、無理矢理に大きく足を開かせた。
「嫌あっ、何するんですかっ! 止めてくださいっ!」
「今からお前を犯すに決まってんだろ」
 俺はそう言って笑うと、涙を浮かべたシエスタの秘裂に一物を当て、ゆっくりと感触を楽しみながら挿入していく。
――失神状態のシエスタにモンモランシーの作った暗示薬を飲ませた俺は、自分は処女であり、男性を怖がっていると思い込むよう催眠をかけた。俺が誰なのかも知らず、羞恥心が強くなるようにとの設定も施した。但し、膣内に精液を出された時点で催眠から覚め、その間の記憶を忘れるようにとも付け加えておいた。理由はシエスタをレイプしてみたかったからだ。現状のシエスタは俺に隷属している。そんな相手をレイプしたとしても、和姦、もしくは演技での拒絶しか得られないことは判っている。俺はシエスタの嫌がる様を見てみたかった。風呂場で苦しむほどの快楽を味わったシエスタが、どんな反応をするのかにも興味があった。だからこその処置だ。だが暗示薬には面倒な点が一つある。それは場合によっては、俺の言葉全てが暗示となってしまう点だ。俺はこれを鍵となる言葉を設定することで回避することにした。具体的に言えば、「今からお前に暗示をかける」「今ので暗示は終了だ」、この二つの言葉の間に俺が命じたことだけが暗示として残るという仕組みだ。それはどうやら成功らしい――。
「嫌あっ! 助けてぇ! 誰かぁ!」
 俺の下でシエスタはもがき続けるが、身体は俺を覚えているらしく、すぐに愛液を分泌し始めた。乳首も徐々に尖ってきている。俺は陰茎を根元まで挿入すると、腰を動かしながら涙を流すシエスタに向かって意地悪く尋ねた。
「嫌とか言いながらマンコ濡らしてんのは誰だ? そんなにチンポが欲しかったのか?」
「嫌あぁ、嫌ですぅ、止めてぇ、止めてくださいぃ」
「お前の耳にだって聞こえてんだろ? 嫌がるお前のマンコがグチャグチャ音立ててんの」
「止めてえぇ、嫌あぁ、嫌なのぉ、許してぇ、止めてくださいぃ」
 俺を拒みながらもシエスタの息は荒く深くなってきている。陳腐な台詞だが身体は正直だ。微かに膨らんだ乳輪の中心では乳首がそそり立ち、陰茎を呑み込んだ膣は蜜のような粘りのある愛液を溢れさせている。反抗する言葉と服従する肉体との隔たりに興奮を抑え切れず、俺もどんどん昂ぶっていく。
「聞こえてるかどうかちゃんと言え。じゃないとこのまま中に出して孕ませるぞ?」
「嫌あぁ、出さないでぇ、言いますぅ、ちゃんと言いますからぁ、出さないでぇ」
「じゃあ言え、私のマンコはチンポ入れられてグチャグチャ音立ててますって」
「嫌あぁ、嫌あぁ」
「仕方ねえな、それじゃあ中出しだ。たっぷり出してやるから、ちゃんと孕めよ?」
「言いますぅ、わ、私のぉ、ひっぐ、オマ、オマンコはぁ、ぐすっ、チ、チンポを、入れられてぇ、うっぐ、グチャ、グチャ音を、ひぐっ、立ててますぅ、ううっ、うわあああああん!」
 言い終えて大声で泣き出したシエスタの悲しく恥らう表情に、俺は深い満足感と快感とを覚えた。もう陰茎は限界だ。同時に絶頂できるよう、シエスタの陰核にも手を伸ばして擦り上げてやる。
「よく言えたな。じゃあ御褒美に、マンコの中にドロドロの精液出してやるからな。ほらよ」
「嫌あっ、嫌ああっ、嫌あああっ、んはああああっ、オマっ、オマンコイく―――――っ!」
 精液を膣内に浴びると同時に暗示が解け、シエスタは淫語を叫びながら絶頂を迎えた。だらしなく蕩けた表情のまま、全身をくねらせ、両足を俺の太腿に絡めて秘所を押し付けてくる。
「あひゃああっ……旦那さまぁ……はふああっ……射精気持ちいいですぅ……んふっあっ……オマンコの中ぁ……うはあんっ……ドロドロですぅ……はふうあっ……気持ちいいぃ……」
「シエスタはチンポ大好きだもんな」
「んふあっ……私がぁ……ふああっ……好きなのはぁ……はうんっ……旦那様のぉ……んくあっ……オチンポですぅ……んんあっ……旦那様のぉ……はんんっ……オチンポぉ……」
俺はシエスタの返答に満足し、そのまま次の射精に向けて腰を動かし始めた。
   ★★★
「なあ、もういいだろ?」
「ちゃんと確認するまで、ダメ」
 ルイズは拗ねた顔で俺の身体に鼻先を近付け、すんすん、と匂いを嗅いでいく。部屋に戻った直後から十分近く、ずっとこの状態だ。シエスタの匂いが残っていないか、行為の後でちゃんと風呂に入ったか、その確認だという。まったく残り香がしないということは有り得ない、と俺は文句を言ったが、不必要に香りが強い場合はもう一度風呂に入らせるとのことだ。それでもそんなルイズは可愛い。俺の周囲をちょろちょろと回りながら小鼻をひくつかせる様は、人に懐いた小動物のようで、菜っ葉とか木の実とかを与えたくなる。
「ん、まあいいわ。合格」
「そりゃどうも」
 言って俺はルイズの頭を軽く撫でた。何しろ今日一日、こいつはこいつなりに複雑な気持ちでいたに違いない。ルイズは気持ちよさそうに目を細め、俺のシャツをきゅっと掴んでいる。    
「……揉んで」
しばらくそうしていると、唐突にルイズが言った。
「は?」
 見ると、真っ赤になって俯き、身をよじっている。いきなり何を言ってんだ、こいつは? それともいいのか? また揉んじゃっていいのか?
「なな、なにヘンな顔してんのよ。ああ、足よ、足が疲れてるから揉んでって言ってんの」
 怒ったようにそう言うと、ルイズは椅子にちょこんと腰掛け、俺の方に足を伸ばしてきた。ネグリジェの裾から覗く素足が、少しだけ色っぽい。
「判ったよ」
 俺はルイズの前に屈み込み、その白く細い足のマッサージを始めた。滑らかで張りのある肌の感触が手のひらに心地良く、欲情してしまいそうだ。特に硬く凝ったようなところは見受けられないが、しばらくはこうしているのもいい。
「んんっ」
 足の裏、指の付け根、踵、くるぶし、足首、脹脛と順に揉み解していると、ルイズが小さな声を上げた。気持ちいいのだろう。頬を紅潮させ、僅かに開いた口からは微かな吐息が漏れている。そのまま片手を太腿の外側へ、もう一方の手を内側へと上げていくと、華奢な身体が震え始めた。
「んあっ、はぁ、んんっ、はあっ」
 切なそうに首を竦めながら、ルイズは顔を天井に向けてうっとりと目を閉じている。この様子ならまだ大丈夫だろう。俺は外側に回していた手を反対側の内腿へと這わせ、更に上へと進ませた。そのまま足の付け根に伸ばし、そっと指先で撫で上げてやる。
「はあっ、ちょっ、ふあっ、ちょっとぉ、んあっ、なにをぉ、んふっ、ダメぇ」
 そう言いながらもルイズは深く息を吐き、だらしなく椅子の背に凭れている。焦らすように陰部の外側だけを何度もなぞってやると、足がどんどん開かれていく。
「あんっ、ちょっとぉ、やぁん、んふっ、やんっ、はあっ、ねえっ、ふあっ、ダメぇ」
 それでもルイズは俺の行為に抵抗することなく、椅子の上で身体を滑らせて身悶えし続けている。捲くれたネグリジェの裾の奥には、触ってくれと言わんばかりに力なく開かれた足、その間には薄っすらと濡れた秘裂が見える。俺は我慢できずに首を伸ばし、その愛液を舌でぺろりと舐め上げた。
「ふあああっ、嫌あああっ、んんああっ、ばかあああっ、はうんああっ、ばかあああっ」
 途端にルイズは太腿で俺の頭を挟み込んだ。足は痙攣したように小刻みに震え、秘裂を舐める度に開かれては閉じられる。ほんのりと甘いルイズの体液を存分に味わうと、俺は陰核に舌先を当てた。
「んはあああっ、ばかばかぁ、くはああんっ、ダメだってばぁ、んっんああっ、ダメぇ」
 絶頂が近いのだろう。腰が悩ましく揺れ、俺の顎が仄かに愛液で湿ってくる。言葉交じりの喘ぎ声は、俺が小さく勃起した陰核を強めに舐め上げた瞬間、か細い絶叫へと変わった。
「あはあっああっふああああっ!」
   ★★★
「ここ、こんなことしたいだなんて、、ほほ、ほんとに変態ね」
「だってお前のこと、抱いちゃ駄目なんだろ?」
「ああ、当たり前じゃない。ごご、ご主人様に、そそそ、そんなのダメに決まってるじゃない」
「一人でイったくせに」
「そ、そゆこと、い、言わないでよ、ばか。だ、だから、ここ、こうしてあげてるんじゃない」
 両手でネグリジェの裾を捲り上げたルイズが悪態をつく。まるで医者の診断でも受けるかのように寝具は首まで捲くられ、椅子に腰掛けたままのルイズは俺の眼前に胸から下を晒している。微かに尖っている薄桃色の乳首が堪らなく愛らしい。既にズボンを脱いで半裸となっていた俺は、陰茎に手をやって擦りながらルイズの乳首へと亀頭を押し当てた。ルイズ絶頂後の妥協点がこれ、要するに乳首コキとか乳首ズリとかの一種だ。
「んんっ、あ、あんまり強くしないでよね、ん、最近また痛いんだから、んあっ」
 赤い顔をして俺と一物を交互に睨むルイズだが、足を組んで時折震わせているところを見ると、絶頂の余韻が残っているのだろう。未だ息は荒く、目が虚ろだ。上手くすれば抱けないこともないのだが、俺はルイズには無理をさせたくなかった。それに処女の薄い胸に陰茎を擦り付けるという方が、俺の嗜好に合っている。
「また痛いって病気か?」
「あんっ、ち、違うわよ。んんっ、た、多分、ああっ、成長期、あんっ」
「成長期?」
俺は巨乳になったご主人様を想像してみたが、上手くイメージできない。成長なんかしなくていい、ルイズは今のままでいい。
「んあっ、ねぇ、はあっ、ちょっと痛い、ふあっ、もう、あんっ、もうちょっと優しく」
 たしなめられて俺は力を弱め、改めてルイズの乳首にそっと亀頭を触れさせた。左右に揺らし、下から弾き、尿道口で擦り上げ、撫でるように押し付ける。勃起した乳首はほんのり硬く柔らかく、その感触がなんとも気持ちいい。
「んんっ、あっ、ああっ、はあっ、んくっ、はあっ、はぁん、ふあっ」
ルイズは生殖器に乳首を嬲られ、小さな喘ぎを漏らし続けている。俺は乳首だけでなく胸全体に亀頭を当てていきながら、細い顎に手を伸ばしてルイズの唇にキスをした。
「んむっ、んっ、ふむっ、んんっ、んふっ、んむうっ」
 唇を軽く甘噛みしてやる度に、ルイズはくぐもった声を上げ、切なそうに身をよじる。もっと気持ちよくさせてやりたい。俺は空いた手でルイズの組んだ足に触れ、その隙間へと差し入れた。ルイズは一瞬だけ身を強張らせたが、すぐに思い直したように力を抜き、何の抵抗もしてこない。そのまま足を解いて開かせ、恥丘を手のひらでやんわりと包み込み、ゆっくりと唇を離すと、ルイズは火照った顔で恥ずかしそうに微笑んだ。
「……ばか」
 俺は黙ってもう一度ルイズの唇に短いキスをすると、昂ぶりの近付いた陰茎を胸以外の場所にも当てていった。上向きに尖った薄い乳房もその先も、無毛の脇も鎖骨も首筋も、亀頭の触れた箇所は全て先走り汁で濡れ、ルイズの肌がどんどん淫靡な光を帯びていく。同時に、しっとりとした陰部を緩やかに揉み解し、指先で秘裂をなぞって愛液をすくい、その指で陰核を擽り続けてやると、ルイズはされるがまま、恍惚とした表情で腰をガクガクと震わせ始めた。
「んふあはあっ……ばかあああっ……んはあふああっ……ばかばかああっ……」
 快楽に震える手でネグリジェを捲り上げて自ら裸体を晒し、だらしなく足を開いて陰部を弄ばれ、男の体液で肌を染められていくルイズには、もはや出会った頃の傲慢さの欠片もない。喘ぎながらも罵りの言葉を放ち続けるが、その口調は切なく甘く、まるで媚びているかのようだ。そんなルイズの痴態を前に俺はもう限界だった。陰茎を擦る手の動きを速め、亀頭を再びルイズの乳首に戻しながら、愛液に塗れた陰核を指先で摘み上げる。
「んんあっはうああっふああああっ!」
 ルイズは感極まった叫び声をあげ、おねだりするように俺の指先に自ら何度も陰核を擦り付けると、そのままぐったりと椅子に凭れた。そんな放心状態のルイズを見ながら、俺はその乳首へと精液を放った。
   ★★★
「ねえ、今度はお肉」
「はいはい」
 ローストされた肉を皿の上で食べ易いように切り分けると、俺は膝の上のルイズの口元と運んでやった。ルイズは雛鳥のように口を開けてそれを受け取り、食べながら小さな尻と背中を俺に押し付けてくる。
 以前から続く食堂においての日常行事だが、俺に身を任せて微笑んだ数日前から、ルイズはそれまでにも増して甘えてくるようになった。事あるごとに俺に触れ、身を摺り寄せてくる。朝起きれば頬擦りし、日中は手を繋ぎ、寝る前は抱っこして欲しいとせがんで離さない。そんなルイズと性交するのは容易く、その気になれば隷属させることもできるだろうが、胸に精液を浴びせたあの日からは特に何もしていない。いずれは抱くつもりだが、今は普通に接しているだけで満ち足りた気分に浸ることが出来る。ルイズの方からも特に性的行為を求めてくることはなく、なければ別にそれで構わないらしい。但し、一日に一度は必ず頬にキスを求めてくる。それはルイズの部屋であったり学院の廊下であったりと場所は様々だが、現状ではそれ以上を望んではいないようにも見える。
「今度は魚。骨は取って」
「はいはい」
 そんな風に黙々とルイズに食事をさせていると、ふと、誰かの視線が自分たちに向けられていることに気付いた。当初は食堂の全員が俺たちを注視していたが、有り触れた光景となった今では珍しいことだ。振り返って確認すると、視線の主はタバサだった。眠そうな青い目で、俺とルイズ、というよりは俺たちの前に並べられた料理をじっと見つめている。俺が黙って手招きをすると、タバサは無表情のまま近付いてきた。
「腹減ってんのか?」
 食堂の食事は学費の中に含まれている。その都度料金を払って単品などを追加することもできるが、学費さえ払っていれば最低限のコースメニューは難なく食べられるはずだ。まさか一介の貴族が学費を払えないことなど有り得ないとは思ったが、相手は今ひとつ何を考えているのか掴めない少女だ。もしそうなら食事を分けてもいいし、金がないのなら出してやってもいい。場合によってはマルトー親父に今後のことについて掛け合ってやっても構わない。だが、俺の質問にタバサは首を横に振り、澄んだ小声で呟いた。
「はしばみ草」
「は?」
 タバサが何を言っているのか理解できず、俺は頭を掻いた。食堂内を見回してみるが、通訳をしてくれそうなキュルケの姿はない。その間にタバサはテーブルの前まで近寄ると、木製の大きなサラダボウルに盛られた青菜を指差した。今日は油料理が多いから口直しに、と先刻シエスタが置いていったものだ。
「これ」
「これって、その野菜が何?」
「はしばみ草」
 どうやら久し振りに片言少女と禅問答をする必要があるらしい。誰か助けてくれ、と思いつつ、詳細を尋ねようとしたところで、膝の上で事態を見ていたルイズが不意に立ち上がった。そのままタバサの手を引いて食堂の片隅に行き、しばらくヒソヒソと話し込むと、再びタバサの手を引いて戻ってくる。
「分けて欲しいんだって」
 ルイズが俺にそう言うと、横のタバサが無言で頷いた。虐められっ子を庇う委員長といった構図だ。尚もルイズに聞くと、タバサはあまり流通していないこの青菜を好み、厨房の人間に頼んで以前から定期的に仕入れてもらっていたという。自室で食する為らしい。今日もそのつもりで食堂に来たが、担当のコックから手に入らなかったことを告げられ、諦めて部屋に戻ろうとしたところで、他のコックから別件で仕入れたとの情報を得た。それを売って貰おうとしたが、一足違いで俺たちの前に供されてしまった、とのこと。ちなみに、あまり流通していない原因は、この青菜には独特の苦味があって食べない人が多いからだそうだ。
「好きなだけあげるよ」
 差し入れてくれたシエスタには悪いが、そこまで欲しいなら構わないだろう。野菜だって好んでくれる人に食べられた方が嬉しいに決まっている。口直しとして確かに苦味は有効だが、なくても別にたいしたことじゃないし、それ以前に大ボウル一杯の青菜を俺とルイズだけで食べ切れるわけがない。
「あんた、これ食べたい?」
 そんな俺の思惑に気付いてか、ルイズが尋ねてきた。
「別になくても構わねえよ」
「私も。じゃあ、はい」
 そう言ってルイズはサラダボウルを両手で抱え、タバサの前へと差し出した。
   ★★★
「さてと、皆さん」
 頭の禿げた中年男性教師は売れない手品師のような口振りでそう言うと、丸眼鏡越しに教室の中を見回した。学院の教室は大学の講義室のような構造だ。教師が一番下の段に位置し、階段のように自由席が続いている。生徒の姿は疎らで、この教師の授業の人気のなさが垣間見える。が、別にそれでも構わない。どうせ暇潰しの授業参観だ。隣席のルイズなんか俺と手を繋いだまま幸せそうに眠りこけている。 
「これを見てください」
 教師は生徒数を気にもしない様子で、机の上に妙な物体を置いた。パイプとふいごとクランクと金属の筒と車輪が繋がった、エンジンの出来損ないのような機械だ。
「それはなんですか? ミスタ・コルベール」
 生徒の一人が質問した。教師の名はコルベールというらしい。コルベールはおほん、ともったいぶった咳をすると、得意気に語り始めた。
「よくぞ聞いてくれました。これは私が発明した装置ですぞ。その名も『愉快なヘビくん』といいます。火の魔法と油とを使って動力を得る装置です。まずはこうして火を用意して、このふいごで油を気化させ、そこに火を与えます。気化した油が爆発する力で上下にピストンが動き、その力はクランクに伝わり車輪を回す! ほら! すると愉快なヘビくんがご挨拶!」
 コルベールが杖を振って火を起こし、説明に従って装置を操作すると、ぴょこっ、ぴょこっと筒の中からヘビの人形が顔を出した。出来損ないっていうか、そのまんまエンジンだ。独力で作ったのならたいしたものだ。何しろこの世界の科学技術の水準は各種バラつきがあるものの、押し並べて著しく低い。こういう男を得ておけば先々使い道がありそうだ。
「で? それがどうしたっていうんですか? そんなの、魔法で動かせばいいじゃないですか。なにもそんな妙な装置を使わなくても」
 誰かがとぼけた声で感想を述べた。コルベールは評判が芳しくないのでがっかりしたのか、肩を落としながら説明を始めた。
「よく見なさい。もっともっと改良すれば、なんとこの装置は魔法がなくても動かすことが可能になるのですぞ。今はこのように点火を『火』の魔法に頼っておるが、例えば火打石を利用して、断続的に点火できる方法を採用すれば――」
 生徒たちは熱心に話すコルベールを反応薄気に見つめている。俺は周囲のそんな様子を見ながら、コルベールに何を作らせるかをずっと考え続けていた。
   ★★★
「なあ。今日、食堂でタバサと話す時、何でお前、わざわざ隅の方まで連れてったんだ?」
 ブラシで髪を梳いてやりながらそう尋ねると、胡坐の上のルイズは俺を振り返り、拗ねた顔をして唇を尖らせた。現在はルイズの部屋のベッドの上、就寝前の身づくろいの時間だ。
「だ、だって、やだったんだもん」
「何が?」
「あ、あんたが、ほほ、他の女の子をじっと見てんのが」
 少しだけふて腐れた口調でそう言うと、ルイズは胡坐抱っこされたまま、小さな尻を俺の股間へと押し付けてきた。本人にその気はないのかもしれないが、俺にとっては男性器への愛撫と変わらない心地良さだ。何しろルイズはネグリジェの下には何も着けていない。薄手の生地を通した臀部の感触に、寝間着の中で俺の一物が鎌首をもたげてくる。
「お前な、そんなことしてたら、俺に襲われても文句言えねえぞ?」
「べべ、別に、い、いいわよ」
 そう言ってルイズは更に強く尻を押し付け、そのまま腰を左右に揺らしてくる。俺としては嬉しい返事と態度だが、以前にはあれだけ陰茎に触れるのを嫌がっていたルイズだ。先日のことも含めて、シエスタへの対抗心が根底にあることは容易に想像できる。俺はブラシをベッドの上に置くと、ルイズを背中からそっと抱き締めた。僅かにルイズの身が固くなる。
「……無理しなくていいんだからな。抱きたくないって言ったら嘘になるけど、それでも俺はお前のことを大事にしたい。お前は肩肘張らずに普通にしてればいいんだ」
 子供をあやす様に俺がそう告げると、ルイズは腰の動きを止めた。長く息を吐き、抱き締めた俺の腕に頬を擦り付けてくる。しばらくそうしている内に、俺は自分の腕が微かに濡れていることに気が付いた。どうやら黙ったまま泣いているらしい。腕を解いてルイズの身体の向きを変え、正面から抱き直してやった。ルイズは足を開いて俺を跨ぐ形になったが、捲くれたネグリジエの裾を気にする素振りもなく、ただ静かに寄り添ってくる。
「……ありがと」
 ルイズは涙を流しながら小声でそう囁き、俺の頬に顔を寄せて何度もキスをし始めた。
   ★★★
「ねえ、そんなに押し付けてきて、辛いの?」
 不意にルイズが尋ねてきた。向かい合って座ってから既に数十分が経過している。その間、延々と頬にキスをされ、ネグリジェの裾から露出した陰部を見せられていた俺は、荒い息を抑えながら黙って頷いた。寝間着の布越しとは言え、股間に触れているルイズの秘所に陰茎を押し付けられずにはいられない。正直に言えば前言撤回し、今すぐルイズを組み敷きたいところだ。
「私ね、その、ささ、最後までしちゃうのは、やっぱりまだ怖いの。だけど、そんなに辛いんなら、こ、この前みたいなことなら、そ、その、してもいいよ?」
 穏やかに微笑みながらルイズはそう言ってくれた。無理をしている表情には見えない。俺はその唇にキスをし、口を離した後、ゆっくりとネグリジェを捲り上げた。ルイズは両手を上に挙げ、そんな俺に協力してくれる。そのままネグリジエを脱がし、胡坐の上で全裸にすると、ルイズが真っ赤な顔で恥ずかしそうに囁いた。
「あ、あんたは、私が脱がしてあげる」
 ルイズは俺の寝間着の前ボタンに手をかけて一つ一つ丁寧に外し、胸を開けさせ、袖を抜き取っていく。次いで胡坐の上から降り、ベッドの上に座り直すと、黙って俺を見つめてくる。俺が無言で立ち上がると、目の前のズボンに手をかけて静かに下げ、足を抜き取らせた後で、俺のパンツの上からそっと一物に手のひらを押し当てた。
「なんだか不思議ね。前ほど怖くないみたい」
 そう言って柔らかく手の中の物を擦ってくる。本当に怯えていないのだろう。子供の頭を撫でるような手の動きには、硬さもぎこちなさもなく、凄く気持ちいい。
「この前だってそんなに怖がってはなかったろ?」
 前述したようにシエスタへの対抗心が原因だろうと考えてはいたが、それとなく本心を聞いてみる。それに何故あの時、組んだ足の力を抜いてくれたのかについても、教えてくれるなら聞いておきたい。
「……ほんとは怖かったわよ。あんたがそのまんま、最後まで迫ってくんじゃないかって。でもね、あん時は途中から、それでもいいって思ったの」
「どうして?」
「あんたが私のことを思って、その、触ってくれようとしてんだって、そう思ったから」
 嬉しいような困ったような複雑な笑みを浮かべ、ルイズはまっすぐ俺の目を見て話す。
「もし違っててもいいやって、そ、そう思えちゃったんだもん。それにその前、あんたが、こ、これを私にくっつけてきた時、ほんとに怖かったけど、なんかね、あのメイドのこともあるけど、私にできることだったら、少しぐらいは、あ、あんたのこと喜ばせてあげてもいいかなって、してあげたくなったの」
 俺はルイズの言葉を聞きながら、その正面に屈みこんだ。陰茎への愛撫を自分から中断させてしまうのは惜しいとも思ったが、それ以上にルイズの細い身体を抱き締めたくて堪らなかった。
   ★★★
「じゃあ、するからな」
「わわ、判ったから、その、い、いちいち言わないでよ、ばか」
 ベッドの上に横になったまま、ルイズは覚悟を決めたようにきつく目を閉じた。既に互いに全裸だが、この場で最後までしようというわけではない。相談した結果、しばらくはオーラルセックスまでで我慢しようということになったからだ。ルイズが処女喪失を怖がる気持ちは理解できるし、そんなルイズを強引に犯すことは、以前の俺なら容易く出来たろうが、今となっては無理だった。それにルイズとならそんな行為だけでも充分に満足できる。むしろ縛りがある方が色々と楽しめそうでもある。だが一応、念のために避妊薬は呑ませておいた。
 俺は自分の陰茎を扱きながら、ルイズの側にしゃがみ込み、唇にキスをした。まず上唇、次に下唇を甘噛みし、そのまま舌を入れていく。意識のある状態のルイズとは初のディープキスだ。舌先で軽く突き、絡めてやると、ルイズは俺の首に手を回し、夢中になって自分の舌を動かし始めた。催眠時には思いのまま口腔を嬲っていただけに、抵抗感が弱まっているのかもしれない。更に空いている手をルイズの胸に回し、乳首に触れないよう慎重にその周囲を指先でなぞってやる。
「んん……っ……むぐ……ん……ぷはっ……んむっ……ん……んんっ……んぐ……む……」
 時に手を乳首から移動させ、鎖骨、喉、脇腹、腰へと回す度、ルイズは俺の手にその箇所を押し付けようと身を曲げるが、俺は素早く別の箇所へと移動させる。ルイズが本当に触って欲しい場所、乳首や陰部などには決して手を触れない。すぐに触ってしまうのが勿体無いというのもあるが、徹底的に焦らして、自分の口でちゃんとおねだりさせてやりたい。
「んむぐっ……んぐっ……ぷひゃあ……んむっ……うぐむっ……んっんっ……ぷはあぁ……」
 悩ましく篭った息を漏らしながら、ルイズは一心不乱に唇を合わせ、舌を忙しなく動かし続けている。時折切なそうに腰を持ち上げて足を開いては閉じ、爪先を反らしているところを見ると、こんな行為だけで絶頂が近いのかもしれない。この状態ならもういいだろう。俺は唇を離し、指先で再び乳輪を撫でながらルイズに問いかけた。
「どうして欲しい?」
「ふはあっ……なっ……んんあっ……なによぉ……くうんっ………どうしてってぇ……」
「ここの真ん中、触って欲しいんじゃねえか?」
 言いながら少しだけ指先に力を込めてやる。
「はうあっ……あんたぁ……ふああっ……私になにをぉ……んはあっ……なにを言わせるぅ………はあうっ……つもりぃ……んふあっ……ばかあぁ……はうんっ……なにをぉ……」
 流石に勘がいい。おねだりさせようという俺の意図を見抜いているようだ。ここは対応を変えるしかない。俺は擦り続けている陰茎をルイズの目の前に差し出した。無論、胸に回した手はそのままだ。
「お前が感じてくれてんのを見て、もう俺、イきそうなんだよ。見ろよ、先っぽが濡れてるだろ? だからもっと興奮したい。お前がちゃんと答えてくれたら、俺、イけそうなんだ」
「んふああっ……ばかああっ……はんんあっ……さっきまでぇ……ふうんんっ……あんたのことぉ……ひゃんんっ……見直してたのにいぃ……んふふあっ……台無しじゃないぃ……」
「だから言ってくれ、ルイズ。お前の口からどこを触って欲しいか」
「んあはあっ……ばかあっ……はああんっ……ばかばかぁっ……うはあんっ……バカ犬ぅ……んんあっ……触ってぇ……はううんっ……胸の先っちょぉ……うはああっ……触ってぇ……」
「もっと言ってくれ。ちゃんと乳首って言ってくれ、ルイズ」
「ふはあんっ……乳首ぃ……んっんんっ……触ってぇ……ふやぁんっ……私のぉ……んんああっ……乳首ぃ……んふああっ……早くぅ……んんふあっ……触ってってばぁ……ひゃあんっ……言ったでしょぉ……ふうんんっ……早くぅ……あはああっ……触んなさいよぉ……」
 切なそうに身悶えし続けるルイズの姿に充足感を覚えた俺は、陰茎を扱く手の動きを速めながら、指先の乳首を少し乱暴に撫で上げた。
「んああふあっ……そこおぉ……あふあんんっ……もっとぉ……くはああんっ……触ってぇ……んんっああぁ……そこおぉ……あんああんっ……もっとぉ……」
 乳首だけでも相当に気持ちいいのだろう。ルイズは大きく開いた足を震わせながら、宙に腰を跳ね上げて爪先立ちになり、蕩けた顔で俺の陰茎を見つめ続けている。そろそろ俺も我慢できそうにない。俺は姿勢を変えると、もう片方のルイズの乳首に口をつけ、舌と歯の裏でやんわりと押し潰した。、
「ひゃああんふあああっ!」
 そして身体を痙攣させるルイズの胸と腹に、思う存分精液をぶちまけた。
   ★★★
 流石にルイズはしぶとかった。おねだりを恥ずかしがり、淫語を教えても口にせず、対応には手を焼いたものだ。だが、一度絶頂した身体はより深い刺激と快楽を求め、そのままベッドの上で五回ほど高みに導いてやると、やっと俺の言葉に従うようになった。
「ほら、ルイズ。今、俺が触ってるここは何て言うんだっけ?」
「ひああふああっ……クリぃ……んやはああんっ……クリトリスぅ……」
「このまま触ってて欲しいか? それとも舐めて欲しいか?」
「はひやふああっ……舐めてぇ……はんんああっ……クリトリス舐めてぇ……」
 俺は頷いて大きく開かせた足の間へと移動し、陰核だけを舌先で責め続けてやる。ルイズは全身を引きつかせるだけで一切の抵抗をしてこない。もはや身体に全く力が入らない状態なのだろう。ルイズの絶頂に合わせて俺が放った計六回の精液を全身に浴び、鼻の穴にさえ流れ込んでいるというのに、拭き取ろうという素振りさえない。
「やはああんあっ……気持ちいいぃ……んんあはああっ……クリトリスぅ………うああはあっ……もっとぉ……ひゃああふあっ……もっと舐めてぇ……あはぁんああっ……もっとぉ……」
 完全に勃起した陰核は俺の舌の動きに合わせてプルプルと震え、秘裂からは処女とは思えないほど大量の愛液が垂れ流されている。正直に言えばここまでするつもりはなかったのだが、その場の勢いに任せていたらこういう結果になってしまった。ルイズの身体が俺の望む行為と相性が良かったとしか思えない。更に言えば、ルイズはどんなに乱れても呂律が回らなくなることがなく、現状でも教えた淫語を正確に発声する。未だ失神も失禁もしていない。そんなルイズをもっと乱れさせてやりたいと思うのは当然だろう。
「ふおあはああっ……イっちゃうう……んくあふああっ……またイっちゃうよぉ……」
 ルイズの言葉に俺は行為を中断し、その顔近くへと座り直して自分の陰茎を扱き始めた。そのまま放置するのも可哀想なので、陰核に再び手を伸ばして指先で弄んでやる。
「ルイズ、待ってろよ。もう一回、お前にかけてやるからな。一緒にイこうな?」
「ひうあはああっ……一緒ぉ……んくふあぁふぁ……一緒ぉ……はあひいんんっ……かけてぇ……あひゃああっ……イっちゃうう……うふはああんんっ……イっちゃうからかけてぇ……」
 言いながらルイズは必死になって陰茎へと顔を寄せてくる。指示もしていないのに自分から鼻先を近づけて匂いを嗅ぎ、愛らしいピンクの舌を伸ばして亀頭の先走り汁を舐め始めた。
「んぺあふあはっ……これ好きぃ……れろんふはああっ……この臭い好きぃ……」
 全身を弛緩させて陰核だけを嬲られ続けながらも、ルイズは一物に舌を這わせて甘えるように舐め続けてくれる。そんな献身的なルイズの行為に俺は堪らなくなった。
「そろそろイくぞ」
そう告げて、ルイズの陰核を摘み上げ、指の腹で強めに擦ってやる。
「イ……っく……イくうううううううっ! あははあふあああああっ!」
 途端にルイズは叫び声を上げた。全身はだらしなく横たわらせたまま、時折、身体の各箇所を引きつらせている。と、陰核を摘み上げた状態の俺の手に、何かが当たっているのに気が付いた。見てみると、ルイズは小便を漏らしていた。
「んひゃああああふああっ、ああっ、あっ…………く…………ふ……」
 俺は射精するのも忘れ、そのままルイズの初失禁を見届けた。
   ★★★
「ほら、腕上げて」
「ん。ねぇ、ほんとのほんとに、んんっ、約束してくれる?」
「言わねえよ、ほら、次は背中向けて」
「ん。ほんとのほんとに、あんっ、約束だからね?」
 ルイズの言う約束とは、失禁の件を口外しないということだ。物置小屋の風呂場で俺に身体を洗われているルイズは、そのことばかりを気にして何度も尋ねてくる。失禁後、部屋の掃除をし、適当な服を着せてこの場所に連れてくるまでに落ち着いたのか、ルイズの態度は平素のものに戻っている。だが、目の下には隈ができ、時に身体をふらつかせていた。疲れ果てていることは明白で、ここの場所へも俺が背負って連れてきたほどだ。
「ほら、今度は立って。お尻こっちに向けて」
「ん」
 ルイズは素直に椅子から立ち上がり、別の椅子に座った俺の目の前に小さな尻を少しだけ突き出した。以前からは考えられないほどの従順さだ。そんなルイズの身体を洗ってやるのは非常に楽しい。俺は石鹸を予め水に溶かしておいた自前の石鹸水を手のひらに追加し、尻を何度も撫で回してやる。この世界にはボディシャンプーなどなく、当初はタオルにその石鹸水を染み込ませて洗っていたのだが、途中から我慢できなくなり、現在は直接肌に触れている。既に首筋も胸も背中も足も泡に塗れ、まだ洗っていない場所といえば陰部と尻穴くらいなものだ。
「んんっ、ちょっとぉ、はんっ、くすぐったいぃ」
 何度も何度も尻を撫でられ、ルイズは切なそうに身を捩らせる。射精の機会を見逃した俺の陰茎はいつでも放出可能だ。ルイズの残り体力が気にはなるが、もう一度くらいはオーガズムを与えてやってもいい。
「ここも洗ってやるからな」
 俺は小指の先で尻たぶの泡をすくい取ると、肛門周囲の襞を一本一本擽ってやる。
「んひゃっ、ちょっとぉ、あはあっ、ばかあっ、んはんっ、そんなとこ、あんんっ、ダメぇ」
 文句を言いながらもルイズはされるがまま、明確な喘ぎを漏らし始めた。腰を艶かしく左右に振り、徐々に足が開いていく。頃合を見て俺は小指の先をルイズの尻穴へ押し付けた。そのままほんの少しだけ先端を挿し入れ、小刻みに動かしてやる。
「ルイズ、ほらここ、尻穴。ここもちゃんと綺麗にしとかないとな。これ気持ちいいだろ?」
「あふはあっ、ばかあぁ、んんくはっ、もう無理ぃ、んひゃあっ、止めなさいよぉ」
「判った」
「え?」
 俺は指を抜き、それ以上ルイズに触れることなく、両手を自分の膝の上に置いた。怪訝な表情で振り返ったルイズを見上げ、平然とした笑みを浮かべてやる。この場でルイズを焦らせてやるのも面白いと思ったからだ。
「え? ええ?」
 そんな俺をルイズは困惑の表情で見つめてくる。予想通りだ。やはり行為の中断に不満があるらしい。しかし、事を安易に再開せず、まだまだ焦らせて反応を楽しみたいところだ。
「なに驚いてんだ? ご主人様の命令通り、止めただけじゃねえか」
 そう俺が言い放ってやると、ルイズは不服そうに俺を睨んだ。だが、俺の顔と勃起状態の陰茎とを何度も何度も見比べると、やがて意地悪そうに口元を歪めて笑い、俺の予想外の言葉を口にした。
「……そうよね。次は私の番よね?」
 後から思えばこれが、性行為における初めての『ルイズ小悪魔モード』発動の瞬間だった。
   ★★★
「聞こえないわ。もう一度」
「だから、もう出そうだって」
「あんた、今さっき出したばっかじゃない。けだものじゃないの?」
 汚いものでも見るかのような軽蔑の眼差しでルイズが言う。先刻から延々とこの状態だ。俺は相変わらず風呂場の椅子に全裸で腰掛け、自分で一物を扱きながら、その場所に足裏を押し付けてくるルイズに嬲られ続けている。亀頭に触れる泡塗れの足裏の感触は実に甘美で、その倒錯的な状況と相まって我慢しきれずに一度精液を放出したのだが、ルイズは腕を組んで立ったまま、尚も俺に自慰を要求した。当然、その足裏は休むことなく押し付けられている。どこにそんな体力が残っていたのかと思うほどだ。今や俺の一物は自らの粘液と泡とに塗れ、それがまたローション替わりとなって心地良く、二度目の限界を迎えようとしていた。
「すごく出したい? 一応聞いてあげるわ。どのぐらい?」
「もの凄く。もう出すぞ」
「ダメよ。さっきは勝手に出しちゃったんだから、今度は私が許可を出すまでダメ」
 淡々とした口調で俺に我慢を命じるルイズには、以前の恥じらいが全く見受けられない。嘲るような笑みを浮かべ、虚ろな瞳は淫靡な光を帯びている。どうやらルイズには平常、自尊、恋慕以外に暴走モードがあるようで、従順に従っているのを暴走隷属モードとするなら、現在は暴走小悪魔モードと言ったところか。それは堂に入ったものであり、嬉々として俺を見下す様を見ていると、これが本質なんじゃないかと思えてくるほどだ。とは言え、惚れた弱みか、これもまた素晴らしく可愛い。何しろ十三歳の少女が全裸で足コキと言葉責めをしてくれているのだ。モンモランシーにもその気があるが、向こうの全般的に素っ気無い態度に比べると、ルイズのそれは執拗で辛辣であり、より俺の好みに近い。
「それともそんなに出したいの? ご主人様の身体にまたかけるつもり? 犬の分際で?」
「そうだよ、出したいよ。お前にかけたいよ。なあ、もういいだろ?」
「ダメって言ってるじゃない。そうね、どこにかけたいか、ちゃんと言ったら考えてあげてもいいわよ? ご主人様のどこに臭い付けしたいの? ここ?」
 ルイズは自分の薄い乳房に手を沿え、見せ付けるように下から寄せ上げた。肌に付着した泡の中から勃起した乳首がツンと突き出ている。
「それともここ?」
 胸に当てた手と陰茎を詰る足裏とをそのままに、ルイズは足を開くと、空いている手を下腹部に当て、その場所を強調するかのように陰部を曝け出した。風呂場では触れてはいないにも関わらず、秘裂の周囲は艶やかな蜜で濡れている。
「そういえばここ、まだ洗わせてなかったわね。あんた、もしかして、そんなご主人様のここにかけたいの? 犬のくせに? ご主人様を妊娠させるつもり?」
「ああ、そこにかけたい。薬を呑んだんだから妊娠なんてしねえよ。だから、いいだろ?」
「そっか、あんたの為に薬を呑んであげたんだったわね。いいわ。じゃあ、ちゃんと言って。誰の、どこに、なにをかけたいのか。そしたらかけさせてあげる」
「ルイズの、マンコに、精液をかけたい」
「仕方ないわね、特別よ」
 ルイズは満足そうな笑みを浮かべると、股間に押し当てていた足を風呂場の床へと戻し、椅子に座った俺の両太腿を跨いで、陰茎に秘所を寄せてきた。
「入れちゃダメよ。それと、出す時は愛してるって言って」
 こんな状態で、こんなことを言われて、射精を我慢できるはずがない。俺はルイズの陰核に尿道口を押し付け、命じられた言葉を口にした。
「ルイズ、愛してる」
 そして蕩けるような快楽と共にルイズの陰部に精液を出し続けていく。放出の途中、ルイズは俺の唇に一度だけキスをし、勝ち誇ったような口調で言った。
「いい子にしてたら、またかけさせてあげる」
 俺は恍惚に浸りながら頷き、いつかはルイズにシエスタの調教を任せてみようと考えた。
   ★★★
 三日後の夕方、俺はモンモランシーの調剤小屋を訪れていた。ルイズは同行していない。例の小悪魔モード発動の翌朝以降、俺を見ると逃げるようになってしまい、その後は共に行動することがなくなっていた。当然、以前のように甘えてくることもない。夜でさえ、今後は物置小屋で寝るように、とタバサに言付けてくる始末だ。話しかけようと近付けば真っ赤になって逃げ出し、気が付くと物陰に隠れて俺の様子を窺っていたりする。あの夜の自分の行為を恥じていることは明白だった。素に戻った時に失禁や暴走時のことを思い返して愕然としたに違いない。宥めてやることはできるだろうが、気位の高いルイズのことを考えると、少し時間を置いてやった方がいいのかもしれない。そんな理由からこの三日間、俺は一人で行動していた。
「どう? 必要な器具も運び入れて、これでやっと一段落ってとこなんだけど」
 モンモランシーの言葉を受けて室内を見回すと、なるほど、調剤用のテーブルの上には秘薬や小瓶が並べられており、ガラスの容器やガラス棒、乳鉢なども各棚に整頓されて置かれている。他の棚には専門書らしきものが背表紙を揃え、一端の研究所と言っていい。
「なかなかいい出来じゃねえか。ギーシュに感謝してやれよ?」 
 俺は意地悪く言ってやった。先日の手コキの意趣返しのつもりだ。この小屋の権利の買取と内装の手配をしたのはギーシュだが、既にモンモランシーとは正式に別れ、一学年下の恋人を作ったと本人から聞いていたからだ。
「感謝はしてるわよ。まあ、どうでもいいけど。今後も薬のこととかで関わんなきゃなんないんだし、後でそれなりにお礼は言っとくわよ」
俺の意図に反して、モンモランシーは素っ気無く言った。本当に未練などはない様子だ。下手に喧嘩されるよりは、俺としてもその方が有り難い。ギーシュはまだまだ必要な駒だ。モンモランシーと俺と三人、関係が良好でなければ困る。
 調剤小屋初訪問ということもあり、俺はモンモランシーに連れられて調剤室、寝室、キッチン、風呂場、トイレ、リビングなどを案内して貰った。一通り説明を聞いた後で、リビングに佇むモンモランシーに尋ねてみた。
「当面はこれで問題ねえな?」 
「うん、ありがと。ねえ、何かお礼したいんだけど、何がいい?」
「お前、自分が何を言ってるか判ってんのか? 犯すぞ?」
 調剤小屋を訪れる際に、ルイズの尾行がないことは確認してある。折角の申し出だ、可能なら少しはモンモランシーを辱めてやりたい。
「やっぱりそっち? それはダメ。私、そんなすぐに許したりしないんだから」
 モンモランシーは頬を染めて俺の言葉を拒絶した。俺もいきなり本番行為など期待してはいないが、こうして明言されると少しばかりは落胆してしまう。でもまあ、すぐには許さないということは、いつかは許すということでもある。先々の楽しみと思えば我慢できないこともない。更に、それはダメということは、それ以外なら可能ということでもある。
「じゃあ、どこまでなら許すのか言ってみろよ」
「え? あの、最後まではしないで、その、私は服を着てて、えっと、出来ればあんたのも触んないで、あと、私の身体にも触んないで……」
 無茶苦茶な女だな、こいつ。と思いつつも、すぐに俺は妥協点を見出した。
「要するにお前の口とか耳とかマンコとかにチンポを突っ込まないで、服を着たままのお前に触らずに、俺が自分でチンポを扱けばいいんだな?」
「え? あ、う、うん、そういうことになるのかしら。え? 耳?」
「冗談だ」
「あ、ああ、そう。うん、その、あんまりエッチなことじゃなければ……」
 モンモランシーの返答を聞き、当たり前の如く、俺は薄く笑った。
   ★★★
「あっ、さ、触んないでよ? んっ、絶対に触んないでよ? ふぁ、や、約束なんだからっ」
「判ってるよ。ちゃんと約束守って、一度も触ってねえだろ?」
「けどぉ、んあっ、そんなに顔近づけないでっ、はあぁ、嫌ぁ、んはぁ、もう嗅がないでぇ」
 約束通り、俺は一度もモンモランシーに身体に触れず、服を脱ぐことも強要せず、床に座った状態で自分の一物を擦り続けている。モンモランシーはそんな俺の正面に立ち、両手でスカートを高く捲り上げているだけだ。当然、フリルの付いた可愛い下着は俺の目の前に晒されている。金髪縦ロールのお嬢様がそんな格好をして自慰の惣菜となってくれているのだ、眼前の匂いを確かめたくなるのは当然だろう。モンモランシーはそんな羞恥プレイに弱いのか、内腿を震わせて少しずつ喘ぎ始めている。透き通ったような白い肌はどこも真っ赤だ。
「ん? 何かいやらしい臭いがすんぞ? お前、こんなことで濡れてんのか?」
「んはぁ、そ、そんなわけないでしょ、んふっ、ぬ、濡れてなんかぁ、ふあっ、ないぃ」
「でもなぁ、なんか染みが出来てんぞ? ちょっとその染みの臭い嗅がせろな」
 俺はそう言って鼻先を布越しの陰部へと更に近づけた。布地に触れるか触れないかギリギリの位置だ。染みというのは嘘だが、モンモランシーの体臭が濃密になっているのは本当だ。ルイズやシエスタとは違う、甘酸っぱいその臭いは淫靡さと清らかさが溶け合ったようないい匂いだ。自然と俺の陰茎を扱く手の動きも速くなる。
「んはあっ、嫌あぁ、くふうっ、嗅がないでぇ、んふあっ、嗅がないでよぉ」
 モンモランシーは足に力が入らなくなっているのか、下半身を小さく揺らしている。絶対に動かず、捲り上げたスカートを戻さず、と事前に約束させたので、この状態で出来る抵抗と言えば俺に文句をつけることぐらいだ。
「安心しろ、いい臭いだぞ。お前のマンコからジワジワ出てる愛液」
「んあはぁ、嫌あぁ、ふああっ、そんな言葉ぁ、んくあっ、言わないでぇ、んふあっ、嗅がないでぇ、んはあぁ、ねえ、んふあぁ、もういいでしょ、んっんっ、止めようよぉ」
 嫌々をするようにモンモランシーは首を振るが、その表情はうっとりとしているようにも見える。現に吐息と喘ぎは次第に大きく深くなっている。もう一押ししてやれば、こんな行為でも快楽の極みに登り詰めさせることができるかもしれない。
「じゃあ、何て言えばいいんだよ? 濡れ濡れマンコから噴き出してるマンコ汁とかか?」
 俺が意地悪くそう言った瞬間、目の前の下着の股布が、本当に薄っすらと湿り始めた。明らかに愛液の染みだ。
「んくんあっ、やだやだぁ、んあはあっ、そんな言い方ぁ、はうんんっ、嫌あっ」
「おいおい、どんどん濡れてんぞ? お前、本当は淫乱なんじゃねえのか?」
「くはあんっ、違うわよぉ、ふはああっ、淫乱なんかじゃ、んあんんっ、ないぃ、はううあっ、ないんだからぁ、うはんあっ、濡れてなんかぁ、はうんあっ、ないんだからぁ」
「じゃあ、これは小便か」
 そう言った途端、モンモランシーはピタリと喘ぎを止めた。身体の揺れも消えて硬直させている。次いで、蕩けたような表情で全身を弛緩させながら、明らかに今まで以上に恍惚とした深い息を吐いた。
「あっはああああぁ、ふああぁ、ああぁ…………んはぁ…………はぁ…………く……」
 見ると、モンモランシーは立ったまま小便を漏らし、陰部を覆い隠していた下着はずぶ濡れとなって透けている。正直に言えば、こいつも小便かよ、と俺は思った。
   ★★★
 素に戻ったモンモランシーから調剤小屋を追い出された俺は、街に出て腹ごしらえをすることにした。既に日は暮れており、時間的にも都合が良かった。以前から食事の出来る飲み屋の一軒ぐらいは確保しておきたいと思っていたからだ。いつものように学院の門を出て、すぐ傍の馬稼の元を訪ねる。馬稼とは運転手である馬借が馬の背に客を相乗りにさせ、任意の目的地に運んでくれる商売のことだ。この世界でのタクシーと言っていい。頼めば馬車も用意してくれる。チクトンネ街へ、と俺が告げると、何度か利用して顔馴染みになっていた馬借は、二つ返事で引き受けてくれた。中年親父の背に抱きついて約一時間という行程は辛かったが、本来なら学院からチクトンネ街までは馬で二時間はかかる距離だ。移動の速度もさることながら、裏道や抜け道を熟知している男だったので、そのくらいは我慢しておく。
 チクトンネ街に着くと、俺は迷わず『魅惑の妖精』亭という酒場に入った。馬借に道中で聞いた話では、可愛い女の子が際どい格好で飲み物や食事を運んでくれる人気の店だという。話の通りに店内ではどう見ても十代半ばの少女たちが給仕として働いており、ドレスやワンピースなど、服装は様々だが一様に際どい。キャミソール姿の少女もいる。この店では別料金を払えば、気に入った娘がテーブルについて接客してくれるとのことだった。
「ようこそ『魅惑の妖精』亭へ」
 そう言って俺の隣の席に座ってきたのは長い黒髪の少女だった。腰まで届く長い髪を白い布を使って頭上でまとめ、同じく白いエプロンを緑のワンピースの上に付けている。ワンピースの胸元は大きく開かれ、ペンダントヘッドの揺れる豊かな胸元が丸見えだ。胸の大きさはアンリエッタと同じくらいだろうか。ルイズやアンリエッタ程の美人ではないが、顔立ちには親しみやすさがあり、活発な雰囲気を漂わせている。身体つきも大人びていてまあまあ好みだ。俺は少女に酒と料理を注文すると、前払いで別料金を払ってやった。
「今ね、チップレースだなんて、ばかげたレースをやってるの。でも、チップのためにおべっか言うのは疲れちゃうし。でも、チップが少ないと怒られちゃうのよね。はぁ……」
 聞けば、ジェシカというその少女は十三歳で、この店の店長の娘とのことだった。初対面の相手にチップレースなんて話を振ってくることを考えると、なかなかに強かそうだ。十三歳にしては発育もいいことだし、こういう少女を初顔合わせの時から犯すのも面白い。俺は同情するように微笑むと、ジェシカにチップの相場を尋ねてみた。
「気持ちだから幾らでもいいのよ。一スゥでも一ドニエでも。そりゃあ、人によっては一エキューとか、くれたりする人もいるけど……」
「これでいいかな」
 俺は駆け引き交じりの会話が面倒臭くなったので、五十エキューほど渡してやった。
「こ、こんなに?」
 手のひらに載せられた金貨の量にジェシカが目を丸くした。だが、俺にとっては遊郭の揚げ代金のようなものだ。チップ分以上はジェシカの身体を弄んでやる。
「その代わり、店が終わるまでここにいて、一緒にお酒を飲んでくれるかな?」
俺が微笑みながらそう言うと、ジェシカは唖然とした顔のまま、何度も何度も頷いた。
   ★★★
「おっ待たせー」
 部屋に入ってくるなりジェシカは俺に抱きついてきた。頬を朱に染めて嬉しそうに微笑んでいる様子は、恋人との逢瀬を喜ぶ少女そのものだ。もちろん、全て薬の効果なのだが。
――店でジェシカの酒にこっそりと混ぜたのは、新種の暗示薬だ。目の焦点が合ったままという点は以前のものと同じだが、効果時間は長く、数日間は暗示が残るという。更に素晴らしいのは、一番最初に暗示を与えた人間以外の言葉では別の暗示にかかったりしない、という点だ。これなら万が一、キーワードとして俺が設定した言葉を、誰かが本人の前で偶然言ったとしても問題がない。仮に数日間放置しておいたとしても安心していられる。そして俺が店でジェシカに与えたのは、俺のことが好きで処女を捧げたくて仕方がない、という暗示だった。薬を飲ませた直後に本人に確認したところ、処女である、とのことだったからだ。その後、近くの宿屋に部屋を取るので店が終わったら誰にも内緒で来い、と俺が言うと、ジェシカは素直に頷いた――。
「ねえ、どうしたの? あたしのこと、その、奪ってくれるんでしょ?」
 ジェシカは黒い瞳を潤ませながら俺を見上げ、身体を擦り付けてくる。さて、このまま犯すのは簡単だが、それでは少し物足りない。何かいい案は、と考えて、俺はジェシカが店長の娘であるということを思い出した。暫し黙考し、俺はジェシカに向かって暗示を与える際のキーワードを呟いた。
「今からお前に暗示をかける」
 途端にジェシカは黙って俺を見つめ始めた。身体を寄せてくる動きも静止している。
「お前は俺の娘、俺はお前のパパだ。お前は俺が大好きで犯されたくて仕方がない。お前は少し舌足らずで話し、俺が言ったことには従順に従う。但し、これはいけないことだ。いけないことをしているという自覚と、恥ずかしいことを命じられた時には羞恥心を忘れるな。それと俺が、全ての暗示を解除する、と告げた時点で暗示は解け、お前は暗示にかかっていた間の記憶を忘れる。但し、俺とお前の実の父親とは別人だということは覚えておけ。今ので暗示は終了だ」
 俺が言い終わるのと同時に、ジェシカは再び俺にしがみ付いてくる。
「パパぁ、大好きぃ」
「パパもお前のことが好きだぞ、ジェシカ。さあ、パパにお前の裸を見せてごらん」
「もー、パパのエッチぃ。うーん、でもぉ、パパにならいっかぁ」
 言って、ジェシカは臆面もなく服を脱ぎだした。靴を脱いで靴下を下ろし、髪を纏めていた布とペンダントとエプロンを外し、背中に手を回して緑のワンピースを床に落とし……。
「そこまででいいよ、ジェシカ」
 俺が言うと、ジェシカは前屈みになってパンツに手をかけたまま、不思議そうな顔をした。大振りな乳房が妖しく揺れている。
「その先は、まずこの薬を呑んでからだ」
 そう言って俺は避妊薬の錠剤を取り出した。
   ★★★
「パパぁ、これぇ、裸になるより恥ずかしいよぉ」
「いいからじっとして。今、パパのドロドロの精液をジェシカにかけてあげるから」
 俺は陰茎を扱く手の動きを速めた。俺は既に全裸だが、ジェシカはパンツ一枚の姿だ。立ったまま自慰をする俺の目の前に立ち、パンツの前部分に手をかけて陰部を晒し、そこに精液をかけられるのをじっと待っている。もちろん、薬を呑ませたので妊娠の危険性はない。
「だってぇ、娘の大事なとこ見てぇ、そことパンツにかけようだなんてぇ。パパの変態ぃ」
 文句を言いながらもジェシカは嬉しそうに目を細めている。穏やかな眼差しに非難の色はない。肉付きのいい乳房もその先も、細く括れた腰も、妖しく茂る黒い陰毛すら隠すことなく、惜し気もなく俺に見せてくれている。
「大事なとこじゃないだろ? さっきパパが言葉を教えたろ?」
「えー、言わなきゃダメぇ? むー、オマンコぉ。ほらぁ、ちゃんと言ったよぉ」 
「じゃあ今度は、これから何をされるのか、エッチな言葉で説明してごらん」
「もー、まったくぅ。あたしはこれからパパにぃ、おちんちんから出る精液ぃ、オマンコにかけられちゃうのぉ。その後でぇ、パパにぃ、パパの女にしてもらうのぉ」
 ジェシカは何度も深く息を吐き、僅かに身を捩り始めた。この先のことを想像して興奮しているのだろう。豊かな乳房と腰を切なそうに揺らし、触れてもいない桃色の乳首を少しずつ勃起させている。そんな十三歳とは思えないほど身体つきの大人びた少女が、若干舌足らずの甘い口調で淫語を囁く様には、ギャップも相まって何とも言えない淫靡さがある。俺の陰茎はそろそろ限界が近い。モンモランシーとの行為で射精していなかったこともある。一旦はこの辺で出しておくべきだろう。俺は先走り汁で濡れた亀頭を、ジェシカの恥丘へと押し当てた。滑らかな肌と陰毛の擦れる感触が、なかなかに心地いい。
「出すよ、ジェシカ。零さないようにパンツで全部受け止めて」
 言って、恥丘とパンツの股布に精液を浴びせ掛けていく。
「ああっ、あったかいぃ。パパの精液ぃ、あったかくてドロドロしてるぅ」
満足そうな笑みを浮かべたジェシカは、俺の指示した通り、床に零れ落ちないよう、パンツを揺り動かして股布に精液を集めていく。
「じゃあ、そのパンツをちゃんと穿いて。上に引き上げてオマンコに食い込ませてごらん」
 全てを放出した後で、俺はジェシカにそう命令した。
   ★★★
 その後、俺とジェシカはベッドの上に座ってワインを飲み始めた。無論、精液塗れのパンツは穿かせたままだ。ジェシカはお漏らししたみたいで気持ち悪いと一度だけ文句を言ったものの、以後は何も言ってこない。既に夜明け間近となってはいたが、ジェシカに尋ねると、開店までに店に戻れればいいと言う。時間はまだたっぷりあると言うわけだ。この部屋には風呂も付いている。さて、これからどうするか。俺はふと悪戯を思いつき、ジェシカに声をかけた。
「なあ、ジェシカ」
「なあにぃ、パパぁ?」
 俺のグラスに酌をしながら、あどけない笑みを浮かべたジェシカが答える。何の気負いもない素直で愛らしい笑顔だ。そんなジェシカを見て、俺は直前まで用意していた言葉を捨てた。本当は空のワイン壜を差し出して、こう言うつもりだったのだ。これで処女膜を破って、中に小便をしてみせろ、と。決して惚れたわけではない、と思う。ルイズ、シエスタ、アンリエッタは別格としても、ジェシカとモンモランシーを比較したら、俺は間違いなくモンモランシーを選ぶ。しかし、何というか、父親役を僅かに演じただけで、父性愛というものでも芽生えてしまったのか、ジェシカに対して極端に酷いことをする気にはなれなくなっていた。
「どうしたの、パパぁ?」
 ジェシカが無垢な瞳で俺を見上げ、問いかけてくる。これで身体が貧弱だったら保護欲が湧いてしまうところだ。とは言え、このまま酒を飲み続けているのも面白味がない。
「ん、そうだな。ちょっとそこに横になってオナニーしてごらん。パンツ穿いたままで」
「えー! なにそれぇ! パパ、酷いぃ」
「いいからやって。できたら約束通りパパの女にしてあげるから」
「はうう……、ちゃんと約束守ってよねぇ?」
 ふて腐れた顔でジェシカはそう言うと、ベッドの上に身体を横たえ、粘液に塗れた下着の中へと片手を入れた。もぞもぞと手を動かし、徐々に息を荒くし始める。
「何だ? いつもオナニーの時は片手で、胸は触んないのかな?」
「んっ、いつもなんてぇ、あっ、してないんだからぁ。はぁ、そのぉ、時々はするけどぉ」
 恥ずかしそうに答えながら、ジェシカはもう一方の手を自分の乳房に伸ばし、慣れた手つきで揉み始めた。次いで指先で乳首を下から擦り上げ、切なそうな表情を浮かべ始める。
「ふあぁ、パパぁ、んはっ、恥ずかしいぃ、んんっ、パパぁ、くうぅ、恥ずかしいよぉ」
「よく見えるように、パパの方に向かって、足を開いて腰を上げなさい。そのまま、精液を全部オマンコに塗り込んで。そうだな、あと、時々はお尻の穴も弄って」
「んくはっ、パパのばかぁ、あはあっ、意地悪ぅ、ふはぁん、意地悪うぅ」
 それでもジェシカは足を大きく開いて腰を上げ、陰部を俺に突き付けてきた。塗れた下着は局部の形状がはっきりと判るほど透けている。どうやら指を二本使い、パンツの中の粘液の塊を膣口に何度も擦り付けているようだ。それが余程気持ちいいのか、瞬く間に全身の肌が赤く染まっていく。やがて乳房に触れていた手も後ろからパンツの中に入れ、忙しなく動かしながら腰を震わせ始めた。指示の通りに尻穴を弄っているようだ。
「あふあぁ……見せてるぅ……はぁあっ……見せちゃってるぅ……ううあっ……パパにぃ……くはぁん……見せちゃってるぅ……んんふっ……パパぁ……ふううっ……好きぃ……」
 光を無くした瞳で嬉しそうに俺に微笑みかけながら、ジェシカは吐息と喘ぎを漏らし、前後に腰を動かし続ける。俺は股間の一物に手をやると、腰を上げ、亀頭をジェシカのパンツの中へと潜り込ませた。
「ほら、パパのを使ってしてごらん。気持ちよかったら、ちゃんとそう言うんだぞ?」
そう言うと、ジェシカは俺の陰茎を両手で優しく握り、自らの秘裂に押し当てて上下に動かし始めた。粘液に塗れたその箇所は、蕩けるような熱さと柔らかさだ。
「くふああっ……パパ好きぃ……んくんんっ…………おちんちんっ……あふはあっ……気持ちいいよおっ……ひうはあっ……おちんちんもぉ……んふひあっ……好きぃ……」
 当初はこのまま射精し、一物をジェシカに口で掃除させた上で、改めて処女を奪うつもりだった。だが、陰茎を使って激しく身悶えるジェシカを見ている内に俺は堪らなくなり、ジェシカの手の上に自分の手添えた。そのまま亀頭を膣口に当て、少しずつ挿入させていく。
「んくふはあっ……入ってくるうぅ……ひうふあはっ……パパのおちんちんっ……くはうあうっ……中に入ってくるよぉ……んっくうあっ……おちんちんがくるうぅ……」
 陰茎の先端を膣に少し入れた先に、少しだけ抵抗感がある。ジェシカの処女膜だろう。 俺は一瞬迷った後、それをなるべくゆっくりと破ることにした。痛みが長く続く分、ジェシカには負担になるだろう。だが、折角の処女膜だ。シエスタとの時のように勢いで突き破るのは勿体無い。亀頭の先で揉み擦るようにしてやると、段々と抵抗が弱くなっていく。
「ひっ…………ぐ…………ああっ…………いた…………ひあっ…………痛いいぃ……」
 堪えきれないのか、ジェシカは苦痛に顔を歪め、小さな悲鳴を上げ続けている。ここは少しでも気を逸らせてやるべきだろう。俺はジェシカの上に覆い被さり、その唇を奪って舌を挿し入れた。腰を前に動かしつつ、舌を絡めて繰り返し唾液を飲ませながら、胸に手を伸ばして、先刻まで当人がそうしていたように指先で乳首を下から擦り上げてやる。しばらくそうしていると膣は陰茎を完全に呑み込み、亀頭の先に子宮の少しだけ硬い感触を与えながら、ヒクヒクと艶かしく震え始めた。見ると、ジェシカは眉間の皺を解き、少しだけ穏やかな表情になっている。俺は唇を離し、その耳元へと囁いた。
「これでもう、パパの女だ」
 ジェシカは目に涙を浮かべて嬉しそうに笑い、子猫のように俺の唇を舐め上げた。
   ★★★
 処女膜を破った後、尚も痛がるジェシカの為に俺は新種の薬を使ってやった。以前にシエスタに使用した、意識はそのまま感覚だけ極度に敏感になる、という薬の改良版だ。痛みが残っている状態でそんな薬を使ったら痛覚も向上してしまうところだが、新しい薬は出来が違う。今度の薬は、意識はそのままで性感の内の性的快感だけが極度に敏感になる、というものだ。スパンキングなどには向かないが、破瓜の痛みに苦しむジェシカには丁度いい。ちなみに、俺は便宜上、前者を感覚薬、後者を快感薬と呼んでいる。
 だが、その快感薬を小壜から陰部に直接垂らしている途中、俺は誤って壜を下に落としてしまい、陰茎の挿入された秘裂の上へと中身を全て零してしまった。ざっと計算しても通常使用量の約四十倍の量だ。俺は慌てて一物を引き抜いて布で薬を拭き取り、薬の効果を無効にする塗布用の解除薬を血塗れの陰茎に何度も塗り付けた。更に経口用の解除薬も呑み、自身の性感が平常のものに戻っていることを確認して安堵の溜息をついたところで、ジェシカを放置していることに気が付いた。恐る恐るベッドの上を振り返ると、ジェシカは完全に出来上がっていた。壊れていたと言ってもいい。拭き取るべき薬を血に濡れた陰部に両手で何度も塗り付け、時には薬に濡れた手を乳房や尻の穴に押し当て、蕩けた表情で一心不乱に自慰を始めていた。俺は急いでジェシカの身体の薬を拭き取り、解除薬を浴びせ、呑ませ、次いで部屋の風呂場へ連れて行って薬を洗い流し、再び解除薬を塗ってやったのだが。
「ひゃふああっ……パプぁ……んふうふうぅ……しようよぉ……へふはうあっ……むしゅめマンコぉ……へはあやああっ……使ってよほぉ……んふあへあっ……パプぁのムァンコぉ……」
 ジェシカはベッドの上で横になり、全身を悩ましくくねらせながら、だらしなく弛緩した表情で口を開け、愛液でドロドロになった陰部を両手で左右から開いて膣内を俺に見せつけている。どうも俺の処置は間に合わなかったらしい。再度暗示をかけて自慰することを禁じてはいたが、このまま放置というわけにもいかないだろう。いずれ効果が切れて素に戻ることを願いつつ、取り敢えずは現状を楽しんでおくべきか。俺はジェシカの横に座り込み、あまりの出来事に意気消沈していた自らの陰茎を、その目の前へと差し出した。指示を与える間もなくジェシカは身体を起こして俺の一物を口に咥え込み、下品な音を立てながら嬉しそうにしゃぶり始めた。元から素質があるのか、ジェシカの舌の動きは絶妙で、項垂れていた一物にどんどん活力が満ちていく。
「ぐぽっ、んぶっ、ごぽっ、ぷはぁ、パプぁちんちん好きぃ、ごぷっ、んぼっ、んごっ」
 俺はお礼代わりに、ジェシカの勃起した乳首を指先で何度も軽く弾いてやる。
「んごぷっ、ぺはぁ、おっぱい気持ちいひぃ、がぼっ、んぶぅ、げぽっ、んべぶっ、ぷひゃあ、ほっぱいひ持ちいひよぉ、んごぽっ、むごぼっ、んぐぼっ、ぺはぁ、ちんちんも好きぃ」
 涎をダラダラと垂らしながら美味そうに一物をしゃぶるジェシカを見ている内に、俺の方の準備も半ば完了した。陰茎に手を添えてジェシカの口から取り上げると、物欲し気に一物を見つめ続ける十三歳の少女に向かって尋ねてみる。
「ジェシカ、お前、もっとパパのものになりたくないか?」
「うへああっ……なりたひいぃ……んへああっ……ひてぇ……んはああっ……もっとパプぁのものにひてぇ……うふはあっ……パプぁのものにぃ……はふうんっ……もっとひてぇ……」
 ジェシカの返答を聞き、俺は傍らのバッグの中に手を入れて、目当ての物を取り出した。
   ★★★
「次は後ろ」
「んぎぃいぃ……お尻いぃ……んごぉおお……ほ尻ひいぃ……っぁああっ……ひ持ちいひぃ……おあああっ……パプぁちんちん凄いひぃ……はひぃいい……ひ持ちいひよぉ……」
「次は前」
「はひぃんんっ……オムァンコぉ……んぐぅああっ……おひんちん好きぃ……くぅううんっ……むしゅめムァンコはぁ……はふへぁ……パプぁちんちんぐぁ好きぃ……んへぇあはぁ……」
 俺の指示に従い、ジェシカは前後の穴に自分から陰茎を呑み込んでいく。バッグから取り出した浣腸器を与えて事前に一人で準備をさせ、座位の状態で交わり始めてから休みなく約三時間。俺はその間にジェシカの膣内と腸内に二回ずつ精液を放った。対してジェシカの絶頂は軽く二十回を越え、今では俺が動かなくとも絶妙な腰使いを会得している。体内に精液を浴びる度に歓喜の声を上げ、戯れに陰核を責め続けてやると小便を撒き散らす。薬の効果が残っているとは言え、予想以上の乱れ方で、さながら愛液と小便を漏らす愛娘型オナホールといったところだ。この分なら後に薬の効果が切れても、それなりの淫乱振りを発揮するに違いない。
「へゃはふあっ……パプぁ、パプぁ……へあふああっ……むぁたイきそぅだよぉ……あふんんあっ……ヒってもいひぃ? ……ふひはゃあっ……むしゅめムァンコヒってもいひぃ?」
「パパもそろそろ出そうだから、一緒にな。お尻で出すから、そっちに入れて」
「はひぃパプあぁ……んぐぅおああっ……出ひてぇ……あへふうああっ……ほ尻にひぃ……うひぃいいっ……ここもパプぁのだからぁ……んごぉおあおっ……出ひてえぇ……はひゃへはあぁ……ほ尻ムァンコにひぃ……んへあふへああっ……ヒっちゃうふうぅ……」
 狂人のような微笑を浮かべ、俺の胸に乳房を押し付けながら、ジェシカは激しく腰を振り続ける。二度の精液を浴びている腸内は滑らかで温かく、恍惚とする感触だ。俺は我慢の限界を超え、三度目の射精をそのまま迎えた。
「んひゃはへふああっ! ヒくうううっ! むぁえもうひろもどっひもヒくうううっ!」
 射精と同時にジェシカは俺にしがみ付き、硬直、痙攣、弛緩を何度も繰り返した。一瞬の間をおいて尿をまた漏らし、放心状態のままで俺の唇を舐め上げてくる。俺はそんなジェシカの尻を軽く叩き、優しく叱ってやった。
「駄目だろ休んじゃ。それとも、もうパパのおちんちん、いらないのか?」
ジェシカは怯えたように首を横に振り、再び腰を振り始めた。
   ★★★
 その日の夜。
「つまり――」
 一旦言葉を切り、俺は目の前のギーシュとモンモランシーとを交互に見つめた。調剤小屋のリビングでの定例会議の最中のことだ。当然、その二人の他には誰もいない。モンモランシーは未だに失禁のことが恥ずかしいのか、顔を赤らめて身を竦めている。何も知らないギーシュはいつもと変わらない様子だ。いや、少し浮かれているかもしれない。大方、新しい彼女と上手くいっているとか、そんなところが理由だろうが。
「現在、この国を動かしているのは、マリアンヌとマザリーニってことか」
「君、敬称を付けたまえよ!」
俺の言葉にギーシュはソファを立ち、非難の声を上げた。だが、詰め寄って来るほどの度胸は無いようだ。俺はギーシュの言葉を鼻で笑い、嘲るように言ってやった。
「大后とか陛下とかか? 本人が目の前にいるわけでもねえのに、何を気負ってんだ?」
 ギーシュは押し黙り、元の場所へと腰を下ろした。便利な男なのだが、貴族としての自尊心が強く、時々はこうして反抗的な態度を取る。まあ、通常は従順な下僕として役に立っているので、特に処罰などは考えていないのだが。
「それで、そんなことを確認して、君はどうするつもりだね?」
 内心の不満を紛らわせるかのように、ギーシュが俺に問いかけてきた。まあ、無理もない。俺の野望やアンリエッタとのことなど、こいつはなにも知らないのだ。現在、それを知っているのはモンモランシーのみ。ギーシュにもいずれは話すつもりだが、まだ時期が早い。
「住んでる国のことだからな、確認しておきたかっただけだ」
 俺はそう答えたが、もちろん嘘だ。中毒薬の売値の設定や売り上げの報告、販路の打ち合わせなどを終えた後、本来なら解散となるところを押し留め、この国の実力者の詳細や勢力などを二人に確認したのには大切な意味がある。それは以前からの計画通り、この国を乗っ取る為の詳細な案を、そろそろ練っておこうと思ったからだ。アンリエッタが即位して俺に従ったとしても、反抗勢力が出てくることは間違いない。そのための薬はモンモランシーが現在研究中だが、なかなか完成させるのは難しいらしい。第二、第三の対応策を用意しておくためにも、現状の確認は必須というわけだ。既にモンモランシーからある程度の説明は受けていたが、内容を吟味するためにも、ギーシュの知識も得ておいた方がいい。
「ところでギーシュ、今の俺たちの共同資産は幾らになってる?」
 深く追求してこないよう、俺は別の話題を振ってやった。ギーシュは眉間に皺を寄せて指を折り、やがてはっきりとした口調で答えた。
「ふむ、およそ六万エキューといったところかな。城でも買うかい?」
 ギーシュが答えたのは三人の共同資産として管理させている金だ。個別の報酬は別途払っているが、純利益の半分ほどをギーシュの管理の下に随時積み立ててある。これに加えて俺個人の手持ちが約三万、合わせて九万エキューか。確かに城を買うなら充分な金額だが、生憎、俺が欲しいのはそんなものじゃない。城なんて後からどうにでもなる。
「足んねえな、せめて百万は欲しい」
 呟くように俺が言うと、ギーシュが目の色を変えた。
「何だって君はそんなに金銭を必要とするんだね? 共同資産としてはいるが、君が全額使ったとしても僕は文句を言わないよ。六万エキューもあれば先々暮らしていくには充分な金額じゃないか。それにこれ以上、ポーションの販売網を拡げるのは不可能だ」
 その言い分は道理に適っていた。中毒薬は男子生徒のみに売るというのが当初から決めていたルールだからだ。女生徒にも売るつもりだったのだが、数多の女性を信奉するギーシュが強硬に反対し、学院内で気に入った女を見つけても中毒患者だったら興醒めだ、という理由から俺もその意見に賛同した。そんなわけで学院内の男子生徒、その後は近隣の村や街の平民たち相手にも商売していたのだが、販路が行き渡った現在、売り上げ金は頭打ちとなっている。これ以上販路を広げるには王都を組み込むしかないが、そうなれば人が多いだけに事が露見する可能性がある。万が一のことを考えて、国外脱出路や代わりに罪状を引き受ける人間などを一応は確保していたが、それでも危険なことには変わりがない。違法薬の密売で捕まってしまったら、即位前のアンリエッタの力では無罪にすることは難しいだろう。だが、今後のことを考えたら金が要る。
「私、香水とか作ろうか? 貴族の女性を対象にした、なるべく上品なの」
 黙り込む俺を見つめ、モンモランシーがおずおずと言ってきた。なるほど、今更の感があるものの、合法的な商売というのも悪くない。利益は少ないかもしれないが、安全だ。
「量産できるか?」
「ん、ちょっと待って。計算してみるから。まずは資料、取ってくる」
 俺の問いかけにモンモランシーはそう答え、足早にリビングを出て行った。
   ★★★
「それで、どうするつもり?」
 一頻り話し込んで会議が終わり、ギーシュが調剤小屋を出て行くと、モンモランシーがソファに座ったまま、隣の俺に尋ねてきた。その言葉の意味するところは判る。本当に国を乗っ取るつもりなのかと確認しているのだろう。
「マリアンヌってのはアンリエッタに似てて、今、四十歳なんだろ? たまには年増を抱くのも面白そうだな。場合によっては親子同時になんてのもいい」
「あんた、陛下まで毒牙にかけるつもりなの?」
「まあ、様子を見てからだな。そうなると問題は男のマザリーニか。有能な人物らしいじゃねえか。引退させるのは惜しいかもな。何にしても、もう少し色々と調べてみてからだ」
 そう言うと、モンモランシーは黙り込んだ。俺は一頻り迷ったが、いい機会なので聞いてみることにした。
「何でお前は俺に協力する?」
「あんたが協力しろって言ったんじゃない。共犯とか脅して」
「それだけか? 本当に嫌なんだったら、別に断ってもいいんだぞ?」
 俺の言葉にモンモランシーは目を見開き、次いで苦笑いをしながら自嘲気味に話し始めた。
「……ねえ、作っちゃいけないポーションがあって、その作り方を知ってる人間が、必要な材料を手に入れたら、作らないでいられると思う?」
「人によるんじゃねえのか?」
「うん、そうなんだけど。作る人間と作らない人間がいるとしたら、私は作る人間。それが今も禁断とか違法とか知ってて、そういうポーションを作り続けてる理由。それがどう使われようが、その為に泣く人がいようが、それでも作っちゃうの。自分でも判ってるけど、我侭なのね」
 俺は頷いた。気持ちは判らなくもない。目の前の縦ロール少女は趣味以前に本当に調薬が好きなのだろう。ある意味、研究者向きとも言える。
「あんたに協力する理由は、ポーションを作り続けるのに必要だから。それと、そんな私を必要としてくれているから。それともう一つ、多少はあんたに興味があるからよ。納得した?」
 少しだけ拗ねた口調で問いかけてくるモンモランシーに、俺は真顔で再度頷いた。モンモランシーは照れ臭そうに笑い、俺に凭れ掛かって頬に唇を押し付けてくる。俺がその細い肩に手を回すと、モンモランシーは嫌がる素振りも見せずに更に身を寄せ、ゆっくりと口を離して小さな声で囁いた。
「ほんとに上手くいくと思う?」
「まあ、取り敢えずは明日、アンリエッタに会ってからだな」
   ★★★
 そろそろ物置小屋へ帰ると俺が告げると、モンモランシーは先日の償いに酒の相手をしろと言う。自分で小便を漏らしておいて償いもないだろう、と俺は思ったが、本意を語ってくれたことに免じて相手をしてやることにした。とは言え、モンモランシーはあまり好ましくない酔い方をする。早々に切り上げるつもりだった。
「ねえ、ルイズと喧嘩でもしたの? ここ何日か様子が変なんだけど」
 そろそろ愚痴が始まるかと思っていた矢先、モンモランシーが俺にしな垂れかかりながら尋ねてきた。顎に手を当てて顔を上げさせると、かなり酔っているようだ。何を勘違いしたかは想像が付くが、うっとりと目を閉じて、唇を突き出している。俺はその口を指先で弾き、適当に答えておくことにした。
「俺が近付くと恥ずかしがって逃げ回んだよ」
「……逃げられるようなこと、したんじゃないの?」
 唇を手で押さえながら、モンモランシーがくぐもった声で聞いてくる。力を入れたつもりはなかったのだが、涙目で俺を睨んでいるところを見ると、相当に痛かったようだ。
「まあ、そうなんだけどな」
 曖昧に答えながら、俺は謝罪のつもりでモンモランシーのグラスにワインを注ぎ足してやった。ある程度の秘密を共有しているモンモランシー相手でも、ルイズの自尊心のことを考えると、失禁と暴走のことは伏せておいてやりたい。
「別れんの?」
「そんな気はねえ」
「なあんだ。別れるんだったら、私のこと好きにしてもいいのに」
 そう言ってモンモランシーは少しだけ寂しそうに笑い、注ぎ足されたグラスの中身を飲み干していった。十三歳とは思えない飲みっぷりに、思わず将来が心配になる。が、退散の頃合かも知れないと思い、俺がソファから立ち上がろうとすると、モンモランシーは赤ら顔で腕に縋り付いてきた。 
「もう少し付き合ってよ」
「お前は飲み過ぎなんだよ。酒臭えから触んな、寝ろ」
「ちょっとぐらいだったら触ってもいいから。もう少しだけ、ね?」
 そうは言われても、調剤小屋に来る前にジェシカと濃厚な行為を楽しんできた俺には、もはや性的な余力はない。正直に言えば疲れ切っていて、寝酒も飲んだことだし、とっとと自分の小屋に帰って眠りたかった。
「もう眠いんだよ、勘弁してくれ」
「じゃあじゃあ、泊まってく? エッチなことしないなら寝てってもいいわよ?」
 何だか色々と面倒臭くなり、俺はそうすることにした。
   ★★★
 翌朝。
 股間の激しい痛みに俺は眠りから覚め、ベッドの上で上半身を起こし、痛みの原因を確認して唖然とした。気付かぬ内に俺はズボンを脱がされて下半身を露出しており、ネグリジェ姿のモンモランシーが朝立ちしている陰茎を片手に、尿道口にガラス製のスポイトの先を差し込もうとしていたからだ。直接触れるのが嫌なのか、陰茎を持つ手には手袋をしている。
「おい、モンモン。お前、何してやがる?」
「あ、起きたの? ちょうど良かった。分泌液の採取したいから、ちょっと出して」
 モンモランシーは何でもないことのように言い、尚もスポイトの先を押し当ててくる。
「まずは痛いから止めてくれ。それで、採取してどうするつもりだったんだ?」
「さっき思い付いたんだけど、ポーションや香水の材料に使えないかと思って」
 そう答えながら、モンモランシーはベット脇のサイドテーブルの上、金属製のトレイの上に渋々とスポイトを置いた。見ると、トレイの上にはガラス製の容器や計量スプーン、ピンセットや羽箒なども用意されている。本気で採取するつもりだったことは明らかだ。あまり考えたくはないが、それ以外にも何かするつもりだったのかもしれない。
「ねえ、じゃあ自分で出して見せて。これも素材集めとして必要なことなんだから」
 いつになく真剣な口調でモンモランシーはそう言うが、口元には笑みを浮かべている。この状況を楽しんでいるのは明白だ。だが、動物の生殖分泌物が香水の原料にもなるという話は、元の世界でも聞いたことがある。但し、その動物とは鯨とか鹿とか猫とかビーバーとかだったような気がするのだが。
「俺は実験動物じゃねえんだぞ?」
「でも、上手くいけば、あんたの言うことしか聞かなくなるような、そんな ポーションや香水が作れるかもしれないわよ?」
 勝ち誇った口調のモンモランシーの言葉に、俺は腕を組んで考え込んだ。一方的に頼まれて自慰をするというのは癪に障る話だが、ここは協力しておくべきかもしれない。だが、まずは確認が先だ。俺は興味深そうに一物を眺めているモンモランシーに問い掛けた。
「薬の完成の見込みは?」
「まだ何の実験もしてないから判んないわよ。その実験を始めるためにも必要なの」
「だったら当然、出すのを手伝ってくれるんだろうな?」
   ★★★
 その後、仕方がないから射精を手伝うとモンモランシーは言ってくれた。俺の身体に直接触れて導いてくれるという。俺は頷き、モンモランシーの指示の通り、全裸になってベッドに大の字に寝た。そんな俺の両手首と両足首に、モンモランシーはスポイトを使って素早く液体を振り掛けた。もの凄く嫌な予感がして跳ね起きようとしたが、全く動けなかった。肘や膝は動かすことができるのだが、液体をかけられた手首と足首は、どれだけ力を入れても位置をずらすことさえ出来ない。ベッドに縫い付けられているかのようだ。
「何をした?」
 そう問い掛けると、モンモランシーは満足気な顔をして、俺の耳元に口を寄せてきた。
「これね、実験中のポーションなの。スクウェア・クラスのメイジに可能な『固定化』の呪文効果に似てるんだけど。それの対人用ってとこかな? あんた風に言えば固定薬ってとこ」
「お前、俺に薬を使うのか?」
 冷たい声で詰りながら俺は改めて四肢に力を入れてみるが、やはり動かない。
「だって、あんたにポーションを使わないなんて約束してなかったでしょ? この前はあんな恥ずかしいところ見られちゃったし、あんたに興味があるってことも話しちゃったしね。もう怖いものなんてないわ。こんなことだって出来ちゃうし」
 そう言ってモンモランシーはネグリジェの裾に両手を入れ、陰部を見せないようにしてパンツを脱ぐと、俺の鼻にそれを押し付けた。温かな下着の濃厚な体臭に、少しだけ項垂れていた俺の陰茎は忽ち勃起状態となる。
「あーあ、こんなに大きくしちゃって。ふふっ、私の匂い、気に入ってくれたの?」
 嘲るように言いながら、モンモランシーは俺の内腿をそっと指先で掻き揚げてきた。その触れるか触れないかの絶妙な指使いに、俺は思わず呻き声を上げた。
「くっ、ちょっと、待て」
「うふっ、可愛い声。私ね、あんたに協力する理由をちゃんと答えた後、覚悟を決めたの。あんたの前じゃ自分を偽ったりしないって。だからお酒飲んでる時、ほんとにキスして欲しかったの。それなのにあんたったら――」
 拗ねた口調で言葉を切ると、モンモランシーは汗を拭き取るような手つきで、俺の顔や首筋にパンツを押し付けてきた。同時に内腿に触れていた手を俺の胸に回し、乳首をきつく捻り上げ、すぐに手を離して痛みを宥めるように指先で撫で上げた。まるで緩急を使い分ける調教師のようだ。以前に小便を漏らした時には被虐性を感じたが、やはり本性はその逆か。
「――まだ誰にも捧げてない私の唇を、指で弾くんだもん。傷付いちゃったなぁ」
「判った、謝るから、悪かった。とにかく、この状態をどうにかしてくれ」
「まだダメよ。でも安心して。専用の解除用ポーションも試作してあるから。ちゃんと王女殿下に会う時間までには開放してあげる。そうね、移動時間を考えたら、あと三時間くらいはこのままかしら。でも約束するわ、そんなに虐めたりしないって。だって、あんたには感謝してるもの」
「感謝って、何をだ?」
「自分が男の人に対して、こういうことをする人間だって気付かせてくれたこと」
 睦言のようにそう囁き、モンモランシーは口元に妖しい笑みを浮かべた。
  ★★★
「マザリーニに隠し子か。で、そのことを知っているのは本当に二人だけか?」
「はあっ、はい、んんっ、わたくしと、ああっ、母さましか、んはっ、調べた者は、ふあっ、既に亡くなったとか、はうっ、聞いておりますわ」
 ドレスの上から片乳首を延々と弄ばれているアンリエッタに、嘘をついている様子はない。マリアンヌが万一に備え、人知れずマザリーニの身辺調査を行って得た情報が、この隠し子の件だと言う。マザリーニはその隠し子である娘を、家族に内緒で自邸のメイドとして働かせているとのことだ。マリアンヌはこのことを第一継承権者であるアンリエッタにしか伝えておらず、それならマザリーニの政敵が今まで問題にしなかった点にも納得がいく。この情報は使える。何より件の隠し子が女で、まだ十代らしいというのがいい。屋敷から連れ去ってどこかに閉じ込め、犯し、調教し、言いなりにさせるのも面白そうだ。俺の好みでなければ誰かにその役を任せてもいいし、面倒なら薬を使って手駒にしてもいい。だが、それは最終手段だ。しくじったら取り返しがつかなくなる恐れがある。と言うのも、色々と調べて判ったのだが、マザリーニという男には他に隙が見つからないのだ。民衆や貴族の人気は低いものの、忠誠心が高く、愛国精神と家族愛に溢れた誠実な人間との評判で、そんな人間が隠し子というのも解せない話ではあるが、外面が良い分、発散せずにはいられなかったのかもしれない。為政者なんてそんなものだろう。しかし評判通りならば、かなりの人物と言っていい。可能ならば脅したりせずに従わせたいところだ。
「んくっ、あなたぁ、んふっ、わたくしぃ、あはっ、もうぅ、あふっ、あなたぁ」
 他愛無い愛撫では我慢できなくなってきたのだろう、アンリエッタが切なそうに呼びかけてくる。よほど会えたことが嬉しいのか、例の密会屋敷のリビングの中、椅子に座った俺の前にドレス姿で跪いたまま、両手で服の上から俺の身体を愛おしそうに撫で回している。この世界の郵便である伝書フクロウを使って二日と置かずに会いたいとの手紙を送ってきていたが、前回の密会屋敷での行為の後、アンリエッタに会うのは今日が初めてだ。当然、お預けするのがその理由だ。前回、激しい快楽を身体に覚えさせられた上、十日間もお預けされ、その間の自慰も禁じられたアンリエッタは、俺の横柄な口調にも文句を言わず、再会の瞬間から顔を上気させて身を任せている。俺は立ち上がって手早く全裸になり、元の椅子に座り直すと、蕩けた表情で陰茎を見つめるアンリエッタに問い掛けた。
「アン、触りたいか?」
「ええ、ええ。触れたいですわ」
 アンリエッタは歓喜の笑みを浮かべて両手を合わせ、次いで勃起した陰茎に手を伸ばしてきた。俺はその手を叱責するように軽く叩いた。
「勘違いするな。俺は触りたいか聞いただけだ。罰として触れずに匂いだけ嗅いでろ」
 そんな俺の言葉にも欣喜雀躍とし、アンリエッタは鼻先を陰茎に近づけ、うっとりとした表情で臭いを嗅ぎ始めた。鼻息は荒く、犬というよりも豚のようだ。
「嗅ぎながら俺の質問に答えろ。お前は、恋人の俺と結婚したくはないか?」
「ああっ、したいですわ、んふっ、あなたと、んんっ、結婚、あはぁ」
「尋ねるが、お前が即位するとして、期間は今からどれくらい必要になる?」
「あふっ、恐らくは、んあっ、二ヶ月前後は、んうっ、必要かと、ふはぁ」
「なら急いで即位の準備をしろ。即位後すぐにというわけにはいかないが、結婚してやる」
「んくっ、でも、ふあっ、女王なんて、んはっ、わたくし、ふうっ」
 アンリエッタは尚も臭いを嗅ぎながら、不安そうな顔で俺を見上げた。俺は片手を伸ばし、先刻までそうしていたように、ドレスの上から乳首を探り当てて優しく擦ってやる。
「すぐに結婚は無理だが、即位式の夜にでもお前の処女を奪ってやる。お前のマンコの中に精液も出してやろう。それに結婚すれば一日中、お前を犯してやることも出来るんだがな」
「はふあっ、奪って、ふああっ、中に、くうんっ、一日中、んんっ、あはああああっ!」
 俺の言葉を恍惚の表情で反芻しながら、突然、アンリエッタは身悶えして大きな喘ぎ声を上げた。見ると、ドレスの裾が濡れ始めている。恐らくは失禁、俗に言う嬉ションという奴だろう。俺は止めとばかりに、腰を震わせ続けるアンリエッタの唇に短いキスをし、その耳元で囁いた。
「即位すればお前の身体全部、徹底的に犯してやるぞ?」
「んふあああっ、なりますわぁ、はふふああっ、わたくしぃ、くふんんっ、女王にぃ」
 俺はその言葉に満足し、もう一度アンリエッタの唇を奪った。
   ★★★
「こうしていますと、もう結婚したような気持ちになりますわ」
 風呂場の浴槽の中、背中を抱く俺に横顔を向けて、アンリエッタは嬉しそうに微笑んだ。失禁後に一緒に風呂に入ってからはずっとこんな調子だ。湯の中で後ろ手に俺の一物を握り締めて離さず、時に腰を少し持ち上げては亀頭を自分の尻穴に擦り付け、微かな喘ぎ声を一時漏らすと、また元のように足の上へと座り込んでくる。そうする度に照れ笑いを浮かべているところを見ると、別に俺を焦らそうとしているのではなく、陰茎の状態を確認して安心しているのだろう。その甘えた表情と素振りには、即位を決めたことの不安など微塵も感じられない。
「あの、あなた?」
「何だ?」
「わたくしが即位しましたら、貴族になってくださいまし。そうでないと色々と、結婚する際に問題が出てくると思いますの」
 俺は驚いてアンリエッタを見た。いずれは俺の方から切り出そうと思っていた件だったからだ。アンリエッタは不安そうに目を伏せ、少しだけ俯いている。世間知らずなだけに、自分の都合で俺に貴族になるよう願い出たことが心苦しいのだろう。俺としては好都合だ。
「いいだろう。けどな、それには事前の準備も必要だろう。知識や作法を学んだり、他の貴族に挨拶をしたり、何かと物入りになる」
「それでしたら、わたくしが用意いたしますわ。わたくし――」
アンリエッタは一旦言葉を切って立ち上がり、正面から俺に抱きついてきた。俺の胸に乳房を、陰茎に秘所を強く押し付けながら、決意を秘めたような青い瞳で俺を見つめてくる。
「――わたくし、心も身体も全部、そして力及ぶ限りの事柄を全て、あなたに捧げます」
 そう言ってアンリエッタは一瞬だけ俺の唇を奪うと、満面の笑みを浮かべた。特に色欲から誓いの言葉を言ったわけではなさそうだ。これほど安易に全てを委ねてくるとは思わず、流石に俺も狼狽えたが、何の反応も示さないのも可哀想だ。俺はアンリエッタを強く抱き締めて唇に一頻りキスをし、次いで立ち上がって浴槽から出ると、洗い場の床に仰向けに横になった。
「アン、身体を洗ってくれ」
 誓いの言葉に俺がキスで答えたことが嬉しかったのか、アンリエッタは真っ赤な頬を緩ませたまま、俺の言葉に頷いた。
   ★★★
「ふああっ……あなたぁ……はふあっ……あなたぁ……んくふぁ……気持ちよいぃ……んあはっ……わたくしのぉ……あふはぁ……オマンコぉ……ひあはぁ……気持ちよいですわぁ……」
 風呂場の床に寝そべった俺の身体を自前の栗色タワシで洗いながら、アンリエッタは身悶えし、切ない声を上げ続けている。秘所を使って洗えと命じてから約一時間、俺の身体はどこもアンリエッタの愛液塗れだ。但し、顔と陰茎だけはまだ洗わせていない。途中、アンリエッタはそこも洗いたいと言ってきたのだが、結婚したら全身思うが侭に洗わせてやると告げてやると、大人しく引き下がって別の箇所へと陰部を押し当てた。背中は全て洗わせ、今は再び仰向けになって再度左足首を洗わせている最中だ。既にアンリエッタは三回絶頂しているが、俺はまだ一度も精液を出していない。午前中にモンモランシーに強引に五回抜かれた後、精力剤を飲んだので勃起はしているのだが、いつもより感覚が鈍くなっているのかもしれない。とは言え、アンリエッタの柔らかな淫裂と薄い下の毛の感触は心地良く、そろそろ一回出しておきたいところだ。
「アン、まだここを洗いたいか?」
 言いながら俺は陰茎に手をやり、見せ付けるように前後に揺り動かした。仰向けになってからずっとそこを見ていたアンリエッタは、俺の足首に股間を押し付けながら、嬉しそうに何度も何度も頷いた。
「んくふぁ……洗いたいですわぁ……うはんあっ……洗わせてくださいましぃ……」
「なら、ここまでちゃんと洗えた御褒美だ。舌で洗え」
 俺がそう言うと、アンリエッタは返事もせずに足首を放り出し、開いた俺の足の間に屈み込んで陰茎を片手で握り、忙しなく舌を這わせ始めた。
「んぺおっ……はなたぁ……れおれっ……嬉ひぃ……んむちゅ……はなたぁ……」
 アンリエッタは温かく滑る舌で丁寧に茎部から亀頭、尿道口、カリ首と舐め上げ、空いた手で陰嚢に触れて睾丸を探り当てると、その場所を口に含んでしゃぶり始めた。同時に陰茎を握った手を上下に扱いてくる。そんな勝手な行為を俺は叱責しようと思ったが、併せ技のあまりの気持ちよさにそれを取り止めた。徐々に射精感が募り、俺は我慢せずそのまま空中に精液を放った。
「んごぷっ……ぷはあっ、ああっ、そんなぁ、わたくしにぃ、わたくしにくださいましぃ」
 俺の射精にアンリエッタは慌てて陰嚢から口を離し、俺の腹の上に落ちた精液を舌で舐め取っていく。心底勿体無いとでも思っているようなその真剣な表情に俺は思わず吹き出しそうになったが、辛うじてそれを堪えて上半身を起こし、精液の付着した場所を舐め続けるアンリエッタの頭を優しく撫でてやった。
   ★★★
――風呂から出ると、寝室で軽い食事を取ることにした。俺はアンリエッタに浣腸器とローションを渡し、直腸内を綺麗にした後に再度風呂場で尻穴を洗い、その後ローションを予め塗ってくるように命じると、その間に屋敷を管理している侍女が用意してくれたというローストビーフやパン、ワインなどを寝室のテーブルの上に並べていった。食事の準備が整ったところでアンリエッタは風呂場から戻り、俺は椅子に腰掛けて次の指示を与えた。
「アン、上に来い。食事の間、お前のケツマンコには俺のチンポを喰わせてやる」
 アンリエッタは嬉しそうに笑い、いそいそと背中から陰茎の上に腰掛けようとしたが、俺は腰に手を添えて正面から向き合わせ、そのまま抱っこするように膝の上に載せた。四十八手でいうところの抱き地蔵、つまり座位の一種だ。次いで陰茎に手をやってアンリエッタの尻穴に当てて一気に貫いてから、そのままの状態で食事を始めた。但し、俺は動かず、アンリエッタにも自ら動くことを禁じた――。
「なあ、いい加減に休んで食べろよ。ほら、ローストビーフ、食べさせてやるから」
「あはあっ……気持ちよいですわぁ……んふあっ……美味しいぃ……はふうっ……あなたのオチンポぉ……んふうっ……美味しいですわぁ……くはあっ……素敵ですわぁ……」
 快楽に溺れるアンリエッタは目の前に差し出された肉に見向きもせず、一心不乱に腰を振り付けている。動くことを懇願するのみで全く食事を取らないアンリエッタに、仕方なく自分で動くように指示を与えたのはつい先刻のことだ。アンリエッタはその後も何も口にせず、ただひたすらに性交に励んでいる。しかし、気持ちいいのも確かで、俺の陰茎はそろそろ限界が近い。アンリエッタも一度絶頂すれば大人しく食事を取るかもしれない。俺は手にした肉切れを皿の上へと戻し、ワインを飲みながらアンリエッタの腰使いに合わせ、少しだけ前後に股間を動かしてやった。
「うはあぁ……やっとぉ……あはふぅ……動いてくれますのぉ……ひああぁ……嬉しひぃ……んひいぃ……美味しひぃ……んへあぁ……ケチュオマンコほぉ……うほおぉ……もっとほぉ……おひいぃ……わらくしを使ってへぇ……はへえぇ……わらくひを犯ひてえぇ……」
「そろそろ出すぞ。精液もケツマンコで飲みたいだろ?」
「んへああっ……飲みたひですわぁ……はふくあっ……ケチュオマンコでへぇ……うへほあぁ……あひゃあっ……犯ひてえぇ……んほあへぇ……もっと犯ひてえぇ……」
「じゃあ飲め、ほらよ」
「んほおおおぁ……熱いひいいぃ……ケチュオムァンクォイくひいいいいいっ!」
   ★★★
「まずは金だな。幾らぐらい用意できる?」
「すぐに……用意……できますのは……二十万……エキュー……ほどですわ……宜しければ……明日にでも……使いの者を……学院に……向かわせます……けれど……足りませんか?」
 全裸のままベッドの上でうつ伏せになったアンリエッタは、その脇で素肌にガウンを纏い始めた俺に向かって、途切れ途切れに問い返してきた。身体に全く力が入らないのだろう。起き上がろうという素振りさえない。腸内に六回分の精液を浴びせられ、自身も十数回の絶頂を迎えた今となっては無理もない。開いたままの尻穴からは未だに精液と腸液が溢れ出し、それでも足らないのか、時折潮吹きのように噴き出しては周囲を濡らし続けている。
「金額はそれでいいが、使いの人間は不要だ。今すぐ必要なわけじゃない」
「お時間を……頂けるの……でしたら……もう少しは……用意が……できると……思いますわ……それで……あの……あなた……今度はいつ……会って……くださいますの?」
「そうだな、また十日後ぐらいか」
「そんな……もっと……早くは……なりませんの?」
 俺は笑いながら、不満そうに口を尖らせるアンリエッタの頬を撫でてやる。
「即位が済むまではお前も忙しいだろ? まあ、即位後はもっと忙しいだろうが、その時はなるべく側にいてやるから」
「約束……して……くださいます?」
「ああ、約束だ」
 そう言って屈み込み、顎に手を添えて俺がキスをしてやると、アンリエッタの尻穴は一際下品な音を立てて再び体液を辺りに撒き散らした。
   ★★★
 その日の夜。
 街から学院に戻ると、俺は物置小屋で風呂に入り、帰り際に街で購入したチーズを肴にワインを飲み始めた。モンモランシーやアンリエッタとの行為で身体は疲れ切っていたが、何となく目が冴えて眠れなかったからだ。そうしてリビングでしばらく寝酒を飲んでいると、不意に室内に人の気配を感じた。振り返ると、リビングの入り口にルイズが立っていた。いつものネグリジェ姿で、両腕に抱えた枕で恥ずかしそうに顔を隠している。どうやら羞恥心を克服したらしい。俺は宥めるような口調でルイズに問いかけた。
「どうした? 眠れないのか?」
 俺の質問に、ルイズは黙ったまま、こくり、と頷いた。
「俺も眠れなくって酒飲んでたんだけど、一緒に飲むか?」
「……いいの?」
信じられないものでも見たかのように、大きく目を見開いてルイズが聞いてくる。
「いいも悪いもねえだろが。ほれ、こっちこい」
 そう言って俺が手招きをすると、ルイズは一歩だけ前に踏み出し、そのまま足を止めた。
「……怒ってないの?」
「何を?」
「そ、その、私の、しちゃったこと」
 ルイズは言い難そうに囁き、俯いて枕に顔を押し付けた。俺は苦笑しながらソファから立ち上がり、ルイズの前へと行って、俯いたままの頭を撫でてやる。ルイズは枕に顔を埋めたまま、嫌々をするように小さく身体を左右に揺らし続けていたが、急にその動きを止めると、小さな声で囁いた。
「……ごめん、なさい」
「何でだ? 可愛かったぞ。オシッコするお前も、意地悪なお前も。ああいうことは当事者同士が良ければそれでいいんだよ。俺は嬉しかったし、興奮もした。また見せて欲しいくらいだぞ。本当だ」
 ルイズは顔を上げ、縋るような目で俺を見ていたが、次第に笑みを浮かべ、枕ごと抱きついてきた。俺もその小さな背中を抱いてやる。
「……でも、またしちゃうかも」
 照れくさそうにルイズが言う。
「言ったろ? また見せて欲しいくらいだって」
「どっちを?」
「どっちも」
「……ほんと、ばか」
   ★★★
 しばらくの間リビングでワインを酌み交わし、物置小屋に泊まると言い出したルイズを寝室に案内すると、俺はベッドに横になった。ルイズは自分の枕を置いて俺の横に並び、当たり前のように寄り添ってきた。俺はそのまま手を伸ばしてランプの灯りを消し、毛布の中で静かにルイズを抱き締めた。
「ねえ、もういいからね」
不意にルイズが言った。何がいいのか俺には判らず、顔色を探ろうにも窓のカーテンを閉じていた為に暗くて見えない。
「何が?」
「メイドと好きな時にしても。その前に言ってこなくていいの。私の部屋に毎晩戻ってこなくてもいいし、他の女の子とヘンなことしてもいいわ」
 俺は注意深くルイズの声を聞いた。別離を宣告されているのかとも思ったが、口調は冷たくなく、甘えているように感じられる。
「誰と何をしてもいいの。でも、でもね、自分勝手なのは判ってるけど、勝手にこの世界に呼んじゃったのは悪いと思ってるけど、私の前からいなくなったりしないで。いつも側にいなくてもいいから、この世界からいなくなったり、私の前から消えたりしないで」
 ルイズは毛布の中で俺の手を探り、見つけて握り締めると、相変わらず感触を確かめるように動かし始めた。
「何で急にそんなこと言うんだ?」
「何日か離れていて、そう思ったの。恥ずかしくって話せなかったけど、あんたの姿を見かける度に安心できたの。だから、この先も喧嘩とかしちゃうと思うけど、それでもいなくなったりはしないで欲しいの。学院を出て行くなとか、旅行しちゃダメとかいうんじゃないの。この世界の、探せば見つけることの出来る場所にいて」
「……判った、約束する」
「……あと二つ、お願いがあるんだけど」
「一つ目は?」
「……私のことを一番好きでいて欲しいの。先のことは判んなくてもいいから」
「お前が一番だって前にも言ったろ」
「……ありがと」
「じゃあ二つ目は?」
「誰と何をしてもいいけど、焼き餅は焼くかんね。怒んないでよね?」
   ★★★
 翌日の昼、久し振りに食堂でルイズを膝に載せて食事を与え、自分も食べ終えると、俺は腹ごなしに辺りを散歩することにした。ルイズも誘ったのだが、試験が近いので午後の授業が始まるまで図書館で勉強するという。食堂を出た廊下の陰でルイズは頬にキスを求め、俺がそうしてやると、笑いながら手を振って図書館へと向かっていった。そのまま俺は特に行く宛てもなく歩き回り、ヴェストリの広場に差し掛かったところで奇妙な光景に出くわした。元々あまり人気のない広場の中央で、タバサが三人の男子生徒と対峙している。周囲の見物人の中にギーシュの姿を見つけ、俺は駆け寄って事情を尋ねてみた。
「おい。あいつら、何やってんだ?」
「決闘だよ。なかなか始まらないけれどもね」
 平然とした口調でギーシュは答えた。詳細を確認すると、成績優秀なタバサに嫉妬した男子生徒たちが、手合わせだの何だのと理屈をつけてここに呼び出したらしい。が、男子生徒たちはタバサの実力を知っているだけに攻撃を躊躇し、一方のタバサは平然として自分からは手を出さず、膠着状態が続いているという。男子生徒たちの狭小さには呆れるが、関わりは少なくともタバサは顔見知りだ。放置しておくのも後味が悪い。打開策を得るべく、俺はギーシュに再度尋ねてみた。
「何でお前は助けない? 女好きのお前らしくねえじゃねえか」
「君、誤解を招くようなことを言わないでくれたまえ。あのような幼児に興味など。それに、彼らが彼女に勝てるとは思わない。まあ、見ていたまえ」
「確かにタバサは見た目は幼児だが、年齢はお前の二つ下で何より女だぞ? 怪我でもしたら可哀想じゃねえか。仕方がねえ、お前も来い」
「君、貴族同士の決闘に介入するつもりかね?」
「いいから来い、少し手伝うだけでいいから」
 俺はそう言ってギーシュの腕を掴み、タバサの元へと走った。
   ★★★
「なんだ貴様たちは! 誇りある貴族の決闘を邪魔立てするつもりか!」 
 俺とギーシュが近付くと、三人の内の真ん中の生徒が叫んだ。俺はタバサの前に立ち、横に並んだギーシュに小声で囁いた。
「剣を出せ、四振り」
 四振り? とギーシュは怪訝そうな顔をしたが、俺が強く睨みつけると、溜息を吐きながら手に持っていた薔薇型の杖を振った。空中に四枚の花弁が舞い、四本の剣となって足元に落ちる。
「け、剣なんか出してどうするつもりだ」
「確かお前は平民だったな。下等な分際で我らの前に立つな、身の程をわきまえろ!」
 今度は別の二人が文句を言ってきた。黙って正面の三人の顔を順に眺めてみると、俺の言えた話じゃないが、どいつもこいつも傲慢そうな嫌な顔だ。人を見下した態度は以前のギーシュ以上で、本音を言えば即座に殺してやりたい。
「この場で、御三方に剣での決闘を申し込みます。お相手するのは自分一人です。誇りある貴族の皆様方が、まさか、平民に決闘を申し込まれて逃げ出したりはしませんよね?」
 俺は嘲るようにそう言うと、足元の剣を一振りずつ地面に突き立てていった。その様子を見て目の前の三人が後退っていく。
「へ、平民が貴族に決闘を申し込むだと? り、理由は何だ、言ってみろ!」
「やだなぁ、坊ちゃん。あんたらをこの剣で刺してみたいからに決まってるじゃないですか。何て言うか、まあ、試し切りってとこですかね。場合によっては殺してしまうかもしれないので、その際はご勘弁を」
 言いながら俺は地面に刺した剣の一振りに手をやり、柄を握って引き抜くと、その切っ先を三人へと向けた。我ながら過剰な演技だとも思ったが、言葉にしたのは本心だ。予想通り三人は共に青ざめ、更に後ろへと下がっていく。こいつら学院の生徒たちは直接的な暴力に弱い。魔法で他人を傷付けることは出来ても、直接武器を手にしたり向けられたりすると途端に臆病になる。殺すという言葉を使うだけでもそれなりの効果があるほどだ。まあ、平和な全寮制の学院で暮らす少年少女だから仕方がないのだろうが。
「た、試し切りだと? ふ、ふざけるな。貴様がそういうつもりなら、我らは杖で――」
「下等な平民に剣での決闘を申し込まれて、御三方は魔法を使われるんですか? 安い誇りと魔法ですねえ。こちらは剣をお貸ししようと、こうやって用意までして差し上げたんですけどねえ。まあ、受け取ってくださいよ!」
 そう言って俺は手にしていた剣を正面に向かって投げつけた。剣は斜めに回転しながら宙を飛び、慌てて飛び退った男子生徒たちの足元の地面へと突き刺さる。身体を掠めるように投げたつもりだったのだが、どうやら俺には投剣の才がないらしい。残念なことだが仕方がない。まだ剣はある、次は当てよう。
「き、貴様、何を!」
「あと二振りお貸ししますから、ちょっと待ってくださいね」
 俺が別の剣の柄頭に手をかけるのを見て、三人組は逃げ出した。
   ★★★
 三人組が逃げ出したことで見物人たちも徐々に去り、広場にはいつも通り疎らな人影だけが残った。ギーシュが剣の魔法を解いて疲れた顔で去っていくと、俺はずっと立ち尽くしていたタバサの手を引き、近くのベンチへと座らせた。次いでその正面に屈み込み、タバサの瞳に怒りの色がないかどうか確認してみたが、全く判らない。俺は顔色を探るのを諦め、直接タバサに問い掛けてみた。
「邪魔しちまって悪かったな。気に触ったか?」
 タバサは、俺の質問に首を横に振った。
「余計なことだったか?」
 今度は首を振らず、考え込むように傾げた。自分の感情がよく判らないといった様子だ。
「勝算はあったか?」
 この質問には即座に頷いた。ギーシュの言った通り、魔法の扱いなどに長けているのだろうが、自分の実力を自負しているようには見えない。単に事実に答えただけという感じた。
「もう一度謝っとく、邪魔して悪かった。でも、お前は強いのかもしんねえけど、万が一ってこともあるからな。怪我しそうなこととか、あんまりすんな。そういう時は俺に言って来い」
 そう言って俺が立ち上がり、頭を撫でてやると、タバサは少しだけ気持ち良さそうに目を細め、小さな声で囁いた。
「ありがとう」
   ★★★
 その日の夜、一人で厨房に食事に行くと、特別に豪勢な食事が出された。普段も良いものを食べさせてもらっているのだが、それとは雲泥の差だ。魚介類、甲殻類、肉、野菜、全て質と味が違う。横で甲斐甲斐しく給仕をしてくれるシエスタに尋ねると、マルトー親父の指示らしい。貴族嫌いの親父さんは昼間の三人組との一件を聞きつけ、気分も上々にコックたちに俺の歓迎の準備をさせたそうだ。俺が外食に出かけて厨房に来なかったら、どうするつもりだったのか。
「それと、旦那様のお食事が終わったら、私、特別に早く帰っても構わないって。その、色々とミス・ヴァリエールにも伺ってますし。旦那様のところに泊まってもいい、とか……」 
 恥ずかしそうに言ってくるシエスタの言葉に、俺は疑問を持った。マルトー親父がシエスタに早退を許したのは理解できる。俺と一緒にいられる時間を作ってやろうということだろう。だがルイズは何を言ったのか? そのことをシエスタに聞くと、意外な返事が返ってきた。
「最近、よくお話しするんです。いつも仲良くとはいきませんけど。時々は部屋にお掃除に伺ったりもしますし」
 尚も色々と聞くと、例の小悪魔モード発動以降、シエスタは俺がルイズの元に不在であることを知り、時間を見繕ってはルイズの部屋を訪れ、掃除や洗濯など身の回りの世話をしていたらしい。その間、時々は俺の物置小屋の清掃や衣類の洗濯などをしてもいる。なんて献身的な娘だ。シエスタの方が俺より使い魔に向いている。
「だから、その、全部聞いてます。今後は届け出がいらなくなったとか、誰と何をしても構わないとミス・ヴァリエールが言った話とか……」
 流石は女同士、昨日の今日だというのに情報共有が早い。シエスタの口振りだと、まだ友達付き合いと呼べる程のものではないらしいが、俺としても仲良くなってくれることに異存はない。出来ればその関係にアンリエッタ、可能ならモンモランシーも加えたいところだ。
「それで、どうなさいます? あの、お疲れだったら別に私は……」
 言い難そうにしてはいるが、シエスタの気持ちも判る。考えてみれば放置して十日、そろそろ我慢の限界なのだろう。ルイズの世話をしてくれたこともあるし、俺なりに礼をしておくべきか。
「じゃあ、食べ終わったら、小屋に遊びにくるか?」
   ★★★
 シエスタを連れて物置小屋に帰り、一緒に風呂に入った後で、俺はリビングで酒を飲むことにした。風呂場で俺が何もしなかったことが不満だったのだろう。シエスタは早くベッドに横になりたいと繰り返し言っていたが、裸を肴に酒が飲みたいと俺が言うと、いそいそとキッチンから酒やつまみなどをリビングに運び入れた。
「じゃあ、そろそろ飲もうか。その前に、シエスタ」
「はい、旦那様、どうぞ」
 そう言ってシエスタは風呂上り直後から身体に巻いていたタオルを取り、その場でくるりと回って裸身の隅々まで惜しむことなく曝け出した。少し前に風呂場で見ていたとは言え、場所が変われば雰囲気も変わる。なかなかの眺めと言っていい。そのままシエスタは床に跪き、俺の腰に巻かれたタオルを見つめ、甘えるように問い掛けてくる。
「旦那様も、見せてくださいますよね?」
「いいぞ。但し、タオルを外すだけだ」
 シエスタは頷いて俺のタオルを取り、勃起した陰茎に顔を近づけると、うっとりした表情で鼻息荒く臭いを嗅ぎ始めた。何度も生唾を飲んでは、唇を舌先で湿らせている。俺がソファに座ると、陰茎を追って身を乗り出し、再び許可を求めるように見上げてきた。
「まだ駄目だ。その代わり、抱っこしてやるから」
 優しくそう言ってやると、シエスタは上機嫌で俺の膝の上へと載ってきた。食堂で俺がルイズに食事を取らせるのを羨まし気に見ていただけに、自分もそうしてもらえるのが心底嬉しいという素振りだ。だが、やはりそれだけでは物足りないのか、尻を動かして座り心地を確かめながら、勃起した陰茎に秘裂を押し当ててくる。しっとりとしたシエスタの体液が、徐々に俺の一物を湿らせていく。
「勝手に入れんなよ? このまま飲むから、グラスにワインを注いで渡してくれ」
「んはぁ、はいぃ、旦那様ぁ」
 しかしシエスタはグラスに注がずにワインの壜に直接自分の口を付け、そのまま中身を口に含むと、身を傾げて俺の唇を奪い、口移しにワインを流しこんできた。唾液混じりの酒の味は格別だが、勝手な行為を許しておくと癖になる。口中のワインを飲み干すと、俺はシエスタの顔を押し戻して、その行為をきつい口調で咎めた。
「俺はグラスに注げって言ったんだぞ。勝手な真似すんじゃねえ」
「はあぁ、旦那様ぁ、もっと叱ってくださいぃ。身勝手なメイドの私をぉ、叱ってぇ」
 どうやらスイッチが入ってしまったらしく、シエスタは俺の言葉に嬉しそうに身悶えた。上気した顔で乳首を尖らせ、陰茎を濡らす愛液はとろりと粘りを帯びている。このまま抱いてもいのだが、それでは罰にならない。どうしたものかと思案していると、シエスタは又もや勝手に俺の陰茎を掴み、自分の膣内へと素早く取り込んでしまった。
「んふはあっ……申し訳ありませぇん……はうあっ……入れちゃいましたぁ……ひやあぁ……叱ってくださいぃ……んひやぁ……淫乱メイドをぉ……あうふぁ……叱ってくださいぃ……」
 恍惚とした表情で腰を振り始めたシエスタには、もはや何を言っても効果がないだろう。一物を引き抜いてお預けさせてもいいのだが、膣圧の快感に俺自身が抗え切れない。風呂場から我慢していただけに、どんどん限界が近付いてくる。
「ふひゃあぁ……ビクビクしてますぅ……ひうああっ……旦那様のオチンポぉ……うはあぁん……出されるんですねぇ……はううあぁ……お好きなだけぇ……んへあはぁ……出してくださいぃ……ほわあはぁ……メイドマンコにぃ……ひうへあっ……ぶちまけてくださいぃ……」
「ああ、このまま出してやる。それと――」
 俺は言葉を切ると、シエスタに挿入を許したまま立ち上がり、手を伸ばしてテーブルからワインの壜を取った。
「――お返しに、俺もワインを飲ませてやろう」
 テーブル上に手を付いて腰を振り続けているシエスタの尻穴へと壜の先を押し付け、そのまま壜口の部分を少しだけ差し込んでやる。
「んぐふああっ……染みるうぅ……あひゃふあっ……染みて痛いですぅ……んくうあふっ……痛いぃ……んくひゃあぁ……けど気持ちいいぃ……はひゃへあぁ……痛気持ちいいぃ……」
 俺の悪戯に一旦は腰の動きを止めたシエスタだったが、すぐにそれまで以上の激しさで再開し、赤く染まりつつある全身をくねらせ始めた。
「腸に直接だからな、好きなだけ酔えるぞ?」
「あひゃふへあぁ……ホマンコもおひりもぉ……んふはへうはぁ……ひ持ちいいでふぅ……ふへあふああっ……ヒっちゃうふう……はくひうあっ……ヒっちゃいまふう……」
「出してやるから、精液をマンコに浴びてイけ。ほら」
「んこほへあふうううっ! 熱いひいぃ、ホマンクぉ、イっ、イくひゃああうはああ!」
   ★★★
「はのぉ、旦那しゃまぁ」
 寝室のベッドの上、俺の隣に横になっているシエスタが恐る恐るといった口調で問い掛けてきた。とは言え、行為の余韻と酔いのために声は甘く、少しばかり呂律が怪しい。十回ほど絶頂を迎えた上に、尻穴でワインを大量に飲まされたのだから無理もないことなのだが。
「何だ?」
 言って俺は手を伸ばし、シエスタの柔らかな裸身を抱き寄せた。当然、俺も裸だ。行為を終えてからしばらく経過しているのにも関わらず、窓からの月明かりの中、シエスタの肌は未だどこも赤く、乳首は尖りきったままだ。
「このしゃき、ミシュ・バリヘェルのこと、どうしゅるんでしゅかぁ?」
「この先か……」
 呟いて、俺は考え込んだ。現状で俺と性的な関係があるのはルイズ、シエスタ、アンリエッタ、モンモランシー、そしてジェシカの五人だ。全員と交わったわけではないが、望めばそうすることは可能だろう。モンモランシーは性格が難だが、今後の計画に不可欠な存在であり、少しばかりは愛おしい。遊びのつもりだったジェシカについても、二穴を犯した今ではそこそこ気に入っている。ルイズだけのことではなく、なんとか全員が仲良くできるような関係を構築したいところではある。
「シエスタ、お前はこの先、どうしたい?」
 上手く考えがまとまらず、俺はシエスタに尋ねてみた。健気なシエスタについても、多少の要望は聞いておいてやりたい。
「わりゃしはぁ、べちゅにぃ、旦那しゃまのおしょばにいらりぇりぇばぁ、しょれでぇ」
「いい子だな、シエスタは」
 御褒美に指先で乳首を擽ってやると、シエスタは鼻息を荒くして俺にしがみ付いてきた。
「んひゃあ、わりゃしもぉ、んくっ、旦那しゃまがぁ、ふうあっ、色んにゃ女の人としちぇもぉ、あふあぁ、構いまちぇん、んはあぁ、お側にぃ、うはあぁ、いられりぇばぁ」
 気持ち良さそうに目蓋を伏せるシエスタを見ながら、その囁きを検証してみる。これでルイズとシエスタは俺の浮気を了承したことになる。俺がアンリエッタと結婚しても、これまでの関係を続けることは可能だろう。モンモランシーには当初から話してもいる。残るはジェシカだが、薬を使えばどうにでもなる。俺が気に入っているのは身体であって、格別に心が欲しいわけではない。となれば、女たちはこれでいい。財力と権力、そして武力はアンリエッタが即位すればどうとでもなる。あと必要なのは、科学力といったところか。
「……やっぱり、コルベールが要るな」
「はふうぁん、ふえぇ、んくはあっ、何でしゅかぁ?」
「何でもない。それより足を開け。もう一度可愛がってやる」
 嬉しそうに大股を開くシエスタの膣に陰茎を挿入させながら、俺はその手段について考え始めた。
   ★★★
 翌日の夜。
 トリステイン魔法学院の図書館は、食堂のある本塔の中にある。天井に届くほどの高さの本棚が壁際に並んでいる様は壮観だ。ここには門外不出の秘伝書や様々な稀覯本なども置いてあるらしく、入り口では眼鏡をかけた司書が座り、出入りする生徒や教師を監視している。規則では貴族以外は入館できないが、事前にギーシュを通して司書に金を渡してあるので、俺は難なく中に入ることが出来た。
 目的は一つ、この世界の文字を覚えるための勉強だ。以前ルイズに聞いた話では、人間の使い魔には召喚時にある種の魔法がかかり、故に言葉が通じるらしい。本当かどうかは判らないとルイズは言っていたが、まあそんなところだろう。できれば文字も召喚時に覚えさせて欲しいものだ。言葉が通じるのに読み書きできないというのは不便なもので、おかげでアンリエッタからの手紙が届く度、毎回モンモランシーに読み上げてもらうことになる。国を乗っ取ろうとしているのに、いつまでも文盲でいるわけにもいかない。いずれコルベールに元の世界の科学を説明するため、この世界の科学技術のレベルを書籍などで把握しておく必要もある。ルイズもギーシュも他の人間も、頼めば文字を教えてはくれるだろうが、科学について特に見識が深いわけでもない。モンモランシーにしても、その知識は薬剤関連のものに偏っている。何より俺自身に、今更文字を他人に教わるのが恥ずかしいという思いもある。まずは文字の独学から始めてみようと思い、入門書として子供向けの易しい本でも探してみるつもりだった。
 そんな理由から適当に本棚を見て回っていると、遠くのテーブルでタバサが本を読んでいることに気が付いた。挨拶ぐらいはしておくかと、俺はそのテーブルに近付いた。
「よ、元気か?」
 俺がそう言うとタバサは読んでいた本を閉じ、無垢な子犬のような目で見上げてきた。
「あなたも、読書をしにきたの?」
「お?」
 タバサにしては言葉が長く、まさか質問されるとも思わなかったので、俺は少々驚いた。
「ああ、違う違う。俺はこの世界の字が読めねえからな。覚えてみるかと思って……」
 すぐに気を取り直して俺が質問に答えると、タバサは椅子から立ち上がり、テーブルに本を置いたまま、近くの本棚の陰へと立ち去った。相変わらず行動が読めない。が、俺が入門書探しに戻ろうとすると、タバサは俺の前へと駆け戻り、すっと一冊の本を突き出してきた。
「この本だったら、簡単だから」
 どうやら、俺に合う本を探しに行ってくれていたらしい。以前のはしばみ草や、昨日の広場の件のお返しのつもりなのかもしれない。そう思いながら本を受け取って礼を言うと、タバサは驚くべきことを口にした。
「わたしが字を教えてあげる」
「おお?」
「本を眺めているだけじゃ、覚えられない」
「いやまあ、そうかもしんねえけど」
「こっち」
 タバサは強引に俺の手を取ると、『閲覧室』とプレートの掛けられた扉に向かって歩き出した。
   ★★★
 閲覧室に入って机の上に本を開き、並んで椅子に腰掛けると、タバサはまず本の中の文字の読み方を一つずつ口にし、次いで文字の一つ一つを指差して、その意味を丁寧に俺に教えてくれた。不思議なことに、タバサが少しずつ言葉の意味を教えてくれる度、それまでただの文字の連なりにしか見えなかった文章が、一瞬見ただけで理解できるようになっていった。タバサの教え方も上手かったが、どうもそれだけではないようだ。もしかしたら召喚時に言葉が通じるのと同じように、文字の理解を早める魔法でもかけられているのかもしれない。
 一時聞もすると、俺は簡単な文章なら読めるようになっていた。教科書としてタバサが用意してくれた本なら、すらすらと読み上げることが可能なほどだ。
 そんな時、司書が閲覧室に顔を出し、そろそろ閉館の時間です、と言ってきた。俺は司書に会釈し、タバサに改めて礼を言った。
「ありがとな、助かったよ。あとは自力でどうにかすっから」
 だが、俺の言葉にタバサは首を振った。
「最後まで付き合う」
「おおお?」
「難しい単語も存在する。ルーンという文字だってある。一人じゃまだ無理」
「いいよ、お前の時間を奪ったら悪いし」
「かまわない」
 タバサはそう言うと、手近な本棚から再び何冊か本を取り出してきた。
「次の教科書」
「今からやんのか? もう夜だぞ?」
 こくり、となんの躊躇いも見せずにタバサは頷いた。
   ★★★
 夜中に漸くタバサの部屋から解放された俺は、久し振りにルイズの部屋で寝ようと階下へ向かって歩いていた。魔法の効果の有無は判らずとも、タバサの教え方は本当に見事で、今では何の問題もなく専門書を読むことが可能だ。驚いたことには、俺が科学関連の知識を得たいと話したところ、タバサは明後日にでも書籍を見繕って俺の小屋に届けると言ってくれた。明日は祝日で図書館も休館日なので、可能な限り早くということだろう。それほどの恩を売ったつもりはないのだが、どうも極端に義理堅い少女のようだ。
「あらぁ、ダーリン? どうしたの、こんな時間に?」
 階段を下りたところで声をかけられ、振り向くとキュルケが廊下に立っていた。廊下の所々に設置されたランプの光を受け、透けたベビードール越しに乳房と紐のパンツが丸見えだが、当人に恥らっている様子はない。
「お前、見えてんぞ?」
 そう俺が言うと、キュルケは誘うような笑みを浮かべ、両の乳房を下から持ち上げて見せ付けてきた。まるで痴女だ。
「見てるだけ? ダーリンなら触ってもいいのよ? それともこっちが見たい?」
 キュルケはそう言って両手を腰に当て、ベビードールの上からパンツの紐を解くような仕草をしながら俺に近付いてきた。以前に誘惑された時から随分と間が開いたせいか、こうしてキュルケに迫られるのも悪くない。ドロドロに犯して精液便所にしちまえ、と俺の内なる悪魔が囁いた。徹底的に犯して足腰立たなくしてやれ、と俺の内なる天使も囁いた。俺はその声に従うことに決め、キュルケの乳房に手を伸ばして豊満な柔肉を強く握り締めた。
「い、痛いっ、ちょっとダーリンっ、そんな、痛いっ」
「お前から誘ってきたんだろうが、我慢しろ」
「じょ、冗談だってば、ねえ、ほんとに痛いっ」
「この場で犯されて恥ずかしい思いをしたいか?」 
 俺の言葉にキュルケは怯えた顔になり、無言で首を何度も横に振った。
「じゃあ、付いて来い」
 俺は乳房を握ったまま、嫌がるキュルケを引き摺るようにして物置小屋へと向かった。
   ★★★
「こんなの嫌あっ、お願いっ、ダーリンっ、ねえっ、お願いっ、動けるようにしてえっ」
 俺はキュルケを物置小屋に連れ込んで寝室のベッドの上に放ると、固定薬を使って身動きが取れないようにした。だが、それ以上のことはしていない。キュルケは大の字になったまま、開かれた両足の間に座って酒を飲んでいる俺に向かい、ベビードールも紐パンもそのままに解放を要求し続けている。
「あんまり騒ぐと素っ裸にして今すぐ犯すぞ?」
 俺がそう言うとキュルケは一瞬黙り込み、次いで怯えた口調のまま、小声で嘆願し始めた。
「もう騒がないから。ねえ、お願いだから動けるようにして。部屋に帰らせて」
 目には涙を浮かべている。予想していた通り、こいつは特に好色なわけではなく、自分の肉体を見せ付けて男の慌てる反応を楽しみ、自尊心を満足させていただけだろう。そんな身勝手な女には、やはり仕置きが必要だ。今後は淫乱な振りをしなくて済むよう、本当の淫乱に変えてやる。
「そんなに慌てるなよ。部屋になんか、帰りたくなくなるようにしてやるから」
 そう言って俺はキュルケの顔にタオルを被せ、視界が塞がっていることを確認し、バッグから快感薬の小瓶を取り出した。中身を数滴ずつ、ベビードールの上からキュルケの両の乳首へと垂らしていく。
「きゃっ、冷たいっ。ねえ、ちょっと、何をやってるのっ?」
「もうちょっと我慢しろ」
 次いで薬を自分の指先に垂らし、下着の上から慎重に陰核部だけに塗りつけてやる。乳首に垂らした薬の方は適量だが、こっちは包皮に隠れた陰核分としては適量の数倍だ。
「嫌あっ、そんなとこ触んないでっ! 嫌あっ!」
「もう済んだよ」
 言ってから小瓶をバッグの中に戻し、顔に被せたタオルを取ってやると、キュルケは涙を流していた。褐色の肌を伝った雫がシーツを僅かに濡らしている。キスや乳房を触られるくらいは平気でも、以前に本人が処女だと言っていた通り、秘所を触られたのは初めてかも知れず、恥ずかしさと恐ろしさに泣いたに違いない。まあ、怖い思いをするのもあと少しの間だけだ。その後は恐らく堪らなくなって恐怖など消え去ってしまう。
「ううっ、ねえっ、うぇっ、何したの? ひぐっ、何したのよぉ?」
 涙声で尋ねてくるキュルケを無視し、俺は風呂にでも入ろうと腰を上げた。
   ★★★
「ああっ、何したのよぉ、んあっ、ねえってばぁ、はあっ、あたしに何したのよぉ」
 寝室に戻った俺を見て、キュルケが切なそうに尋ねてきた。腰にタオルを巻いただけの俺の姿にも怯えている様子はなく、少しだけ虚ろな目で身体を捩り続けている。放置してから約一時間。乳首は勃起し、紐パンの股布には薄い染みが出来ているものの、未だ喘ぎは弱く、その様子は俺の予想を下回る。割と我慢強い娘なのかもしれない。が、それもこれまでだ。俺はキュルケの顔の脇に座り込むと、腕を伸ばして一回だけ乳首を指先で弾いてやった。
「はうああっ」
 俺の行為にキュルケは大きく喘ぎ、たわわな乳房を自ら振るわせた。満足のいく反応に、俺は腰のタオルを外して陰茎を扱き始め、その様子をキュルケに見せ付けた。
「んはあっ、何を、あふうっ、見せてるのよぉ、はうあっ、嫌ぁ、ふはあぁ、何したのよぉ」
「何をって、お前の欲しがってた俺のチンポだよ。取り敢えず喰ってみろ」 
 そう言って俺は嫌がるキュルケの頬を掴んで強引に口を開けさせると、勃起した陰茎をその中に挿し入れた。
「歯を立てたり、噛み千切ろうとしたりしたら、どうなるか判ってんだろうな?」
 俺の質問にキュルケは震え、ぎこちなく首を縦に振った。
「いい子だ。俺の言うことを聞いていれば、お前も気持ちよくしてやる。舐めろ」
 言いながらキュルケの乳首に再度手を伸ばし、優しく摘んで擦ってやる。キュルケは身体を引きつらせながら、恐る恐るといった感じで口中の陰茎に舌を這わせ始めた。
「上手にできたら、ここも触ってやるからな」
 伸ばした手を乳房から股間へと移動させ、布越しに陰核を二、三回擽ってやる。
「むぶごおほおおっ」
「ここはこれまでだ。もっと触って欲しかったら、心を込めてしゃぶれ」 
 俺が再び乳首に手を戻すと、キュルケは懸命に舌を動かし始めた。
   ★★★
「あふうあっ……こんなにぃ……んくうあっ……気持ちいいなんてぇ……はうんあっ……初めてぇ……ひうくはぁ……またぁ……くひふやあっ……イっ、くっ、イくううううううっ!」
 キュルケは七度目の絶頂に歓喜の声を上げ、動かないままの四肢を小刻みに震わせた。それでも俺は休息を与えずに、今では下着の上からでもはっきりと判るほど勃起した陰核を、指先でそっと撫で続けてやる。未だキュルケはベビードールも下着もつけたままだが、紐パンは濡れに濡れ、乾いた場所が見当たらないほどだ。
「へひゃあはぁ……ダーリぃンっ……くほふあっ……休ませてぇ……ほおふあっ……死ぬうぅ……はうあへぁ……死んじゃうぅ……あへふあぁ……あたし死んじゃうぅ……」
「じゃあ止めて、そろそろ部屋に帰るか?」
「はひゃあっ……嫌あっ……あんんあっ……休みたいけどぉ……くふひあぁ……止めるのは嫌あっ……ふんうあっ……もういいからぁ……んうふうっ……抱いてえぇ……」
 俺は指の動きを止め、キュルケの顔を覗きこんだ。キュルケは胸を激しく上下に揺らし、全身を痙攣させながらも、弛緩した顔に蕩けた笑みを浮かべ、俺をじっと見ている。
「お前、さっきまであんなに、ぶち込まれるのは嫌だって、そう言ってたじゃねえか?」
「ふあぁ、もういいのぉ、んあっ、全部あげるぅ、ふはぁ、まだ取ってぇ、くふぅ、置きたかったけどぉ、んくっ、ここまでぇ、あふっ、されちゃったらぁ、んっ、もう戻れないものぉ」
「俺はお前に特殊な薬を使って犯そうとしてんだぞ、それでもいいのか?」
「ふぁ、もういいわぁ、はぁ、そんなことぉ、あぁ、気持ちよかったしぃ、あぁ、それにぃ、んっ、どうせ恋人にもぉ、くっ、してくれないんでしょお? んぁ、酷い人ぉ」
「恋人の仲間入りならさせてやれるけどな」
「えっ? んっ、どういうことお?」
「そろそろ朝だし、一休みして酒でも飲むか」 
   ★★★
「そんな、王女殿下まで?」
「ああ。即位したら、次期を見て結婚するつもりだ」
 唖然とした顔のキュルケに、俺はそう言った。キュルケに固定解除薬を塗ってやり、リビングに移動して酒を飲み始めてから数十分。互いに隣り合ってソファに座ってから、俺はモンモランシーが現在知っている内容と同程度のことをキュルケに話してやった。俺は全裸、キュルケはベビードールも濡れた紐パンもそのままだ。快感薬の効果がまだ続いているらしく、乳首を勃起させたまま、時折足を組み替えては吐息を漏らしている。だが、その態度と物言いは平素のものと変わらず、目にも光が戻ってきているようだ。
「じゃあ、ダーリンがこの国の王様になるの?」
「別に俺は王配でも構わねえよ。好きなように出来れば、表向きは婿だろうがなんだってな」
「……そんなこと考えてたなんて」
「言っておくが、今なら間に合うぞ? 話した内容は秘密にしてもらうが、嫌なら俺に抱かれなくても、この件に関わんなくてもいい」
 俺がそう言うと、キュルケは黙って俺の唇にキスをした。ゆっくりと口を離し、照れ臭そうに微笑みながら、俺の陰茎を優しく撫でてくる。まだキュルケとの行為では一度も精液を放っていない陰茎は、延々と勃起したままだ。
「協力しないわけないじゃないの。酷いとは思ったけど、信じられないほど気持ちよくしてもらったし。あたし、ダーリンと、ダーリンのこの子に、夢中になりそうなんだから」
「味見もしてないのに夢中なのかよ?」
「無理矢理口に入れたじゃないの。それに、別のところにも入れてくれるんでしょ?」
 相変わらず淫乱な素振りと口調だが、以前のキュルケとは違う。それまでの媚びるような淫靡さがなく、眼差しも表情も穏やかだ。
「お前を抱くのは今度にする」
「ええっ? 何で?」
 飲酒の後に抱かれると思っていたのだろう。キュルケは驚きの声を上げ、真意を探るつもりなのか、俺の目を覗きこんできた。
「しばらくは処女のお前の身体を楽しませてもらう」
「それって、あたしの初めてを大事にしてくれるってこと?」
「正直に言えば違うな。単なる俺の趣味だ」
「もう、こういう時は嘘ぐらいつきなさいよ。でもいいわ。あたしのこと、全部あげるから、ダーリンの好きなようにして」
 少しだけ拗ねた口調でそう言うと、キュルケは俺に抱きついてきた。俺の耳たぶを何度か甘噛みし、甘い声で囁いた。
「ねえ、この国だけでなく、あたしの国も獲っちゃわない?」
   ★★★
 リビングから再び寝室に戻ると、俺はキュルケにベッドの上で自慰をするように命じた。キュルケは素直に頷いたが、俺の自慰も見たいと言い出した。当初からそのつもりだった俺は了承し、身体にかけるから念のためにとキュルケに避妊薬を呑ませた。
「じゃあ、始めろ」
「……ねえ、ほんとにこれは脱がなくていいの?」
 ベッドの上で横になり、俺に向かって大きく足を開いたキュルケが尋ねてくる。これ、とは紐パンのことだ。ベビードールは脱ぐように言ったが、それは未だに穿いている。
「そんなにマンコを見て欲しいのか?」
「その、見て欲しくない、わけじゃないけど……」
「じゃあ、オナニーの途中、どうしても見せたくなった時に紐を解け。そうしたら精液をそこにかけてやる。それまでは穿いていろ」
「途中、どうしてもダーリンに見せたくなった時?」
「そうだ」
「じゃあ、んふあっ」
 キュルケは両手の指で両乳首を摘み上げ、二、三回擦り上げると、そのまま手を下着の両脇の紐に回し、立ち膝となって腰を浮かしながらそれを解いた。そのまま手にした下着を脇に放り投げると、両手で秘裂を左右に開いて俺に局部を見せつけてくる。当然、濡れた陰唇も尖った陰核も、膣内の桃色の秘肉までもが丸見えだ。
「おい」
「だってぇ、見て欲しくなっちゃってたんだものぉ、ここを見ながらダーリンもしてぇ」
「お前はどうすんだよ?」
「大丈夫ぅ、んはぁ、見られてるだけでぇ、あふぅ、イけちゃいそうだからぁ」
 本気か、こいつ? と俺は思ったが、キュルケは顔を赤らめて既に身悶えを始めている。秘所がランプの光を受けて輝きを増しているのは、新たな愛液が分泌されている為だろう。以前から淫乱な素振りをしていただけに、基本的に見られることが快感になっているのかもしれない。露出狂の素養があると言える。
「んくはぁ、ねえぇ、ふうあぁ、ダーリぃン、んんあっ、ちゃんと見てくれてるぅ」
「ちゃんと見て欲しかったら、いやらしい言葉でおねだりしてみろ」
「んふあはぁ、見て欲しいのぉ、はあんんっ、あたしのオマンコぉ、うあふあっ、ダーリン専用のぉ、ひううんっ、処女オマンコぉ、はくふあっ、ゲルマニアのオマンコぉ」
 持ち上げたままの腰を悩ましく回し、キュルケは喘ぎを高めていく。俺は一物に手をやって扱き始めながら、キュルケの秘裂に顔を近づけ、その臭いを深く吸い込んだ。ルイズやシエスタよりも成熟した濃厚な体臭だ。その誘いかけるような淫靡な香りに釣られ、俺の亀頭にはもう先走り汁が滲んでいる。
「お前のマンコ汁、いい匂いがすんな」
「ふあんああっ、嬉しいぃ、くはううあっ、気に入ってくれたぁ、うはあふあっ、もっと嗅いでぇ、はあうあんっ、もっと見てぇ、あふひああっ、もっとあたしを辱めてぇ」
「じゃあ、もっとマンコを開いて見せてみろ」
「あへひああっ、はいいいっ、ふはうああっ、オマンコもぉ、はうあひあっ、オマンコ汁もぉ、んほうああっ、全部ダーリンのものだからぁ、うはあんんっ、好きなだけ見てぇ、ひうひやあっ、好きなだけ嗅いでぇ、おふうああっ、目と鼻で犯してぇ」
 これ以上は無理というところまで拡げられた秘裂を晒しながら、キュルケは不規則に身体を震わせ始めた。本当に見られているだけで絶頂を迎えようとしているのだろう。そんなキュルケの言葉と素振りに俺は我慢できなくなり、亀頭を陰核へと強く押し当てた。
「俺のものだって言うなら臭いをつけてやる、ほら、受け取れ」
「あっあっあっ、出てるぅ、んくはああっ、ダーリンのぉ、んひゃあふあっ、熱くて気持ちいいぃ、あひぁふあはああっ、あっ、イく、イく、イく、イくうううううううっ!」
   ★★★
「んごぷっ……んむべぁ……んぐぽっ……ぷひゃあ……本当に夢中にぃ……あむぐっ……ごぷおっ……んむぼっ……ぷぁはぁ……させられちゃったぁ……えろれ……んむちゅ……ぺおっ……はぷっ……あむぶっ……むぶおっ……ぷはあっ……ふふっ、これ大好きになっちゃったわ」
 キュルケは口で陰茎の後掃除をしながら、合間を見ては満足そうに微笑み、従順な言葉を俺に告げてくる。褐色の肌を白濁に染めていくのは見た目にも面白く、ついつい夢中になってしまった俺は、計七回ほどの精液をキュルケに浴びせ、飲ませた。セックスと呼べる行為はしていないものの、精液を処女膜にも腸内にも撒かれたキュルケは既に俺の言いなりだ。身体に付着した精液を指ですくって飲み込むことさえ厭わない。
「おい、また出そうだ」
「んれろっ……ん、どうする? 直接飲んだ方がいいの? それともどこかにかける?」
「そうだな、飲め。その前に舐めろ」
「はあい……はぷうっ……あむぐっ……んぐぷむっ……んれんろぉ……あむれおっ……」
「ほれ、飲め」
「んぼおごっ……ぶむんくっ……んごふうっ……んくんくっ……うむんぐっ……」
 苦しそうに横顔を歪めながらも、屈みこんだまま胡坐をかいた俺の股座に顔を埋め、出されたものを飲み込んでいくキュルケは予想外に可愛い。肉感的な身体や誘惑に満ちた物言いとは裏腹に、献身的な一面がある。色々と教え込めば従順な露出奴隷になりそうだ。
「……んぷはあっ、もう、ダーリン出し過ぎ。でも、美味しく思えるようになっちゃった」
「なあ、キュルケ」
「なあに? お掃除なら今からするわよ?」
 そう言って少しだけ項垂れた陰茎に舌を這わせようとするキュルケの頭を撫で、俺は尋ねてみた。
「以前、何でお前は俺を部屋に呼んだりしたんだ?」
「前にも言ったじゃない。ギーシュとの決闘の時、格好良かったって」
「それだけでお前は、結果的にチンポの掃除まですんのか?」
 俺の言葉にキュルケは黙り込んで首を傾げ、やがて考え込んだ面持ちのまま口を開いた。
「……そうね、ルイズに対する嫌がらせっていうのもあったけど。それでもダーリン、相手にしてくれなかったじゃないの。あたしにも意地があったし。でも、ここに連れて来られて気持ちよくしてもらって、もう身体が離れられないと思ったし、お酒飲みながら話を聞いて、気持ちも離れられなくなっちゃったから、かしら」
「身体はともかく、気持ちはどうしてだ?」
「だって、国を略奪しようなんて男の人、他に知らないもの。あたし、野望を持っている人って好きよ。だから約束するわ、何でも協力してあげる」
「快楽と野望か。俺意外にそれを与えてくれる人間がいたら、お前、どうする?」
「今更、離れられないわよ。ダーリンの味、覚えちゃったし」
「ルイズとも上手くやっていけるか?」
「ダーリンが望むなら、そうするわ」
 そう言ってキュルケは陰茎を舌でぺろりと舐め上げた。
   ★★★
 寝室の窓を叩く音で俺は目を覚ました。カーテンから漏れている光の量からすると、、昼近くまで眠ってしまったらしい。昨晩、キュルケに適当な服を着せて部屋まで送り届けた後、小屋に戻ってすぐに寝たのだが、まだ眠い。半分寝ぼけたままカーテンを開けると、窓を叩いていたのはタバサだった。足元に本が何冊も置かれているところを見ると、約束通りに科学関連の書籍を持ってきてくれたらしい。てっきり夕方以降に来るものだとばかり思っていたのだが、おそらくは玄関の扉をノックしても返答がなかったので、寝室の当たりをつけて窓を叩いたのだろう。俺は急いで窓の鍵を開け、タバサに声をかけた。
「悪い、寝てた」
「かまわない」
 そう言ってタバサは足元の本を抱え、窓越しに俺に差し出した。俺は本を受け取って寝室の床に置くと、未だ窓のところに立ち尽くしているタバサに尋ねてみた。
「ありがとな、助かった。ところで今、何時だか判るか?」
「正確な時刻は判らない。でも、お昼」
 やっぱり昼か、と思いつつ、俺は再度タバサに尋ねた
「お前、昼飯は?」
「まだ。これから」
 これには少々驚いた。どうやら昼休みになってすぐに図書館へと行き、本を選んでくれたようだ。授業の合間の短い休憩時間では、教室からの移動、図書館の入館受付、本の選別、貸し出しの申し込みまで出来るわけがない。俺としては授業が終わってからで一向に構わなかったのだが、何より優先してくれたということか。一昨日の個人授業の件も含め、何かお礼をしてやりたいところだが、はしばみ草は俺の手元になく、他にタバサの好みが判らない。
「もし良かったら、時間があったらだけど、飯、喰ってくか? たいしたもんはねえけど」
 言ってから俺は自分を恥じた。今すぐ食堂に行って食事をした方が時間的にも早く、それなりの物も食べられる。だが、タバサは俺の言葉に無言で頷いた。
「お?」
「どこから入ればいい?」
「ちょっと待ってくれ、すぐに玄関の鍵を開けるから」
 そう言い残して俺は玄関へと走った。
   ★★★
 たいした物はないと言っても、そこそこの食材はそろえてある。マルトー親父が時々シエスタに大量に持たせてくれるからだ。魚や獣肉の燻製、チーズなど保存の効くものは質が良く、日持ちがしない野菜などは持参してくれた時点では新鮮だ。俺はタバサをリビングのソファに座らせると、キッチンに行って保存食を皿に盛り付け、パンとワインを用意し、リビングへと持って行った。それらをタバサが食べている間にキッチンに舞い戻って作り置きのシチューを温め、サラダを作り、それらを再びリビングに運び込むと、既にパンも保存食も食べ尽くされていた。少々呆気に取られながらも、改めて保存食とパンを用意すると、今度はシチューとサラダがなくなっている。どうもタバサは体格に反して、かなりの大食漢らしい。以降もキッチンとリビングを何往復かして、やっとタバサが食事を終えようとした頃には、かなりの時間が経過していた。
「まだ喰えるんなら、まだあるから、まだ用意するけど?」
 俺は向かいのソファに腰掛けるタバサに聞いてみた。寝起きに運動した為に若干息が切れ、頭の回転が鈍くなっているのが自分でも判る。
「もういい。ごちそうさま」
「時間、大丈夫か?」
「遅れても大丈夫」
 何でもないことのように言うタバサの様子からして、本当に大丈夫なのだろう。教師が遅刻を見逃してくれるほど成績がいいのか、遅れて行っても授業を理解できるのかは判らないが、妙に平然としている。
タバサのグラスにワインを注ぎ足してやり、自分用のグラスにも注いで飲むと、やっと動悸が治まってきた。タバサは時々グラスに口をつけながら、正面の俺をじっと見ている。その口元にパン屑が付いているのに気付いて腕を伸ばして取ってやり、それを無意識に自分の口に入れ、そこで初めて俺は失態に気がついた。慌ててタバサを見ると薄っすらと頬を染めている。見た目がルイズ以上に幼いだけに罪悪感が湧いてくる。俺はタバサに頭を下げた。
「悪い、つい、癖で」
 言い訳にならないかもしれないが、本当にそれはルイズに食事を与える際の俺の癖だった。
「……かまわない」 
 そう言いながらもタバサは恥ずかしそうに俯いた。新鮮な反応だが胸が痛む。それでも普段はあまり感情を見せないタバサが恥らう様子はとても愛らしく、俺は頭の切れが悪くなっていた為に思わず余計なことを口走ってしまった。
「抱っこしてえ」
 無論、大声ではなく小声で、それも呟いただけだったのだが、タバサは更に俯き、やがて意を決したようにソファから立ち上がって俺の前まで来ると、膝の上へと座り込んだ。
「お、おい、タバサ?」
 だが、俺の呼びかけにタバサは何も答えずに黙り込んで俯いたまま、もじもじと恥ずかしそうに身を揺らしている。肉付きの薄い小さな尻の感触が心地良く、困ったことに陰茎が徐々に勃起し始めてきた。その状態をタバサが気付かぬ筈はなく、俺は再度謝ることにした。何だかタバサには謝ってばかりだ。
「悪い、これはその、生理的な現象であってだな」
「……平気」
タバサはそう言ってくれたが、横顔を覗き込むと目を伏せて頬を染めている。とても平気とは思えずに、俺はタバサに問い掛けた。
「……降りてくれていいんだぞ?」
「……平気。このまま」
 そう言われた以上は勝手に膝の上から下ろすのも可哀想な気がする。が、タバサは身動ぎし続け、陰茎はどんどん硬く大きくなっていく。身動きを止めてくれと言うのも、俺の生殖器の状態を更に意識させてしまいそうで気が引ける。かと言って、こんなに無垢で義理堅く、世話にもなっているタバサを犯してしまうわけにもいかない。生殺しのような状態に、誰か助けてくれ、と俺は心の中で叫び続けた。
   ★★★
 その日の夜。
 俺は今度こそ久し振りにルイズの部屋で眠ると決め、学院の寮を訪れた。扉をノックして許可を得てから部屋に入ると、ルイズは早々とベッドの上で毛布に潜り込んでいた。
「寝てたのか?」
「ううん、寝ようと思ってたとこ」
 毛布を剥いで俺が隣で横になると、途端にルイズが抱きついてきた。毛布を被せ直す間も与えず、甘えるように全身を何度も擦り付けてくる。日中タバサに苦行を強いられたせいで、そんな行為だけで陰茎は勃起し、俺は堪らなくなってルイズの唇を奪った。舌を絡めながら身体を起こし、ルイズの小さな身体に圧し掛かりながら、耳から首筋へと舌を這わせていく。ルイズは拒むことなく俺の行為を受け入れ、背中に手を回し、少しずつ喘ぎ始めた。俺は他の箇所へは愛撫を加えずに、ネグリジェの上から右の乳首だけを何度も丹念に舐め上げてやった。
「ああっ、そこっ、んあっ、そこばっかりぃ、はうっ、ダメぇ」
「じゃあこっちか?」
 今度はネグリジェの生地の上からでも判るほど勃起した左の乳首だけを責めてやる。
「くぅん、だからぁ、あふっ、そこばっかりはぁ、はあっ、ダメだってばぁ」
「じゃあ、ここも一緒にな」 
 そう言って俺はルイズの足を開かせ、その間へと身体を移動させると、秘裂にそっと舌を這わせた。同時に両手を伸ばして両乳首を指先で擽ってやる。
「ふああはっ、一緒もダメぇ、あはんあっ、ダメだってばぁ」
 ルイズは腰をくねらせて喘ぎを激しくさせていく。俺は一旦口を離し、諭すように囁いた。
「ルイズ、気持ちよかったらちゃんと言ってくれ。どこが気持ちいいのかも」
 そう言ってルイズのネグリジェを捲り上げて脱がせると、俺も手早く全裸になり、再び両乳首を指で弄びながら、陰唇の奥へと舌を挿し入れた。蕩けるような愛液を味わいながら、膣口を舌でなぞってやる。
「んくううあっ、気持ちいいっ、うはぁんあっ、それ気持ちいいのぉ、んふんああっ、もっとしてぇ、あふはああっ、オマンコぉ、ひゃふうあっ、もっと舐めてぇ」
 素直に指示に従いながら愛液を分泌し続けるルイズを、さらに高みへと導きながら、俺は少女の体臭と蜜の味に陶酔し始めた。自分の勃起した陰茎を扱きたいところだが、愛撫の手を休めるのも惜しい。まずは一度ルイズを果てさせてしまおうと考え、舌と指の動きを速めることにした。舌を可能な限り膣奥へと侵入させて柔肉を舐めながら、乳首を指先で摘んで強めに擦り上げてやる。
「ひゃふあはあっ、気持ちいい気持ちいいっ、んふあはああっ、ダメになっちゃうぅ」
ルイズは腰をガクガクと震わせ、背を反らして自ら局部と胸を俺に押し付けてきた。どうやらあと少しで達しそうな気配だ。俺は頃合を見計らって乳首を優しく捻り、陰核を唇で強く甘噛みしてやった。
「あふうはあふあっ、イくぅ、イくぅ、オマンコがぁ、イっちゃう、イくうあはあああっ!」
   ★★★
 ベッドの上で四つん這いになったルイズを後ろから眺めるのは格別だ。何よりあの気位の高いルイズが全裸で小振りな尻を差し出していると思うだけで、俺の握り締めた陰茎の先は濡れ始めている。
「ねえ、ほんとに入れないの? 私は別に、その、い、いいわよ?」
 ルイズは後ろを振り返りながら嬉しいことを言ってくれるが、俺としてはまだまだ処女のルイズを楽しみたい。それに安易に抱いてしまえるほど、俺のルイズへの思いは軽くはないつもりだ。だからと言って誠実というわけでもないんだが。
「お前の初めては確かに欲しいけど、今日はその手前まででいい。始めるぞ?」
 俺はそう言って陰茎を扱き始めながら秘裂に亀頭を押し当て、少しだけ前に腰を動かした。目的は処女膜手前の膣内の感触を楽しむことだ。そのまま精液を出すつもりで、ルイズには避妊薬を呑ませてある。俺は膣口を少しずつ押し拡げながら、慎重に処女膜の場所を確かめていく。やがて亀頭に先に一際強い抵抗感を感じ、俺は僅かに腰を引いた。
「んくうあっ……ひうっ……ああっ……はあっ……ふあっ……」
「大丈夫か?、痛くないか?」
「んんっ……大丈夫……あふっ……さっきはちょっと……ふうあっ……痛かったけど……あうあっ……今は痛くないから……はうあっ……痛い時は言うから……はうあっ……続けて……」
 俺は処女膜に再び触れないように気をつけながら、少しずつ手の動きを速めていった。
「ふああっ……そこ気持ちいい……んふあっ……そこもっとして……はうんっ……なんかこれだけで……んはあっ……私もイっちゃうかも……ふはぁんっ……気持ちいい……」
 ルイズの言葉は嘘ではないようで、秘所は滑りを増している。俺の動きに合わせて小さく腰を振りながら、切なそうに首や肩を竦め、膣内では亀頭を温かく濡れた柔肉できつく締め上げてくる。その心地良さに俺は扱く手の動きを加速させ、堪らずに微かに呻いた。
「んっ、お前の中、凄え気持ちいい」
「はふあっ……嬉しい……ふうあっ……覚悟は……はんんっ……できてるから……んっあっ……入れたくなったら……くはあっ……入れてもいいからね……んくふっ……そこ好きぃ……」
 ルイズの甘えた声に俺は限界を迎えようとしていた。亀頭の先では愛液と先走り汁が溶け合っているに違いない。そう思うだけで更に昂ぶってくる。同時に果てたいところだが、もう無理だ。
「ルイズ、もう出る」
「ふああはっ……いいわよぉ……はうあふっ……私のそこぉ……あっんんっ……私のオマンコぉ……ひうあはっ……あんたにあげるぅ……んっんああっ………好きなだけ出してぇ……」
「出るっ、くっ!」
「ひゃううあっ……あったかいぃ……あっふああっ……やだ染みるぅ……んはうああっ……染みてくるぅ……んくうあああっ……でもでもぉ……あふああっうあっ……気持ちいいぃ……」
 俺は蕩けるような意識の中、精液を膣内で受け止めてくれたルイズのことを、今まで以上に愛しく思った。
   ★★★
 射精の後、俺がベッドに横になると、ルイズはタオルで身体の汗を拭き取ってくれた。穏やかな笑みを浮かべ、丁寧に俺の肌を拭ってくれる。そんな自然な素振りで尽くしてくれるルイズの姿を見ている内に、俺は狂おしいほどの恋慕の情と罪悪感に襲われた。もう限界だった。これ以上、計画のことをルイズに黙っておくことは出来ない。
 俺は身体を起こしてルイズに向き合い、捲し立てるようにして薬に関すること以外の全てを打ち明けた。アンリエッタとのことも、国を略奪しようとしていることも、法律を改して多重婚を可能にしようとしていることも、モンモランシーとキュルケのことも。ルイズは黙って俺の話を聞いた後、きつく目を閉じた。何かに耐えようとしている顔だった。
 ルイズを失いたくはない。けれど嘘もつきたくない。国獲りを諦め、全ての女と別れ、ルイズだけを見て生きていくことも出来なくはない。けれど俺の中には確実に残虐且つ傲慢な欲望があり、それを一時期だけ押し留めることは出来ても、消し去ることは出来ない。何故ならそれは俺の中核を成す感情だからだ。別人の振りをしたまま幸せになるか、素のままで不幸せになるか。どちらかを選べと言われれば、俺は迷いなく後者を選ぶ。
「……どうして?」
 長い沈黙の後、ルイズがぽつりと呟いた。開かれた鳶色の瞳は涙で潤み、その眼差しは哀しみに満ちている。
「どうして国なんかがいるの?」
「……前に約束した通り、俺は元の世界には帰らない。仮に帰る方法が見つかったとしても、絶対に帰らない。この世界で生きて、この世界で死ぬつもりだ。だから、自分に可能なことは思い切りやっておきたい。それがどんなに非道なことでも、どんなに残酷なことでも、そんなことは構わない。やりたい時にやりたいことをやり、抱きたい女を好きな時に抱く。それを可能にする為にも、俺はこの国が欲しい」
 俺は滔滔と語った。多少は綺麗な言葉を選んではいるが、全て本心だ。
「……私は、どうすればいいの?」
「お前が許してくれるなら、俺としては、今まで通りに側にいて欲しい。許せないのなら、悪い、卑怯な言い方だろうが、お前が自分でどうするかを決めてくれ」
「……姫さまよりも、私のこと、好きでいてくれる?」
「当たり前だ」
「でも、姫さまと結婚するつもりなんでしょ?」
「お前が望んでくれるなら、同時に、お前とも式を挙げたいと思ってる。法律を変えてからの話になるけどな」
「……ほんと?」
「ああ、本当だ」
 そう俺が答えると、再び部屋に重苦しい静寂が訪れた。互いに裸で向き合ってはいても、その心情までは理解できない。そんなことに改めて気付き、俺は微かに震えながらルイズの言葉を待ち続けた。どのくらいの時間そうしていただろう。やがてルイズは俺の目を見据え、そのまま身体を寄せてきた。
「……いいわ。全部、許す」
 小さな声、けれども毅然とした口調でそう言うと、ルイズは力なく俺の首に両腕を回し、嗚咽を上げて泣き始めた。俺はその背を抱きながらルイズに無言で詫び続けた。
   ★★★
 翌日の午後、俺はシエスタを呼び出して計画のことを告げた。やはりシエスタも驚いていたが、すぐに何でも協力をすると言ってくれた。
 夜には物置小屋のリビングに、アンリエッタとジェシカを除く全員の女たちを集めた。ルイズ、シエスタ、モンモランシー、キュルケの四人だ。思っていたほど険悪な雰囲気ではなく、俺は安堵の溜息を吐きながら、事前に用意しておいた羊皮紙を全員に配った。今後、俺の計画に協力する旨を記載した誓紙だ。内容は十六項目あり、総じて隷属契約書と言ってもいい。了承するならばサインをして俺に差し出すよう告げると、キュルケ、ルイズ、モンモランシー、シエスタの順に、全員がその場でサインした誓紙を俺に渡してくれた。シエスタが最後なのは、文章の意味が良く判らないとのことで、モンモランシーが詳しく教え、サインの入れ方などについても教授してやっていたからだ。次いでワインで乾杯すると、俺は物置小屋の鍵をモンモランシーとキュルケにも渡し、その場は解散となった。
 全員が小屋から出て行くと、俺はそのままリビングで晩酌を始めた。たまには丸一日性行為をせず、一人でゆっくりと時間を過ごすのもいい。そう思って酒を飲んでいると、玄関の扉を叩く音がした。先日のタバサの訪問時以降、扉に新型のノッカーを取り付けたので、今ではどの部屋にいても来客が判るようになっている。扉を開けると、そのタバサが立っていた。
「どうした、こんな時間に?」
 昨日、勃起した陰茎を尻に押し付けてしまったので、気恥ずかしいことこの上なかったが、取り敢えず俺はそう尋ねてみた。特に何かを約束したという覚えはない。と、遅れてキュルケも姿を見せた。
「ダーリン、ごめんなさい。全部、喋らされちゃった」
「全部って何をだ?」
 キュルケが何を謝っているのか、俺には判らなかった。だが、嫌な予感がする。
「誓紙」
「お?」
 キュルケに向けて発した俺の問いにタバサが答え、その内容に俺は少しばかり驚いた。誓紙を差し出した件は他人には内緒にするよう全員に言ってあったからだ。
「あたし、この子にだけは弱くって。尋ねられたら誤魔化せなくなっちゃうのよ。身体の関係のことも、つい勢いで話しちゃった。誓って他の誰にも今後は絶対言わないから、今回だけは許して。ほんとにごめんなさい」
 キュルケは真顔で謝ってきたが、俺としてはそれどころではない。年齢はルイズの一つ下とは言え、見た目は幼女のタバサに、キュルケとの半ば変態的行為の件を話すなど、性的嫌がらせ以外の何ものでもないだろう。先日の件も含めて、今後は顔が会わせ辛くなる。
「お前な、仕方なく話すにしても相手を――」
「誓紙」
タバサは俺の言葉を遮るようにして、同じ台詞を呟いた。少しだけ関わり合いが増えたから判るのだが、どうも何かを拗ねているような口振りだ。友達のキュルケに酷いことをした俺に文句を言い、更にキュルケの誓紙を回収にでも来たのだろうか?
「えっと、俺は、どうすれば?」
「それがね、この子ったら自分も――」
「わたしもあなたに差し出す」
 タバサの言葉に、俺は自分の耳を疑った。
   ★★★
 リビングのソファにタバサとキュルケを並んで座らせてから、俺はその正面に立ち、キュルケと共にタバサの説得を始めた。俺は正直に、これは隷属させるための誓紙だということを説明したのだが、それでも構わないという。仕方がないので、俺はもう少し踏み込んで説明をすることにした。これを差し出すということは、俺に性的な行為を強要されることになると言うと、タバサは恥ずかしそうに頬を染めたが、驚いたことにそれでもいいと言う。俺は困ってキュルケの方を見たが、キュルケは無言で首を振ると、苦笑いを浮かべた。
「ねえ、ダーリン。ここまでこの子が納得してるんだから、好きにさせてあげましょうよ。あたしだって、この子が変な男に騙されるより、ダーリンの恋人の一人になった方が安心できるもの。お願い、そうしてあげて」
「いやまあ、でもなあ」
「……ダメなの?」
 タバサはそう言って青い瞳を潤ませながら、俺をじっと見上げてきた。はっきり言えば、こんな風に感情を見せるタバサは凄く可愛い。だが、こんな無垢な少女を安易に計画に引き込むわけにもいかない。俺は最終手段を取ることにした。
「なあ、タバサ。露骨な言い方をすると、これはお前のマンコに俺のチンポを入れることを許可するって契約書なんだぞ?」
 俺の下品な言い回しに、タバサは俯いて身体を竦めた。隣のキュルケは非難するような目を向けてきたが、俺だって本当はタバサにこんな物言いをしたくはない。だが、ここは嫌われるような言動や素振りをすべきところだ。俺のことを嫌悪するようになれば、タバサも誓紙を差し出すなどと言わなくなるだろう。今後、永久に嫌われ続けるかもしれないが。
「お前のマンコだけでなく、尻の穴とか、口の中とかにもチンポを入れられちゃうかもしれないんだぞ? 身体も弄ばれて、嫌なことも無理矢理させられたりして。そんなの嫌だろ?」
「ダーリン、そんな言い方って」
「言い方を変えたって、することは同じだろうが。なあ、タバサ。例えば俺が人前で裸になれって言ったら、お前はそうしなくちゃなんねえんだぞ?」
 タバサは更に身を縮め、身体を震わせている。聞くに堪えないといった感じだ。泣かせてしまうかもしれないが、もう一押しすれば諦めてくれるだろう。
「それにな、他にも――」
「かまわ、ない」
 タバサは突然そう言うと、ソファから立って服を脱ぎ出した。キュルケが止めさせようと腕を伸ばすが、難なくその手をすり抜けられてしまう。マントを取り、ブラウスを脱ぎ、スカートに手をかけたところで、俺は降参した。
「判った、もういい。俺の負けだ」
 タバサはキャミソールとスカートという出で立ちのまま、俺に片手を差し出した。
「誓紙」
   ★★★
 誓紙にサインを入れて俺に差し出した後で、タバサは物置小屋に泊まってみたいと言い出した。もはや説得する気にもなれず、俺はそれを了承した。間違って手を出さないよう、キュルケにも監視役として泊まるように言ったのだが、そんな野暮な真似は出来ないと言い残して、キュルケは自室へと帰ってしまった。タバサも風呂に入って着替えてから再度来るという。
 二人が姿を消した後で俺は風呂に入り、しっかりと寝間着を着て、リビングで酒を飲みながらタバサが来るのを待った。程なくしてタバサがやってきたが、その姿を見て俺は驚いた。
「お前、その格好、どうした?」
「別に」
 玄関の扉の外、タバサは全身を黒いマントで包んでいた。まさか全裸の上からマントを羽織ったとも思えないが、俺の言葉に制服を脱ぎ出したタバサのことだ、有り得ないとも言い切れない。どちらにしても外に立たせておくわけにもいかず、俺はタバサを小屋の中へと招き入れた。リビングへと行ってソファに相向かいに座り、一緒に酒を飲んでいる間も、タバサはマントを外そうとはしない。やはり確認しておくべきかと、俺はタバサに問い掛けた。
「なあ、そのマントの下、裸じゃねえだろうな?」
「その方がよかったの?」
「いや、まあ、そうなんだろうけど、いやいや、そうじゃなくて」
「今度から、そうする」 
 しどろもどろの俺の返事に、タバサは頬を赤くしながら納得したように頷いた。だが、今度から、ということは現在は寝間着を着ているということだ。それならば理性を保てるだろう。俺は少しばかり安心して手にしたグラスに口をつけ、目の前でマントを脱ぎ出したタバサの姿を見て、口の中のワインを全て噴き出した。
「……お、お前?」
「以前、買ってもらった」
 誰に? と聞く必要はない。タバサは薄いピンクのネグリジェ姿だったが、布地が透け、平らな胸とパンツが見えている。こんな扇情的なネグリジェを買い与えるのは、キュルケ以外に考えられない。
「ちょっ、ちょっと待て。お前、恥ずかしくないのか?」
「……恥ずかしい」
「隠せ、隠せ。マント付けてていいから」
 そう言ってやったにも関わらず、タバサはそのままソファに座り、身体をもじもじと震わせるばかりだ。素肌の部分はどこも赤く染まっている。可愛らしい。可愛らしいのだが、夜通し生き地獄になりそうな予感に、俺は深く溜息を吐いた。
   ★★★
 タバサに女性としての魅力を感じないわけではない。普段は無口だが大人しくて可愛らしいし、感情を見せた時の表情や仕草には愛しさを感じるほどだ。しかし、無垢で純朴そうな少女に好意的な態度を取られて、即陵辱というわけにもいかない。シエスタも当初はそこそこ純朴そうに見えたが、元からの資質が違う。タバサがどんな資質を持っているのかを確かめる術は現在なく、無理矢理確かめたら泣かせてしまいそうで怖い。以前、ジェシカと催眠父娘プレイをした時にも僅かに感じた保護欲を、俺はタバサに対して強く抱いているのかもしれない。よって、例えネグリジェが透けていても、タバサと手を繋いで寝るのは正直嬉しい気持ちになったし、安らかな心地良さを感じたりもした。そのまま俺は酒の酔いと睡魔に襲われて眠りに就いたのだが、夜中に小さな声を聞きつけて目を覚ました。横を見ると、タバサが泣いている。起きているのかと思ったが、どうも夢を見て泣いているようだ。
 一頻り迷った挙句、俺はベッドからそっと抜け出し、タオルを手にして戻ると、その涙を拭いてやった。起こさないように注意したつもりだったのだが、タバサはゆっくりと目を開き、安心したように薄く微笑むと、横に屈み込んでいた俺に抱きついてきた。女であることを意識させない、子供のような無邪気な抱きつき方だ。俺はその背中に手を回して抱き締め返し、しばらくそうしてから小さな身体を元のように横たわらせ、上から毛布をかけてやった。そのまま細い肩の辺りをトントンと優しく叩き続けてやると、タバサは再び眠り始めた。それは見た目に相応な、愛らしく安らかな寝顔だった。
   ★★★
「お屋敷だけでなく、新しい学院も作るの?」
「ああ」
 素っ気無い俺の返事に、モンモランシーは目を丸くした。ギーシュ、モンモランシーと三人での定例会議の後だ。ギーシュは既に自室へと帰り、調剤小屋のリビングには俺とモンモランシーの二人しかいない。誓紙を差し出させた連中にも薬の密売のことは伏せてあり、今後も明かすつもりはない。キュルケには意識のある状態で薬を使ってはいたが、分別があるらしく、その後は薬について尋ねてくることもない。アンリエッタが即位することを決意した以上、資金源として有効だった密売は、いずれ徐々に規模を縮小させていくつもりだが、すぐに取り止める必要もない。よって会議は今後もしばらくは継続していくつもりだ。
「そうね、あんたの言う通り、無駄な移動時間や連絡の手間を省くのなら、それもいいかも。でも待って、えっと、問題があるとしたら……」
 モンモランシーは顎に手をやりながら、考え込む素振りを見せた。この縦ロール少女は計画立案の相談役として有能で、参謀として不可欠な存在になっている。成績優秀だというタバサも参謀向きだろうが、ルイズと共にあまり謀略に関わらせたくはない。キュルケも頭がいいらしいが、何しろ計画に加えてからまだ日が浅い。可哀想だがシエスタは問題外だ。性格的に策略に向いているとは思えないし、従順過ぎる。結局、最初に計画を打ち明けたモンモランシーが一番頼りになっている。真剣に俺の話を聞き、時には口喧嘩になるのも辞さない態度で、隠すことなく自分の意見を言ってくる。俺としても気を遣わなくて済む楽な相手だ。身体を玩具にするのだけは止めて欲しいところだが。
「うん、些細な問題点はどうにかなりそう。多分、あんたの計画通りで大丈夫だと思うわ」
 俺がモンモランシーに話した計画とは、こういう話だ。まず、アンリエッタの即位後、俺は何らかの理由をつけて貴族になる。その方が後々のことがやり易いからだ。その上で、王城の隣に新設する予定の、トリスタニア女学院の学院長として学院全体を支配する。実際の管理は他人に任せ、俺は今まで通り好きなように暮らすつもりだが、アンリエッタと結婚した後、仮に王になったとしても学院だけは直接の支配下に置いておく。この学院には魔法科、一般科、家庭科、士官科、特待科を用意し、魔法科以外では貴族だけでなく平民の教育も施す。特待科というのは、入学金が用意できない美少女への配慮だ。そうすれば毎年、一定数の少女たちが俺に犯されに入学してくることになる。年齢的には大半が処女や処女臭い娘たちとなるだろうが、仮に男と行為を重ねていたとしても構わない。俺の目に適えば、過去の体験など吹き飛ぶような快楽を徹底的に身体に叩き込んでやる。
 同時に、学院と城との隣に俺専用の邸宅を建て、そこで寝起きをする。対外的には学院長の屋敷ということになるが、俺の部屋以外にもルイズを筆頭とする女たちの部屋、そしてアンリエッタの部屋も用意する。俺の転居と共に、当学院の全女生徒を新設する学院へ転院させるつもりだからだ。生徒たちは専用の寮に、俺と関係のある女たちは屋敷に住まわせ、屋敷での豪勢な暮らし振りを見せつけて、他の生徒たちに屋敷に住むことを切望させる。差別化による精神調教の一種だ。屋敷には気に入った女を囲い込めるように空き部屋を多数、他にも大浴場や乱交用の大寝室、地下には倉庫の他に牢や調教室なども作る予定だ。
「それで、ギーシュたちはどうすんの?」
「ギーシュだけでなく、薬の販売に関わった野郎共は全員、特別入院生として連れて行く」
「人数が多くなるんだったら、他の名目の方がいいかも。特別な扱いを受けるのが特定の生徒に偏れば、ポーションのことが判っちゃう可能性もあるし。護衛役の生徒として、女生徒たちを守る任務を兼ねるとか。そうね、名目上、騎士隊とか作ってみたら? すぐ側のお城に兵隊がいるから戦う必要はないし、形だけの入隊試験を行えば、あまり怪しまれずに済むかもしれないわよ?」
「騎士隊か……」
 なかなかの案だ。ギーシュはあれで人望があるらしく、薬の販売網を維持するために組織した男子生徒は十数人いるらしい。人数的にも都合のいい名目と言える。望む男子生徒全員に実技、筆記、そして面接の試験を受けさせ、連れて行く連中の人となりを把握しておくことも出来る。薬の販売に関わっていなくても、使えそうな人間ならば入隊させてもいい。
「あとはそうね、王立の研究所なんかも、周囲に集めた方がいいんじゃない?」
 未だ考えては提案を続けるモンモランシーの髪を、俺は優しく撫でてやった。
   ★★★
「信じらんない。あのタバサが泣くなんて……」
「じゃあ、何も思い当たることはねえんだな?」
 モンモランシーは口を開けたまま、小さく首を縦に振った。間の抜けた態度だが、それだけ驚いたということだろう。もちろん、俺が昨晩のタバサのことを話したからだ。今朝になって理由を尋ねても夢を見たからとしか答えず、俺の問い掛けの間、終始、タバサは俯いたままだった。単に夢が怖かったというのならそれでいい。だが、恥ずかしそうに下を向きながらも、その表情には翳りがあった。理由があるのならば何とかしてやりたい。タバサに悪いとは思ったが、事前に誰にも絶対に話さないようモンモランシーには強く口止めをしてある。
「やっぱ、事情があるとしたら、知ってんのはキュルケかな」
「そうね、あの二人は仲がいいし、キュルケなら事情を知ってるかも。そう言えば、入学の頃に少しだけ噂があったわ。タバサっていうのは本名じゃないらしいとか、どこかの貴族の私生児だとか……」
 モンモランシーはそう言って、ソファに座ったまま、隣の俺の手にしたグラスにワインを注いできた。俺はそれを受けて、グラスに口をつけながら考えてみる。モンモランシーに聞いたところでは、タバサは隣国ガリア王国からの留学生らしいとのことだ。留学生と断定できないのは、おそらくタバサが自分のことを語らない為だろう。現在でもキュルケや俺以外の人間と話すことは稀らしい。はしばみ草の一件以来、少しはルイズとも話をしているようだが、とても友達付き合いとは言えない様子だ。貴族の私生児が厄介払いとして他国の全寮制の学院に入れられ、当人はそのことで心を閉ざし、他人を寄せ付けない態度を取る。ありそうな話だ。
「……当面、俺にしてやれることは何もなさそうだな」
「そんなことないっ!」
 突然、モンモランシーは怒ったようにそう叫んだ。顔を見ると眉間に皺を寄せ、本当に怒っているようだ。訳が判らずに俺がその顔を見ていると、モンモランシーは再び口を開いた。
「あのタバサが、誓紙まで差し出してあんたの側にいることを望んだんでしょ! あんたのことが好きだからそうしたんでしょ! どんな理由があってもいいじゃない、どんなに寂しい思いをしてても、それを忘れるくらい優しくしてやんなさいよ! たくさん愛情注いで、いっぱい愛してあげなさいよ! あんたにはそれが出来んのよ! そんなことも判んないのっ!」
 一頻り叫ぶと、モンモランシーは俺の手にしたグラスを強引に奪い取り、中身を一気に飲み干した。俺はその様子を眺めながら、正直、唖然としていた。この我侭な縦ロール少女が、これほど他人のことを思いやる発言をするとは思ってもみなかったからだ。それはタバサのことを思う言葉であると同時に、自分にもそうして欲しいという感情の表れなのかもしれない。俺がタバサのことを心配するように、自身にも心配りを求めているのかもしれない。だがそれでも、その言葉は俺の胸を打った。モンモランシーさえいれば、この先どんなに他の女たちが険悪な関係になろうとも、いずれはきっと上手くいく。そんな確信があった。同時に、目の前の縦ロール少女のことが以前にも増して愛おしくなった。完全に惚れたと言っていい。
「なあ、モンモン」
 俺は堪らずに声をかけた。モンモランシーは手にしたグラスに新たにワインを注ぎ、再びそれを一気に飲み干すと、空のグラスをテーブルに打ち付け、そこで初めて呼びかけに反応し、拗ねた目で俺を睨んできた。参ったな、こんな酔っ払い娘に惚れちまったよ、と俺は思った。
「……なによ?」
「お前、いい女だな」
「……やっと気付いたの? キスしたくなった?」
「ああ」
 俺はそう言ってモンモランシーの顎に手を添え、その唇を奪った。
   ★★★
「ふんふふんふふ~ん、採取ぅ~、採取ぅ~、雌牛のお乳を搾るよに~」
「おい」
「ふんふふんふふ~ん、採取ぅ~、採取ぅ~、雄牛は堪らず声を上げ~」
「妙な歌、唄ってんじゃねえ。早く解除薬を塗れよ、約束が違うだろうが」
 その夜、調剤小屋の寝室のベッドの上で、俺は再び身動きできなくなっていた。当然、犯人は俺の側で自作らしい変な歌を唄いながら、嬉々として採取道具の準備をしているモンモランシーだ。今後の実験の為に片手首だけ固定の状態を確かめさせてくれたら、その後は別々にお風呂に入ってから好きにしてくれて構わない、と言うモンモランシーの言葉に騙され、今では両手足首を固定されてしまっている。油断していたせいだ。以前に調剤小屋に泊まった時には睡眠前に風呂を借りていたこともあり、まさか入浴前の汗臭い身体のまま、こんな状態にさせられるとは思ってもいなかった。とは言え、まだ服を脱がされてはいない。
 不意に、何かを思いついた様子でモンモランシーが近寄り、俺の顔を覗き込んできた。
「この歌、七番まであるんだけど、全部聴く?」
「聴かねえよ。それより早く、薬塗って自由にしてくれ」
「自由にしたら怒んない?」
「怒るに決まってんだろうが」
「ふんふふんふふ~ん、採取ぅ~、採取ぅ~、子牛の素が飛び出した~」
 モンモランシーは平然として、歌を続けながら準備に戻っていく。十三歳の少女の自作曲としては下品過ぎるが、本人に歌の内容を恥じ入る様子はない。自分を偽ったりしないと言っていた通り、これが本性なのかもしれない。雄牛がその後どういう扱いを受けるのか多少気になるところだが、それは即ち俺がこれから受ける扱いなのかもしれず、聴くのが怖い。
「大丈夫、うんと優しくしてあげるから。はい、脱ぎ脱ぎしましょうね」
 準備が終わったのか、モンモランシーはベッドの上に載り、手早く俺の服を捲くり始めた。手首と足首が固定されているために、シャツは胸までたくし上げられ、ズボンとパンツは限界まで下げられた状態となる。中途半端過ぎて、全裸より恥ずかしい。
「やだ、ふにゃふにゃじゃない。ちゃんとこの前みたいに優しくしてあげるってば」
「何を言ってやがんだ。羽箒を使って五回も搾り取りやがって」
「ちゃんと最後には握ってあげたじゃない」
 つまり前回、俺は羽箒で散々肌や性器を擽られ続け、射精が近くなった時だけ手で扱かれてガラス製の容器に精液を放出させられていた。五回ともだ。思い出しても哀しくなる。
「仕方ないわね」
 そう言うとモンモランシーは立ち上がり、前回と同じように局部を見せないようにして黒タイツとパンツを一緒に脱いだ。次いで座り込んでタイツとパンツを選り分け、それぞれを片手に持ち、両手を俺の眼前へと差し出してきた。
「どっちがいい?」
 どちらを顔に被りたいかと聞いているのだろう。やはりこいつは真性のドSだ。惚れるんじゃなかった。そう俺が自分の感情を後悔していると、勝手にパンツを顔に被せてきた。
「いいわ、こっちで。ふふっ、昨日の夜から穿いてたから、少し臭いが強いかも。でも、気に入ってくれたみたいね。もうこんなに大きくなってる」
 その恍惚とした口調に、俺は改めてモンモランシーに惚れたことを悔やんだ。
   ★★★
「ふんふふんふふ~ん、採取ぅ~、採取ぅ~、雌牛のお乳を搾るよに~」
「卑怯よ、こんな。私にはポーションを使わないって約束だったでしょ? 約束を破る気?」
 先刻と攻守を替えて、ベッドの上に大の字に固定されたモンモランシーが非難してくるが、俺は答えずに服を脱いで全裸になった。モンモランシーは制服を着たままだ。まだスカートの中で剥き出しになっている秘所さえ拝んではいない。
 二回ほど以前と同じように羽箒と手で抜かれた後、俺はトイレに行って小便がしたいと申し出た。目の前の縦ロール少女は非道にも新たなガラス容器を手に取り、素材として使えるか試すからここにしろと言ってきたが、俺が懇願すると渋々と固定解除薬を塗ってくれた。但し、以前の開放の時と同様、この件で俺が怒らないと約束させてからだ。自由になった俺はトイレで用を済ませると、寝室で後片付けをしていたモンモランシーをベッドの上に押さえつけ、固定薬を両手足首に塗ってやった。薬を使わず、怒らずと約束したとは言え、ここまでされて黙っているつもりはない。
「ふんふふんふふ~ん、採取ぅ~、採取ぅ~、雌牛は堪らず声を上げ~」
「ちょっと、人の歌を勝手に、それも言葉を変えて唄わないでよ。それと、早く開放して」
「何だよ、この世界にも小林亜星みたいなのがいんのか?」
「……何それ?」
「何でもない。ふんふふんふふ~ん、採取ぅ~、採取ぅ~、雌牛の汁が飛び出した~」
 唄いながら俺はモンモランシーの足の間に座り込み、両手でそれぞれの足の脛から膝までを指先で擽ってやる。
「ちょっとっ、やだっ、くすぐったいっ、止めてよっ」
「お前は文句しか言えねえのか。お返しだ、これでも被っとけ」
 俺は脱いだばかりの自分のパンツをモンモランシーの顔に被せてやった。俺が嗅がされていたのと同じ、一日分の体臭の染み込んだパンツだ。どれほど嫌がって喚き出したとしても、すぐに取り去ってやる気はない。だが、モンモランシーはそのまま文句も言わずに黙り込んでしまった。動かすことが可能な箇所、腰や肘や膝にも抵抗する素振りがなくなっている。
「……おい、モンモン?」
 俺は少し心配になった。布地を顔に押し付けてはいないが、呼吸が出来なくなっているのかもしれない。慌ててパンツを取り去ると、モンモランシーは陶然とした表情のまま、虚ろな目で俺を見上げてきた。
「んはぁ、凄くぅ、臭いぃ、ふわぁ、臭過ぎるわよぉ、変態いぃ」
 どうも俺の体臭に酔っているらしい。思い返してみれば、俺の身体を弄んでいる間、何度も小鼻を引くつかせていた。なるほど、こいつの弱点は臭いか。そんな人間に変態と呼ばれることには抵抗があったが、面白いのでパンツを再び被せてみる。途端にモンモランシーは鼻を啜るような音を立て、臭いを深く吸い込み始めた。布地をずらし、鼻先に陰茎が当たっていた臭いの強いと思われる部分を当ててやると、身体の動く箇所を切なそうにくねらせている。俺はパンツをそのままにして、耳元で優しく囁いてやった。
「お前、男のパンツ被らされて嬉しいのか?」
「ふうっ、んんっ、くふっ、ふあぁ、んくっ」
 モンモランシーは首を横に振るが、鼻音はそのまま、小さな喘ぎ声を上げてきた。
「お前、変態だな」
「んはあっ、ん、んんっ、んはああああああああっ! んふ……んっ……あ……ふ……」
 俺の言葉にモンモランシーは腰を大きく震わせ、その後も捩り続けている。シーツに徐々に染みが拡がっているところをみると、また小便を漏らしたようだ。俺はもう一度、嘲るように言ってやった。
「お前、変態だな」
「あふふあああっ、んく……ふはぁ……あっ……ひ……く……はぁ……」
   ★★★
「ふふっ。全部、バラしちゃった」
 調剤小屋の風呂場で、モンモランシーは照れ臭そうにそう言った。
お漏らしの後、そのまま事を進めるのも可哀想になって固定解除薬を塗ってやると、モンモランシーは俺の仕打ちを怒りもせずに、身体を洗うから一緒に風呂に入って欲しいと言い出した。怒鳴られるのを覚悟していた俺が躊躇していると、その場で服を脱ぎ出して全裸になり、既に裸だった俺の手を引いて風呂場へと引き立てた。聞けば、俺が来ることが判っている時にはいつも事前に、念のために風呂の準備をしてあるのだそうだ。流石に風呂場では各々自分で身体を洗ったが、その間に湯を沸かし直し、浴槽に使ってからは俺に身体を預けるように凭れかかっている。
 タバサを無乳、ルイズを貧乳とするならば、美乳というところか。決して乳房は大きくはなく、むしろ小さい方なのだが、乳房全体の形が何とも美しい。少女特有の上向きの乳房は少しだけ肉がついて丸みを帯びており、乳輪も乳首もほんのりと薄い橙色で、大きさも控えめだ。尻は小さいがルイズほど薄くはなく丸く、無毛の陰部はふっくらと柔らかそうでありながら秘裂はしっかりと閉じられている。全体の身体つきは細く、長身ということもあり、十三歳の少女としての清楚な色気を放ちながらも、彫刻像のように麗しい。とても小便漏らしの臭いフェチとは思えないほどだ。
「でも、絶対に誰にも言わないでよ? 誓紙を差し出した他のみんなにもよ?」
 モンモランシーがさっきから言っているのは、隣り合って浴槽に入ってから俺に語った自身の秘密のことだ。以前から匂いに弱かったモンモランシーは自分の性癖を恥じ、その為に今まで誰にもキスや性交を許さなかったらしい。関係が深くなって、自分の嗜好を悟られるのが嫌だったからだという。いずれ俺には話すつもりでいたらしいが、心の準備をする間もなく先刻の行為となり、吹っ切れたように聞いてもいない秘密を自分から話してきていた。子供の頃から小便の漏らし癖があること、臭いだけでなく言葉にも敏感なことなどはまだいい方で、以前に採取した俺の精液の半分を研究用、そして残り半分を自慰用に使っていたと聞いた時には俺も驚いた。内容もそうだが、その割には綺麗な秘所をしていたからだ。確認してみたところ、陰部を弄って自慰をしたことは今までになく、そんなことをしなくても臭いさえあれば乳房を数回撫でる程度で達してしまうのだという。更には、定期的に俺の使用済みの下着を与えてくれと言い出し、面食らった俺が頷くと、望むなら下着を与えてくれる度に好きな場所、口でも膣でも尻でもどこでも陰茎を挿入していいと言う。その際の精液も採取しておいて、後から嗅いで楽しむのだそうだ。本物の変態、本物の淫臭狂だった。
 だが、そこまで秘密を明かしてくれたことに対して、愛しさが募ったのも事実だ。俺に寄せる信頼がそれだけ深いということは話し振りで理解できたし、赤裸々過ぎる告白内容も愛情の証だと思えば悪くはない。よくよく考えてみれば、性的嗜好の重なる部分も多いような気がしないでもない。惚れてしまったこともあるし、この先も色々と可愛がってやろう。
「誰にも言わねえよ、約束する。それとな、モンモン」
「なあに?」
「俺な、今日こそ、お前にちゃんと惚れたよ」
「え? それって私の下着の臭いで? オシッコ? それとも虐められたから?」
 真顔で言ってくるモンモランシーを見て、俺は苦笑せざるを得なかった。まあ、付き合い易い相手には違いない。
「お前がタバサのことを思って怒鳴った時だ。あと、秘密を打ち明けてくれた今もだな」
「別に、無理して惚れたなんて言ってくれなくてもいいのよ? そんなこと言わなくても、私のことならあげるから。それともキスしちゃったから、そんなこと言ってんの?」
「惚れたからキスしたんだよ。それに無理なんかしてねえ。他の女と比べて順位つけたりはしたくねえけど、お前にもちゃんと惚れた」
「別に順位なんでどうでもいいけど、ほんと? こんな私でもいいの?」
「ああ、本当だ。全部を聞いた上で、お前に惚れてる」
「……嬉しい」
 モンモランシーは横から抱きついて俺の唇にキスをすると、甘えた素振りで身体を摺り寄せてきた。華奢な身体とは言え、滑らかな肌の感触が心地いい。と、モンモランシーは俺の耳に口を寄せ、誘いかけるように囁いた。
「ねえ、私の使用済みの下着も、定期的にあげようか?」
   ★★★
 風呂から出ると、モンモランシーは裸のまま、俺を寝室へと引っ張って行った。ベッドの上に自ら大の字になり、全裸の俺に向かって固定薬を両手足首に垂らしてくれと言う。何がしたいのか聞くと、身動きの取れない状態で自分の身体中に精液をかけて欲しい、途中で処女を奪っても、別の酷いことをしても構わないとのことだった。あれだけのことを聞かされた俺でも多少は驚いた。全てを差し出す覚悟の上で、望む行為を満喫したいらしい。どうやらモンモランシーの中には極端な加虐嗜好と被虐嗜好とが並存しているようだ。だが、自分から大きく足を開いて秘裂を晒したモンモランシーを見ている内に、俺自身も興奮して、そうしてやりたくなった。避妊薬を飲ませた後、固定薬を垂らす度にモンモランシーはうっとりとした笑みを浮かべ、身動きが取れなくなった時には息を乱して肌を赤く染め上げていた。この先の行為に期待しているのは間違いなかった。まずは軽い行為からと思い、俺はモンモランシーの眼前で陰茎を扱き始めた。
「はぁ、ねえ、んっ、もうちょっと近づけて、ふぁ、臭いを嗅がせて」
 俺は黙ってそうしてやった。十三歳変態少女の全裸を前にして、既に先走り汁が亀頭を濡らしている。
「んあっ、お風呂上りなのに、はあっ、少し臭い、はあっ、もっと近く、ふうっ、擦り付けて」
 細かい注文に一々答えてやるのも面倒なので、俺はモンモランシーの鼻の穴に亀頭を押し当て、鼻腔に直接先走り汁を塗りつけてやった。モンモランシーは恍惚とした表情になり、鼻息荒く臭いを嗅ぎ始めた。その様子を見て俺も段々と昂ぶり、手の動きを速めていった。
「んくはぁ、酷い臭い、ふうあぁ、臭過ぎる、あんふっ、ちゃんと洗ったの?」
「一回目はこのまま、鼻の穴に出してやるからな」
「はんふあっ、嬉しいけど、んはふあっ、またオシッコ、ふんはあっ、漏らしちゃうかもよ?」
「お前がどんなことしても、嫌いになったりしないから。安心して漏らせ」
「くふんうっ、そんなこと言われたら、んんふあっ、嬉し過ぎて出ちゃいそう、はうんんっ、ねえ見ててぇ、あんんあっ、あっ、あっ、ああっ、ん、く、んはあああああああっ!」
 宣言通りに小便を放ちながら、モンモランシーは身体を小刻みに震わせた。尿は不規則な放物線を描き、当人の足とベッドのシーツを濡らしていく。それを見ている内に、俺も一回目の限界を迎えようとしていた。
「ふはあぁ……んあっ……かはぁ……うっ……ふ……はあぁ、凄くいい気持ちいぃ……」
「出すぞ、受け取って鼻で楽しめ、ほら」
「んぶごっ、ぶぐんぶっ、ぶごぶむっ、んぶむんんっ、んごぶあびああああっ!」
   ★★★
「んふあはぁ……幸へぇ……ひあうはぁ……臭いでへぇ……くひぇはぁ……臭いでイくぅ……んはひゃああん……臭いでまたイくふぅ……あふひゃああっ……またイ、イくううううっ」
 モンモランシーは弛緩した身体を痙攣させながら、力なく叫んで十九回目の絶頂を迎えたようだ。最初に果ててから一度も正気に戻った様子はない。今では全身を七回分の白濁液に染めて随時放尿し続けている。俺がしたことと言えば、鼻への射精と、イく時にはそう言えと指示し、全身に擦り付けることなく精液を振り掛けただけだ。秘所はともかく乳房にすら触れていない。それでも口からは涎を、まだ一度も触れていない秘所からは濁った愛液を垂らし、青い瞳には全く光が宿らず、その眼差しは何処か遠くを見つめている。俺が休息の為にベッドに腰掛けてワインを飲んでいる間も、身体に付着した精液の臭いを嗅いでは勝手に登りつめ、勝手に果ててしまう。楽と言えば楽な相手だが、寂しい気もする。別の行為に移ろうにも、もう朝だ。授業もあるだろうし、今回はこれで終わりとするべきか。
「おい、モンモン、もう朝だぞ。授業に間に合わなくなっちまうぞ。俺は風呂を借りるけど、お前も一緒に入るか?」
「あへふはぁ……生臭ぁ……んひはへぇ……すご臭いひぃ……んふはあぁ……幸へぇ……」
 どうやら俺の言葉は届いていないらしい。仕方なく俺はモンモランシーの頬を軽く叩いた。何度もそうしてやると少しだけ瞳に光が戻り、俺を見つめて嬉しそうに微笑んできた。
「あひふはぁ……また出してくれるのぉ? んくふあふぅ……それともしちゃうのぉ?」
「どっちでもねえ、今日はここまでだ。まずは授業に間に合わなくなるから風呂に入れ。連れてってやろうか?」
 俺はそう言って手早く固定解除薬を四ヶ所に塗ってやった。これで自由に動けるはずだ。力尽きて起き上がれないのであれば、お姫様抱っこでもして風呂場に連れて行ってやろう。俺の身体にも精液がつくだろうが、元はと言えば俺が出したものだし、行き先は風呂場だ。すぐに洗い流せる。
「はくふあぁ……今日は休むぅ……んくふあぁ……だからもっとしよぉ……」
「お前が休むのはいいが、俺は打ち止めだ。また今度してやるから、とにかく風呂に入れ」
「へふはあぁ……じゃあまた今度してねぇ……んはうあぁ……けどお風呂は嫌ぁ……ふんあはぁ……今日は一日ぃ……んくあぁ……このままでいるぅ……んんあっ……も一度見てぇ……」
 モンモランシーは言い終わると、幸せそうに微笑んで小便を放った。
   ★★★
 風呂を借りて一人で入り、調剤小屋から出て適当な女生徒にモンモランシーの休みの件を言付けると、俺は物置小屋へと帰ることにした。昨晩から一睡もしておらず、眠くて仕方がなかったからだ。モンモランシーのところで寝ることも出来たが、惚れたとは言え、精液塗れの少女の横で眠る気にはなれない。
 小屋に戻ってリビングに入ると、テーブルの上に科学関連の本が積まれていた。確認してみると、以前タバサに渡された本はそのまま寝室にあった。誓約書を差し出された時にタバサにも小屋の鍵を渡したので、俺が不在の間に追加分を持ってきてくれたようだ。早目に目を通して返そうと思いながらも、俺は睡魔に負け、寝室の毛布の中で眠りに就いた。
 目を覚ました時には、もう日が暮れかかっていた。寝ている間に今度はシエスタが寄ったらしく、食材が補充され、洗濯済みの乾いた衣類が丁寧に畳まれていた。いずれ性交中に鉢合わせする可能性もある。その対応策を考えていると、不意にジェシカの顔が見たくなり、俺は久し振りに街へと繰り出すことにした。
「ようこそ『魅惑の妖精』亭へ。わたくしの名前はスカロン。?ミ・マドモワゼル?って呼んでくださいな。ご指名のジェシカは現在、他のテーブルに付いてますの。ここに来るまでお相手させて頂きますわ」
 そう言って俺の隣に座ってきたのは、死んだ筈のフレディ・マーキュリーだった。俺は頭の中で『ウィ・ウィル・ロック・ユー』を鳴り響かせ、合わせて足踏みしながら店内を見回してみたが、ブライアン・メイやロジャー・テイラーらの姿はない。とすれば、これは別人かもしれない。よくよく見ると髪形などに若干の違和感がある。
「この前はうちの娘がたくさんチップを頂いたそうで、ありがとうございました。店長としてもお礼を申し上げますわ。トレビアン」
 フレディは、いや、スカロンは両手を組んで頬に寄せ、唇を細めてにんまりと笑った。オカマみたいな動きだが、様子を見るに本物のオカマらしい。筋肉隆々の身体にピチピチの衣装とクネクネした物腰、そして小粋な髭とオネエ言葉。何がトレビアンなのかは良く判らないが、関り合いになりたくない。帰るか、と考えて席を立とうとした瞬間、スカロンの言葉を思い返して愕然とした。うちの娘がたくさんチップを頂いた、店長としても、ということはこいつがジェシカの父親か。つまり先日の催眠父娘プレイの際、俺は知らずにこいつの役を演じていたということか。まあ別に、援助交際のパパ役だったと割り切ってもいいのだが。
「……酒」
 俺は席に座り直して呟いた。何にしても素面ではいられない気分だ。
「何のお酒に致します? わたくしが選んで差し上げましょうか?」
「何を選んでもいいから胸毛を隠せ、それと強過ぎる香水の臭いもどうにかしてくれ」
 そう言い放つと、俺はテーブルの上で頭を抱え込んだ。
   ★★★
 だが、スカロンは予想外に面白い人物だった。見た目や言動は気持ち悪いが、頭が良く、客商売というものを良く理解して実践している。店の少女たちの服装の見立てから、客層別のアプローチの仕方など、話を聞いていると経営指南を受けているような気分になる。話し振りに反して心根は男らしく、義理堅くもあるようだ。
「おっ待たせー、ご指名ありがとー」
 スカロンとの話にのめり込んでいると、やがてジェシカがやってきた。スカロンが俺の左、ジェシカが俺の右に座り込む形となる。他愛もない話の途中、俺がトリステイン魔法学院内に住んでいることを話すと、二人とも目を丸くした。どうも俺のことを金持ちの子息とでも考えていたらしく、学園に住み始めた経緯や詳細について聞きたがったが、ある貴族の使い魔として召喚された、とだけ言って俺は言葉を濁した。
「じゃあ、学院のメイドで、シエスタって女の子、知ってる?」
 俺がジェシカの質問に頷くと、二人は意味あり気に頷いた。
「もしかしたら、シエちゃんが言っていた旦那様って……」
 スカロンの言葉にも俺が頷くと、二人は再び目を丸くした。聞けば、シエスタとジェシカは従姉妹とのことで、シエスタが姉、ジェシカが妹らしい。これには俺も目を丸くした。ということは、俺は知らずに従姉妹である二人を抱いていたことになる。このままジェシカとも薬を使わない状態で改めて関係を持てば、従姉妹同士を一緒に楽しめるかもしれない。また、スカロンを丸め込めば、シエスタの両親に性風俗店、スカロンに複数の酒場を経営させることによって、歓楽街を一つに纏め上げることも可能かもしれない。そんなことを考えていると、不意にジェシカが顔を寄せ、俺の唇を舌でぺろりと舐め上げた。
「おあっ?」
「駄目でしょおおおおお! お客様で、シエちゃんの旦那様でもある人にいい!」
「あれ? ご、ごめんなさい。なんか唇を見てたら、我慢できなくなっちゃって……」
 ジェシカは真っ赤になって自分の行為に戸惑っているが、俺には理解できた。催眠時には何度も甘えるように俺の唇を舐めていたからだ。前回、開店に合わせて店の前まで送ってきた時には零した薬の効果も切れ、別れ際に暗示も解いておいたのだが、アンリエッタのようにトラウマになっているのかもしれない。仮にそうならば、薬を使わずとも容易く堕とせそうだ。しかし、ここは困惑の表情を浮かべておくべきだろう。
と、スカロンが俺をじっと見ていることに気が付いた。読心術でも持っているのかと警戒してみたが、どうも俺の値踏みをしているような眼差しだ。
「……わたくし、長年に渡って店を経営しているだけに、人を見る目には自信がありますの」
 スカロンのその言葉と真剣な面持ちに、俺は少々怯んだ。相手はオカマとは言え、ボディビルダーのような体格の持ち主だ。格闘になったら勝機の一つもないだろう。先制攻撃としてワイン壜で殴り倒すには惜しい人材でもある。だが、スカロンは俺から目線を外すと、ジェシカに向かって語りかけた。
「亡くなったあなたのお母さんも同じだったわ。わたくしに甘えるようにして唇を……。この人のこと、好きなのね?」
「え? あたし? あの、えっと、うん、その、好き、かも、うん、好き……」
 ジェシカは迷った挙句にそう言ったが、それは自分の行為を無意識に正当化しようとするが故に発した言葉だろう。もしくは本当にトラウマを抱えているか、そのどちらかだ。どちらに転んでも俺には都合がいいのだが、スカロンはどうするつもりなのか。
「……判ったわ。シエちゃんにはわたくしから話すから、あなたは好きなようになさい」
 スカロンはそう言って俺へと視線を戻し、深々と頭を下げてきた。
「まずは、娘のしたことをお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。ですが、こんな娘を見たのはわたくしも初めてです。それだけお客様のことが気に入ったのだと思いますわ。親馬鹿と思って頂いても結構です。お客様がお嫌でなければ、この子を側に置いてやって頂けませんでしょうか? わたくしとしては、この子と結婚して頂きたいですが、当人同士が構わないのであれば、特にそうする必要もございません。当たり前のことですが、娘に何をなさろうとも構いません。あんたもそれでいいわね?」
 スカロンの問い掛けに、ジェシカは頬を染めながら無言で頷いた。俺が話の展開に付いて行けずにいると、スカロンは顔を上げて尚も言ってくる。
「学院には頼りになる知り合いがいますの。食堂で働いているマルトーという男なんですが、頼み込めばこの子を学院のメイドとして働かせることは可能と思いますわ。いつも側にいさせるわけにはいかないと思いますが、それで如何でしょうか?」
「ま、待って、ちょっと、待ってくれ」
 俺は声を搾り出しながら、懸命にこの状況について考えた。俺としては願ってもない申し出ではあるが、何かがおかしい。
「ええっと、つまり、俺の唇を舐めたから、ジェシカをくれると? 尚且つ側にいられるように、学院のメイドにするつもりだと? え? でも俺、シエスタと、その……」
「シエちゃん共々、宜しくお願い致します。うちは宿屋もやっておりますので、今晩は泊まっていってくださいな。御代はいりませんし、一番いい部屋をご用意致しますわ。ほら、ご案内差し上げて」
 スカロンが促すと、ジェシカは立ち上がって恥ずかしそうに俺の手を取り、壁際の階段へと歩き出した。俺は何かに騙されているような気分のまま、力なくその後に続いた。スカロン父娘の言動に打ちのめされた鈍い頭でも理解できたことはと言えば、異世界のオカマの人を見る目は当てにならない、ということだけだった。
   ★★★
 ジェシカが部屋の風呂に入っている間、俺は出された年代物のワインを口にしながら、リビングのソファに腰掛けて冷静に状況を分析してみた。
まず、ジェシカを計画に加えるとしたら、これでアンリエッタを含めて七人目となる。別に計画に加える必要もないのだが、後々のことを考えると手駒は多い方がいい。そうなると日替わりで性行為を行っても七日間必要となるが、十日周期にして中三日休みを取れば体力的にどうにかなりそうだ。場合によっては一日に複数を相手にしてもいい。
 次に利点と欠点だ。利点としてはジェシカ本人以外に、場合によってはスカロンを手駒として取り込むことが可能になる。とすれば、この店もこの店で働く少女たちも手に入れることが出来るかもしれない。先刻考えたように、歓楽街を支配するのも面白そうだ。欠点としては特に何も思い当たらないが、何かすっきりしない気分だ。やはり、唇を舐めたから娘を与えると言い出したスカロンの言葉と、それに従うジェシカの気持ちだろうか? 
 そこまで考えた時に、ジェシカがバスタオル一枚の姿でリビングへと戻ってきた。
「お、お待たせー、……しちゃったよね?」
「いや、大丈夫」
 俺が言うと、ジェシカは顔を赤らめながら隣へと座ってきた。
「何か変。まだ会うの二回目なのに、こんなことになるなんて……」
「嫌じゃないのか? 無理することないんだぞ?」
「ううん、それが自分でも不思議なんだけど、全然嫌じゃないのよ、嬉しいくらい。それが判ったから、パパもあんなこと言ったんだと思うわ」
 ジェシカの口調は平素の屈託のないものだ。暗示の影もなく、不自然なところもない。
「でね? あたし、その、初めてだから、痛がったりしたら、ごめん」
 それについては当人が知らないだけで心配要らないのだが、ここは優しくしておくべきか。
「本当に痛かったら、それ以上しないから。安心して」
「ありがと。優しいのね、パパって……。あれ、あたし、パパなんて、なに言ってんだろ?」
 どうやら正当化とトラウマのどちらかと言えば、トラウマの方らしい。スカロンに対して嫌悪感を抱かなくなったことでもあるし、まあ、それも面白い。
「ジェシカが呼びたかったら、その呼び方でも構わないよ? その代わり実のお父さんとはちゃんと区別して。間違ってこの先、実のお父さんに変な愛情を抱いたり。裸を見せたりしたら嫌だな」
「変な愛情とか裸を見せるなんて、そんなこと絶対に有り得ないわよ。でもやっぱり、何でだろ? パパって呼びたい。じゃあ、えっと、ほんとのパパのことは、今から本パパって呼ぶことにする。それでいい? それならパパって呼んでいい?」
「いいよ。じゃあ、二人っきりの時は、ジェシカは俺の娘だ」
「なんか凄く嬉しいんだけど、あたし、変なのかな?」
 そう言って笑いながらジェシカは困ったように首を傾げた。
   ★★★
 俺が風呂に入って身体を洗っていると、扉の外からジェシカの声がした。背中を洗ってくれると言う。拒む必要もないので了承すると、バスタオル姿のジェシカが照れ臭そうに笑いながら風呂場に姿を見せた。全裸で風呂椅子に座っていた俺の背後にしゃがみ込み、優しく背中から腕、そして胸までも手を回して洗ってくれる。と、胸から腹へと移されたジェシカの手が、不意に俺の勃起し始めていた陰茎に触れた。タオルなどは被せておらず、陰茎は剥き出しのままだ。
「あっ、ご、ごめん。さ、触っちゃった」
 真後ろで顔は見えないが、ジェシカは戸惑っている様子だ。店で強かに振舞ってはいても、根は純情なのかもしれない。
「そこも洗ってくれるんだろ?」
「ええっ? こ、ここも? あ、うん、そう、だよね。綺麗に、しとかないとね」
 ジェシカは泡塗れの小さなタオルで俺の陰茎を洗おうとするが、触れる度に怖がって手を引き戻してしまう。何度もそんなことを繰り返している内に俺は面倒になり、ジェシカの手を掴んで強引に陰茎に一物へと押し当てた。
「きゃっ、えっ? ええっ?」
「タオルはどこかに置いて、直接このまま手のひらで洗って欲しいな」
「ちょ、直接? て、手のひらで?」
「まずはタオルを置いて。泡の付いた両手で握って、上下に動かしてくれればいいから」
 その言葉にジェシカは無言で従ってタオルを俺の太腿に置き、もう一方の手を後ろから回して両手でそっと陰茎を握ると、ゆっくりと上下に扱き始めた。不器用な手の動きだが、泡の滑りが気持ちよく、陰茎は段々と硬く大きくなっていく。ジェシカも興奮しているのだろう。少しずつ息を荒げ、バスタオル越しに背中に当たる乳房の感触では、乳首が硬くなり始めているようだ。俺は頃合を見計らってジェシカに声をかけた。
「凄く気持ちいいよ。でも、もう少しだけ動きを速くして」
「はーいぃ。これでいいぃ? パパぁ、気持ちいいぃ? あたしぃ、ちゃんと洗えてるぅ?」
 俺の指示に従順に従うジェシカの声は既に蕩けている。だが、暗示もかけていないのに、以前の催眠時と同様、少しだけ舌足らずなに口調にもなっている。アンリエッタの尻穴自慰の件も含めて考えると、どうも処女の時点で暗示薬を使って強い快感を与えてやると、その後も暗示の一部が残ったり、トラウマとなってしまうようだ。今後は使用する相手や暗示の内容に気を配る必要がある。もしくはモンモランシーに新たな暗示薬を作らせるか。
「ああっ、どうちゃったんだろぉ、あっ、あたしぃ。はぁ、パパのを触ってるとぉ、んっ、ドキドキするぅ。パパぁ、んあっ、パパぁ、くぅ、ドキドキするよぉ、ふぁ、ゾクゾクするよぉ」
 俺の思考を遮るように、ジェシカは甘く切ない声で語りかけてきた。陰茎を扱く手つきは滑らかになり、背中に当たる乳首は強く自己主張を続けている。この状態なら恐らくは俺の言いなりだ。そろそろ限界が近いこともあるし、試しに、処女なら絶対に拒みそうなことでも命令してみるか。
「ジェシカ、もう出そうだ。後は自分でやるから、床に寝てマンコを拡げろ。かけてやる」
「もおぅ、パパのバカぁ。でもぉ、いっかぁ。ちょっと待ってねぇ」
 嬉しそうに文句を言いながら、ジェシカはいそいそと俺の前に回り込むと、バスタオルを巻いたまま床に寝転んで大きく足を広げた。両手で僅かに濡れた淫裂を左右に開き、膣内の柔肉を晒しながら、腰を持ち上げて陰茎の先へと差し出してくる。リビングで避妊薬を呑ませてあるので、妊娠する心配はない。
「パパぁ、はいどうぞぉ」
 弛緩した笑みを浮かべるジェシカの痴態を見て、俺は我慢できなくなった。このまま挿入して、膣の奥深くで思い切り射精したい。
「ごめん。やっばり入れちゃうな」
 俺は椅子を立ってジェシカに圧し掛かり、そのまま一気に陰茎を膣に挿し入れると、子宮に亀頭を打ち付けるように腰を振り始めた。
「んあああくはあっ……パパ酷いぃ……うくふああっ……初めてなのにぃ」
「痛いか?」
「あんっはうあぁ……痛くはないけどぉ……んうくうあっ……もっと優しくしてぇ」
「次は優しくするから。ほら、出すぞ」
「あひあはあっ……出てるぅ……んんくふあっ……熱いよぉ……ふはくあぁ……熱いぃ……」
   ★★★
 スカロンの言動に俺が戸惑ったのは、やはり娘を安易に差し出してきた点が不自然だったからだろう。風呂場でジェシカに聞いたところでは、スカロンは亡くなった妻、つまりジェシカの母親の分まで一人娘を可愛がるように努力した結果、現在のようなオカマになってしまったらしい。そんな父親が唇を舐めた程度のことで娘を他人に与えたりするものだろうか? 本パパはパパのことを、あたしのことを任せられる人だって認めたのよ、とジェシカは言った。仮に勘違いでそう思ったとしても、死んだ妻と同じような行為をしたために娘の恋慕の深さが理解できたということにしても、親族のシエスタのことがある。自分の娘を俺の愛人にすることを望んでいるとしか考えられない。
 そこまで考えて、俺は詮索を諦めることにした。相手は異世界のオカマだ。理解の範疇外ということにして、そろそろまたジェシカの相手でもしてやろう。
「んくひはぁ……パプぁまだなのぉ……ふんうあっ……早くふこっち来へぇ……はひぁふぅ……ヒっちゃうよほぉ……うくはぅん……あたひまたヒっちゃうよほほほぉ……」
 ジェシカは俺の命令により、ベッドの上で四つん這いになって膣内と腸内に自らの指を二本ずつ入れ、延々と自慰を続けている。風呂場で膣内と腸内に三回ずつ射精してやると、薬を使用していないにも関わらず、ジェシカは以前のような愛液を漏らし続ける愛娘型オナホールとなった。その後、場所を寝室に移動して、俺はワインを飲みながら思索に耽り、気が向けば挿入して二穴のどちらかに精液を撒いてやっている。現在までの俺の射精回数は九回、そろそろ体力的に打ち止めだが、もう一度くらいは可愛がってやってもいい。部屋の時計は午前八時を指し示している。射精後にこの部屋で一眠りしたとして、学院に帰るのは夜というところか。そのまま明日一日休めば、明後日のアンリエッタとの密会時には体力が回復しているだろう。
「くひふあぁ……パプぁ早くふぅ……んくひはあっ……ヒっちゃうよほおおっ……」
「いいぞ、イっても。何度目だ? ちゃんと数えてんだろうな?」
「おふへはあっ……三じう四かいめへぇ……んくふへあはっ……ヒっ、ヒくうへほあへぇ!」
 ジェシカは自分の穴に挿し入れた指はそのままに、俺へと向けた尻を何度も激しく振り続ける。その動きが徐々に収まっていくのを待ってから、俺はベッドの上でジェシカの尻を抱え込んだ。
「どっちに欲しいか言ってみろ」
「んへんはぁ……こっちひぃ……あふくふぅ……むしゅめムァンコぉ……」
 そう言ってジェシカは膣内に入れていた粘液塗れの指を引き抜くと、その指で陰唇を大きく拡げて見せた。中も周囲も精液と愛液で白く濁ってドロドロになっている。今回は淫語を一つも教えていないのだが、やはりトラウマのせいか、発情しきってからは以前に教えた言葉を躊躇いもなく口にしている。二度手間にならなくて楽だ。
「そのままケツに入れた指を動かして、ちゃんとおねだりしてみろ」
「んうはあっ……ふぁいパプぁ……んひくはぁ……むしゅめムァンコにひぃ……うあふあっ……パプぁちんちんうおぉ……ふくはふぁ……ぶっ込んでくらしゃあいひぃ……」
「よし、御褒美だ」
 言って俺は陰茎を膣に突き入れ、激しく腰を振ってやった。
「んほおおおああっ……パプぁちんちん凄おほおっ……くひはへあはぁ……むしゅめムァンコ溶けるふぅ……ひうくふあはぁ……むぁえもうひろもどっちもいひぃ……はおおくひあぁ……パプぁもうヒっちゃうふおぉ……うへうほくあぁ……むしゅめムァンコヒきそほおぉ……」
 ジェシカは雄叫びを上げながら、全身を痙攣させ始めた。尻穴に入れた指を根元まで入れては引き抜き、口も膣口も菊門も下品な音を響かせている。蕩けた膣の感触は気持ちいいが、陰茎の限界までにはまだ間がある。俺はジェシカの尻を叩き、勝手に果てることを戒めた。
「勝手にイくな、俺が出すまで我慢しろ。どうしてもイきたかったら、お前が俺のチンポを扱いて早く出させてみろ」
 言い終わるのと同時に俺が腰の動きを止めると、途端にジェシカが尻を淫らに振り始めた。俺以上の激しさだ。
「んごくひゃはあぁ……パプぁ出ひてえぇ……ほへくひゃああぁ……パプぁしぇん用のムァンコにひいぃ……んくほぉひいいぃ……むしゅめムァンコにぶち撒けへええっ……」
   ★★★
 その夜、予定通りに学院の物置小屋に戻ると、俺はリビングのソファに座って、タバサの持ってきたくれた本に片っ端から目を通した。科学水準だけ把握できればいいので、全文章を読む必要はない。延々と頁を捲り続け、気が付くと朝になっていた。立ち上がって身体を解し、適当な朝食を取ると、俺はコルベールの研究室へと向かった。
 予めギーシュに聞いていた話によると、コルベールの研究室は本塔の先、ヴェストリの広場に面した火の塔と呼ばれる臨時宿舎の隣にあるという。コルベールは授業のない時はこの研究室に入り浸って何らかの実験をしているらしい。本日の午前中にコルベールの受け持つ授業がないことは既に調べてある。当人はここにいる筈だ。
 俺は迷うことなくその場所に辿り着いたが、少しばかり落胆した。塔の陰になっていたせいで、今まではそこに建物があることに気付かなかったのだが、見れば件の研究所は貧相な掘っ立て小屋だったからだ。とてもエンジンを自作する人間の研究施設とは思えない。だが、金に困っているのであれば、必要な知識と共に多額の研究費用を提供してやることで手駒にすることが容易かもしれない。例のエンジンの講義から後、五、六回ほどコルベールの授業に参加した今となっては、その知識欲や研究に対する情熱は、今後の俺の計画に欠かせないものとなっている。
 気を取り直して扉をノックすると、すぐに中からコルベールが姿を見せた。いつもの黒い男性用の修道服の上から白いローブを羽織った、白衣を着た科学者のような格好をしている。
「君は確か、ミス・ヴァリエールの使い魔の……」
 コルベールは驚いた顔で俺を見つめた。まさか生徒の使い魔が単独で訪ねてくるなど、思いもよらなかったに違いない。
「先生に個人的なお願いがあって伺いました。今、お時間はありますか?」
   ★★★
 昼過ぎまでコルベールと相談した後、厨房に行って食事を取っていると、マルトー親父がやってきて俺の向かいの席へと座った。どうも勤務中なのに酒を飲んでいるらしい。俺の給仕をしてくれていたシエスタに、地下の倉庫から適当な高級ワインを数本持ってくるように言い、シエスタが場を離れると、マルトー親父はテーブルに身を乗り出して睨んできた。
「なあ、『我らの剣』よ?」
ギーシュとの決闘後から、貴族嫌いのマルトー親父は俺のことを時にこう呼ぶ。『我ら』とは平民のこと、『剣』とは俺のことらしい。いつもは褒め称えるような口調で言うのだが、今日は様子が違う。怒っているようだ。ジェシカのことだろうと察しはついた。
「さっきまで俺の友人が訪ねて来ていてな。聞いたぞ、シエスタの従妹のこと。お前はどういうつもりなんだ?」
 段々とマルトー親父の目付きが険しくなっていく。食堂で俺がルイズに食事を与える件については、使い魔としての役割と黙認してくれていたようだが、大事にしているシエスタに次いで、知り合いの娘を愛人にしようというのが気に入らないのだろう。だが、四十過ぎの平民の太ったおっさんとは言え、世話になってることもあり、可能な限り敵には回したくない。
「……なあ、親父さん。今のこの国が好きかい?」
 少し考えてから、俺はそう切り出した。俺の真意を測りかねているのだろう、マルトー親父は黙って首を傾げている。
「俺は最初、大嫌いだったよ。勝手に人をこんな世界に呼んでおいて、貴族の奴らは平民だからと馬鹿にしてくる。そんな扱いに少しずつ慣れていく自分も嫌だった。だから俺はね、貴族が身勝手に平民を虐げたりしないように、この国を変えてやりたい。その為には味方が要る、仲間が要る。もちろん俺も男だから、仲間が女なら手を出すし、抱きもする。けど、単に遊びで抱ける女を増やすつもりなんてない。俺はね――」
 俺はそこで言葉を切ってから、殊更小声で囁いた。
「――この先、この国を乗っ取るつもりなんだ。その方法についても考えてある」
 マルトー親父は目を見開いたが、俺は語ったことを後悔などしていない。時期は早くなったが、いずれは計画のことを明かすつもりでいたからだ。以前から、城の隣に女学院と俺専用の屋敷とを建てた際には、マルトー親父に厨房と食堂、可能ならば城の晩餐会なども全て任せたいと考えていた。だが、俺の話を聞いて納得し、協力してくれるかどうかの判断がつかず、様子を見ていただけのことだ。マルトー親父は元々口が堅いので、計画を他人に吹聴する心配はない。必要ではあるが、重要な役回りと言うわけでもない。この場で仲違いになるのならば、心底残念だが別の人間を探すまでだ。
「……やっぱりあいつは、人を見る目がありやがるな」
 そう呟くと、マルトー親父は笑いながら手を伸ばして俺の頭をグシャグシャと撫で回した。
「どういうことだよ?」
 あいつ、と言うのはスカロンのことだろう。先刻まで訪ねて来ていたという異世界オカマは何を話していったのか。
「あいつが言ってたのさ。お前のことを、覇王になる人物かも知れないってな。俺は笑い飛ばしたんだが、あいつは真剣な顔でな。自分の娘とシエスタを幸せにするためにも、お前に可能な限り協力してやってくれと、古い付き合いの俺にも頭を下げてきやがった」
 そう言ってマルトー親父は嬉しそうに頭を撫で回し続けるが、俺は唖然としたまま、開いた口が塞がらなかった。呆れ返っていたのはスカロンに対してではなく、自分に対してだ。人を見る目が当てにならないのは俺の方で、国獲りに繋がるような話題を一切口にしていなかったにも関わらず、スカロンはあの短時間の間に俺の計画を見抜いていたらしい。恐ろしいほどの洞察力だ。勝手に俺を覇王とまで見込んだが故に、シエスタのことを承知で娘を差し出してきたということか。それならばあの言動にも一応の納得がいく。
「まあ、そういうわけだ。絡んだりして悪かったな、もう怒っちゃいねえよ。今後は飯のこと以外にも、何でも言ってくれ。シエスタ同様に、あいつの娘も大切に扱うし、二人とも俺の直属にするよう学院長に話して、好きな時に休憩時間を与えることにしよう。『我らの剣』が好きな時に呼び出せるようにな」
   ★★★
 倉庫から戻って来たシエスタとマルトー親父とに高級ワインを振舞われた後、建物の外に出ると、もう夕暮れ時だった。マルトー親父の気遣いで、俺はシエスタと共に物置小屋に帰り、一緒に風呂に入ろうとしたところで、ノックの音がした。扉を開けると、立っていたのはジェシカだった。先刻、学院に着いて厨房に挨拶に行ったところ、マルトー親父からシエスタが物置小屋にいることを聞き、場所を確認した上で荷物を預け、小屋までやって来たのだと言う。シエスタも既にスカロンから、ジェシカが来ること、俺と一緒に一晩過ごしたことなどを聞いており、それならば一緒に風呂に入ろうと言い出した。嫉妬心などはなく、純粋に従姉妹同士の再会を喜び、ジェシカと共にこれまで通りに俺に従うつもりらしい。ジェシカもシエスタの言葉に嬉しそうに頷いた。五右衛門風呂のままだったら狭くてとても無理な話だが、改装の際に浴槽は大きなものに変え、洗い場も含めれば六人ぐらいなら同時に入れるようにしてある。こうして俺とシエスタ、ジェシカの三人は、一緒に風呂に入ることになった
「うふっ、またビクビクしてますぅ。旦那様ぁ、私の手マンコが気持ちいいんですよねぇ?」
「違うよぉ、パパはぁ、あたしの娘手のひらマンコが気持ちいいんだよねぇ?」
 洗い場で俺の陰茎を愛撫しながら、シエスタとジェシカが同時に尋ねてきた。風呂椅子に座った俺の右側にシエスタ、左側にはジェシカがそれぞれ跪き、シエスタは泡に塗れた手で一物を扱き、ジェシカは亀頭に手のひらの泡を撫で付けている。流石は従姉妹、見事な連携だ。当初は互いに恥ずかしがって淫語を喋ることはなかったが、一度目の放出の時に各秘所に精液を浴びせてやってからは、競い合うように話しながら陰茎を触り続けている。もちろん、ジェシカには事前に避妊薬を呑ませてある。とは言え、もう避妊薬の残りも少ない。明日にでも街でまとめ買いし、タバサも含めて全員に大量に与え、毎日呑むよう指示しておこう。
「ふん、ジェシカは娘なんでしょ? ジェシカのパパは私の旦那様なんだから」
「なによぉ、旦那様って呼んでるからってぇ。シエスタはメイドじゃないぃ。パパはあたしのパパなんだからぁ」
 互いに全裸で大きな乳房を揺らして文句を言う様は、まるで本当の姉妹だ。大人しくも頑固な姉と、我侭で強気な妹と言ったところか。会話だけを聞いていると、妻と娘のようにも思える。口喧嘩の勢いに合わせたように手の動きも加速させている為に、そろそろ俺も二度目の射精が近い。
「私なんか今までにたくさん、旦那様に愛してもらったんだから」
「それはそうかもしれないけどぉ、あたしだってこれからたくさん、たくさ~ん愛してもらうもん。もう前も後ろもパパに捧げちゃったしぃ。あれは凄かったぁ」
 ジェシカの言葉にシエスタが手の動きを止めた。眉間に皺を寄せて俺を睨んでくる。
「……後ろってなんですか?」
「え? いや、その」
 俺は適当に誤魔化そうとした。何となく雲行きが怪しい。と言うか、そろそろ出そうなんだけど、俺。
「ええっ? シエスタまだ後ろでしてないのぉ? ふふ~ん、あたしの勝ちぃー」
「ジェシカは黙って。今、大事な話の途中なんだから。それで、後ろってなんですか?」
   ★★★
「どうぞ」
 寝室のベッドの上、シエスタは四つん這いになった状態から自ら尻たぶを左右に拡げると、菊門を俺の前へと差し出してきた。無論、先刻の風呂場での会話が原因だ。ジェシカの尻穴を犯したことを仕方なく告げると、予想通り、自分にもして欲しいと言い出した。俺としてはまだ先の楽しみに取って置きたかったのだが、決して譲ろうとはしない。
 一昨日、浣腸器を貰ってトイレで綺麗にするよう言われ、その後に尻穴に入れられたとジェシカから強引に聞き出すと、綺麗にするから自分にも浣腸器を出してくれ、綺麗にするところを見ていても構わないと言う。浣腸器は渡してやったが、トイレに行って一人でして来い、と俺は言った。どんな女が相手だろうと、糞便に対する性的嗜好は俺にはない。許せるのは尿までだ。ちなみに、他人の使用した物を使わせるのは気が引けるので、アンリエッタにもジェシカにも個別に浣腸器は複数渡してある。今後も尻穴性交した女には渡しておくつもりだ。
 その後、俺は寝室のベッドの上でジェシカに萎えてしまった陰茎をしゃぶらせ、シエスタは再び風呂場で尻穴を洗ってから寝室に姿を現し、躊躇うことなく俺に尻穴を見せ付けている。どうもシエスタは珍しく少し怒っているようだ。ルイズや他の女たちならともかく、妹分のジェシカに先を越されたのが悔しいらしい。風呂に入る前には嫉妬心など感じられなかったが、後から考えれば俺との仲をジェシカに見せ付けるのが目的だったようにも思える。
「んむごぷっ……ぷはあぁ……、シエスタぁ、凄く下品。ねえパパぁ、あたしとしよぉ。家を出る時に準備はしておいたからぁ、お尻マンコ綺麗だよぉ?」
「う・る・さ・い! さあ旦那様、どうぞ。ここも旦那様のものにしてください」
 俺は溜息を吐きながらシエスタの尻穴にローションを塗ってやった。次いでジェシカから陰茎を取り上げ、そこにも塗していく。と、ジェシカもシエスタの隣で同じ姿勢になった。
「パパぁ、あたしのお尻マンコにも塗ってぇ。パパちんちん、こっちにも入れてぇ」
 それもいいだろう、と思いながら、ジェシカの尻穴にもローションを塗ってやる。
「……今、私のこと、下品って言ったくせに」
「ふーんだ。パパにどっちが気持ちいいかぁ、比べてもらうんだも~ん」
 いつまでも罵り合いそうな気配を感じ、俺はバッグからアナルバイブを取り出すと、ジェシカの尻穴の奥深くまで挿し入れ、スイッチを入れてやった。
「んくはあっ……ダメえぇ……はくひあっ……パパのがいいよおぉ……」
「順番に入れてやるから、今はそれで我慢しとけ。じゃあ、シエスタ、入れるぞ」
「は、はいっ。よ、宜しくお願いしますっ」
 俺は亀頭をシエスタの菊門に押し当て、少しずつ挿入を開始した。腸内は柔らかくきつく、何ともいい感じだ。
「ふんはああっ……入ってきてますぅ……うくひふあっ……旦那様のオチンポぉ……」
「痛くないか? 痛かったら言えよ?」
「はふうあはっ……少し痛いのがぁ……んくひふあっ……とても気持ちいいですぅ……」
 俺は苦笑した。シエスタが痛みも楽しんでしまう真性であることを失念していたからだ。従妹のジェシカにも同じ資質があるのかどうか、このままじっくりと調べてみたいところだ。だが、明日はアンリエッタとの密会の約束がある。適当なところで切り上げ、体力を残しておかねばならない。しかし……。
「くひふはあっ……まだ入ってくるぅ……ふおひあはぁ……お尻気持ちいいですぅ……」
「あふくはぁ……パパちんちん早くぅ……んくひあぁ……娘のお尻マンコも使ってぇ……」
 向けた尻を揺らして悶える二人を見て、果たして適当なところで許してもらえるのかと、俺は心底不安になった。
   ★★★
「そろそろ出そうだ。けどな、本当にこれで最後だからな」
「んれろれっ、はいぃ、旦那様ぁ。じゃあ、私が飲ませて頂きますねぇ。ジェシカ交代してぇ、旦那様の精液ぃ、まだ飲ませて頂いたことないんだからぁ」
「んごぷっ……ぷひゃあ、やだよ~だぁ。パパのおちんちん汁はぁ、娘のあたしのだも~ん、パパぁ、ちゃんと全部飲んであげるからねぇ、はむぶっ……んぐぽっ……おごぷぁ……」
 結局、それぞれの腸内に三回ずつ射精し、一睡も出来ないまま、今はもう朝だ。アンリエッタとの約束は午後だが、移動時間を考えると僅かな仮眠しか取れそうにない。その前に身体を洗おうと一人で風呂場に入ったところで、ベッドで眠りについていた筈の二人の襲撃を受けてしまい、現在はこの有様だ。一旦陰茎を丁寧に洗った後、ジェシカはそれを咥え込み、シエスタは俺を立たせて尻の穴を嘗め回している。本当に見事なほどの連携で、萎えていた俺の一物は瞬く間に勃起し、そろそろ限界が近い。
「んぺあおっ、んれんろっ、ジェシカぁ、お願いだから代わってぇ、飲ませてよぉ」
「んごぷぅ……んぱふぁ、ダメぇ、あたしのぉ、はむぷっ……ぷごごっ……むぶおっ……」
 未だに口喧嘩を続けてはいるが、これが二人でいる時の素の状態らしい。ジェシカはともかく、シエスタもジェシカに対しては遠慮のない物言いをすることが多い。それだけ気の許せる相手なのだということは、見ていて理解できる。尻穴から精液を垂らしながら一心不乱に奉仕を続ける二人のことを、このままもっと可愛がってやりたいところではある。が、残念ながらそうもいかない。最後に仲良く二人に出してやるか。
「仕方ねえな、後は自分でやるから。お前ら並んで浴槽に手をついて、尻を差し出せ」
 俺の指示に二人は従い、嬉しそうに尻を向けてきた。案の定、どちらの秘所も蜜で溢れている。俺は陰茎を扱きながら、まずはシエスタの膣口に亀頭を当てた。そのまま限界直前まで手を動かし、膣内へと突き入れる。
「まずはシエスタから、受け取れ」
「んくくひゃあっ……頂きますぅ……あへふひああっ……新鮮なオチンポ汁ぅ……」
 シエスタが腰をガクガクと震わせ始めたのを確認してから一物を引き抜き、強く握って射精を一時止め、隣のジェシカの膣内深くへと入れてやる。
「次はジェシカだ、残りを全部くれてやる」
「ふくひやああっ……娘マンコにもきたぁ……はふくはああっ……パパ汁気持ちいひぃ……」
 ジェシカは尻を前後に動かしながら、膣口を何度も陰茎の根元まで押し当ててくる。
「これで終わりだ。お前らもちゃんと身体洗ってからここで寝るなり、自室へ帰るなりしろ」
放出を終え、ジェシカから一物を引き抜きながらそう言うと、二人は示し合わせたように俺を見つめて口を開いた。
「はふうぁ、じゃあぁ、私がお口でぇ、んはぁ、お掃除をさせて頂きますぅ」
「んくふうあぁ、娘汁で汚れたぁ、あふくはあぁ、パパちんちん舐めるぅ」
   ★★★
 午後になって密会屋敷へと辿り着いた時には、俺はもう体力的に限界だった。膣内への射精後はシエスタとジェシカに何の行為もさせなかったが、二人を小屋から送り出して仮眠を取ろうと思っていた矢先に、コルベールの突然の訪問を受けたからだ。俺が依頼した件について判らない点があるとのことで、仮眠に充てる予定だった時間を全てその説明に使ってしまった。結局、一睡もしていない。移動の前に強い精力剤を飲んだのだが、疲れ果てていた為か効果が得られず、アンリエッタの相手をする余力がない。
 正直に体力不足で眠いと告げると、アンリエッタは一度添い寝してみたかったという。これ幸いと俺はパンツ一枚、アンリエッタは白のスリップとレースの付いた白のパンツ姿となり、寝室のベッドの上、毛布の中へと潜り込んだ。そのまま俺はすぐに眠りに落ち、目が覚めた時には夜になっていた。アンリエッタは隣で幸せそうに寝息を立てていたが、何時まで屋敷で過ごせるのか確認しておらず、可哀想だとは思ったが、俺は起こすことにした。
「アン、もう夜だぞ。時間、平気か?」
 そう言って何度か肩を揺すってやると、アンリエッタはゆっくりと目を開き、少しだけ呆けた顔で抱きついてきた。
「……わたくし、幸せですわ。大好きな殿方の側で眠れて」
 小さな声で囁くと、俺の頬にキスをしてくる。寝惚けているのかと思ったが、どうやら正気のようだ。肩を押しやって顔を見ると、あどけなく可愛らしい笑みを浮かべている。
「時間は大丈夫か?」
「構いませんわ、このまま朝まで一緒にいても。宜しければ、そうしてくださいまし」
「そうだな、一晩一緒に過ごしたことは今までにないしな。じゃあ、そうするか」
「嬉しいですわ、あなた」 
 アンリエッタは甘い口調で囁くと、再び俺の頬にキスを始めた。何度も何度もキスをされている内に、俺の陰茎が活力を取り戻してきた。やっと精力剤が効いてきたらしい。俺はアンリエッタの頬に手を添えて正面を向かせ、唇を奪いながら押し倒すと、スリップを捲り上げて乳房を優しく揉んでやった。次いで唇を離し、首筋を舐め上げてやる。
「あっ……あなたぁ……くんっ……嬉しいぃ……はあっ……お好きにしてぇ……ふあっ……くださいましぃ……んうっ……全部ぅ……んあっ……あなたのものですわぁ……」
「朝まで一緒なら、まだまだ時間もあることだし、たまにはアンの言うことを聞いてやってもいいぞ? どうされたい? 何がしたい?」
 俺が耳元で囁いてやると、アンリエッタは身を捩りながら徐々に頬を染め、やがて吐息と共に自らの願いを口にした。
「んはあぁ……それでしたらぁ……はうあぁ……奴隷のようにぃ……んうあぁ……犯してくださいましぃ……あふあぁ……酷く惨くぅ……」
 もちろん、俺は二つ返事で願いを聞いてやることにした。
   ★★★
 シエスタにも被虐的資質があるが、どちらかというと奉仕向きで、俺に虐げられるのを奉仕の一環として考えている様子だ。一方、アンリエッタは奉仕も厭わないが、その資質は被虐に特化されているようで、単に虐められるのを喜んでいるような気がする。行為を始める前に当人から聞いた話では、もしも王女である自分が誘拐されてしまったら、どういう扱いを受けるのか、と幼い頃から怖がっていたそうだ。性に対して嫌悪感がなくなった今、その思いが羨望の行為に成り代わっているのかもしれない。
「んうあはあっ……こんなの酷ひいぃ……おうはああっ……酷過ぎまふわはぁ……」
 その王女様は今、風呂場で四つん這いになって俺の小便を腸内で受け止めている。これでもう三度目だ。事前に腸内を綺麗にさせており、俺は放出が終わると一物を引き抜いて、小便塗れのままアンリエッタに口で掃除をさせ、自分はワインを飲み、小便がしたくなった時だけ尻穴に陰茎を入れて放っている。
「お前が望んだんだろうが、そうだよな便所殿下?」
「おふあはあっ……でもこんなぁ……ひぐひはあっ……ちゃんと犯ひてくださひまひぃ……」
 アンリエッタの否定の言葉は全て嘘だ。単に尻穴性交を望む演技をしているに過ぎない。蕩けた顔で全身を震わせ、小便を受ける度に四肢を引きつらせて絶頂を迎え、自らも小便を垂れ流している。とは言ったものの、そろそろ俺も一度くらいは精液を放ちたいところだ。
「アン、そろそろ引き抜くからな。漏らさないようケツ穴を閉めとけ」
 そう言って俺はアンリエッタの尻穴から陰茎を抜き、手桶で湯をかけて尿を洗い流すと、自分で扱き始めた。アンリエッタは足を小刻みに震わせながら、俺の言い付けを守ろうと菊門に力を込めているようだ。が、多少は漏れてしまうようで、尻穴からはブクブクと細かい泡と共に液体が流れ出ている。
「漏らすなって言ってんだろうが。俺が出すまで我慢してろ」
「んくはっ……これで限界ですわぁ……んくっはっ……これ以上は力が入りまへんはぁ……」
 俺は場所を移動し、擦り続けている一物をアンリエッタの目の前に晒してやった。
「もう少しで精液を飲ませてやるから、それまで我慢しろ。できるな?」
「ひうくあっ……ふぁいいっ……んうふあっ……が、我慢しまふぅ……」
 アンリエッタは顔を真っ赤にし、歯を喰い縛って堪え続けている。身体は汗と尿に濡れ、垂れ下がった乳房の先は尖り、尻穴は時に下品な音を不規則に立て、気品の欠片もない。そんな様子を見ている内に俺も限界となった。唇に亀頭を押し当ててやると、アンリエッタは辛そうにしながらもそれを咥えて舌で舐め始めた。
「全部飲めよ、ほら」
「んごぶおぼべあぶごもおおおっ!」
 俺の射精と同時にアンリエッタは尻穴から大量の尿を噴き上げ続け、そのまま延々と絶頂を迎えた。
   ★★★
「ひぎいぐあっ……あなじゃああっ……んびぎぐあっ……もぶ許じでえべっ……おごあびあぁ……ぐだじゃいまぎぃ……あぶぐばあっ……許じでぐだじゃまぐべああっ……」
 アンリエッタはベッドの上をのた打ち回りながら、愛液と小便とをシーツへと振り撒き、快楽に顔を歪めている。酷い顔だ。尿道と尻穴にバイブ、陰核には専用のキャップ式バイブ、両乳首にはクリップ式ローターを付けた上で手足を縛ってやり、本人に判らないように少しだけ快感薬を各所に塗り付けてある。以前シエスタにも同じようなことをしたが、やはり人によって反応が違う。シエスタはあまり暴れることなく何度も気を失ったが、アンリエッタは気丈にも耐え続けながら忙しなく身体を移動させている。どうにかして淫具を取り外したいのだろうが、生憎とそんな簡単に外れるようには取り付けていない。市販の粘着式ローションを使い、全ての淫具が一番敏感な場所に当たるようにしてある。解除液を使ってやるまでこのままだ。
「んげぐあぶおっ……もうイぎだぐなびいい……うべごぶぼあっ……イがぜないじぇえぇ……あびゃばぐあっ……イがぜないべぐだじゃいまじぃ……おがうごうあっ……イぐうううう!」
 この状態で放置してそろそろ二時間となる。アンリエッタの絶頂回数は二十回を超えている筈だが、そろそろ飽きてきた。次は何をしてやろうか。
「あぶごあべあっ……まじゃイっでるうおあっ……ぶぐおあぐひぃ……どまんないでじゅうおあっ……んおぶあべあっ……じゃめどまんないびいいぃ……うびあぐぼあっ……」
シエスタの時のように暗示をかけて強姦というのもいいが、もう一捻り欲しいところだ。まだアンリエッタにしていない行為には何があっただろうか。
「イぐうおあおっ! ……ひぎぐああっ……まじゃイぐうべああっ! イぐイぐぶびゃああっ! ……もぶ嫌でじゅうおああっ……んばあっ……おごっ……ひぐっ……っ………………」
「……おい、アン?」
 様子がおかしいことに気づいて見てみると、アンリエッタは白目を剥いて全身を痙攣させていた。口からブクブクと大量に泡を噴いている。不味い、やり過ぎたようだ。慌てて解除液を振り掛け、手早く淫具と縄とを取ってやるが、正気に戻る様子はない。呼吸も不規則になっている。少し強めに頬を叩いてみても様子は変わらない。鼻を摘んで口をつけ、人工呼吸を続けてやると、少しだけ息が深く規則的になってきた。再び頬を叩き続けていると目に光が宿り、アンリエッタは虚ろな目で俺を見つめ、微かに笑みを浮かべた。
「あなひゃあぁ、わひゃくひぃ……」
「アン、大丈夫か? 俺が悪かった。やり過ぎちまった。すまん」
「わひゃくひぃ、ひあわへええぇ」
 だらしなく笑いながらアンリエッタはそう呟き、幸せそうに尿を垂れ流した。
   ★★★
 アンリエッタはその後も意識を保ち続け、俺はお姫様抱っこでリビングへと運ぶと、ソファに寝かせて身体を拭いてやった。ベッドの上はどこもびっしょりと濡れていたからだ。そんな俺をアンリエッタは穏やかな眼差しで見つめ、敏感な部分を拭ってやる度くすぐったそうに笑った。やがて身体を拭き終わり、最悪の事態を免れたことに俺が安堵の溜息を吐くと、アンリエッタは身を起こし、ゆっくりと身を凭れさせてきた。
「あなた、申し訳ありませんでした。わたくし、意識を失うなんて……」
「いや、謝るのは俺の方だ。いい気になってやり過ぎた。本当に悪かった」
「そんなこと仰らないでくださいまし。わたくしが望んだことですもの」
「それでも悪いのは俺だ。アンの身体のことを、もっとちゃんと考えてやるべきだった」
「……そんなに仰られるのでしたら、一つだけ、わたくしの我侭を許してくださいまし」
 そう言ってアンリエッタは俺の目を覗き込んできた。当然、俺に拒む気持ちはない。ルイズや他の女たちとの肉体関係については未だアンリエッタに話してはいないが、浮気禁止などと言われたら上手く誤魔化すしかないだろう。
「俺に可能なことなら。言ってくれ」
「一度だけ、あなたの住んでいらっしゃる小屋に泊まってみたいですわ」
 俺は頷いた。そんなことでいいのなら、二泊でも三泊でも好きなだけ泊まってもらって構わない。この際、そこで誓紙を差し出させた連中と対面させ、アンリエッタに説明しておくべきかもしれない。幸いにもジェシカが学院に来たことで、全員を揃えることが可能だ。
「でも、汚くて狭いぞ?」
「そんなこと構いませんわ」
 嬉しそうに笑い、アンリエッタは俺の唇にキスをした。
   ★★★
 アンリエッタと朝まで過ごして街で買い物をし、学院に戻って物置小屋で適当に仮眠を取った後、授業が終わるのを待って俺はキュルケの部屋を訪れた。先日の一件、タバサの抱えている事情を確認する為だ。キュルケは訪問を喜んでくれたが、タバサの件を切り出すと困ったように俯き、他の誰にも、本人にも言わないよう俺に約束させてから、やがてゆっくりと語り始めた。それは俺が興味本位で聞き出そうとしたことを恥じるほどの、驚くべき内容だった。
「本当に、元にした情報は可能な限り全て確認したんだな?」
 俺の言葉にキュルケは黙って頷いた。その真剣な表情には、他人の反応を楽しんでいるような余裕はない。どうやら嘘ではないようだ。
 キュルケの話によると、タバサはこの国の隣国ガリアの王族であり、継承争いの犠牲者だという。先々王の崩御後、暗愚な長男と人望溢れる次男との間で継承争いが起こり、次男を謀殺することで長男が先王となった。その殺された次男というのがタバサの父親とのことだ。長男は将来の禍根を断とうと、次男の家族であるその妻と娘のタバサとを毒殺しようとしたが、半ば失敗に終わった。半ばと言うのは、タバサは事前に察知して毒を飲まずに済んだが、タバサの母親は毒を飲んでしまい、どんな処置をしても毒が抜けきらず、死ぬことはなかったが廃人同様になってしまったらしいからだ。元の状態に戻すには、長男のみが作り方を知っている特殊な解毒薬が必要で、それを手に入れる為にタバサは王家に忠誠を誓った。その後間もなく先王である長男は病によって崩御し、長男の娘が王女として権勢を奮い始めたと言う。何故女王として即位しなかったのかは定かではないが、現在も王座は空位とのことだ。先々の報復を恐れた王女はタバサの母親を治療という名目で監禁し、タバサをこの国へと追いやった。どうも王女は父親から解毒薬の作り方を伝授されているらしい。タバサが従うのも当然だろう。
 もう一つの大事な話は、タバサには双子の妹がいるらしいということだ。ガリア王族にとって継承争いの元となる双子は禁忌とされており、その為に産まれてすぐに人目の触れない場所へと送られたという。タバサはそれを数年前に偶然耳にし、以後、時間を作ってはその行方を捜していたが見つからず、諦めたのか、最近では外に出ることもほとんどなくなった様子だと言う。
 キュルケが約半年前、ラグトリアン湖畔のガリア領側にあるタバサの屋敷へ押し掛けた時、執事の男から強引に聞きだした内容。そしてキュルケがタバサの力になるべく、自分で色々と調べた結果。これらの話はその二つを合わせて導き出されたキュルケの推論だが、辻褄は合っている。
 俺はしばらくの間、額に手を当てて考えてみた。問題点、対処法、俺に可能なこと。タバサの母親を助け出し、モンモランシーに解毒薬を調合させてみてもいいが、絶対に上手くいくとは言い切れない。妹を探してやりたくても手がかりが少な過ぎる。一番手っ取り早いのは、ガリア王女に薬を使い、解毒薬の調合法と妹の居場所の情報を聞き出すことだが、報復を恐れてタバサの母親を監禁するような人物なら、普段から身辺の警護は厳重だろう。アンリエッタに会談を申し込ませ、その会場で拉致するか。駄目だ、失敗すれば二国間の戦争になる恐れがある。先々のことを考えたら、現時点で他国と事を構えるのは拙い。それに、無駄な人死は俺としても望むところではない。
「ねえ、ダーリン。あの子の為を思って色々と考えてくれるのは嬉しいけど、今はそっとしておきましょうよ」
 キュルケはそう言って、俺の肩を優しく抱きしめてくれた。
   ★★★
 タバサの身の上を聞いた後、俺が物置小屋に帰ろうとすると、キュルケが後を付いてきた。タバサの話はそれとして、久し振りに可愛がって欲しいと言う。俺は了承し、まずは一緒に風呂に入り、次いで互いに全裸のままリビングで酒を飲むことにした。
「んはぁ、ダーリンどうぉ? はぁん、あたしの身体ぁ、はうぁ、ちゃんと見てくれてるぅ?」
 キュルケは立ったまま頭の後ろで両手を組み、中腰になって膝を外側に向けている。所謂ガニマタだ。その状態で踊り子のように胸と腰を淫らに揺らし、濡れた淫裂を俺の前に見せ付けている。やはり露出狂の資質があるらしく、愛液はまだ透明で濁ってはいないものの、褐色の肌は赤みを帯び、目まぐるしく動く乳房の先、乳輪と乳首は膨れ上がっている。俺はソファに座って酒を飲みながらそれを眺め、自分の陰茎を扱き続けているのだが、そろそろ我慢できなくなりそうだ。
「お前が見て欲しいのは身体全部じゃねえだろ? ちゃんと言ってみろ」
「あふぁ、オマンコぉ、んくぁ、オマンコ見てぇ、はふぁ、はしたなく垂らしたぁ、んあぁ、オマンコ汁もぉ、ふあぁ、もっとよく見てぇ、んくぁ、目に焼き付けてぇ」
淫語を話し出した途端、キュルケの秘裂から白い液が薄っすらと滲み出てきた。一物を見つめ続けている瞳にも、淫靡な陰が宿り始めている。
「そろそろ出そうだ。もっと股を開いとけ。お前のだらしないマンコにかけてやる」
 俺の言葉に嬉しそうに頷くと、キュルケは腰を下げて陰部を差し出してきた。俺は手の動きを速めながら立ち上がり、陰唇の間に亀頭を当て、そのまま放出した。
「くふはああっ、温かくってぇ、ふはんああっ、素敵な気持ちぃ」
 精液を局部に浴びせられながら、キュルケは悩ましく身体を震えさせ、亀頭に膣口を押し付けてきた。
「ちょっと待て、じっとしてろ。まだ出るから、もう少し――」
「んふうああっ、ごめんなさいぃ、あくうふあっ、もう我慢できないぃ、んくふあああっ!」
 止めさせようと腰を引いた俺にキュルケは叫びながらしがみ付き、片足を絡めて立ったまま抱き込むと、ゆっくりと膣に陰茎を呑み込んでいく。
「おい、ちょっと待て、こんな。痛くねえのか? おい?」
「んひくはあぁ……痛くてもいいのぉ……はうくひいぃ……その代わり後で見てぇ……うくはふあぁ……中に出されたのをぉ……ひうくはあぁ……出されたオマンコ見てぇ……」
 辛そうなに顔をしかめながら、キュルケは陰茎を根元まで咥え込んだ。放出後の膣内を見て貰いたいが為にここまでするとは、見上げた心意気と言えなくもない。俺としてもキュルケの膣は熱く蕩けるような感触で気持ちよく、こうなった以上は存分に楽しみたいところだ。
「じゃあ、このままもう一度出すまで犯してやる。その後でじっくり見てやるからな」
 言いながら俺はキュルケの背中を抱き、奥深く叩き込むように自身の腰を動かし始めた。
   ★★★
 立位のままリビングで膣に精液を二回追加してやり、赤白混じり合った粘液を垂らす膣内を観賞した後で、俺はキュルケを連れて外へと出た。もう夜は遅く、辺りに人影がないことを確認すると、俺は玄関の前で正面から再びキュルケの膣に陰茎を押し込み、両足を抱え込んでやった。俗に言う駅弁体位というやつだ。この状態で散歩に行こうと俺が言うと、他人に見られたりしたら恥ずかしいので嫌だとキュルケは拒んだが、歩き出しながら腰を使ってやると喘ぎ出し、そのまま文句も言わなくなった。しばらくは物置小屋の周りを散策していたのだが、俺は物足りなくなってモンモランシーの小屋を訪れることにした。
 モンモランシーは俺たちの姿を見て目を丸くしたが、苦笑いしながらリビングへと招いてくれた。俺はソファに座るとキュルケに自分で腰を振るように言い、隣に座ったモンモランシーと酒を飲み始めた。
「うわぁ、キュルケのクリトリス、こんな大きくなるんだ。ここもヒクヒク変な動きしてる」
「あおくああっ……そんなに見ないでぇ……はううああっ……見ちゃ嫌ああっ……」
「なによ、見られて喜んで腰振ってるくせに。協力してあげてんじゃない。うわっ、臭い」
「んはううあっ……嗅がないでよおぉ……あひふはあっ……嫌なの止めてええっ……」
 座位の状態で腰を振り続けるキュルケを言葉でいたぶりながら、モンモランシーは時に鼻を近づけて繋がった陰部の臭いを嗅いでいる。交尾を見せ付けられて興奮しているようで、酒を飲みながら服を一枚ずつ脱ぎ、既に全裸の状態だ。キュルケも口ほどは嫌がっておらず、瞳孔を開いたまま身体中の突起を尖らせ、先刻まで処女だったとは思えないほど艶かしい腰使いをしている。露出狂と淫臭狂、いいコンビかもしれない。シエスタ・ジェシカ組とは違う楽しさがある。
「キュルケ、そろそろ出すぞ。何回目だか覚えてるか?」
「ひくひうあっ……ここに来て四回目ぇ……あひくはあっ……あたしもイっちゃうぅ……」
「ほおら、やっぱり見られて気持ちいいんじゃない。感謝してよね」
「いいぞ、イっても。ちゃんと自分はここに来て何回目なのか言えよ? ほら、受け取れ」
 俺は隣のモンモランシーの乳房を指先で擽りながら、キュルケの膣内へ今回七回目の精を放った。
「んぐひふあっ……熱くて素敵いひぃ……あひゃふひぁ……じう三回目イくふううああっ!」
「あはっ、はしたなぁい。オマンコの隅から、精液、泡立てて漏らしてる」
 モンモランシーは全身を引くつかせているキュルケを馬鹿にしたような目で見ると、漏れ出した精液を指先にすくい取り、くんくんと臭いを嗅ぎ始めた。
   ★★★
「んふぅ、ほらぁ、はあっ、もっと嗅ぎなさいよぉ、んんっ、この臭いが好きなんでしょぉ?」
「むぶんぐうっ……んむぶむおっ……おごぶむおっ……ぶごむぶんっ……あばんびおっ……」
 現在はベッドの上、膣から溢れた精液の臭いを嗅いでいたモンモランシーは、キュルケにあっさりと性癖を見破られ、頭を押さえ込まれて精液塗れの膣の中に鼻を埋めている。当初は多少抵抗していたのだが、現在は身体を弛緩させてキュルケの成すがままだ。小便を三回も放っているところを見ると、相当に臭いで気持ちよくなっているのだろう。攻守の立場を変えたキュルケも最至近距離で陰部を見せ、嗅がれ、膣内に鼻を入れているだけあってうっとりとした表情だ。二人とも俺の存在を忘れているようで割と哀しい。ここに来たのは失敗だったかもしれない。
「んはぁ、ほらほらぁ、あふっ、初物よぉ? ふあっ、血の臭いもするでしょぉ?」
「おぶぐもぼっ……んびぶあばっ……うむぶおあっ……んびぐむおっ……むぶぐもおっ……」
「うふぅん? んはあっ、なに言ってんのよぉ、はうあっ、判んないわよぉ、ふうあっ、この小便垂らしぃ、んはあっ、やだぁ、うあはぁ、あたしもオシッコぉ、くはあぁ、したくなっちゃったぁ、んうあっ、このまましてもいいわよねぇ?」
「ぶむぐもあっ……んもむもおっ……おむもぐあっ……むぶおぶんっ……もぐばびあっ……」
「なあ、お前ら、そろそろ俺も――」
「んくはあっ、ほら受け取ってぇ、はぅんっ、あたしのオシッコぉ、んんくっ、あはああっ!」
「んぐごくむぶおっ、むぐぶぼごぶっ、おばべびあっ、んぶむごっ、むぼごぶうぶぼおっ」
 楽しそうだが、完全に二人の世界だ。どうも俺は邪魔者らしい。帰ろう、と俺は思った。
   ★★★
 翌日の夕方、俺は授業の終わったルイズを連れて街へと出た。たまには服でも買ってやろうと思ったからだ。ルイズには賭場で勝ったと話してあるので、多少の大盤振る舞いをしても問題はない。ワンピースと靴を選んでやるとルイズは喜び、自分も買いたいものがあるから一緒に来てくれと言い出した。俺が頷くとルイズは紳士服店で俺のシャツとズボン、下着などを買い、もう一件寄りたい店があると言い出した。
「こ、これ、ど、どう?」
 試着室のカーテンを開け、ルイズが恥ずかしそうに尋ねてきた。ルイズが着ていたのは淡い桃色のネグリジェだ。だが、透けている。以前のタバサと同じように乳房もパンツもはっきり見える。ルイズはキュルケからこの店のことを聞いたようで、店内には扇情的な下着やネグリジェなどが所狭しと陳列されている。男の客は俺一人で、正直、俺の方が恥ずかしい。
「色々と見えてんだけど、いいのか?」
 俺が言うとルイズは俯いてカーテンを閉め、中でゴソゴソと音をさせてから、もう一度姿を見せた。
「ここ、こっちのがいい?」
 そう言ったルイズが着ていたのは同じく透けたネグリジェなのだが、色は白で、赤く染めた肌の色まで丸判りの代物だった。下着も替えたらしく、何と言うか、超ローレグとしか言いようのない紐のパンツを穿いている。
「色々と、もっと見えてんだけど」
 俺はそれだけ言うのがやっとだった。キュルケ・モンモランシー組の痴態を見せ付けられたままお預けを喰っていたせいで、既に陰茎は行為の準備が出来ている。このままだと試着室の中で事に及んでしまいそうだ。
「も、もっと凄いのあるから、ちょ、ちょっと待ってて」
「ちょっと待て」
 俺は再度カーテンを閉めようとしたルイズに声をかけた。もっと凄いのなど見せられたら、本当に我慢ができなくなりそうだ。
「ちょっとで済むから。ほんとに凄いんだから」
「だったらそれも含めて、全部俺が買うから。この場でなくて、お前の部屋で見せてくれ」
そう言うと、ルイズは少しだけ拗ねた顔をした。
   ★★★
 結局、もっと凄いのお披露目はルイズの部屋でなく、俺の小屋の寝室で行うことになったのだが、着替えたルイズを見ただけで俺の陰茎はこれ異常ないほど硬くなった。それはコスプレ衣装としか呼べない代物で、猫耳付のカチューシャ、乳輪をやっと隠すほどの幅しかないチューブブラのようなもの、尻尾の付いた超ローレッグカットのパンツ、そして指先の開いたロンググローブとオーバーニーソックス。全て黒で統一され、更に黒の首輪にはご丁寧に金色の鈴まで付いている。どこから見ても愛らしく扇情的な黒猫の成りで、細いルイズの身体にはそれらがとてもよく似合っている。それだけでも身悶えしそうなほどなのに、ルイズは甘えるようにこう言った。
「きょきょきょ、きょ、今日はあなたがご主人さまにゃんッ!」
 こんな可愛い黒猫ルイズには躾が必要だ。俺は勢いよく服を脱ぎ捨てて全裸になると、ベッドの上にルイズを押し倒し、チューブブラの上から乳首を触り、舐めた。指先と舌先で行える全ての行為を駆使していると、ルイズの口から切ない喘ぎが漏れてくる。
「あんっ……そんないきなり……はあぁ……そこばっかり……ふあぁ……もうばかぁ……」
 もどかしくブラをずらし、勃起しかかった乳首を口に含んで舌先で弾き、片手をパンツの中に入れて秘裂と陰核に指を這わせる。もうこのまま犯してしまいたい。ルイズの膣内深くまで陰茎を入れて何度も何度も子宮に精液をぶち込みたい。
「やんんっ……焦んないでよぉ……んはあぁ……嫌がんないからぁ……んくうっ……もっと優しくぅ……ふわあっ……入れてもいいからぁ……あはあっ……ねえってばぁ……」
 息が精液臭くなるように口の中に何度も射精し、尻穴も犯して腸内を精液塗れにし、小便を垂れ流して嫌がっても身体中の穴という穴を全て犯し続けたい。
「はうああっ……そこ気持ちいいっ……んくふあっ……そこ好きもっとぉ……」
 陰茎を入れたまましがみ付かせて抱き上げ、トイレも風呂場もどこに行くにも延々と繋がっていたい。乳房も乳首も膣も尻穴も――。
 そこまで考えて、意識が飛びそうな快楽に俺は身体を震え上がらせた。気が付くとルイズの腹に射精していた。どうも精神が暴走していたらしい。
「……悪い、出ちまった」
 俺が言うと、ルイズは息を乱しながらも唖然とし、次いで口元をニヤリと歪めて笑った。
   ★★★
「んあっ、他に私と何がぁ、はあっ、したいって思ったのぉ、んくっ、今さっき言ったたことの他にもぉ、ふあっ、色々と考えてたんでしょぉ、あんっ、ユニークとしか形容しようのないぃ、はあっ、笑える動きで出しちゃったくせにぃ、くうっ、頭の悪い犬みたいなことぉ、んんっ、思ったんでしょぉ、んくっ、その口で言いなさいよぉ」
 ルイズは馬鹿にした口調でそう言うと、露出させた下半身の動きを加速させた。俺の射精後からずっとこの状態だ。仰向けに寝た俺を跨いで陰茎の上から秘裂を押し付け、小悪魔モードの黒猫ルイズは腰を前後に揺らし続けている。蕩けるようなその感触に、もう俺は二度目の射精が近い。
「い、息が精液臭くなるまで口に出したいとか……」
「はうんっ、あんたそんなことぉ、んくふっ、考えてたのぉ、はうあっ、犬のくせにぃ、うふあっ、何度も子宮にぃ、あふあっ、出すことの他にぃ、んうあっ、変態ねぇ、んくうっ、まだあるんでしょぉ、あくうっ、全部言いなさいぃ」
「ルイズ、もう出そうだ」
「んふあっ、ダメよまだダメぇ、はんくあっ、全部言うまでぇ、あふうあっ、出しちゃダメぇ」
「し、尻穴も犯したいとか、延々と繋がってたいとか、これで全部だ、出すぞ」
「くはうあっ……仕方ないわねぇ……あはくはあっ……ちゃんと愛してるって言ってぇ……」
「ルイズ、愛してる。くっ」
「あくふああっ、あっ、あっ、んくっ、わ、私も愛してるぅ、ああくっ、んふうああああっ!」
 言葉と同時に射精すると、ルイズは歓喜の声を上げて仰け反った後、俺の胸へと倒れ掛かってきた。その小さな身体を抱き留めながら、俺は呆けた意識の中でルイズの言ってくれた言葉を何度も反芻していた。
   ★★★
 どうもルイズの暴走はパチンコの大当たりのようなものらしい。どこに導き出すスイッチがあるのか判らないまま、突然当たりを引き当てたり、その後に別モードに突入したりする。今までに確認できた大当たりは隷属モードと小悪魔モードの二種だが、まだ他にモードがあるのならば早目に把握しておきたいところではある。
「んれぉ……んくぱぁ、これ好きぃ……かぷっ……はむぷっ……んろれっ……んむっ……」
 現在は隷属モード、暴走継続中だ。ルイズは腹と秘所に精液を塗したまま、胡坐をかいた俺の股間に顔を埋めて懸命に一物を綺麗にしている。甘えるように陰茎に舌を這わせ、時に発情しきった瞳で俺を見上げてくる。風呂に入る前だったのでカリ首には一日分の恥垢が付着していたが、それさえも舌先で擦り取った後に小さく喉を鳴らして呑み込む始末だ。その様子は堪らないほど愛らしく、心底犯してしまいたいのだが、やはりルイズの処女はそれなりの準備が整った後で奪ってやりたい。
「んもごっ……ぱふぁあ、大きくなってきたぁ……んぽおっ……むごっ……んろれろれ……」
 再び勃起し始めた一物を大事に育てるかのように、ルイズは口中で亀頭に舌を優しく絡めていく。舌の温かさと唾液の滑り、そして柔らかな内頬肉の触感に陰茎は膨張を続け、やがて準備完了となった。このまま口腔にぶちまけたいところだが、それも少し面白みに欠ける。
「ルイズ、そこに四つん這いになって、ちょっと待ってろ。すぐ戻るから」
 そう言って俺はキッチンへと走り、目当ての品を手に取ると、寝室のベッドの上に戻った。指示通り四つん這いになっていたルイズの腹と股間から手のひらで精液を寄せ集め、手にした小皿の中に擦り付ける。たいした量じゃないが仕方ない。俺は小皿をルイズの前へと置いた。
「ほら、ミルクだぞ。今すぐ追加も入れてやるからな」
 ルイズは俺の意図をすぐに理解し、蕩けたように微笑むと、小皿の中身を舐め始めた。その子猫のような痴態を眺めながら、俺は濡れた陰茎を手で扱いていく。
「ぺれろ……んるろ……るらろ……んろれ……んるれ……ぺおっ……んれぉ……」
 精液を舐め続けるルイズは舌の上を白く濁らせ、時折幸せそうに粘液を飲み下している。そんな素振りを見ていると、ほどなく陰茎に限界が訪れた。
「ほら、子猫のルイズにミルクの追加だ」
 言いながら俺が小皿の上に放出すると、まだ温かい精液をルイズは夢中になって啜り込んでいく。全て出し終えた俺が食事を終えるのを見守っていると、ルイズは瞬く間に小皿の淵まで舐め上げ、唇の間に糸を引きながら息を吐いた。
「んっ、んくっ、ぱふぁあ、……けぷっ」
   ★★★
 翌日の朝、小屋に泊まったルイズを部屋に送り届けると、俺はその足でコルベールの研究室へと向かった。先日、俺が元の世界の科学の説明と機器の製作を依頼してから、コルベールは有給を取って研究室に篭り続けている。どうやら俺の予想以上に早く、依頼した品々が出来上がりそうな気配だ。当然、たっぷりと研究資金も渡してある。
 製作中の機器の説明を受け、不備な点を指摘しながらコルベールと話し込んでいると、もう日が暮れていた。話の合間に持参した保存食を分け合って食べたので空腹ではなかったが、頃合だと思い、俺は挨拶をして研究室を後にした。
 物置小屋に帰ると、タバサがリビングで俺の帰りを待っていた。本を読んで時間を潰していたらしく、テーブルの上の届けてくれた本の配置が変わっている。まあ、それはいい。問題はソファに座っているタバサの服装だ。前回同様、マントで全身を覆っている。もの凄く嫌な予感がした。
「この本、ありがとな。後で俺から図書館に返しておくから」
 服装の件には触れず、取り敢えず俺はそう言ってみた。だが、タバサは無言で一度頷くと、その後は俯いて俺と視線を合わせようともしない。その頬は透けネグリジェの時以上に真っ赤だ。これはやはり、マントの下は全裸ということだろうか。
「ちょっと待ってろな、今、酒の準備でもするから」
 俺は逃げ出すようにキッチンへと行き、ワインとグラス、チーズなどを用意しながら対応策を考えてみたが、何も浮かばない。あまり席を外しているのもタバサに悪いと思い、用意したものを持ってリビングへと向かう途中、先日モンモランシーに言われた言葉を思い出した。その言葉を頭の中で何度も反芻してみる。正直、タバサのことは好きだ。女として好きと言うよりも、保護対象として好きだというのが本心だが、それでも惚れている、ような気がする。そんなタバサに寂しい思いはさせたくはない。他にも女のいる俺と本心から何かしらの行為を望むのであれば、可能な限り応えてやりたい。俺は覚悟を決めた。だが、その前に言っておかなければならないことがある。
「悪い、待たせたな」
 俺がリビングに戻ると、タバサは顔を上げて微かに微笑んだ。迷った挙句、俺はタバサの隣に腰掛けた。向かいのソファに座るより、近くで話した方がいい。
「なあ、タバサ。少し俺の話を聞いてくれるか?」
 タバサは不思議そうな顔をしながらも、当然といった様子で頷いた。
「タバサ、いや、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。俺は多分、お前が隠していることを知っている」
 案の定、タバサは俺の言葉を聞いて目を見開き、次いで身を竦ませながら哀しそうに俯いてしまった。シャルロット・エレーヌ・オルレアンとはキュルケから聞いたタバサの本名だ。キュルケとは本人に話さない約束をしていたが、秘密を知って黙ったまま、タバサと今後も付き合っていくことは俺には出来ない。
「勘違いしないでくれ。お前を脅そうとか言うんじゃない。むしろ、お前に協力したいと思ってる。けどな、今の俺の力なんかじゃお前の役に立ってやれそうにない。だから、少し時間が欲しい」
 タバサは顔を上げ、怪訝な表情で俺を見つめてきた。そんなタバサに俺は国獲りの計画を明かし、力を得た暁には協力を惜しまないと告げた。考えてみればタバサに計画の件を話すのはこれが初めてだ。誓紙の時にも簡単な説明をしていたとはいえ、タバサも驚いたらしく、再び目を見開いている。
「だから少しだけ待ってくれ。家族を取り戻して、お前がいつも笑っていられるようにしてやる。その為なら俺はどんなことでもするつもりだ」
 言って俺が黙り込むと、今度はタバサが朴訥と自身の身の上を語り始めた。思い出すのが辛いのか、時々堪え切れない様子できつく目を閉じながらも、言葉を止めようとはしない。その内容はキュルケの推論通り、父親を殺され、母を廃人同様にされ、一度も言葉を交わすことなく妹を奪われた十二歳の少女の辛く悲しい話だった。
 タバサが一通り語り終えると、リビングに沈黙が訪れた。俺は自分とタバサのグラスにワインを注ぎ、それを渡してやってから、頃合を見て言葉をかけた。
「正直に言えば、俺はお前を守ってやりたいとは思うが、お前に惚れているかどうか、自分でもよく判らない。だから、お前が嫌なら俺に身体を任せる必要はない。そんなことをしなくても俺はお前に協力する。約束する」
 俺の言葉を真剣な面持ちで聞くと、タバサはソファから立ち上がってテーブルの上にグラスを置き、マントを取って幼い裸身を晒しながら、誓うように囁いた。
「それでもいい。気持ちも身体も、全て捧げる。わたしが捧げたい」
   ★★★
 捧げたいと言ってはくれたが、既に保護欲を抱いている俺に取って、惚れた云々を抜きにしてもタバサが大切な存在であることに変わりはない。そんな相手にいきなり奉仕や陵辱、ましてや薬の使用など出来る筈もなく、俺はタバサに自分のシャツを着せてやってから、改めて一緒に酒を飲むことにした。
ぶかぶかのシャツを全裸に纏ったタバサは、まるで自分の娘のように可愛い。今となってはジェシカも娘として可愛いのだが、年齢以上に身体が育ち過ぎている。さながら長女というところか。比べて次女のタバサは身体つきも幼く、無垢な分だけ愛らしくもある。再び酒を飲み始めてからは常時照れたように微かに笑い、穏やかな眼差しで見つめてくる。安心しきった笑顔だ。可能な限り早く、いつでもこんな笑顔でいられるようにしてやりたい。
「抱っこ」
 不意にタバサが小声で呟いた。隣を見ると、頬を染めて恥ずかしそうにしている。俺の膝の上に載りたいのだということは判ったが、タバサはシャツ一枚の姿だ。丈が長い為に秘所も尻も隠れてはいるが、この状態で抱っこなどしたら理性が保てる自信がない。現にそう思っただけでズボンの中の陰茎が勃起を始めている。
「いや、そんな格好だし、今日はこのまま――」
 だが、タバサは立ち上がって正面から俺の膝の上に載ってきた。肝心な場所は見えてはいないが、少しだけ裾が捲くれている。
「おい、見えちまうぞ」
「かまわない。全部捧げる」
 タバサは本当に気にした様子もなく、ゆっくりと俺の首に腕を絡めてくる。勃起しかかった陰茎にも気づいているのだろうが、怯えた素振りもない。小さな身体の重みと感触、そして甘く香る体臭に、俺は堪え切れずにタバサをそっと抱きしめた。触れた場所に当たる身体の温かさが心地いい。一頻り互いに無言で抱き締め合ってから僅かに身体を離すと、タバサは顔を俺へと向けて目を瞑り、俺は何の迷いもなくその可憐な唇にキスをした。
   ★★★
 翌日の夜、俺はアンリエッタから届いたばかりの手紙を持って調剤小屋へと向かった。伝書フクロウの届けてくれたその手紙には、王城周辺の土地の入手状況と共に、即位が五十日後に決まったことが記されていた。これである程度の期限が切られたことになる
 モンモランシーと二人で改めて計画を見直してみると、やはり危惧すべきなのは俺が貴族になるための理由だった。当初は適当な理由をアンリエッタに用意させるつもりだったのだが、それで他の貴族が納得するか確信が持てない。例え反対があってもアンリエッタの力で貴族になることは出来るだろうが、無用な敵は不要だ。可能であれば自分で貴族になる為の正当な理由を確保しておいた方がいい。まずは第一段階として貴族にならなければ、その後の計画を実行することが困難になる。
「どんな理由なら、他の貴族が納得する?」
「そうね、武功っていうなら、国境周辺の小競り合いを沈静化させるとか。理由としては弱いけど、長い間、問題になってることだし」
 詳細をモンモランシーに尋ね、俺は首を横に振った。現時点で戦力と呼べるほどのものを、俺は持っていない。
「うーん、あとは、貴族を専門にしてる泥棒を捕まえるとか。やっぱり理由としては弱い気がするけど、結構たくさんの貴族が被害に遭ってるらしいから。そうすれば多くの人が、あんたが貴族になることに賛同してくれるかも」
 再度詳細を問うと、建物の壁などを魔法で土くれに変えて侵入を図っていることから『土くれ』と名付けられた件の泥棒は、貴族のみを相手にし、所持する秘宝、特に稀少な魔法具を好んで盗んだ後、大胆にも領収のサインを残していくのだと言う。相手をバカにしているのは明らかで、被害に遭った貴族にしてみればこんな不愉快な話はないだろう。被害はこの国だけでなく各国に渡り、治安を担う衛士隊などに一度も捕まっていないということは、かなりの腕前の魔法使いに違いない。
「でも難しいわよね。誰も捕まえたことのない相手だし。第一、この国にいるのかどうかも判んないし。言い出しといて悪いけど、やっぱり無理ね」
「……いや、そいつを捕まえよう」
 他国の兵も絡んでくる国境の件よりは何とかなりそうだ。策を練れば戦力のない俺でもどうにかなる可能性がある。『土くれ』が男か女か、一人か複数かは判らないが、貴族だけを狙うということは逆に誘き出すことも出来るだろう。問題はアンリエッタから兵を借りずに自力で捕らえる方法だ。仮に兵を借りれば、平民である俺を軽視して手柄を横取りされかねない。どうしても無理なら当初の考えの通り、貴族になる理由をアンリエッタに用意させ、納得しない貴族を潰せばいいだけの話だ。
「相手が女とは限んないわよ?」
 俺の言葉に目を丸くしながらモンモランシーが言った。俺が『土くれ』を女と見込んで捕らえたがっているとでも思ったのだろう。確かに女なら色々と面白い。
「別に女じゃなくてもいいんだよ」
「嘘ばっかり」
 モンモランシーはそう言って、呆れたように溜息を吐いた。
   ★★★
 一通り『土くれ』の対処法をリビングで相談した後、モンモランシーは酒の準備をし、服を脱ぎ捨ててソファに座ると、俺にも全裸になって欲しいと頼み込んできた。風呂に入ってからにしてくれと俺が告げると、言うことを聞いてくれるまで絶対に風呂は貸さないと言う。どうも体臭が目当てらしい。仕方なく俺は裸になって隣に座った。すると今度は、優しくするから自分の膝の上に載ってくれと言い出してきた。俺は宮沢賢治の『注文の多い料理店』を思い出しながら指示に従った。壷の中の塩でも身体に揉み込まれるのかと思ったが、モンモランシーは違う場所を揉んできた。
「あはっ、これが玉? ほんとに丸っこいんだ。あっ、こっちにもある。動くのね、これ」
 何かされるのは予想していたが、モンモランシーは両手で俺の陰嚢だけを愛撫し始めた。俺の体臭を嗅いではいるが、陰茎には手を触れようともしない。延々と陰嚢責めだ。だが、その手付きは優しく気持ちよく、既に勃起していた陰茎からは先走り汁が溢れ始めている。
「おい、モンモン。いい加減にチンポも握ってくれ」
「もうちょっと待って、もう少し形なんかを把握してから。うわぁ、袋ってこんな伸びるんだ」
 ルイズのようにモード名を付けるなら、現在は興味津々といった感じの加虐実験モード。残りは加虐淫臭モードと被虐淫臭モードとなるが、まだそっちの方がいい。考えてみればルイズ同様、モンモランシーもどこに切り替えスイッチがあるのか判らない。いずれは全ての女にモード名を付けてやろうと思いつつ、俺は半ば諦めることにした。もう好きにさせてやろう。
「ん、だいたい判った。それじゃ御希望通り、握ってあげるわね」
 俺が観念すると同時にモンモランシーは陰茎を扱き出した。完全に遊ばれている気がする。
「うふっ、もう先っぽこんなに濡らしてたんだ。ごめんねぇ、よしよ~し」
 穏やかな口振りとは裏腹に、その手付きは容赦なく一物を擦り上げ、俺はもう限界間近だ。
「モンモン、もう出る」
「まだダ~メ」
 意地悪くそう言うと、モンモランシーは手の動きを止め、陰茎を強く握り締めた。尿道が圧迫され、出したいものが出せない辛さに俺は顔を歪めた。
「ふふっ、苦しそうな顔。こんなにビクビクさせちゃって、可愛い。こうすると、どう?」
 一物を強く握り締めたまま、モンモランシーは手を上下に動かし始めた。根元の皮膚が引きつるものの、これはこれで恐ろしく気持ちがいい。
「出せなくて辛いんだ? まだビクビクさせてるもんね? 出したい?」
 微笑みながら問いかけてくるモンモランシーの言葉に、俺は呻きながら何度も頷いた。
   ★★★
 加虐と被虐は表裏一体とはよく言ったものだが、通常はどちらかに傾くものだとばかり思っていた。タバサは不明だが、シエスタとアンリエッタは間違いなく被虐、恐らくジェシカも被虐、どちらかと言えばキュルケも被虐、ルイズは加虐だろう。もちろん各々反対の要素もあるだろうが、どちらが強いのかと言えば前述のようになる、と思う。だが、当初は加虐だとばかり思っていたのだが、モンモランシーだけは今一つ判別がつかない。バランスがいいと言えばそうなのだろうが、俺を嬲っている時も、俺に嬲られている時も幸せそうにしている。流石は本物、奥が深いと言うべきか。
「んはぁ、嗅がせてよぉ、んんぁ、お願いだからぁ、はあぁ、嗅がせてぇ」
 いたぶられた後、先日のように固定して精液をかけてやると言うと、モンモランシーはいそいそとベッドの上で大の字になった。が、仕返しもせずに望む行為をしてやる俺ではない。固定液を垂らして身体の自由を奪い、調剤室からガラス容器と刷毛を取ってくると、俺は一人で自慰を始めた。惣菜としてモンモランシーの裸は見るが、近づくこともなく既にガラス容器の中に二回の射精を終え、現在は三回目の放出間近だ。モンモランシーは一物の臭いを、せめて容器の中の精液の臭いを嗅がせてくれと言ってくるが、それでも放置されながら乳首を尖らせて秘所を濡らしている。息も乱れ、この状況に興奮しているのは明らかだ。
「んはぁ、ねえしちゃおう、ふあぁ、もう入れちゃおうよぉ、はあぁ、ねえってばぁ」
 懇願するモンモランシーを横目に俺は新たな精液をガラス容器に出すと、その容器と刷毛とを持ってベッドに上がった。期待に満ちた目でモンモランシーが俺を見上げてくる。
「で、この中に三回分の精液が入ってるわけだが」
「うんうんっ、どうするのぉ、それぇ? 私のお鼻に全部入れちゃうのぉ?」
 俺は苦笑した。三回分の精液を鼻で飲むつもりか。いや、よくよく考えればこの縦ロール少女は本物だ、やりかねない。試してみたいが、当人の望む行為では仕返しにならない。俺は刷毛を容器の中に入れて粘液を絡め取ると、それをモンモランシーの右膝に塗りつけた。
「あんっ、ねえ、んあっ、そんなとこじゃなくてぇ、ふあっ、もっと近くにしてぇ」
 俺は答えずに刷毛で右膝から脛までを精液で塗り上げると、次に左足に移った。同じく膝から脛まで塗り残しがないように丁寧に刷毛を這わせていく。
「んうっ、くすぐったいぃ、んあっ、近くに塗ってぇ、はあっ、お願いぃ」
 両足が終わると今度は手だ。まずは右手から肘まで、そして左手から肘へ。今の状況では絶対に臭いを楽しめない箇所だけに精液を塗していく。モンモランシーは必死に首を傾け、鼻を引くつかせているが、物足りないのだろう、辛そうな顔をしている。
「んくはぁ、お願いだからぁ、はんんっ、謝るからお願いぃ、はうんっ、ごめんなさいぃ」
   ★★★
 適当なところで虐げるのを止め、容器の中に残った精液を顔にかけてやった後、俺は絶頂し続けるモンモランシーを抱えて風呂に入った。モンモランシーは嫌がったが、近い内に身体中にかけてやると言うと渋々と身体を洗い始めた。共に浴槽に入り、背中を抱いて両の乳房を後ろから揉み上げていると、モンモランシーは後ろ手に陰茎を握って優しく扱き始め、俺はそのまま湯の中に精を放った。再度洗い場で身体を洗ってからリビングに戻ると、もう夜が明けようとしていた。
「帰っちゃうの?」
 脱ぎ捨てていた服を俺が拾おうとすると、モンモランシーが尋ねてきた。裸のままソファに座り、飲み残しのグラスにワインを注ぎ足している。
「もう朝だしな、そろそろ帰って寝るよ」
「もう少し一緒にいたい」
 黙って隣に腰掛けると、モンモランシーは嬉しそうに笑いながら俺に身を寄せてきた。
「……この前、ここでキュルケとしてたよね? なんで私には入れないの?」
 拗ねた口調でそう言うと、俺の胸に手を這わせてくる。
「最初はキュルケが勝手に俺のを入れたんだよ。後は勢いでしちまっただけだ」
「答えになってないわよ。なんで私には入れないの?」
「何だよ、入れて欲しいのか?」
 モンモランシーは俺を見上げ、真顔で頷いた。キュルケへの嫉妬かとも思ったが、どうも本心から望んでいる様子だ。そうしてもいいのだが、惜しい気もする。俺は正直に気持ちを打ち明けることにした。今更、隠すこともない。
「入れないのは、まだ処女のお前を楽しみたいからだ。そんなお前と色々するのは刺激があるしな。興奮もする。いずれはお前のマンコもケツ穴も犯すが、今は充分満足してる。答えになってるか?」
 モンモランシーは頬を染めながら再び頷いた。
「や、やっぱりお尻にも入れるつもりなんだ?」
「当たり前だ。お前も前に入れてもいいって言ってたろうが」
「もしかして、もっと酷いこともするつもりなの?」
 口調が変わっていることに気づき、俺はモンモランシーの顔を見つめた。どうやら興奮し始めているらしい。そういえば以前に自分から、言葉にも敏感だとか言っていた気がする。どの程度敏感なのか、確認してみるいい機会かもしれない。
「もっと酷いって何だ? ケツ穴にバイブ入れたまま、マンコを犯したりすることか?」
「そ、そんなこともするつもりなの?」
「普通だろ? ケツとマンコにバイブ入れたままチンポをしゃぶる方がいいか? だらしない小便穴を責められたり、鼻で小便飲まされたりする方がお前の好みか?」
「い、入れられたまま、はぁ、オシッコの穴、んぁ、鼻で飲まされたり、あぁ」
 呻くように言いながら、モンモランシーは全身を紅潮させている。アンリエッタが嬉ションした時の状況にそっくりだ。だが、アンリエッタは愛撫も受けての放尿だ。モンモランシーは言葉だけで放つことが可能かもしれない。俄然、面白くなってきた。
「後は、そうだな。縛って全部の穴にバイブ入れたり、ケツ穴の中に小便したり」
「あふぁ……ちょっと……はんぁ……ちょっと待って……ふあぁ……もう言わないで」
「お前の好みで言えば、身体中に精液付けたまま、屋上から小便なんてどうだ? みんなの見てる前で。ちゃんとできたら一日中、好きなだけ汚れたチンポの臭いを嗅がせてやるぞ?」
「んはあっ……一日中ぅ……んうんっ……汚れたぁ……はああっ……んはああああああっ!」
   ★★★
 その日の夜、俺は借りていた本を図書館へと返しに行き、ついでに『土くれ』について調べてみた。あまり資料になるものはなかったが、領収のサインには『土くれのフーケ』と記載があることが判った。フーケというのは偽名だろうが、個人名なのか集団名なのか判別が付かない。これ以上のことはアンリエッタに手紙を書き、衛士隊の資料を確認して貰うしかなさそうだ。そう思って図書館を出ようとしたところでタバサと行き会い、何をしていたのかと尋ねられ、俺は『土くれのフーケ』のことを説明してやった。
「捕まえればいいの?」
 一通り話し終えた後、何でもないことのようにタバサが尋ねてきた。俺は苦笑して、その方法を考え中であることを話した。
「必要ない」
「お?」
「わたしが捕まえてくる」 
「ちょっと待て」
 いくら成績優秀なタバサでも相手はおそらく大人の魔法使いだ。人数だって多いかもしれない。そんな相手にタバサ一人で適う訳がない。それに元々、計画の立案にモンモランシーは必須としても、実行に関しては誰一人女たちを加える気はない。俺はそう語った。
「平気。あなたの力になりたい」
 俺の言葉を真面目な顔で聞いた上で、タバサはそう言った。
「駄目だ、認めない」
 俺は何度も止めたのだが、タバサは譲らない。夜も遅い時間だったので、俺は取り敢えずタバサを物置小屋へと誘った。
   ★★★
「北花壇騎士?」
「そう」
 俺の質問にタバサは頷くと、手にしたグラスに口をつけた。俺はリビングのソファの上、息を吐きながら小さく頭を振った。とてもじゃないが信じられない。
 タバサの話では、タバサはガリア国の北花壇警護騎士団という組織に属する騎士で、事が起こる度に国に呼び戻され、危険な任務に従事させられていたという。成績優秀どころか、大人たちに混じっても全く引けを取らない程の腕利きらしい。だが、王家が服務中のタバサの死を目的としていることは明白だ。タバサとしても母親を人質に取られている以上は王家に逆らえず、辞めたくても辞められないのだろう。人のことは言えないが、やり方が汚過ぎる。ガリア王女の名はイザベラというらしいが、いつか絶対に泣き叫ぶほど前も後ろも犯してやる。
「だから平気」
 タバサはそう言って隣の俺に許可を求めてきた。
「……やっぱり駄目だ。この件だけは許さない」
 俺は頑として言い張った。先日タバサが自身の身の上を語ってくれた時、このことを言わなかったのは俺が心配すると思ってのことだろう。それだけに覚悟を決めて話してくれたのは判るが、駄目なものは駄目だ。何かしらの戦力を得たいと思っていたとは言え、タバサをその任に就けようなどとは考えたこともない。何より危険なことをさせたくはない。目の前の少女が怪我でもしたら俺は躊躇いなく相手を殺す。
「どうしたら、許してもらえる?」
「なあ、タバサ。前にも言ったろ? お前は強いのかもしんねえけど、万が一ってこともあるからなって。あの時と多少は事情が違ってるけど、俺はお前を荒事なんかに巻き込みたくねえんだよ。これだけは判ってくれ、頼む」
 そう言って頭を下げると、タバサは嬉しさと寂しさが入り混じったような複雑な顔で俺を見つめ、やがてゆっくりと頷いた。
   ★★★
[2011年03月16日] カテゴリ:【SS】零の使淫魔 | TB(-) | CM(-)

零の使淫魔 番外編『人型使い魔競技大会』

零の使淫魔・番外編『人型使い魔競技大会』
   ★★★
 その日、俺はルイズと一緒に『人型使い魔競技大会』の会場へと来ていた。俺は出場を拒否したのだが、貴族のステータスに関わる重要な催事であるらしく、結局は押し切られてしまったのだ。本音を言えばうんざりだが、人型の使い魔が他にもいるのを見てみたかったということもある。そして出る以上はルイズの使い魔として役に立ってやるしかない。良い結果でも出せれば、後で見返りを求めることが出来るかもしれない。
 ルールは簡単で、人型の使い魔四人がステージ上に設置された卓上ゲームで競い合うというもの。事前に係員に申告すれば、使い魔の代わりに主人が卓に付いてもいいらしい。この卓上ゲームは各国に統一のルールで浸透しているらしく、聞いたところによると、元の世界の麻雀に酷似しているようだ。麻雀なら俺でもできる。後は成り行き任せとしよう。
 会場に入って受付を済ませると、俺とルイズは係員に名札を手渡された。参加許可証を兼ねているので出場前に胸に付けろという。同時に渡された対戦表を確認すると、俺は初回から出番らしい。まあ、待たされ続けるよりは気が楽でいい。
 その後、指定された控え室へ行って競技のルールを確認していると、先刻とは別の係員がやってきた。全身を西洋風の鎧で固めており、名前はアルというらしい。間もなく開始時間とのことで、アルは俺たちをステージの裏へと促した。再び名札を付けるようにも言われ、俺とルイズは指示に従った。
 そして一回戦。毎回、四組が客席に向かって名乗りを上げてから競技が始まるとのことで、俺たちはステージの後方に立った。目の前に広がる客席は満杯のようだ。立ち見客の姿もちらほら見える。
「それでは、第二十八回人型使い魔競技大会を始めます!」
 満員の会場にアナウンスの声が響く。どこか聞き覚えのある声だ。隣のルイズも同様の感想を抱いたらしく、首を傾げて司会者席を見つめている。
「司会はあたし、パンドラ所属の筑紫澪、アシスタントはモモンガの桃太郎、そして解説はこちら、マスク・ザ・マネーこと――」
 黒ワンピースを着たパイナップル頭の少女が、小動物を肩に乗せたまま傍らのツインテール少女を掌で示す。
「うっさい! バラすな! バーカバーカ! ん、こほん、三千院ナギである」
 紹介された少女が偉そうに言った。なかなかプライドが高そうだ、やはり貴族だろうか。この少女の声にも聞き覚えがある。と言うか、どちらもルイズそっくりの声だ。
 俺とルイズの困惑を知らず、澪のアナウンスによって来賓客が紹介されていく。その中にはアンリエッタの姿もあった。
「では、第一回戦を始めます! 出場者の方は、ステージの前へ」
 澪の指示に従って俺とルイズは歩を進め、マイクの前に立った。ルイズが小さく咳払いをして、マイクに口を近付ける。
「私はトリステイン王国、公爵家のルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。横にいるのは使い魔の――」
「妾はロバ・アル・カリイエの果て、コスモス荘のエーデルワイスぞよ! 使い魔はこの粘土じゃ!」
 ルイズの名乗りの途中、ドレスを着たふわふわ髪の少女が客席からステージに上がり、マイクを奪って言い放った。その手の中には歪な形の粘土が握られている。どこから見ても人型に見えない。それ以前に、小さ過ぎんだろ、それ。
 ふと思い付いて当人を見ると、胸元には名札がなく、出場者ではないようだ。忽ち数人の警備員に取り押さえられ、ステージの裏へと引き摺られていく。
「退場など認めぬ。ちょ、止めい、コーチぃ、助けてぇ!」
 一方のルイズはといえば、普通なら名乗りを邪魔されて怒りそうなものだが、この間、唖然として立ち尽くしたままだ。まあ、仕方ないだろう。何故なら、この少女もルイズそっくりの声だったのだから。
   ★★★
 決勝戦。ここに来るまでに俺は気力も体力も使い果たしていた。使い魔やその主人と卓上ゲームで争い合い、時には殴られ、時には脇に控えていた主人や使い魔が乱入してきたりするのだ。ナース服を着た幼女だの、十二歳の押し掛け幼な妻だの、元気でやんちゃなチビメイドだの、疲れるのも当たり前だ。ついでに言えば全員がルイズに似た声の上に華奢な身体つきで、まるでご主人様本人を相手にしているようで、やり難いことこの上なかった。初回から疲れ果ててしまい、他の参加者を確認する気も起こらなかった程だ。
「いいわ、最後は私がやるから。アンタは休んでなさい」
 ここまでの戦績に満足しているのか、不意にルイズがそう言ってくれた。俺は肩で息をしながら黙って頷いた。
 やがてルイズの何度目かの名乗りが終わり、次にマイクの前に立ったのはアイドル歌手のような衣装を着た少女だった。隣に幼女を連れている。
「私、ロバ・アル・カリイエにある神楽坂女学院の大海恵です。お仕事で歌を唄ってます。こっちは使い魔のティオです。よろしくお願いします」
 言って、少女と幼女が客席にぺこりと頭を下げた。二人ともなかなか素直そうだ。何より少女の声は明らかにルイズとは違うので、見ていて変な気分にならなくて済む。俺は安堵の溜息を吐いた。が、次の出場者の名乗りを聞いて、再度暗い気持ちになった。何かおかしいだろ、これ?
「私はロバ・アル・カリイエ、天道宮のフレイムヘイズ、シャナ。これは使い魔、零時迷子の悠二。こっちは付き添いの一美」
 愛想なく自己紹介をする黒髪少女の声は、またしてもルイズそっくりだ。その隣には同年輩の少年と少女。一見どちらも大人しそうだが、共に腹に一物抱えているようにも見える。そう思いながらも悠二を見ていると、不思議と親近感が沸いてくる。多分、シャナというご主人様に、俺と同じような扱いを受けているに違いない。
 更に、その次。
「私はロバ・アル・カリイエの大橋高校、逢坂大河。この犬は竜児」
 これまたルイズそっくりな声で、容姿もどこか似ている少女が名乗った。シャナ同様、全く愛想がない。但し、シャナは無愛想だが、大河はもの凄く不機嫌そうだ。やはり貴族で魔法使いなのか、杖の代わりに木刀を持ってもいる。武闘派のメイジなのかもしれない。近付かないでおこう。
 と、大河の木刀を間近に見たからなのか、シャナが身に着けていたマントの中から大太刀を取り出した。同時に黒髪が赤く染まり、火の粉を吹き始める。どこに入ってたんだよ、それ? とか、お前の髪、燃えてんぞ? とか言ったら殺されそうなので、取り敢えずは見なかったことにしようと思う。
 押し黙ったまま行く宛てなく視線をさ迷わせていると、客席の最前列に座っているシエスタに気付いた。先刻までは居なかったようにも思うが、見落としていたのかもしれない。俺はシエスタに向かって小さく手を振った。シエスタもそんな俺を見て手を振り、声を掛けてきた。
「頑張って下さ~い!」
 その刹那、ふて腐れた顔をしてシャナを睨みつけていた大河が、満面の笑みを浮かべ、ステージから客席に飛び降りてシエスタに抱きついた。動物のような身のこなしだ。
「みのり~ん」
「え? ええっ? な、なんですか?」
 怯えた声でシエスタが問い掛けるが、大河は返事もせず、甘えるように頭をゴシゴシとその身体に摺り付けている。
「みのりんみのりんみのり~ん」
 大河を止めさせようと、彼女の使い魔の竜児を探してみるが、ステージ上に見当たらない。裏に回ってみると、なんと竜児は一人で床の清掃をしていた。その恍惚とした横顔を見て、俺は黙って踵を返した。シエスタには申し訳ないが、暫く放置しておこう。
   ★★★
 やがてと言うか、やっとと言うか、混沌の時を経て、決勝戦が始まった。ステージ中央に設置された卓に着いたのはルイズ、ティオ、シャナ、大河の四人だ。俺と悠二は並んで椅子に座ってそれを見守り、竜児はステージ裏から帰らず、恵はどういうつもりなのか、会場の音響チェックをしている。歌手らしいので、競技の最中に歌でも披露するのだろうか?
 姿が見えないことに気付き、周囲を見回してみると、シャナが連れていた一美は来賓席の前でアンリエッタと話し込んでいた。
「どのように相手から奪ったらよいのかしら」
「なるべく外面を良くしておいてですね。隙を見て強引に迫るんです。女の武器を使って」
 漏れ聞こえてくる内容によると、どうも碌な話をしていないようだ。そういえば、この二人も声が似ている。とは言え、これ以上聞いていても仕方がない。俺は耳を澄ますのを止め、卓の方へと視線を戻した。後から判ったことなのだが、ティオもまたルイズに似た声の持ち主だった。試しに目を閉じてみると、どれが誰の声なのか聞き分けがつかない。
「お前なんかに、絶対に負けない!」
「どんとこいよ!」
「バカにしないで! 私だってたまには上手くいくわよ!」
「……なにジロジロみてんの? 畳むよ?」
「うぉらっ!」
「んなーっ! もうやだあっ!」
「ちくしょー!」
「アンタ、そっちの子の首絞めてんじゃないわよ」
「どっちが勝っても優しい王様よ」
「トーチ!」
「リーチでしょ」
「うるさいうるさいうるさい!」
「ばかばかばかばか、ばかばっかりだお前らは――っ!」
 全部ルイズの声に聞こえる。というか、本当にこれは『人型使い魔競技大会』なのだろうか? 卓についている四人を見ても、その前の対戦者を思い返しても、貧乳品評会としか思えないのだが……。
「みんな――っ! 今日は来てくれてありがと――っ!」
 準備が出来たのか、恵がマイクを手に会場に向かって叫んだ。
「じゃあ、いきまーす! プリキュア5、フル・スロットルGOGO!」
 叫びに合わせて会場に音楽が流れ始め、恵が歌い始めた途端、客席のあちこちから「ババァ結婚してくれ!」と怒号が飛び交い始めた。応援なのか野次なのか判断がつかない。
 そうしている内に、横の悠二が俺に寄り掛かってきた。これまでの対戦で疲れているのか、深く眠ってしまっているようだ。しかし、男に凭れ掛かられて喜ぶ俺ではない。元の位置に押し戻してやろうと悠二の肩に手を伸ばしたところで、思いがけなく来賓席のアンリエッタと目が合った。アンリエッタは何かを否定するように首を横に振っている。が、俺には意味が判らない。その真意を尋ねようと口を開きかけた瞬間、アンリエッタが大声で叫んだ。
「ホモが嫌いな女子なんていません!」
(終わり)

以下参考資料

●釘宮理恵
ゼロの使い魔(ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール)
鋼の錬金術師(アルフォンス・エルリック)全身を西洋風の鎧で固めた係員
HAND MAID メイ(サイバドール・レナ)ナース服を着た幼女
りぜるまいん(岩城りぜる)十二歳の押し掛け幼な妻
超重神グラヴィオン(ブリギッタ)元気でやんちゃなチビメイド
住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー(梅木瑠璃/エーデルワイス)
ハヤテのごとく!(三千院ナギ)
絶対可憐チルドレン(澪、桃太郎、三千院ナギ)
金色のガッシュベル!!(ティオ)
灼眼のシャナ(シャナ)
とらドラ!(逢坂大河)

●堀江由衣
ゼロの使い魔(シエスタ)
とらドラ!(櫛枝実乃梨)

●川澄綾子
ゼロの使い魔(アンリエッタ・ド・トリステイン)
灼眼のシャナ(吉田一美)
げんしけん(大野加奈子)

●前田愛
金色のガッシュベル!!(大海恵)
Yes!プリキュア5(水無月かれん / キュアアクア)

●日野聡
ゼロの使い魔(平賀才人)
灼眼のシャナ(坂井悠二)
[2010年10月15日] カテゴリ:【SS】零の使淫魔 | TB(-) | CM(-)

零の使淫魔

零の使淫魔
   ★★★
「あんた、今日から私の使い魔だから」
 抜けるような青空を背景に、俺の顔をまじまじと覗き込んでいる女の子が言った。黒いマントの下に、白いブラウス、グレーのプリーツスカートとニーソックスという装いの小さな身体を屈め、勝ち誇った目で見つめてくる。
 顔は、あどけなく可愛い。細身な身体の肉付きから察するに、年の頃は十二歳前後か。桃色がかったブロンドの長髪、透き通るような白い肌、くりくりとした鳶色の瞳、どう見ても外国人だが、話す言葉は日本語だ。しかし、俺にはその意味が判らなかった
「お前、誰だ? 使い魔って何だ?」
「口の利き方がなってないわね。まぁ、いいわ。私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。今日からあんたのご主人様よ。覚えておきなさい」 
 そう言ってルイズは俺の目を見つめ、ゆっくりと顔を近付けてきた。
「なっ、何をする気だよっ?」
「いいから、じっとしてなさい」
 鈴のようによく通る上品な声でそう言うと、ルイズは更に近付いて微かに唇を突き出した。
「ちょ、ちょっと待てっ。まずは説明を――」
「ああもう! じっとしてなさいって言ったじゃない! んむっ……」
 喚きながらルイズは俺の頭を両手で掴むと、そのまま強引に唇を重ねてきた。突然のこととは言え、柔らかな感触と鼻腔を擽る甘い香りが心地いい。思わず俺は手を伸ばし、目の前の華奢な身体を抱き竦めようとした。が、途端にルイズは唇を離し、俺の手を強く振り払った。
「か、勘違いすんじゃないわよ。い、今のは契約の儀式なんだからね」
 そう言いながらも俯いて顔を真っ赤にしている。言葉とは裏腹に照れているらしい。
「契約の儀式だ? いきなりキスしておいて何を言ってんだ? どういうことだよ?」
「あんた、平民が貴族にそんな口を利いていいと思ってんの?」
「平民? 貴族? さっきから何を言ってんだよ? ちゃんと説明しろ」
「口の利き方がなってないって言ってんでしょ。まあ、仕方ないわね。説明してあげる」
ルイズは溜息をついて立ち上がり、うんざりとした目で俺を見下ろしてきた。
「ここはトリステイン魔法学院。私は二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール、十六歳」
「十六歳?」
「あによ、文句あんの?」
 睨み付けてくるルイズを見て、俺は貧弱という言葉を飲み込んだ。
「……いや、続けてくれ」
「この召喚場で、あんたを使い魔として魔法召喚したのは私。よって、さっきも言ったけど、今日からあんたのご主人様よ。私の使い魔になれたことを光栄に思いなさい」
「魔法召喚って何だ?」
「はあ? あんた、魔法知らないの? どこの国から来たのよ? まさかロバ・アル・カリイエとか言うんじゃないでしょうね?」
「日本」
「何それ?」
「俺の住んでた国の名前だよっ! お前、俺のこと呼び出しておいて、そんなことも知らねえのかよっ!」
 俺がそう怒鳴ると、ルイズは腕を組んで思案顔になった。眉根を寄せて真剣に首を捻るその姿を見ていると、嫌な予感が芽生えてくる。
「おい、まさか、本当に知らねえのか?」
「うん。もしかしたら私、あんたのこと、別世界から召喚しちゃったのかも。ごく稀にそんなことがあるって聞いてはいたけど……」
「……別世界?」
 ルイズの返答を聞いて身体から力が抜けた。別世界から召喚という言葉が本当ならば、ここは俺にとっての別世界、つまり異世界ということになる。言われて周囲を見回すと、どうやら現在地は広場らしいが、地面のあちこちに記号や紋章のようなものが描かれている。近くに見える幾つかの建築物は単に異国風と言えないこともないが、どれも多かれ少なかれ違和感があるものばかりだ。こんな景色や建物には全く見覚えがない。
「……ルイズ」
「呼び捨てにしないで。これでも私はこの世界の貴族、ヴァリエール公爵家の三女よ。本来なら、あんたなんか口がきける身分じゃないんだから」
 険しい顔でルイズがそう言ってきたが、そんな話は二の次だ。
「俺は自分の世界から、この世界へと魔法で召喚されたのか?」
「だから、そう言ってるじゃない。はぁ、まさか別世界から、それも平民が召喚されちゃうなんて。もっとカッコいい使い魔が良かったのに。ドラゴンとか、グリフォンとか」
「ドラゴン? グリフォン? そんなの本当にいんのかよ?」
「いるわよ? 何で?」
 ルイズの素っ気無い答えに、俺は力なく笑った。冗談を言っているようには見えない。更に身体から力がぬけ、俺は地面に両手を着いた。
「……何で俺なんだ?」
「知らないわよ。あんたは不満かもしれないけど、こっちだってそうよ」
「だったら早く、元の世界に帰してくれよ」
「無理よ。召喚魔法である『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけ。使い魔を元の場所や元いた世界に戻す魔法なんて存在しないもの」
「ふざけんなっ! 勝手に呼び出しておいて帰す方法がねえだとっ?」
「ないわね。不満なら自分で探してみたら?」
 俺は固まった。多少投げ遣りな口調だが、ルイズの言葉に偽りの響きはない。となれば、元の世界に戻る方法は本当にないか、もしくは知らないのだろう。後者ならばいずれは帰れるだろうが、前者だった場合には死ぬまでこの世界で暮らすことになる。右も左も判らない異世界で、取り敢えず頼れるのは目の前の少女一人ということか。
「……判った」
「なにが判ったの?」
 ルイズは再度しゃがみ込み、俺へと身体を寄せてきた。よく見ると、本当に可愛らしい。目は子猫みたいによく動き、生意気そうな眉が目の上の微妙なラインを走っている。そして凛とした雰囲気を持つ端正な顔立ち。掛け値なしの美少女だ。
「これは夢だな。そして夢の中なら、何をしても許される。そうだな?」
「へ? あんた、なに言ってんの?」
 俺はルイズに飛びかかった。小さな身体を押し倒し、そのまま上に圧し掛かる。
「ななっ、なにすんのよっ!」
「夢だと判れば、こっちも好きにさせて貰う。まずは裸にしねえとな」
 暴れるルイズを押さえつけ、ブラウスのボタンを外そうとした瞬間、したたかに股間を蹴り上げられ、俺は地面に蹲った。
「くうっ、お、お前……」
「よ、よよ、よくも平民の分際で、ききき、貴族の私にっ……」
 ルイズは恐ろしい形相になって立ち上がり、前屈みになった俺の正面へと歩み寄ると、両手で押さえていた股間を再び強く蹴り飛ばした。
「なんであんたみたいなのが使い魔なのよッ!」
   ★★★
 学院敷地内の寮にあるルイズの部屋へと引き立てられた俺は、この世界の簡単な説明を受けた。魔法を使える者は貴族として敬われ、それ以外の平民は貴族に隷属、貴族はそれぞれ各国の王に従っているという。若干の差異はあるものの、まるで中世の封建制度だ。別の大陸には共和制の国もあるらしいが、やはり平民は議会に参加できないとのこと。どうやら民主主義とか平等とかの概念は当世界には無いようだ。まあ、俺のいた世界でも言葉負けしていた概念なんだが。
「何で俺が平民なんだよ? 俺も魔法が使えたらどうなんだ? そしたら俺も貴族ってことになるんだろ?」
 一通り身分について確認したところで、俺はルイズに尋ねてみた。どちらか選べるなら俺だって貴族の方がいい。異世界に召喚された以上、未知なる能力を得ている可能性もある。
「別世界からの召喚は珍しいけど、幾つか事例があんの。私の周りには、そんな使い魔を持ってる人はいないけど。でも、魔力のある人間が使い魔として召喚されたなんて話、聞いたこともないわ。だから、別世界の人間だって判った後でも、あんたのことを平民って言ったのよ。もし違うのなら謝るわよ。で、あんた、魔法使えんの?」
「使い方を教えてくれ。やってみるから」
 説明を受けた後、俺は教えられたルーンという言葉を唱えながら、魔法を使う際の必須道具であるという杖を振ってみた。ほんの少しの魔力さえあれば、杖の先が光るという。
「……光んないじゃない」
「……ま、仕方ねえか。いいや、平民で。それで、使い魔ってのは何すんだ?」
 借り受けた杖をルイズに手渡しながら、俺はそう尋ねた。平民である以上、俺は貴族少女の使い魔ということになるらしい。
「ご主人様のために出来ること全部よ。あんたの場合は、そうね、火を吐くとか、飛ぶとか無理みたいだし……。取り敢えずは掃除、洗濯、その他雑用かしら」
「ちょっと待て。掃除。洗濯、雑用だと? 俺はそんなことの為に呼ばれたのか?」
「あによ、他になんか特技でもあんの?」
「いや、特に……」
「だったら掃除、洗濯、雑用、当然じゃないの。だいたい、誰があんたを養うと思ってんの? ここ誰の部屋? ちゃんと働かないと叩き出すわよ? 行く宛てでもあんの?」
「……判った。しばらくはお前の使い魔とやらになってやる」
 ルイズの居丈高な態度と口調に対して、俺は不満の言葉を飲み込んだ。確かに今は世話になるしかない。
「ほんと、口の利き方がなってないわね。まあ、いいわ。さてと、魔力を使ったせいか、眠くなっちゃった。そうそう、あんたは今日からそこで寝なさい」
 ルイズは欠伸をしながら、さも当然のように床を指差した。
「犬や猫じゃねえんだぞ」
「しかたないでしょ。ベッドは一つしかないんだから」
 そう言いながら、ルイズは面倒臭そうに毛布を一枚投げて寄こした。次いでブラウスのボタンに手を掛けて脱ぎ捨て、スカートも下ろしてキャミソール姿になっていく。これには俺も慌てた。
「なっ、何やってんだよっ!」
「あによ、一々うるさいわね。寝るから着替えるに決まってんじゃない」
 純白のネグリジェを手に、きょとんとした顔でルイズが言い返してくる。
「お前、男の前で着替えても平気なのか? 恥ずかしくはねえのかよ?」
 異世界だけあって倫理観が違うのだろうか。だとしたら、対応を間違えた先刻の俺は蹴られ損だ。今後の為にも確認しておくべきだろう。
「はあ? 男? 誰が? 使い魔に見られたって何とも思わないわ」
「それって本当に犬や猫の扱いじゃねえか。だったらさっきは何で蹴ったんだよ?」
「平民の分際で気安く私に触れるからよ。それに、発情した使い魔を躾けるのは、飼い主の義務じゃない」
 今すぐこの場で犯してやろうかとも思ったが、何せ相手は魔法少女だ。迂闊に手を出すと、どんな仕打ちを受けるか判らない。俺は黙って毛布を掴むと、頭から被って床に横になった。
「じゃあ、これ。明日になったら洗濯しといて」
 言葉と同時に、ばさっ、ぱさっと何かが近くに飛んでくる音がした。毛布から顔を出して確認すると、レースのついたキャミソールとパンツが俺のすぐ傍の床に散らばっている。手を伸ばして触れてみると、まだ生温かい。どうやら就寝時には下着を着けない主義らしいが、男として更に否定されたようで、屈辱感が込み上げてくる。が、ここはじっと我慢だ。
 俺は再び毛布の中へと潜り込み、歯を食い縛ってやるせなさに耐えた。それでもいつしか自然に、手にした下着の甘い臭いを嗅いでいた。
   ★★★
 眠りから覚めて初めて目にしたものは、昨晩ルイズが投げて寄こした下着だった。未だ手に掴んでいたそれを顔の前に寄せ、改めて臭いを嗅いでみる。昨晩よりは多少薄れたものの、甘く、いい香りだ。よく見ると股布の部分に小さな染みがある。小水の染みだろうかと思い、恐る恐る鼻を近づけてみる。が、アンモニア臭はしない。自慰をしてこの部分に精液をぶち撒けたいとも思ったが、俺は頭を振ってその考えを遠ざけた。まだ早い。現状でそんな行為が発覚したら、この部屋から叩き出されてしまうだろう。そうなったら俺に他の行き場所はなく、異世界で野垂れ死ぬということになりかねない。
 無論、いつかはルイズを犯してやる。華奢な身体を犯しまくり、口も前後の穴も精液漬けにしてやる。陰茎の臭いを嗅いだだけで口からだらしなく涎を垂らし、自分から俺に跨ってくるような性奴隷に調教してやる。その為ならしばらくは使い魔の役を演じてやってもいい。それが昨夜、就寝前に考えた俺の計画だった。
 視線を移すと、ルイズはベッドの中で寝息を立てていた。毛布を剥いで立ち上がり、ベッド脇へと近付いてみる。ルイズは深く寝入っているのか、全く反応を見せない。それでも矢張りその寝顔は、実際の年齢よりも幼く感じられる。口を開くと貴族だご主人様だとうるさい高飛車な小娘だが、寝ている分には狂おしくなるほどの愛らしさだ。
 その無垢な寝姿を見ている内に、先刻の自制は霞のように掻き消え、新たな欲望が芽生えてきた。俺は毛布の上からルイズの肩をそっと揺すり、目覚めの気配がないことを確認すると、自らのジーンズとトランクスを脱ぎ捨てた。面倒なのでパーカーも脱ぎ、Tシャツ一枚を纏ったまま、一物を右手で扱きながらルイズの鼻先に亀頭を押し付けてやる。
「すぅ……すぅ……く……ふぅ……んっ……ふん……んっ……ふぅん……」
 昨晩風呂に入っていないために臭うのか、ルイズは眉間に皺を寄せたが、顔を背けることはなく、小さな鼻をひくつかせている。そんな小動物のような可愛らしい素振りを前にして、程なく陰茎は完全に勃起し、徐々に昂ぶりが近付いてきた。俺は行為を続けながら、亀頭の先端を濡らす先走り汁を自身の指先で拭い、その指をルイズの口の中へそっと挿し入れてみた。目が覚めていたら怒鳴られるどころでは済まないだろうが、それでも特に反応はない。この様子なら大丈夫だろう。慎重にルイズの舌へと我慢汁を塗りつけ、再び汁を拭っては口腔へと塗り込んでいく。そうしながら鼻の頭や頬に亀頭を擦り付けていると、流石に射精の限界が近くなった。とは言え、考えてみればこの部屋には後処理に使うティッシュがない。いや、あるのかもしれないが、どこにあるのかが判らない。
 俺は逡巡しながらも、結局は洗濯する予定のルイズの下着、ショーツの股布の部分に精液を放った。貴族の少女の下着にそんなことをしているという背徳感が、予想以上に深い快楽を与えてくれる。全て出し終えると、精液塗れのショーツをキャミソールで包み、その上から激しく揉み解す。これでこの二つの下着にはたっぷりと俺の淫臭が染み付く筈だ。たとえ洗濯して臭いが薄れようとも、染み込んだ体液が乾いて布地が硬くなろうとも、この先何度も何度も同じことを繰り返してやる。そんな下着をつけたルイズの姿を想像して、俺は恍惚となった。
   ★★★
 出すものを出して着衣を整え、精液の染み込んだ下着をパーカーのポケットに隠すと、俺は従順な使い魔として寝ているルイズを起こすことにした。小さな肩を揺さぶり、声を掛けてやる。
「おい、起きろ。朝だぞ」
「ふえ? え? あんた誰?」
「お前が呼び出したんたろうが。寝惚けてんのか?」
「……ああ、そうだっけ。くふぁ~あ、ん? あれ?」
 大きく欠伸をした後、ルイズは不思議そうな顔をして上半身を起こした。
「……なんか口の中、苦くて生臭い」
「お前、口臭持ちか? 早く治した方がいいぞ?」
 そう言ってやるとルイズは険しい顔で俺を睨み付け、不服そうに鼻を鳴らした。が、やがてぼんやりとした表情になって毛布を剥ぎ、もそもそとネグリジェを脱ぎ始めた。薄い胸、小さく硬そうな尻、そして無毛の秘所。一六歳にしては貧弱過ぎるが、少女の裸身が徐々に露になっていくのはなかなかの眺めだ。
「下着取って。そこのクローゼットの、一番下の引き出しに入ってるから」
 言われた通りに引き出しを開けると、中には高価そうな下着が大量に入っていた。俺は中からキャミソールとショーツを適当に引っ張り出し、ルイズに見えないような位置でポケットから先刻の汚れた下着を取り出して広げ、未だ粘りつく精液の部分を真新しいパンツの股布とキャミソールの胸の部分に素早く塗り込んだ。何度もその箇所を擦り、生乾きになったのを確認してからルイズへと手渡してやる。
「なにモタモタしてんのよ、グズね。ん? なんかこの下着、湿ってない? それに変な臭いがする」
「生乾きのまま仕舞い込んどいたんじゃねえのか? それにお前の下着だろ? 変な臭いがするとしたら、それはお前の体臭だろうが」
再びルイズは俺を睨んできたが、寝起きのせいか、怒鳴るほどの気力はないようだ。
「……あんたの躾け方、色々と考える必要がありそうね」
 呟くようにそう言うと、ふて腐れた顔付きで下着を着け、次いで気だるそうにベッドの縁へと座り込み、俺に向かって生足を伸ばしてきた。
「んだよ? まさか舐めろとか言うんじゃねえだろな?」
「く・つ・し・た。早く履かせなさい。今の引き出しの上の段。一番上にはブラウスとスカートも入ってるから。のんびりしてたら授業に遅れちゃうじゃないの」
「お前、俺を放って授業に出る気なのかよ?」
「なに言ってんの? あんたも一緒に来んのよ」
「は?」
「あんたは使い魔なんだから、ご主人様に同行するのが当たり前じゃないの」
   ★★★
 着替えを終えたルイズと共に部屋から廊下へと出ると、並びのドアの一つが開き、中から赤い髪の少女が姿を見せた。ルイズより背が高く、彫りが深い顔に、褐色の肌。一番上と二番目のブラウスのボタンを外し、豊満な胸元を艶かしく覗かせている。むせ返るような色気だ。
「おはよう、キュルケ」
 ルイズは赤髪の少女を見て顔をしかめると、嫌悪感の満ちた口調で挨拶をした。
「おはよう、ルイズ。もう噂になってるわよ? あなたの使い魔ってそれでしょ? 人間で、平民なんですってね? まあ珍しいっ!」
 キュルケと呼ばれた少女は俺を指差して問い掛け、何度も嫌そうに頷くルイズと見比べて笑った。どう見ても嘲りの笑みだ。俺は苛立ちを抑えてキュルケの顔、胸、腰、足と順番に眺めていった。平民で悪かったな。そう言うからにはお前も貴族なんだろうが、いつかは俺専用の精液便所にしてやる。褐色の肌が見えなくなるまで、白濁液で染め上げてやる。
「召喚魔法で平民を喚んじゃうなんて、あなたらしいわ。流石はゼロのルイズ。そうそう、あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。平民じゃなくて残念なんだけどね。フレイムっ!」
 勝ち誇った声でキュルケが自室に向かって呼び掛けると、部屋からのっそりと赤色の大トカゲが現れた。大きさは人間の大人程もあろうか。爬虫類特有の無機質な目だけでなく、燃え盛る炎の尻尾とチロチロとほとばしる火炎の舌までもが恐ろしい。むんとした熱気が立ち込める中、俺は慌てて後退った。
「おっほっほっ! 心配しなくても平気よ、あたしが命令しない限り襲ったりしないから。見なさい、火トカゲよっ! サラマンダーよっ! 『火』の属性を持つあたしにぴったりだと思わない? ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく第一級のブランドものよ? 好事家に見せたら値段なんかとてもつかないわ」
 キュルケは得意げに胸を張った。ルイズも負けじと胸を張り返すが、悲しいかな、ボリュームが違いすぎる。それを見てキュルケはにっこりと笑った。余裕の態度だった。
「おほほほほっ、あなたってば、どこを取っても貧弱ね。じゃあ、お先に失礼」
 そう言ってキュルケは炎のような赤髪をかき上げ、颯爽と去って行った。フレイムと呼ばれたサラマンダーが大柄な体に似合わない可愛らしい動きで、その後をちょこちょこと追っていく。
「くやしーっ! ああもうっ! なんであのバカ女の使い魔がサラマンダーで、私があんたなのよっ!」
 キュルケが廊下の先を曲がって姿を消した途端、ルイズは両の拳を握り締めて喚き始めた。使い魔としては慰めてやった方がいいのかもしれないが、事が俺自身にも関わっている為、藪蛇になる可能性も否定できない。場合によってはまた陰茎を蹴られる恐れもある。ここはさり気なく話を逸らした方がいいだろう。
「あいつ、ゼロのルイズって言ってたけど、ゼロって何だ?」
「……知らなくていいことよ」
 俺の問い掛けに、ルイズは不機嫌そうに顔を背けた。
「もしかして胸のサイズとかか?」
 俺はご主人様の胸を見つめて言った。キュルケと比べれば、そこは確かにぺったんこだ。
「なな、なに見てんのよッ!」
 結局、叫ぶルイズに股間を強かに蹴り上げられ、俺はその場に蹲ることとなった。
  ★★★
「は、腹が減った……」
 その日の午後、俺は空腹を抱えて廊下の壁に手を付いていた。召喚されてからまだ一度も食事を取っていない。というか、取らせてもらっていない。
 ――キュルケが口にしたゼロの意味を俺が知ったのは、当のキュルケと別れてからすぐのことだった。ルイズがトイレに行っている隙に、適当な生徒を捕まえて尋ねてみたのだ。疑問は呆気なく解け、俺はここぞとばかりにルイズを皮肉ってやることにした。
「ゼロのルイズか、なるほど、上手い通り名だな。魔法の成功率ほぼゼロ。それでも貴族様でいらっしゃる。よく俺を召喚とか出来たもんだ。偶然って恐ろしいよな」
「こ、この使い魔ったら、ごご、ご主人様に、ななな、なんてこと言うのかしらっ」
 黙っていれば可愛い顔を、ルイズは怒りで歪ませた。
「お前が教えてくれたんだろ? 魔法を使えるのが貴族で、それ以外は平民だって。お前、本当は平民なんじゃねえの?」
「今日は朝から一日ご飯抜きッ! これ絶対ッ! 例外なしッ!」
 ――故にこの有様だ。余程ゼロと呼ばれることを気にしているのだろう。ご主人様に同行、と自分から言い出したにも関わらず、一日その場に立っていろとまで指示してきた。だが、それだけ激しいコンプレックスを抱えているのだということは充分に理解できた。その点をどうにかして上手く利用し、今後、互いの立場を逆転させることは出来ないものだろうか。
「あの、大丈夫ですか?」
 一頻り考え込んでいると、突然、背後からそう声を掛けられた。振り向くと、メイドの格好をした素朴な雰囲気の少女が、大きな銀のトレイを抱えたまま心配そうに俺を見つめている。顔付きから察するに俺と大して程年齢は変わらないようだが、キュルケ程ではないにしろ胸部は豊かで、カチューシャで纏めた黒髪と顔のそばかすが可愛らしい。
「あれ? あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう平民の……」
 どれだけ噂になってんだよ、と呆れつつ、俺は目の前のコスプレ少女に尋ねてみた。
「君も貴族?」
「いいえ、私は違います。あなたと同じ平民です。シエスタっていいます。貴族の方々をお世話するために、この学院付きのメイドとしてご奉公させて頂いています」
 穏やかにそう言って、シエスタはにっこりと笑った。この世界に来てから初めて見た屈託のない笑顔だ。どうやら敵ではないらしい。
「服着てるだけじゃなく、本物のメイドさんってことか?」
「はい、そうです。それで、失礼ながら先ほどの悲しそうな呟き声を聞いてしまったんですけれど、お腹が空いていらっしゃるんですよね?」
 シエスタの真摯な問いかけに、俺は無言で頷いた。
「それでしたら、どうぞ、こちらにいらして下さい」
 そう言うと、シエスタは俺を促して歩き出した。
  ★★★
 シエスタに案内されたのは、食堂の裏にある厨房だった。大きな鍋が幾つも並ぶ中、コックやメイドたちが忙しげに立ち回っている。どうやら夕食の仕込みをしているらしい。
「少々お待ちくださいね?」
 片隅に置かれたテーブル前の椅子に俺を座らせると、シエスタはそう告げて厨房奥の扉の向こうへと消えた。何か食べ物を用意してくれるのならば有り難い。この際、贅沢は言わない。パンと水だけでもいい。少しでも体力が回復したら、この仕打ちに対する正当な復讐として、睡眠中のルイズに再び悪戯を仕掛けてやる。
 そんなことを思いながら周囲の視線に居心地悪く肩を竦めていると、程なくシエスタが戻ってきた。
「賄い食ですけれど、もし良かったら召し上がって下さい」
 そう言ってシエスタは右手で持っていたバスケットをテーブルに置き、次いで左手で支えているトレイの上から、一枚の深皿と木製のスプーン、木のコップとを俺の前に並べてくれた。バスケットの中にはパンが三つほど、コップの中には牛乳らしき液体が入っており、皿の中では薄茶色のシチューが湯気を立てている。見た目は元の世界の食物と何ら変わりはない。
「ありがとう、頂くよ」
 その心遣いに感謝しながら、俺はスプーンでシチューを掬い、恐る恐る一口食べてみた。何しろこの世界の物を食すのは初めてだ。元は異世界の住人である俺と根本的な味覚が違っていてもおかしくはない。だが、それはお世辞でなく美味かった。今までに食べたシチューの中で最高の味と言っていい。コクのあるシチュー自体もさることながら、程よい大きさに切られた肉と野菜と煮込み加減が絶妙で、ここが元の世界であったならば、シェフを呼べと言いたくなるところだ。俺は夢中になってスプーンを口に運んだ。
「お代わりもありますから、どうぞごゆっくり。それよりお食事、取らせて貰えなかったんですか?」
「はぐっ、んぐっ、ぷはぁ。小馬鹿にしたら、朝から一日食事抜きだと言いやがった。何が貴族だ、無能なくせに威張りやがって」
「まあ、そんなこと言ったら大変ですわ」
 シエスタは唖然とした顔をしている。他愛ない陰口一つに驚く程、身分制度がこの世界に浸透しているという証拠だろう。しかし、今一つ解せない。この世界には身分違いの恋愛など存在しないのだろうか。もしも貴族と平民が結婚し、魔力のない子供が生まれたとしたら、その子は貴族と平民のどちらに属せばいいのだろう。ルイズは少しは魔法が使えるらしいから貴族側だとしても、時には全く使えない貴族が現れたりはしないのか。また、年齢によってその能力が衰えたりはしないのだろうか。
 考え込みながらコップの中身を飲み、シチューを食べ、パンに齧り付いていく。やがて出された物をすっかり平らげると、俺はシエスタに向かって深々と頭を下げた。
「御馳走様。凄く美味かったよ」
「もういいんですか? お代わりもありますよ? 遠慮なんていりませんから」
「いや、もう充分だ。本当に助かった」
「なら、良かったです。今度からお腹が空いた時は、いつでもいらして下さいね?」
「ありがとう。お礼に何か手伝えることないかな?」
 ルイズとキュルケは既に性欲処理の奴隷候補だが、シエスタならば恋愛対象として考えてもいい。この世界に来てから初めて優しくされたということもあり、俺は手助けがしたかった。皿だろうが鍋だろうが幾らでも洗ってやる。床掃除でもいい。
「いいんですよ、お礼なんて……」
「何でもいいからさせてくれ。俺の気が済まない」
「えっと、それでしたら、午後のデザートを配るのを手伝って下さいますか?」
 申し訳なさそうに問い掛けてきたシエスタを見つめ、俺は大きく頷いた。
   ★★★
 シエスタから聞いたところによると、この学院の生徒も教師も全員揃って貴族とのことだった。平民は厨房にいるコックやメイドたちと、学院の事務所で働く数名、そして俺のみだと言う。シエスタも貴族には色々と含むところがある様子で、さり気なくその訳を尋ねてみると、時に身分の違いを笠に着た貴族に尻を撫でられたりするらしい。それでも無理矢理犯されるまでには至らず、軽く触られるだけで済んでいるのは、シエスタの直属の上司である厨房の責任者が学院長と昵懇の仲であり、あまり無体なことをすると退学だけでは済まなくなるからとのことだ。だが、それでも学院内が平民にとって無法地帯であるということには変わりない。
 貴族に対しての新たな憤りを抱え込みながら食堂で生徒たちにケーキを配っていると、中に一人、薔薇を手にして男子生徒たちと談笑している気障野郎がいた。ギーシュという名前らしい。
「なあ、ギーシュ。お前、今は誰と付き合っているんだよ? 恋人は誰なんだ?」
「付き合う? 僕にそのような特定の女性はいないのだよ。薔薇は多くの人々を楽しませる為にに咲くのだからね」
 確かに顔は美形だが、自分を薔薇に例えるなんて、見ているこっちが恥ずかしくなる程のナルシスト振りだ。俺はこういう奴が生理的に嫌いだ。反射的に殴り飛ばしたくなる。それでも何とか我慢してケーキを目の前の皿に置いてやった途端、ギーシュは俺を見つめ、馬鹿にしたように鼻を鳴らしてきた。
「ふん、君は確か、あのゼロのルイズが呼び出した平民だったな?」
「話し掛けんな低能。一生薔薇でもしゃぶってろ、死ね」
 俺が思わず本音を口にすると、ギーシュは顔を歪ませた。
「どうやら君は貴族に対する口の利き方を知らないようだな?」
「息が臭えから俺の前で喋んな。黙ってケーキ詰め込んどけ」
 つい言ってしまったとはいえ、今更本心を隠す気など毛頭無い。嘲りを込めてそう言い放ってやると、ギーシュは悔しそうに両の拳を握り締め、ゆっくりと席を立った。
「そこまで言うからには覚悟は出来ているんだろうね? 決闘だ」
「あ? 決闘ってことは、平民の俺が貴族様のお前を殴ってもいいってことだよな?」
「殴れるものならね。ヴェストリの広場で待っている。準備をしてから来たまえ」
 そう言い残してギーシュは食堂を出て行った。ギーシュの友人たちも下卑た笑みを浮かべて後を追っていく。その背中を見ながら幾分かすっきりした気分でいると、ルイズが俺の元へと駆け寄ってきた。
「あんたっ! 何してんのよっ! 見てたんだからねっ! 何を勝手に決闘なんか約束してんのよっ!」
「シエスタ、ごめん。手伝うって言い出しといて何なんだけど、俺の残りの配給分、任せてもいいかな?」
 俺はルイズの言葉を無視してシエスタへと歩み寄り、軽く頭を下げた。シエスタの顔色は真っ青だ。事の成り行きを見守っていたというよりも、恐怖に足を竦ませていたのだろう。それでも最早どうにもならないと思ったのか、俺の問い掛けにぎこちなく頷き返してくれた。
「怪我したくなかったら謝ってきなさい。今なら許してくれるかもしれないわ」
「ヴェストリの広場ってどこだ?」
「謝ってきなさいって言ってんのよっ! ご主人様の言葉には従いなさいよっ!」
「ヴェストリの広場ってどこだよ?」
「こっちだ、平民」
 尚も決闘を止めさせようとするルイズに繰り返し俺が尋ねると、事態を見ていた様子の男子生徒の一人が、顎をしゃくって食堂の出口へと歩き出した。もちろん、俺はその後を追った。
   ★★★
「さてと、では始めるとするか」
 広場に着いた俺を見て余裕の笑みを浮かべると、ギーシュは胸ポケットに差していた薔薇の花を手に取り、優雅な動作でゆっくりと振った。すると、宙に舞った一枚の花弁が瞬く間に甲冑を着た女戦士へと変わり、着地するなり俺に向かって拳を構えてきた。恐らく魔法で作り出した人形だろうが、人間とほぼ同じ大きさであり、自動制御されているようだ。
「これは何だ?」
「僕のゴーレムさ。美しいだろ? 名をワルキューレと言う。彼女が君の決闘相手だ」
「ふざけんなっ。俺の相手はお前だろうがっ」
「メイジと呼ばれる魔法使いが魔法で戦う、当たり前のことじゃないか。まあ、君がそれ程までに望むのなら、僕も一緒にお相手しよう。こちらは二人になってしまうが、君の言い出したことだ、よもや文句はあるまいね?」
 そう言いながらギーシュは再び薔薇を振った。今度は一枚の花弁が一本の剣に変わり、俺の足元へと落ちてきた。どうやら花弁一枚に付き一個の物体に変えられるらしい。
「君、不公平だというのなら、その剣を取りたまえ。怖いのであれば、一言こう言いたまえ。ごめんなさい、とな。それと土下座でもしてもらおうか。それで手打ちにしよう」
「……参考までに教えてくれ。残りの花弁は何枚だ?」
「ふん、そんなことを知ってどうするね? まあいい、教えてやろう。この薔薇のように八重咲きと呼ばれる状態のものであれば、総じて二十枚以上の花弁を持っているものだ。一重咲きは五枚以上、半八重咲きは――」
「ああ、もういい。質問した俺が馬鹿だった」
「どういう意味だね?」
「下らねえ説明なんか誰も頼んでねえだろが。俺は残りは何枚だって聞いたんだぞ? ほんとに低脳だな、お前。死んだ方が周りの人間は喜ぶんじゃねえか?」
 言葉でわざと相手の苛立ちを募らせながら、俺は身を屈めて剣を取り、何度か振って握りの具合を確かめた。予想より重いが、これなら振り回せるだろう。後はタイミングの問題だ。
「君は本当に下劣な言葉を――」
 予想通り文句を言ってきたのに合わせ、俺はギーシュに向かって駆け出した。喧嘩では、覚悟の有無と先手を取れるかどうかが勝敗に大きく関わってくる。途端にゴーレムが襲ってきたが、先刻の動きから推測していた通り、動作はそれほど素早くない。無視して更に目標地点へと突っ込むと、ギーシュは慌てて薔薇を振った。新たに三体のゴーレムが現れたが、俺はそれも無視して脇を擦り抜け、振り上げた剣を囮に、身構えたギーシュに向かって思い切り蹴りを放った。
「ごぶおぼっ!」
 腹部に衝撃を受けたギーシュは勢いよく吹っ飛び、地面へと転がった。俺は倒れたままのギーシュに駆け寄ると、剣の刃を相手の首筋に軽く押し当ててやった。
「この場で死にたくなかったら、今後は俺の指示に従ってもらおうか? 了承するのなら参ったと言え。それともまだ続けるか?」
 そうしている間にもゴーレムが襲ってくるかと思い、横目で背後の様子を探ってみたが、当の人形たちはその場に立ち尽くしたまま動かない。どうも主人の危機を前に手を出しかねている様子で、単に自律しているだけではないようだ。感情に似たものでも持っているのかもしれないが、俺にとっては都合がいい。
「言っとくが、平民の俺には命以外に失う物なんて何もねえかんな。先々捕まろうが、死のうが関係ねえ。お前の態度によっては、冗談抜きでほんとに殺すぞ?」
 怯える瞳を殺意を込めた視線で射抜きながら、殊更低い声で問い掛けると、ギーシュは完全に戦意を喪失したらしく、震える声で呟いた。
「ま、参った」
   ★★★
 決闘の後、俺はギーシュの部屋へと押し掛け、今後は服従するよう改めて約束させた。こういう場合、相手が恐怖を感じている内に取れるだけのものを取っておくのが俺の主義だ。とは言え、今のところ無茶な要求をするつもりはない。
 だが、話の途中、男子生徒たちが時折シスエタの尻を触っていることを伝え、そういう場面を見掛けたらその都度報告しろと指示すると、ギーシュは首を横に振ってきた。俺に逆らって仲間を庇うつもりかと思ったが、当人の口から出てきたのは意外な申し出だった。
「わざわざ君に報告するまでもない。そういう恥知らずな生徒は僕が教育しておこう」
「この場ではそう言っといて、黙認するつもりじゃねえだろな?」
「僕は貴族だ、約束は守る。君に従うのは不本意だが、約束した以上はそれも守るつもりだ。況してや相手が女性ならば、たとえ平民であろうと守ってやるのが紳士として当然の行いだ。そんなことで嘘を吐く必要はない。しかし、僕一人だけでは見落とすこともあるだろう。予め男子生徒たちを集めて、下劣な行いをしないように注意を与えておく必要があるな」
 ギーシュは真面目な顔でそう言い、同意を求めるように俺に視線を向けてきた。気障で自己愛の強い低脳でも、どうやら貴族としての矜持はちゃんと持っているらしい。
「けど、お前、言ってることとやってることが違うんじゃねえか? 食堂で俺に声を掛けてきた時は、かなり横柄な態度だったぞ?」
「仕方あるまい。初対面の平民に一々愛想を振り撒く程、僕の自尊心は安くはないのだよ。だが、まあ、たとえ平民でも君がもし女性だったら、また対応が違っていたろうがね」
 その返答に俺は苦笑した。が、女好きの点はともかく、ここまで言う以上は信用しても構わないだろう。もし何か企んでいたり、実際に黙認するようなことがあれば、顔の形が変形するぐらいに殴ってやればいいだけの話だ。
「なら、お前に任せる。シエスタだけでなく、他のメイドや平民たちにも気を配ってやってくれ。お前の出来る範囲で構わねえから」
 俺がそう言うと、ギーシュは腕を組んで満足げに頷いた。
「ふむ、相手が男であっても、頼られるというのは気分がいいものだな」
「じゃあ、もう少し頼ってやるよ。ルイズを懲らしめるのに何かいい方法ねえか?」
「なに? それは聞き捨てならないぞ? 君は自分の主人に反逆するつもりなのか?」
「別に反逆とまでは言わねえけどよ。股間蹴られたりとか、飯抜きとか、結構な仕打ちをされたからな。半分ぐらいは返してやりてえ」
 股間を蹴られた、と言う言葉が効いたのだろう。途端にギーシュは哀れむような表情になった。その眼差しには腹が立つが、ここは不問にしておくべきだろう。
「それで君は、ルイズの、その、あそこを蹴るつもりなのかね?」
「別に蹴らねえよ、後が怖いしな。もっと簡単な、顔に落書きする程度の悪戯が出来りゃいいんだ。何か方法ねえか?」
「それを聞いて安心したよ。興味はないが、ルイズもあれで一応は女性だからね。ならば、これを使うといい」
 そう言いながらギーシュは自分の制服のポケットを探り、小さな瓶を取り出した。
   ★★★
「おかえり。あんた、結構強いのね。場慣れしてるって感じ?」
 ギーシュの部屋からルイズの自室へ帰ると、部屋の主はそう言って俺を出迎えてくれた。決闘のことで怒られるのを覚悟していたのだが、そんな様子はないどころか、寧ろ嬉しそうな素振りで俺の手を取ってくる。その態度の豹変振りに呆れながらも、俺はルイズに尋ねてみた。
「見てたのか?」
「もちろん見てたわよ、周りの観客に混じってね。危なくなったら代わりに謝ってあげようと思ってたんだけど、心配して損しちゃったわ。その分ちゃんと働きなさいよね?」
「怒ってねえのかよ?」
「そりゃ怒ってるわよ。ご主人様の言い付けも聞かず、食堂の手伝いをしたり、勝手に決闘を受けちゃったりしたんだから。でも、勝ったんだからいいわ。これで私の使い魔が多少は使えるってことが噂になるだろうし。そうすればきっと皆、私のことも見直すわ」
 その言葉を聞いて俺は納得した。代わりに謝ることを考えていたと言うのが事実なら、多少は心配もしてくれたのだろうが、結局のところ、この高飛車貴族娘は俺の勝利を自分の手柄としたいらしい。別にルイズの立場を押し上げる為に戦った訳ではないのだが。
「それにしても、よく勝てたわね? あんた、元の世界で何してたの?」
 ルイズの問い掛けに答えようとして、俺は愕然とした。どんなに考えても、自分が以前に何をしていたのかが思い出せない。それでも額に手を当てて記憶を探っていると、今度は頭が痛くなってきた。過去を思い返そうとすればする程、その痛みは強くなっていく。やがて俺は激痛に耐えかね、両手で頭を抱え込んだままその場に屈み込んだ。
「ちょっ、どうしたのよっ?」
「……思い……出せない」
「えっ? ちょっとっ、大丈夫っ?」
「くっ……思い出そうと……すると……頭が……割れるように……痛んで……くうっ……」
「だったら思い出さなくっていいからっ、もう考えるの止しなさいよっ」
 そう言われて試しに回想を止めてみると、嘘のように痛みが消えた。まるで魔法だ。
「……お前、俺に何か変な魔法を掛けたか?」
 再び立ち上がってそう問い掛けると、ルイズは不思議そうに首を傾げた。
「別に何もしてないわよ? あんたを呼び出しただけ」
 ルイズの言葉を俺は素直に信じた。考えてみればゼロと呼ばれるルイズが、そうそう魔法を成功させられる訳もない。とすれば、別の誰かだろうか。もう一度俺は過去を思い出そうとして、この世界に来てからの記憶ははっきりしていることに気付いた。曖昧なのはそれ以前のことだ。自分の名前や年齢、考え方や得た知識、元の世界の文化などは思い出せるが、俺自身がどんな生活を送っていたのかが全く判らない。この世界に来てから誰かに魔法を直接掛けられた覚えもなく、だとすると、これは断片的な記憶喪失なのだろうか。
「……悪い、名前や年は覚えてっけど、何してたのかは忘れちまってるみてえだ」
「もういいわよ。無理して思い出そうとしなくていいから。そんなことより、もう痛いの平気なの? 大丈夫?」
「ああ、もう平気だ」
 俺がそう答えると、ルイズは安堵した表情になって深く息を吐いた。
「まったく、何度も心配させないでよね? でも、治ったのなら良かったわ。そろそろ夕食の時間だし、食事抜きは特別に取り下げてあげるから、あんたも一緒に食堂に来なさい」
   ★★★
 翌日の早朝、窓から差し込む陽の光を受けて俺は目を覚ました。
 見ると、ルイズは柔らかい寝息を立てている。桃色がかったブロンドの髪が微かに揺れ、長い睫が時折ピクンと動く。生意気で高飛車で我侭だが、相変わらず寝顔だけは可愛い。
 その寝姿を楽しみながら、俺はパーカーのポケットからルイズの下着を取り出した。昨晩着替える時に渡された物は床の上に畳んである。俺が手にしているのは、精液を拭き取った一昨日の物だ。所々乾いて硬くなってはいるが、広げてみると中はまだ湿っている。俺はそれをルイズの顔に被せて強引に臭いを嗅がせながら、ズボンとトランクスを下ろして自分の陰茎を取り出し、昨日と同じように扱き始めた。
 昨晩眠りに就く前に、ルイズにはギーシュから渡された睡眠薬を騙して飲ませてある。まさかギーシュもこんなことに使うとは予想もしていなかっただろうが、俺は最初からそのつもりでいた。本当は昨晩のうちに色々と楽しむつもりでいたのだが、疲れていたのか、薬の効き目を確かめる前に俺自身が眠ってしまったのだ。だが、それでも問題はない。薬の効果時間についてはギーシュから説明を受け、まだ間があることが判っている。薬自体もまだ手元に残っており、この先も利用させてもらうつもりだ。
 ルイズは精液の臭いを嗅がされて時々苦しそうに呻いているが、薬の効果が強力なのか、目覚める気配はないようだ。その呻き声とネグリジェの端から覗く肌、そしてほのかに甘い体臭が、いとも容易く陰茎に活力を注いでいく。程々に一物が勃起したところで俺はルイズに被せた下着をずらし、桜色の唇に亀頭を強く押し付けてやった。昨日風呂に入ってないだけに臭うだろうが、何しろこれは仕返しだ。一々同情などしてはいられない。夕食を与えてくれたことや頭痛を心配してくれたことには感謝するが、それとこれとは話が別だ。
 何度も何度も唇の間を亀頭でなぞってやると、ルイズは徐々に口を開いてきた。俺はそこに陰茎を差し込み、口腔の感触を充分に楽しんでから、ネグリジェを捲り上げて愛らしい両の乳首と腋の下に精液を放ってやった。次いで再びルイズの口を開けさせ、一物の汚れをその中で拭っていく。
 陰茎の掃除が終わって一息ついた後は、更なる陵辱の始まりだ。ネグリジェを剥ぎ取り、顔に被せていた下着を使って、華奢な身体に精液を塗り込んでいく。顔、首筋、脇、胸、腹、両手両足、そしてまだ毛の生えていない陰部。ここは特に念入りに、ぴったりと合わさった秘裂を指で押し広げ、中のピンク色の柔肉や皮を被った小さな突起、そして尻穴へと、粘着度の高い液を優しく優しく塗り付ける。身体付きは幼くとも、十六歳という年齢を考えると初潮は迎えている筈だが、たとえ妊娠しても構わない。むしろ生意気な貴族の娘を孕ませ、その上で調教するという方が俺の趣味に合う。
 ふと見ると、ルイズの秘裂は塗り込んだ俺の精液以上に、透明な愛液で濡れていた。表情を確認してみると、顔全体が紅潮しており、眉を僅かに引き攣らせている。息も睡眠中にしては荒く、鼻の穴も少しだけ拡がっている。眠っていながらも、粘液を刷り込まれて感じているのだろう。その様子を間近に見て、陰茎に再び力が漲ってきた。睡眠薬の効果は昼頃まで。今日は休日で時間はまだ充分にある。俺は再び一物を扱きながら、空いた手をルイズの股間へと伸ばし、指先で突起をそっと撫で上げてやった。何度もそうしていると、半分ほど皮が剥けて勃起したクリトリスが顔を覗かせてくる。更に他の指で秘裂を軽く擦ってやると、嬉しいことにルイズは小さな声を漏らし始めた。
「あ…っ……あぅ……あぁ……んっ……ふぅ……あっ……ふはぁ……」
 悩ましい声の高まりに合わせたかのように、陰部を弄ぶ指先がしっとりと濡れてくる。どうやらルイズの身体はかなり敏感らしい。まだ淫蜜は白く濁っても、粘りを増してもいないが、この分なら予想以上に早く肉欲の虜に出来そうだ。俺は気を良くしてルイズの鼻に亀頭を擦り付け、その周囲に先走り汁を直接塗り込み始めた。もちろん、秘所を嬲る指はそのままだ。
「ほら、覚えろ。いずれはこれで犯してやるからな。その前にチンポの臭いを覚えとけ」
「んっ……あっ……んんっ……ああっ……はうっ……ふあっ……んくっ……」
「お前の貧弱な身体の隅々までこの臭いをつけて、俺のチンポなしじゃ生きられないようにしてやる。おら、覚えろ。チンポの臭いを覚えるんだよ」
「んあっ……くふっ……ああっ……はぁん……ひうっ……ふはあっ……んくあああっ!」
 ルイズの脚が宙に上がって爪先がピンと引き攣るのと同時に、俺はその全身へと再び精液を放ってやった。
   ★★★
[2010年09月30日] カテゴリ:【SS】零の使淫魔 | TB(-) | CM(-)
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